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第207話 園田マリアの雑談配信⑨

 いつもの様に園田(そのだ)マリアの雑談配信が行われている。夏休み中なので配信の頻度は平時より上がっていた。

 田村美沙都(たむらみさと)VB(ブイビー)のアルバイトとして雇った事で、美佳子の余裕がかなり出来たお陰だ。

 事実として現在も防音部屋の外では、リビングで美沙都がお昼の業務をこなしている最中だ。

 咲人(さきと)に心配を掛けない様に自重はしているものの、やはり配信活動自体が楽しいのでやってしまう。

 睡眠時間は前より取れているので、1時間ぐらいなら良かろうとの判断だ。思いつきで取った枠なので、事前に告知を入れた時よりはリスナーが少ない。


「皆ごめんね~、急に枠取って。ちょっと時間が出来たからさ」


『間に合った~!』

『ええんやで』

『何の話する?』

『こんにちは』

『久しぶりじゃない? この時間帯』


 ここ最近はずっと昼間に仮眠を取っていたので、あまりこの時間帯の配信が出来ていなかった。

 それだけ美佳子の生活がハードだったという事だ。今ではかなり改善されており、この通り元気に配信が出来ている。

 夏休みという新規リスナーを獲得し易い時期に、朝昼晩と枠を確保出来るのは大きいだろう。

 特に最近は様々なオファーや依頼がVBに届いていた為、打ち合わせや連絡の取り合いで忙しかった。


 以前の寺町(てらまち)こなたとプリティメイジのコラボレーション以降、特に仕事の依頼が増えていた。

 女児向けアニメでエンディングテーマを歌ったというのはやはり反響が大きかったのだろう。

 テレビの歌番組への出演依頼だとか、スケジュール合わせだとか様々なお話が来ていた。まだ発表する事は出来ないのだが。


「皆に報告したいな~と思ってさ。先日、ボクと彼氏が付き合って1周年を迎えました~! いえーい! 祝って~~!!」


『ようフラれんで済んどるわ』

『おめでとう!』

『¥10000 これで何か食べて』

『ナイスパ!』

『良いな~彼氏居て』


 せっかく発表したのだから、当然続いている事も報告すべし。そう思ったのと、何でも良いから1時間ほど喋りたかったのもある。

 美佳子は今まさに幸せの絶頂にあり、毎日が楽しかった。咲人が居て、美沙都も居て、美佳子の家には必ず誰かが居る。

 夜は流石に1人だが、生活が充実しているので問題はない。自分に結婚なんて出来ないのではと、孤独を感じていた過去はもう昔の話。

 こうして配信をすればリスナー達が居て、自分の事務所のライバー達との絡みも色々とある。

 どこにも美佳子を不安にさせる要員は無く、ただ決まった企画を上手く成功させるだけで良かった。


「そろそろ高校駅伝に夏の甲子園だよ~! 高校生頑張って~」


『甲子園は観にいくよ』

『クラスメイトが出るんだよね。別に友達じゃないけど』

『そんな時代がおっさんにもありました』

『フレッシュで良いですなぁ』

『オッサンが平日の昼にコメントを? 妙だな?』


 咲人が出場する駅伝大会は、もう数日後には開催される。やる気と自身に満ち溢れた彼を見るのが、美佳子は大好きだった。

 やはり自身を持ち堂々としている男性というのは、女性から見て魅力的に見えるものだ。

 頼りがいであったり、守ってくれそうという印象を受けたり。基本的にプラスの方向で感情が動きがちだ。

 モテる男性というのは大体堂々としている。咲人もその例に漏れず、美佳子にとってはカッコイイ男だ。

 まだ大人になりきっていなくとも、男性を感じさせる空気感。そう言った男気の様なものが、最近の咲人には生まれていた。

 本人に自覚はなくとも、ちゃんと成長しているのだ。


「学生達は夏休みの宿題やってる~? もうすぐ8月だからちゃんとやりなよ?」


『明日から本気出せば間に合う』

『もう終わったよ』

『1週間あれば余裕だし』

『読書感想文が面倒』

『まだ何もやってないwwww』


 大人達に夏休みはないが、学生達にはある。そして夏休みの宿題も。ギリギリになって終わらせるタイプもいれば、7月中にさっさと終わらせるタイプも居る。

 結局終わってさえいれば良いのだが、休みが明けても終わっていない生徒も一定数居るもの。

 終わっていなくて困るのは本人だけに見えるが、実は遅れれば遅れるだけ確認する教師も大変なのだ。

 こんな事を期限までに終わらせない生徒は考えてもいないだろう。今はまだ夏休みだが、明けた先で全国の教師達がそんな生徒達の事で頭を抱える事になる。

 先生達の悲しい出来事は置いておいて、コメントしている学生達は大体半数は終わっている様子だ。


「うーん、結構既に終わらせている子が居るねぇ。優秀だよ偉いじゃん!」


『配信者がこうなのにリスナーはまともっていう』

『言うほどまともか?』

『マリアの同類も結構居るしなw』

『汚部屋バトルとかいう闇』

『呼んだ?(酒カス)』


 突発的に取った枠であったが、それなりのリスナー達が集まった。流石にメイン層は学生達だが、何割かは大人のリスナー達だ。

 意外と園田マリアのリスナーには、主婦層も居る事が確認されている。主に恋愛相談での旦那の愚痴などを送って来る事が多い。

 たまに子育ての相談が来る事もある。今いる大人のリスナー達は殆どが主婦である、と信じたい所だ。


 普段の半分ぐらいの同接ではあったものの、十分な人数でありそれなりに盛り上がった配信だった。

 何もかもが順風満帆、そんな幸せの絶頂に居た美佳子も、そして咲人も、人生とは上手く行く事ばかりではないという意識が薄れてしまっていた。

 その事を思い出させるのは、この2日後の事だ。全国駅伝大会を目の前にして、2人に試練が待ち構えていた。

それでは次回から毒ガス訓練を行う!


という事で次回の208話~211話までがしんどい展開になります。特に209話が一番辛いシーンです。読むタイミングにお気をつけ下さい。


あと昨日のうちに、カクヨムコンテスト10で出した短編の現代ラブコメをこちらにも掲載しておきました。

本作を書き終えたら長編として書くつもりの作品『突然出来た義理の姉達に囲まれています』という作品です。先に雰囲気だけはお楽しみ頂こうかなと。

こちらは昔人気だった某、ちゃんとしようよ! みたいな作品ですね。本作を読んでいる方で分からない人居るのかな? 今高校生とかなら知らないか。


雰囲気的には本作とそう大きく変わらないかなと。違うとすれば、書き方ですかね。

4人の義姉が出来たよ! な共通ルートと、4人分のルートをそれぞれ書きます。最終章の長女編ラストにEX編ハーレムエンドをひとつまみ。

まんまエロゲのシナリオやないかーい! と言われたらそうです(笑)

あとは女の子主人公の青春モノも10万文字ぐらいの完結作として7月までにポンと出すかも知れません。ジャンルとしては、女性向け現実世界恋愛? ヒューマンドラマかも?

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