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第246話 残念ながら手遅れなようで……

 もう殆ど元通りとなった生活の中で、変わった事と変わらない事がある。物の見方や感じ方は結構変わったし、陸上の方も色々と変化が起きた。

 トレーニングの仕方も変わったし、筋トレの内容も以前とは違っている。以前と同じ様で、そうじゃない事が沢山増えた。

 これが成長と言う事なのかなと思う反面、これで良かったのかと思い返す事もたまにある。

 だけど基本的には満足出来ていて、また楽しい充実した日々を送れているとは思っている。

 思ってはいるけど、良くも悪くも変わっていない事もあって。


「うえぇぇぇぇ」


「はいはい、全部出しちゃってね」


「ゔっ!?」


 もう何度見たか分からない恋人の嘔吐シーン。日曜の朝から、二日酔いの美佳子(みかこ)をお世話していた。

 どうやら仕事を頑張り過ぎたみたいで、昨夜は眠れなくなったらしい。でも寝ないのもマズイからと、無理矢理アルコールで泥酔したと。

 良くない眠り方だけど、深夜に睡眠薬は手に入らないからなぁ。あんまり続くようなら、正直病院に行って欲しい。

 というか無理にでも行かせようその場合は。美佳子は仕事を頑張り過ぎる傾向があるから、1日2日ぐらい配信を休ませた方が良いのかも知れない。

 この後も配信枠があるけど、それさえ終わったら寝かせよう。もう今日の仕事は無しで、1日お休みで良いだろう。


「水を取ってくるから、ちょっと待っててね」


「ゔん……うっ!?」


「……二日酔いのドリンクも必要かな」


 あんまり考えたくはない話だけど、この世の中には嘔吐フェチという性癖があるらしい。

 少なくとも俺は嘔吐に、フェチズムは感じていない筈だ。美佳子以外の嘔吐している姿など見たいとは思わない。

 知らないオジサンが吐いていても、うげっと思って終了だ。父さんでも結構嫌かも知れない。


 だからきっとそうじゃない筈だ、と思いたいのだけどどうだろう? そんなマニアックな性癖を拗らせてはいない……よね?

 美佳子の嘔吐を見て性的な興奮を感じていないから、きっと多分恐らくは違う筈だと思うけど。

 美佳子と出会った事で、新しい扉を開いたのではないと思いたい。良い意味での扉なら、最近開けたとは思うけれど。


「にゃー」


「ごめんマサツグ、ちょっと今は待ってて」


 構って欲しいのか野菜が欲しいのか分からないが、マサツグが俺に向かって何かを訴えている。

 多分俺がキッチンに向かったからだと思うけど、今は家主の体調の方が何よりも優先だ。

 冷蔵庫から1リットルのミネラルウォーターと、二日酔いに効くドリンク剤を取り出して洗面所に戻る。


 吐き気は消えたらしい美佳子が、トイレから出て洗面所で口をゆすいでいた。顔色はまだまだ真っ青だけど、立ち上がる元気は出たらしい。

 こういう時って、胃の中身を全部吐き出したらとりあえずはスッキリするらしいからね。

 俺はまだ高校生だから、良く分からない事だけども。ただ父さんから聞いただけの知識でしかない。


「はい美佳子、これとこれ飲んで」


「ありがどゔ」


「今朝の配信休む? まだ顔色悪いよ?」


 ドリンク剤と水を飲んだ美佳子は、少し悩む素振りを見せた。でも結局朝の配信枠はやるつもりらしい。

 大人になるとこんなに大変なのかと思うけれど、良く考えたら父さんはここまでハードな生活じゃない。

 俺が知らない所では、こうして苦労しているのかも知れないけど。美佳子が仕事人間過ぎるだけだって、可能性もないとは言えない。

 そして俺に出来る事は、こうしてすぐ無理をする美佳子を支えるだけ。美味しくて胃に優しい朝食を作ってあげるとしようか。

 今朝の配信開始は午前10時からで、まだ1時間程の余裕がある。それまでにパパッと作ってしまおう。


「すぐ朝ごはん作るから、リビングでゆっくり休んでて」


「うん、ありがとう咲人(さきと)


「水は少しずつ飲んでね」


 アルコールが理由で嘔吐した直後は、体内の水分が不足気味になっている。ちびちびと水分を摂取するのが良いらしく、一気に行くのは良くない。

 時間を空けて少しずつ、体内に入れて行くのがベストだ。という知識は美佳子と出会ってから知った事だ。

 父さんは美佳子ほどお酒を飲まないので、より詳しい知識を知る必要があった。知り合った当初は、父さんで慣れているから大丈夫と考えていた。


 だけどその考えは甘かったと、すぐに思い知らされた。今となっては酒豪介護のプロを名乗っても良いぐらいは詳しくなった。

 これも成長と言えるのかな? あんまり自慢出来る成長ではないけど。でも俺はこの生活が、とても気に入っている。

 だからこそ俺は、こんな朝でも嫌ではない。鮭雑炊としじみ汁をササッと作って、リビングに持って行く。


「はい美佳子、これでも食べて」


「ああ~咲人のご飯だ~」


「今日はもう無理しないでね」


 最近の美佳子は、俺がこう言うと結構素直に応じてくれる。多分自分が心配する側の経験をしたからだと思う。

 俺は普段心配する側だったから、入院中の美佳子の気持ちが良くわかった。大切な人に何かあったらどうしようと、不安に思う気持ちは誰にだってある。

 俺も美佳子もそこは変わらない。だから最近の美佳子は、飲酒量を結構減らしている。

 空き缶のゴミが半分ぐらいになったのは、これまで処分して来たからすぐ気付いた。


 タバコの方は相変わらずだけど、自分の健康にも気を付けているみたいだ。完全に辞めるのは、どちらも難しいと良く言われている。

 俺の父さんだって、40を過ぎても特に病気をしていない。いざ子供を作ろうって時までは、美佳子の好きにさせてあげれば良いかなと思っている。

 そしてそう思えるのは、俺が嘔吐フェチになったからでは無いと信じたい。信じさせてくれ。

個人的な見解ですけど、今の若い世代って年上好き増えてません?

主にVtuberやYoutuberの影響だとは思うのですけど、正直この話だけで2千文字は余裕で書けます。

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