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第198話 今更ながら気付いた事

なんと本作、5/23の現実恋愛カテゴリで日間ランキングと週間ランキングに載りました!

最高順位が日間の連載中5位、全体10位。週間で全体29位でした!

これも全ては皆様のお陰です!本当にありがとうございます!

 一哉(かずや)柴田(しばた)と3人でラーメンを食べた日から数日、俺はいつも通り学校に行き部活を終えたら家事代行を始める。

 散らかったゴミを捨てて掃除をし、洗濯をして乾燥機で乾かす。キッチンに溜まった洗い物を済ませて料理を作る。

 もう日常と化して慣れ親しんだ諸々を済ませた頃に、美佳子(みかこ)が寝室から出て来た。今日は寝るのが遅かったのだろうか?

 寝起きだと言うのもあるだろうけど、どうにも様子が少しおかしい。体調でも崩したのだろうか? 今朝から少し元気が無い。


「大丈夫? 朝から体調悪そうだけど」


「ごめん咲人(さきと)、起きるのが遅くて。ちょっと疲れてて」


「また無理して仕事したの? ちゃんと休もう?」


 家事全般が全滅でも仕事に関しては有能である美佳子は、何でも殆ど1人でやってしまう。

 社長という立場としての責任感も強く、所属配信者全員のケアも行っている。園田(そのだ)マリア以外に8人のライバーがおり、全員の管理とマネジメントをこなして来た。

 ただやはり無理をせねばならない時もあり、重なるとこうして体調に影響が出る。無理やり寝かせる時もあるけど、それだけで解決しない事が多い。

 問題の先送りになるだけで、事態の解決にはならないからだ。俺に手伝える事ならやっているし、隣に住んでいる2人の女子大生も余裕がある時は手伝っている。

 ただ2人とも就活で忙しいのから、そんな頻繫には手伝えない。あまり良くない状況で、このままは不味い様に思う。


「どうしても外せないリモート会議が続いててさ」


「やっぱりバイトか社員を雇った方が良いって」


「分かってはいるんだけどね。でも信用出来ない人を入れたくはないから」


 美佳子の言いたい事も分かるけど、そろそろ限界なんじゃないかな。せめて事務的な作業なり、雑用仕事なりを代行してくれる誰かが必要だ。

 俺に出来る雑用ならやるけど、経理などが絡むとどうにもならない。肉体労働なら幾らでもやれるけど、会社の経営絡みでは悔しいけど役に立てないんだ。

 勉強なんて可能な限りやりたくない、そんな生き方をして来たこれまでの自分が恨めしい。

 だから最近はせめて数学だけでも頑張ろうと力を入れてみたけど、元々好きじゃなかった奴が急に出来る様になる筈も無く。

 今の所それらしい成果は特に出ていない。スポーツ推薦枠があるからと、勉強に関して甘えていた部分があるのは否定出来ない。


「だけどこれじゃあ、いつまで経っても美佳子の負担は変わらないじゃないか」


「友達や知り合いを通じて探してはいるんだけど、欲しい人材が捕まらなくてさ」


「信用が出来て必要な資格を持っているか、取得してくれる真面目な女性が良いんだっけ? うん? あれ?」


 なんだろう、この既視感に似た感覚は? 以前にも似た様な会話をして、それでどうなったんだっけ?

 もう喉元まで出て来ているのに、何の話か思い出せない時みたいな。良く知っていた筈が、ド忘れして上手く説明出来ない感じ。

 今何か頭の中で、最適な解決策が浮かんだ様なそうでもない様な。今俺はどの部分に可能性を感じた? 何に引っ掛かりを覚えた?

 信用の出来る女性? 資格? 人材が捕まらない? 何だ? 前に交わした些細な会話が、薄っすら記憶の片隅にある様な……あっ!?

 そうだ、前に美佳子が言っていたじゃないか! 学校にバイトをしたい子が居たら紹介してと!


「その……条件を満たせるかも知れない女子が居る」


「……え? どういう事?」


「ただ、紹介して良い相手なのか分からないんだ」


 どうしてこの発想に至らなかった? 必要なピースは既に提示されていたのに。その理由は簡単で、俺が勝手に思い込んでいたからだ。

 俺の心の何処かに、美佳子なら何とかするだろうって思い込みがあった。そんな思考があったから、この答えに至るまでに時間が掛かった。

 仕事面では優秀な結果を出す美佳子だって、全てを解決出来る全知全能の神様じゃない。

 だから言われていたじゃないか。俺の目から見て、信用出来る女子が居たら紹介して欲しいと。

 馬鹿か俺は? 最高の人材かも知れない女子が、今まさにバイトを探しているじゃないか。


「あのさ……美佳子は自分のファンがVB(ブイビー)でバイトをするのは有り?」


「構わないよ? 公認の切り抜き師とか、紹介動画を作るのって基本ファンだし。推しのマネージャーをやる人も居るしね」


「だったら紹介出来る女子が1人居るんだ」


 今バイトをする必要があって、園田マリアの事を良く分かっている人。資格を取るのが趣味で、色んな事に詳しいVtuberに理解のある女子。

 VBの箱推しをしてくれているから、改めて詳細を説明する必要もない。どういう方針で、どんな活動をしている事務所か深い理解がある。

 そして何より、本人がVtuber運営企業で働きたいと考えて将来設計をしている最高の人材。

 どうして今この瞬間まで出て来なかった? もっと早くにこの回答に辿りつけた筈だろう。

 美佳子と温泉旅行に行ったりして、やっぱり浮かれていたんだ。そして同時に、田村(たむら)さんに対して無駄な距離を取ってしまっていた。


「前に話した田村さん、どうかな?」


「えっと、どういう事?」


「実は今、田村さんはバイトを始めるか部活に入る必要があってさ」


 何故こんな簡単な答えに辿りつけなかった? 柴田にその話を聞いた時点で、思い付いて然るべきだった提案だ。

 田村さんが目指す未来と、美佳子に必要な人材はマッチしている。田村さんに下手な事を話さない様に、気を付けて来たからこそのミス。

 そもそも初期からのファンなら、美佳子は家事全般が苦手だと知っている。だからここに連れて来ても、ガッカリする事はないだろう。

 だったら今俺が取るべき行動は、改めて考えるまでもない。田村さんにここで、バイトをしないか聞いてみれば良いんだ。

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