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第221話 美佳子の悩み

評価にブクマ、応援等々ありがとうございます!

現在なろうだけで30万PVに王手を掛けておりまして、大変驚いております。

 咲人(さきと)が目覚めて10日が経った。和彦(かずひこ)君達の快進撃は止まる事なく、3回戦を突破していた。

 彼は咲人と約束をしていたらしく、優勝して来るから見ていろと言ったらしい。男の子らしい友情って感じで、少し羨ましいと思った。

 女性でしかないボクには、そんな形で励ます事は出来ない。配信でっていうのは、何か違う気がする。


 配信はあくまで楽しい内容であるべきだし、咲人を勇気づける企画はちょっと思いつかない。

 体育会系な2人だからこそ、分かり合える気持ち。そこにボクが入り込む余地は無かった。正直言って、少し嫉妬してすらいる。

 そんなボクを現実に引き戻すかの様に、自宅のインターホンが鳴った。今は金曜日の22時前で、こんな時間に一体誰だろう?


「はーいって、さやちゃん!?」


美佳子(みかこ)、開けてくれない?』


「い、良いけど」


 急にどうしたのだろう? 何か約束していただろうか? ボクがうっかり忘れていた?

 ファッション誌に載せるコラムについては、ちゃんと送ってあるし遊ぶ約束もしてはいない。

 ボクの予定表を確認しても、竹原沙耶香(たけはらさやか)という文字はどこにも書かれていない。なら何故今になって、わざわざ東京から美羽市まで来たの?

 お盆休みだから里帰りしたとかかな? それなら遊びに来ても不思議じゃない。それにしても時間的には遅すぎる気もするけど。

 まあさやちゃんが相手なら、それぐらい気にしないけどさ。どうせまだ寝るつもりも無いからね。


「やっほ、美佳子」


「急にどうしたの?」


(まこと)に聞いたからさ。アンタの彼氏が死にかけたって」


 さやちゃんと葉山(はやま)君はイトコにあたるから、そこから話が回ったらしい。丁度里帰りしたタイミングだったから、気にして会いに来てくれたみたい。

 正直言ってかなり嬉しい。だってボクの気持ちを、悩みを相談するには最高の相手だから。

 咲人に何をしてあげたら良いかとか、家事を上手くなるにはどうしたら良いかとか。色々と相談したい事は沢山あった。

 さやちゃんになら隠す事も取り繕う事もないし、ぶっちゃけ目の前で泣いても引かれない。

 怒られはするかも知れないけど。だけどそれでも構わない。ボクはもうそろそろ、限界だったから。


「さやちゃーん!」


「こら抱き着くな! 落ち着けステイ!」


「あ、ごめんつい」


 昔からの友人が優しくしてくれるから、つい勢い余って甘えに行ってしまった。この感じがまた懐かしくて良いよね。

 仕事で通話はするけれど、そういうのとはまた違う。気の知れた友人との、サシでの話し合いってのは特別だから。

 それこそ咲人と和彦君の間にある様な関係性だよ。吐き出したい事もあったから、1杯と言わず今夜は付き合って貰おう。

 明日は土曜日だしお盆休みだし、さやちゃんに仕事はないだろうしね。ボクも明日は咲人の所に行くだけだ。

 軽く飲みながら相談を聞いて貰うぐらい問題はないよね。うんそう、ちょこっと飲むだけだよ。


「それじゃあ早速」


「ちょい待ち! アンタは先にメイクを落としな。どうせボロボロ泣くんだから」


「うっ……ハイ」


 勝手知ったるなんとやらで、この先ボクがどうなるかバレていた。正直な話、ボクは最近良く1人で泣いている。

 咲人が死ぬかも知れない、あの恐怖が蘇るからだ。美沙都(みさと)ちゃんが居る間は大丈夫だけど、これぐらいの時間や寝る前にはどうしても考えてしまう。

 夢に見て夜中に飛び起きる事だってある。分かっているんだ、これは典型的なASD(急性ストレス障害)の症状だ。

 その内いつかは落ち着くだろうけど、1ヶ月以上経っても治らなかったらPT(心的外傷後)SD(ストレス障害)という事になる。

 そこまで酷くはないと思っているけれど、正直あまり自身はない。それだけあの事故は、衝撃的だったから。


「お待たせ。ハイこれ、さやちゃんの分」


「ありがと。そんで、昔から彼氏に依存しがちなアンタの今の心境は?」


「最悪だよっ! もう毎日の様に泣いてる」


 2人で缶ビールを開けながら、ボクが抱えていた最近の悩みを全部話した。当然だけどボクは途中からボロ泣きだったよ。

 だって仕方ないよね、目の前で咲人が死にかけたから。あれ以来ボクは、血の匂いが苦手になった。

 元々好きでは無かったけど、そこにトラウマが追加されて最悪だ。もうすぐ来るアノ日なんて、自分がどうなるか分からない。

 都合良く1週間だけ鼻が詰まってくれないだろうか。体がしんどい上に、あの日の事を嫌でも意識させられるなんて最悪だよ。

 咲人の血の匂いじゃなくて、自分の血なんだけどさ。それでも血の匂いである事には変わりないし。


「もゔづらぐでざぁ! ぐずっ……ボグっで、全然何もじであげられない」


「はいはい、そうね。アンタは家事全部ダメだからね」


「なぐざめでよぉ!」


「アンタが悪いんでしょ。学生時代から私が、アンタに何回言って来たと思う?」


 手厳しい意見が飛んで来るけど、その通りだから言い返せない。今までやろうとして来なかったから、出来なくて当然なんだ。

 悔しいけど、認めたくはないけど、今回ばかりはお母さんの勝ちだ。ボクが洗濯を出来たら、咲人の着替えを用意する事が出来た。

 包丁が扱えたら、ウサギの形にリンゴが切れた。そういった入院の定番が、殆ど全てボクは出来ない。

 お金で解決出来る事はお金で解決するけど、それはそれで物凄い無力感に襲われるんだ。

 ボクはお金が無かったら、咲人に何もしてあげられないみたいで。お金だけが存在価値みたいに思えて、凄く惨めだ。


「でもまあ、辛い時に1人じゃないってのは大きいわよ」


「え゛っ? どういう事?」


(あずま)君もさ、アンタが居たから助かって部分がある筈よ」


 そう、なのかなぁ? ボクが居るだけで咲人が助かっているのかなぁ? 気にはなるけど、聞くのはちょっと躊躇われる。

 別にって言われちゃったら、あまりにも惨めだ。咲人はそんな無神経な事を言わないけど、だからこそ無難な答えを無理矢理言わせてしまいそうで。

 そんな不安とかも全部、さやちゃんに全部聞いて貰った。これからボクが何をしてあげたら良いのかも、全部余さず相談した。

 昔からの友人という存在が、これほど有難いと思った事は今までに無かったよね。色々と怒られもしたけどさ。

美佳子は美佳子で、事故の件と戦っています。

人が目の前で死ぬor死に掛けるって、結構な辛さがありますからね。

そして次回は、VBの新キャラです。美佳子とは別の残念なお姉さんです。


また数日前に後書きに書いていた、元ヤンギャル系お姉さんの話を1万文字程度の短編として一旦投稿する方向で進めております。

後2話ぐらい書いたら投稿する予定です。大体1章はこんな感じになりますよ~って感じで、全体を10分の1ぐらいにギュッと纏めた感じです。

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