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第186話 マサツグ1歳の誕生日

 本日6月11日はマサツグが生まれた日で、つまり満1歳を迎えたと言う事だ。これで猫としては立派な大人の仲間入りを果たした事になる。

 初めて会った時と比べれば、倍以上の大きさに成長した。ペルシャ猫らしい優雅な雰囲気と、穏やかな性格がどことなく高貴だ。

 ただ好奇心は結構強めだから、たまにコップをひっくり返す等のやらかしは有るけれど。

 あと地味に食い意地が張っている様で、ペルシャ猫にしては大きめな体重5kgが見えている。

 太ってはいないけど、シンプルにデカい。そして体の上に乗られると、それなりに重たい。


「すっかり大きくなったなぁ」


「そうだね~良く食べて良く寝てたし。やっぱり寝る子は育つねぇ」


「太らせない様に気をつけないと」


 当のマサツグと言えば、現在買って貰った猫用の誕生日ケーキに夢中だ。砂糖等を使用していない健康に問題がない特別製。

 これまでの様子を見る限り、どうも食べるのが好きみたいだ。よほどの事がない限り、餌を食べない日が無い。

 逆に食べなかった日は不調で、お腹を下している時が一番分かり易い。悪影響のある人間の食べ物を与えて来なかったので、体は健康そのもの。

 無事1歳になったから、そろそろ豆腐とかなら人間の食べ物でも与えて大丈夫じゃないかな。

 うちで飼っていた犬が好きだったんだよな豆腐。妙にヘルシーな食べ物を欲しがったんだよな、犬として生まれたにも関わらず。


「1歳になったし、予定通りマサツグを散歩させるんだよね?」


「そうだね。たまに連れて行くつもりだよ。良い運動になるからね」


「猫の散歩って新鮮だなぁ」


 犬と違って猫と散歩は無縁の様に思える。だけど実際には猫も散歩をさせるメリットがあるらしい。

 一番はやっぱり健康的な生活の為で、ずっと室内飼いより運動不足のリスクを防げる。良く食べるマサツグにはちょうど良い。

 それから外の世界は猫に良い刺激を与えてくれるみたいで、ストレス解消の効果もあるんだとか。

 言われてみれば野良猫なんて、自由気ままに外の世界で生きている。勝手に人間がそう思っているだけで、猫は別に引きこもり体質ではない。

 孤高の生き物ってイメージがあるけど、実際には結構社交的な動物だ。家族を持てばちゃんと面倒を見るし、思っているより人に懐く。


「行く時は教えてよ。俺も行きたい」


「良いよ~。じゃあ今週の日曜日にしよっか」


「部活が午後だから、朝なら大丈夫」


 日曜朝の配信終わりに、マサツグの散歩デビューが決まった。ペットとの散歩は楽しいし、実際俺は犬の散歩が好きだった。

 一緒に走って散歩コースを周るのは、小学生の俺には良いトレーニングだった。老いてからは流石にそんな元気は無かったけど。

 思えばあれ以来の散歩だから、結構楽しみだな。猫は走り回るイメージが無いから、多分普通に歩くだけだと思うけど。

 何よりマサツグは、外を駆け回る様な性格とも思えないし。自由気ままでマイペースという、典型的な猫らしい性格だ。

 それはそれで面白そうだから、走らなくても構わない。美佳子(みかこ)も一緒だし、ゆっくり周れば良いや。


「どこまで行くとか決めてる?」


「最初は近くの公園かな。お花見で行ったあそこ」


「ああ、なるほど。初めての外出には丁度良いか」


 夏歩(なつほ)和彦(かずひこ)との想い出の公園でもあり、美佳子との想い出もある近所の公園。いやまあ本当に、色んな意味で想い出に残っているよ。

 酸っぱい匂いと共にね。なんて余計な事は記憶の片隅に追いやり、マサツグの首元を撫でる。

 ゴロゴロと気分良さそうに鳴いているけど、コイツは外の世界を見て何を思うのだろうか?

 沢山の人間が居て、色んな生き物が居て。美佳子の家も大概広いけれども、それ以上に広大な世界が広がっている。

 初めての経験にどんなリアクションをするのかな。コイツなりに野生を思い出したりするのだろうか。


「せっかくだし、温泉でも散歩をさせても良いかもね~」


「あ、あ~そうね。まあ良いんじゃない?」


「楽しみだね~。ね~? マサツグ~」


 極力意識しない様に努めている、美佳子との温泉旅行。その日がどんどん近付いて来て、正直わりと緊張している。

 楽しみであり、不安でもある。ただ温泉街で猫を連れて、恋人とデートは中々良さげじゃないか?

 変にいやらしい意味もないし、とても風情があると思う。風情なんて語れる程に知らないけどさ。まあなんか、それっぽい感じと言いますか。

 真面目な話、まだまだ美佳子と出来ていない事が沢山ある。2人で渋谷に行ってみるとか、観光地巡りをしてみるとか。

 恋人っぽい事は出来るだけやっておきたい。高校を卒業したら、まあその色々とね? 恋人っぽいアレコレもね。


「い、いや~それにしても、マサツグは温泉に入れないから残念だよな」


「有るよ? ペット用お風呂」


「……え? マジ?」


「ちゃんとHPに書いてあったよ? ペット用有りの家族風呂付き」


 あ、ああそうなんだ。衝撃のあまり覚えていなかったよ。そっかマサツグも入れ……ん? 家族風呂って今言いましたか?

 それはつまり、男女別になっていない混浴的なアレ? 待ってくれ、そんな話してたっけ?

 俺が浮かれ過ぎて頭に入っていなかっただけ? いやいや、まだ2人で入るって決まってないから。

 まだ美佳子と混浴すると確定してはいない。でも仮にそんな事になったら、俺はどうすれば良いんだよ。


 一緒にプールと一緒にお風呂の間には、天と地ほどに開きがあるぞ。違うよね? そうじゃないよね?

 いきなりそんな大胆な事をやるわけが……いや美佳子ならやるか? 唐突な行動に出るのが美佳子だぞ?

 ここは念の為に確認を……いやでも混浴するか聞くって、滅茶苦茶意識してるみたいでキモくないか?

 いや意識はしているけど、そう言う意味じゃなくて。ああもう!! なんて色々悩んでいたものの、結局直接聞く勇気は持てなかった。

GWかGW明けに新作を投稿すると言ったな? アレは嘘だ。

いや嘘ではないんですけど、ちょっと設定を変えたりしたので遅れてます。

そして何より、私の持病である『モンスターパニック映画が観まくりたい欲』が発動して最近映画ばっかり観ており筆が少し? 進んでおらず。

多分来週とかその辺りになる、かも?

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