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第185話 園田マリアの恋愛相談⑤

 6月は新入生や新入社員がある程度環境に慣れて来る時期。新しい関係性や出会いが生まれ、色々と変化が表れ始める頃合いだ。

 4月や5月の新人歓迎会やオリエンテーション等で、友人が出来る事もあれば好きな異性が出来る場合もある。

 そこから更に一歩先に進めるのか、進めずに終わるのか。そんな彼ら彼女らからの相談が溜まっていたので、美佳子(みかこ)は恋愛相談の特別編を行う事にした。

 普段の恋愛相談は基本1時間枠になっているが、今回は倍の2時間で枠を取っていた。

 金曜日の夜21時、園田(そのだ)マリアの恋愛相談が始まった。配信のタイトルは『【恋愛相談】ひと夏の恋!? 気になるあの人と砂浜で【園田マリア】』となっていた。


「迷える子羊達よ、汝らの罪は酒で清めよ。泥酔系シスターの園田マリアだよ~」


『こんマリー!』

『待ってた』

『生き甲斐』

『はよはよ』

『やったー! リアタイ間に合った』


 そのうち教会から怒られそうな普段通りの挨拶で始まり、リスナー達がどんどん集まって来ている。

 土日が休みの人達は、のんびりと1週間終わりを噛み締めながら。明日も学校や仕事の人々は、もう1日頑張る為の活力を得る為に視聴している。

 色んな立場の人々がこの配信を観る為に自宅で、もしくは帰宅中の電車やバスの中で楽しんでいた。

 開幕から沢山の投げ銭が飛び、幾つかに返答しながら美佳子はオープニングトークを終えた。

 今回はいつもより配信時間が長いので、本題に入る前に注意喚起を入れる。


「今日は2時間だからねぇ。明日朝早い人とか、無理しないでね~」


『休みだから問題なし』

『長時間配信助かる』

『ワイは夜勤中やし平気』

『今日はボリューミーだね』

『夜勤ニキは仕事してw』


 あまり雑談が長くて本編が遅いと問題があるので、早速美佳子は最初の相談を披露する。

 自分の置かれた立場や年齢、性別や本人のスペック等と合わせて質問内容が画面内に大きく表示された。

 1人目は22歳のフレッシュな社会人1年目。大手IT企業に勤める女性だった。自己判断での見た目は平凡で、書かれている身長等の数字はどれも平均的なもの。


 性格はやや内向的ながら、コミュ障と言う程に酷くはない。恋愛経験も一応あるものの、豊富とは言えない程度。

 どこまでも平凡な女性だ。そんな自分に毎朝挨拶のメッセージをくれる上に、会社でも優しい先輩が居る。

 新入社員にモテている社交的なイケメンであり、正直好きになりそうだけど自分に自信が持てない。という内容の相談だった。


「あんまり言いたくは無いけどさぁ~それ多分ヤリモクじゃない?」


『あっ……』

『スゥー』

『私もそう思う』

『恋人でも無いのに毎日挨拶ってしなくない?』

『距離感の詰め方がヤリ〇ンのそれ』


 良く言われる性行為が目的である事を表現する言葉。ヤリモクという言葉の通り、恋心とは関係の無い肉体関係のみを狙うゲスな行為。

 しかしそれだけなら犯罪ではない為、特に規制などはされていない。経験豊富な男性の場合、非常に巧みな手段でもって実行に移す。

 騙されて被害に遭う女性は大勢居る。そこまで酷くは無かったとしても、キープと言う形で付かず離れずを維持されてしまう事も。

 特に周囲の噂を仕入れ難い新入生や、新入社員が狙われる事は往々にしてある。しかもこの相談者は、性格的に自ら情報を収集するタイプではない。

 美佳子が疑ったのはそこで、知り合ってたった2ヶ月でその距離感は怪しいという判断だ。


「貴女みたいな大人しいタイプって、そう言う男が良く狙うんだよね。キープは既にされてそう」


『俺の好きだった同期が正にこれで涙が出ますよ』

『良く見る光景』

『エロ同人の導入で見た』

『でも惹かれちゃう気持ちは分かるなぁ』

『私なんて優しくされたらすぐ好きになるもん』


 先ずは女性の先輩達に、その上司に悪い噂が無いかを聞いた方が良い。そうアドバイスをして美佳子は締める。

 ちなみに恋愛経験の薄い学生の場合は、必ずしもそうではない事も付け加えておく美佳子。

 単に経験が足りず距離感の掴み方が分かっていないだけの、ただのピュアボーイは安全だからだと。

 大人で対応がスマートな距離感の詰め方が早い男性には、少し警戒をした方が良いと言う話であった。


 続いて2人目の相談者は、高校1年生になったばかりの男の子だ。隣の席に座っている女子が気になっていて、もっと仲良くなりたいとの事。

 ただ変に攻めすぎて嫌われたくないから、どうしたら良いかと相談に来ていた。彼は吹奏楽部に所属の身長が180cmあり、自認では平均よりやや下の容姿であると。

 お相手の女の子は水泳部に所属しており、平均よりやや上の可愛さである事などが書かれていた。


「こっちは日常会話を見る限り、ノーチャンスでは無さそうだね。少なくともNGな男子に普通はお菓子をあげないね」


『青春じゃのう……爺には眩し過ぎる』

『うわーーーアオハルだーーー』

『青春漫画か?』

『高1男子君、可愛すぎかよ』

『若者の恋愛からしか得られない栄養素がある』


 1人目に出て来た男性の様に、妙な距離感を詰めない様にアドバイスをする美佳子。

 たまにお菓子をくれているなら、先ずは同じ様にお菓子でお返しする所から始める事を勧める。

 そこから好きなお菓子の話題に広げたり、食の好みを訪ねたりと少しずつ距離を縮めれば良い。


 もしそれで日常的に連絡を取り合う所まで仲良くなれたら、またここに相談しにおいでと締めくくる。

 あまりにもフレッシュな青春感が溢れる相談だっただけに、1人目で発生した悲壮感は消えていた。

 相談を出す順番は美佳子が決めており、その辺りの緩急はしっかりと意識されている。こうして様々な恋愛相談が、次々と行われていった。

そう言えばVtuberらしい挨拶を書いた事が無かったなと思って入れてみました。

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