表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/306

第205話 Cultivating Love

 5月のひと月だけで10万PVもあり、現実世界恋愛カテゴリの日間・週間・月刊と注目度ランキングに本作が載りました。本当にありがとうございます!

 ※後書きに重要な告知があります。

 田村(たむら)さんが働き始めて、美佳子(みかこ)に出来た時間的な余裕は大きい。睡眠に取れる時間もそうだし、2人で過ごす時間だってそうだ。

 今までにもちょっと出掛けたり、デートしたりする為に美佳子は無理をしていた。それだけ社長としての仕事が多く、色んな人とのやり取りがある。

 予定なんて基本的に数ヶ月先まで決まっているし、自分の為に割ける時間は本当に少ない。

 こうして俺が美佳子の家にほぼ毎日来るから、2人で一緒に居られるだけだ。もし俺が普通に働いていたら、こんなにも時間は取れていない。


「いつも思うけど、やっぱり逆じゃない?」


「え~別に良いじゃんボクが膝枕される側でも」


「いやまあ、良いんだけどさ。ただ不思議な感じだなって」


 ちょくちょく美佳子に要求される膝枕。もちろん俺がする方で、やってもらう方ではない。

 今もソファの上で、膝に美佳子の頭を乗せている。当たり前に様に、頭を撫でる事もセットで求められるので今では手慣れたものだ。

 疲れているのは知っているから、労いの気持ちを込めて優しく撫でている。普通のカップルとは違う感じが、どうにも俺達らしいなと。

 何から何まで普通とは言えない俺達の交際は、ついに1年を超えた。ただ美佳子が忙しくてそれらしい事が出来ていなかった。

 だから当日から少しずらして、今やっとこうして1日中ゆっくりと2人で過ごしている。


「1周年、早かったよね」


「そうだねぇ。咲人(さきと)があんなに真剣に告白してくれたのが1年も前なんてね」


「ま、まあね。必死だったから、勢い任せにしか出来なくて」


 あの時はもう本当に、計画性もなくて全部滅茶苦茶だった。とにかく美佳子に本気だって伝えたくて、好きだと分かって欲しくて。

 恋愛なんてまともに出来ていなかった俺が、無い知恵を絞ってがむしゃらに行動した。

 結果こうなれたから良かったけど、大人の女性への告白としてはわりとダメな方じゃないか?

 今思えば赤点ものじゃないだろうか? もっとこう、オシャレなホテルのレストランで~とかさ。

 綺麗な夜景をバックに、ワインを片手にみたいな。まあ俺はまだお酒を飲めないけどさ。


「凄く嬉しかったよ。この子、本気なんだなって思えた」


「そ、そう? あんまり格好良くは無かったと思うけど」


「そんな事ないよ。ボクには最高の男の子に見えたよ」


 絶賛二日酔いだったのだから錯覚では? と思えなくもないけど、本人が喜んでいるなら良いか。

 変に格好を付けようとしても、失敗する事が多いらしいし。まあ美佳子から聞いただけなんだけど。

 いずれにせよ俺達は1年間、こうして喧嘩もなく幸せに過ごせたと思う。出会いも始まりもハチャメチャな俺達だけど、無事2年目に突入している。

 後で買って来たケーキを囲みながら、2人でささやかなお祝いをする予定だ。来年はもっと楽になっているだろうから、その時はもう少し派手に祝いたい。

 今年は本当に美佳子の予定が詰まり過ぎていて、事前にどうしようも無いのが分かっていた。


「来年もさ、一緒にいような」


「当たり前だよ。もう同じ墓にまで着いて行くからね」


「ちょっとホラーなのやめて?」


 そんな会話を交わしながら、これからの未来を考える。2年目に入って、美佳子と色んな事をしたい。

 今まで行けなかった所にも行く、時間的な余裕も生まれたのだから。想定よりも沢山の時間を過ごせそうな予感がしている。

 2人で色んな光景を見て、様々な写真を残したい。壁に飾られたフォトフレームには、まだまだ写真が入れられる。

 アレが一杯になって、次の分を買わないといけないぐらいに想い出を残そう。いつかその内、俺が学生で無くなったら今よりもきっと時間は無くなる。

 それまでの間に、出来るだけやれる事をやっておきたい。悔いが残らない様に、毎日を大切に過ごそう。


「もうすぐ駅伝だね。今回も応援に行くからね」


「見ててくれ、次は1位を取り返す!」


「うん、楽しみにしているね」


 駅伝大会の方だけど、実はちょっとしたトラブルがあって日程がズレた。会場である京都市内の複数個所で、道路下の水道管が破裂する事故があった。

 翌日には漏れ出た水は収まったけど、各道路の緊急点検が行われている。駅伝大会開催中に事故があっては大変なので、当然の措置と言えた。

 走るこちらとしても、危険はない方が嬉しいし賛成だ。本来ならもう行われていた筈だが、8月頭の開催へと変更になった。

 それはそれで遠方から来る学校が大変だけど、何か起きてしまってからじゃ遅い。沢山の観客と大勢の選手が集まるのだから。


「あ、そうそうせっかくだし」


「え? 何? どうしたの美佳子?」


「よっと」


 大人しく膝枕をされていた美佳子が、突然起き上がった。何をするのかと思ったら、そのまま俺の方へ向けて体の向きを変えた。

 正面から見つめ合う形になり、そのまま美佳子にハグをされた。嗅ぎ慣れた香りに包まれて、美佳子の女性らしい柔らかさをダイレクトに感じる。

 暫くされるがままだった俺は、続いて数秒間に渡るキスをされた。突然だったから驚いたけど、嫌な感じなんてする筈ない。

 何の意味があったのかは分からないけど、満足感の方が大きいから問題はない。温かな気持ちに包まれている。


「えぇっと?」


「1年間ありがとうと、2年目もよろしくねのチュー」


「あ、ああ。なるほどね?」


 そういうのも有りなんだ? そっかじゃあ俺も返さないとなって、何故かこの時は思ってしまい俺からもキスで返した。

 何でだろうな? 意味が分からないよ。多分きっと浮かれていたんだと思う。だって俺はこの時、最高に幸せを感じていたからさ。

 章タイトルの意味は『愛を育む』です。これにて4章は終了します。そして活動報告にある、『カスカスお姉さん5章について』を読んでおいて下さい。

 5章は序盤から本作で最もしんどい展開になるので、何故そうなっているのかの詳細を書いています。共感性の高い人は特に目を通しておく事をオススメします。

 後書きに書いたら1話分ぐらいの文章量になったので、この様な対応を取らせて頂きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ