表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/306

第177話 園田マリアの歌枠①

 5月も終わりが見え始めた頃、園田(そのだ)マリアの歌ってみた企画が行われていた。よく歌枠と呼ばれている配信形態で、これまでに何度も行われて来た。

 選曲は美佳子(みかこ)が予め決める場合と、リスナーからのリクエストに答え続ける場合の2パターンが基本だ。

 同時に両方やる事もあり、絶対的なルールは無い。今回は最初の数曲だけが美佳子のチョイスで、それ以降はリスナーのリクエスト枠となっている。

 本日の美佳子のチョイスは、洋楽が1曲と最新アニメのOP曲が3曲だ。美佳子は洋楽を好んで聴くタイプであり、布教活動も兼ねている。

 今回選んだのは、アメリカで歌姫と呼ばれている超大物女性アーティストの曲だった。


「ちょっと古かったけど、有名だし10代でも聴いた事あるんじゃない?」


『有名だけど、10代にこの曲分かるか?』

『学校の授業で映画観たよ』

『授業で観るマ?

『マジか』

『時代の流れってやつか』


 美佳子が選んだ洋楽は、昔の有名な映画でテーマソングに選ばれた曲でもある。当時を知る人であれば誰もが一度は聴いた事がある名曲だ。

 そして世界的に有名な作品を道徳などの授業で観る事は珍しくなく、今回の映画もどうやらそうだったらしい。

 沈没する豪華客船をテーマにした映画で、30年近く前の作品だが今も映画界では有名だ。最近リメイクが出るとの噂もあり、そんな事情を考慮した選曲だった。

 美佳子の地声は少し低めで、声楽においてはアルトに分類される。低めで格好いい歌声が、リスナー達から支持されていた。

 彼女はボイストレーニングを受けているので、歌はそれなりに上手い。歌枠を主力にやっていける程の実力ではないが、50万再生を超えた動画が幾つもある。


「よし、じゃあ次は新しいガンガルのOP曲だよ~」


『これを聴きに来た』

『新しいヤツ面白いの?』

『絶対観た方が良い』

『クソおもろいで』

『出たガンガルおじさん達だ』


 日本発のSFロボット作品の最新作、そのOP曲は発表されるなり物凄い勢いで再生数が跳ね上がった新曲だ。

 非常に有名なシリーズであり、初代ガンガルは1980年代に放映が始まって以降新作が定期的に放映される。

 人気の高い作品は劇場版も出る事があり、日本国内だけでなく海外でも放映される程に知名度は高い。

 ただ初代からずっと追い続けているファン達は大体が40~50代であり、ネット上ではガンガルおじさんと呼ばれている。


 基本的にファン層の年齢が高めである為、おじさん扱いされるのは仕方ない面もある。息の長いシリーズでは良くある現象だ。

 ただここ数年は若い世代のファンも獲得しているので、必ずしもファンがイコールおじさんとは限らない。

 年齢性別を問わず、幅広い層に人気があるアニメだ。ただ歌い終わるまで盛り上がっていたのは、確かにおじさん達ではあるが。


「ふう、どうだった? ボク的にはそこそこ自信あるんだけど」


『初代のリメイクとしては完璧よな』

『いやでもあの改変はちょっとな』

『時代に合わせる必要はあるだろ』

『声優の変更が受け入れられない』

『おじさん達ガンガルの話しかしてなくて草』


 新作が出る度にガンガルおじさん達の議論が巻き起こるのは定番である。とは言え今はガンガルトーク回ではないので、その辺にしなよと美佳子から警告が出た。

 それからはコメント欄も通常通りに戻って配信が続いていく。少年誌の人気作と、少し前に流行ったアイドルアニメの曲を歌い終わってリクエスト枠に入る。

 リスナー達のリクエストをコメント欄で募りながら、休憩も兼ねて美佳子は雑談へと移行する。

 歌の感想や投げ銭に対して反応を返しながら、採用出来る曲を探しておく。音源がある曲は歌えるけれど、所持していない曲は歌う事が出来ないからだ。


「あぁ~ごめん、『オリオン』はまだ音源が無いんだよね」


『あら残念』

『まあ出たばっかやし』

『でも聴きたかったなぁ』

『次回に期待やね』

『楽しみが増えたと思えば良し』


 今美佳子が挙げた曲は、2日前にインターネット上に投稿された素人のオリジナル曲だった。正式名はバーチャルボーカルで、バチャボと称されて音楽ジャンルだ。

 機械音声で曲を歌わせるDTMの一種で、10年以上の歴史を持つネット文化の1つだ。

 初心者でも音楽を作って歌わせる事が出来る点が大ヒットを呼び、今では当たり前の様に受け入れられている。


 ただ初期費用がそれなりに必要なので、無料で始める事が出来ない分一定のハードルは存在しているが。

 必要経費については、Vtuberも良く似た存在と言えるかも知れない。インターネットが出来てから、色々な文化が生まれた。

 その中でもこの二つは大きな成功を収めている実例だ。投稿した曲がCDになったりプロになった人が沢山居る。


「OK一旦ここまでにしよっか。今からリスト作るね~」


『ワクワク』

『さあ何が来るか』

『おじさん的には90年代が欲しい』

『パンク系頼む』

『マリアは意外と渋いとこ行くからなぁ』


 選曲に期待するリスナー達がコメントで話し合う中で、これ以降に歌う曲のリストが公開された。

 かなりジャンルがバラバラで、様々な反応が見られた。結構古いアニメの曲から、最近の洋ロックまであり統一感はない。

 それだけリスナーの層が幅広いという事でもある。男女半々のリスナーを獲得しているだけはあった。


 選曲リストの更新後も美佳子の歌が披露されて行き、楽しい時間が過ぎて行った。配信を観ていた咲人(さきと)は、そう言えば2人でカラオケに全然行かないなと気付いた。

 行っていない理由は簡単で、こうして園田マリアのチャンネルを観れば美佳子の歌声をいつでも聞けるからだ。

 ただそれはそれとして、生で歌を聴いてみたから今度カラオケに誘おうと心に決める咲人であった。

ネーミングセンスが無いんですよねぇ。オシャレなルビが付く技名とか超絶苦手です。

それとオリオンは元ネタが無いです。ポンと思い付いただけのそれっぽい単語という雑さ。


にしてもジオンに寝取られてゲルググと名付けられたジムの尊厳破壊は凄かったですね。連邦軍の技術者達、脳を破壊されてそう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ガンガルが何か分からなかったのに作者さんのあとがきで分かっちゃったww なんでそこで分かるんだろww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ