第170話 園田マリアのゲーム配信⑦
GWを目前に控えた日曜のお昼過ぎ、園田マリアのゲーム配信が行われている。咲人が作ったお昼ご飯を食べた美佳子は、今日も絶好調で進めている。
今プレイしているのは最近VB全体で配信を始めた、共同のサーバーを使い拠点を作るタイプのサバイバルクラフトゲームだ。
本作は絵柄がリアル寄りの作品で、モンスターを使役する事が出来るタイプのゲームシステムをしている。
このジャンルは様々な作品が出ており、ゾンビアポカリプスであったり宇宙の生物と戦ったりする作品もある。
今回プレイしているのは戦闘要素こそあるものの、ゲーム自体はそこまで難しく作られてはいない。だから雑談もしながら配信するのに向いている。
「そろそろ武器を新調したい所だよねぇ~~」
『地雷増やそうよ』
『やっぱロケランやろ』
『アサルトライフルのカスタムはー?』
『ここは刀やで。侍プレイや』
『防衛用にタレット作らん?』
様々な銃火器を作る事が出来るゲームで、戦闘スタイルは様々なスタイルを選べる。
頑なに近接一辺倒でも良いし、ひたすら遠距離で戦っても良い。使役したモンスターを戦闘の主軸に置く方法もあるし、武装させた大型モンスターに騎乗しても良い。
わりと自由度が高いので、プレイヤーによって戦い方は様々だ。美佳子が良く使っている戦法は、飛行系のモンスターに乗って上空から狙撃だ。
絵面が地味ではあるけれど、なまじ美佳子の狙撃スキルが高いので十分な撮れ高は担保されている。スマートな狙撃を出来る人のプレイは、観ていて中々飽き難い。
「うちのこなたちゃんが前衛系だしな~~近接はまだこのままで良いかな」
『こなたちゃん、歌うま系なのに戦闘スタイルが野蛮過ぎる』
『美しい京都弁から繰り出される脳筋パワープレイ』
『VBのギャング枠』
『裏社会系のゲームが似合い過ぎる女』
『あれはもうホンモノやろ』
美佳子が運営するVB所属の京美人キャラクター、寺町こなたは歌が主に人気のVtuberである。
少々毒舌気味な京都弁で話す女の子だが、主にアクションゲームのプレイスタイルが脳筋である事でも有名だ。
あまりにも流暢な京都弁で悪態をつくので、ファンの間では実家がヤのつく自由業なのではと疑われている。
もちろんただの内輪ネタではあるのだが、実際に演者である稲森美桜の実家は結構太い。
故に彼女の昔のエピソード等から、本当に組長の娘なのでは? と本気で疑っているファンも中には居る。
園田マリアも大概なキャラクター性をしているが、そんな彼女の下に集まった子達もまた癖が強い。
だがそれら全ては、美佳子が事務所を立ち上げる程に人気が出たからこそ起きた事だ。いつ消えても不思議ではない、弱小Vの時代は当然あった。
「そうそう、この前彼氏がさ~~ボクの古参勢にリアルで会ったらしくてさ。初期の泥酔耐久配信とか懐かしい企画を思い出したよ」
『なっつwww』
『あれ何年前? 7年ぐらいか?』
『8年じゃね? 最初期だろアレ』
『最古参じゃん』
『一番滅茶苦茶をしていた頃だよなぁ』
最初は個人勢Vtuberとして始めた美佳子は、認知度を上げる為に結構な無茶をしていた。
清楚な見た目からは大きく離れた暴れ具合に、当初は良い意味でも悪い意味でも有名だった。
泥酔して放送事故なんて当たり前で、やり過ぎてアカウントがBANされかけた事も何度かある。
酔って全裸のまま配信し、あまつさえそのままリアルの姿を配信に乗せ掛けたのは伝説の1つだ。
色々と尖った事をしていた頃でもあり、最初の3年程は無茶で過激な配信も多くあったのだ。
今ではもう殆ど行っていないけれど、昔の美佳子は基本的に泥酔状態である事が多かった。
「あの頃は色々やったよねぇ。流石に30過ぎてアレはもう……いやボクは20歳のシスターだけどね」
『設定上の話ね』
『園田マリアさんじゅうにさい』
『若くて羨ましいなぁ(棒)』
『20年前に小6だった20歳だぞ』
『昔ガラケーを持っていた20歳? 妙だな?』
美佳子とて結婚願望があり、出来たら子供だって欲しいと思っている。流石にいつまでも過激で不健康な配信を続けるのは難しい。
かつてはカップ焼きそばのギガ盛りを食べてみたり、チェーン店の牛丼爆食いをやったりした。若いから出来ていた事でもあるし、健康面にも影響は出なかった。
だがそれらの企画は、30歳を過ぎてまでやるのは中々厳しいところだ。特に食事については、20代後半から食べられる量が落ちて来る。
30歳を過ぎると明らかに、10代の頃と比べて食べられる量が減っている。個人差はあれど、油ものや濃い味のものが沢山食べられなくなっていく。
そう言う意味でも方針変換をするしか無かったし、何よりいつまでも受けるやり方ではない。
「あの頃からずっと、ファンクラブ登録を続けてくれている人達は有難いねって話だよ。もちろんそうじゃない人達もありがとうね」
『ええんやで』
『ファン歴8年生は凄いよなぁ。俺はまだ2年生だよ』
『少々浮気しても、結局ここに戻って来るんよ』
『VBは居心地が良いよね』
『変な荒れ方をしないからな』
装備を新調する為の素材集めや中間素材のクラフトを進めつつ、これまでの活動を振り返る美佳子とリスナー達。
咲人の報告が切っ掛けとなり、懐かしい話が続々と出て来てはファンと共に盛り上がっていた。
これまでに築いて来た美佳子とリスナー達の歴史が、改めて思い出されて和やかな空気が広がっている。
いつになく穏やかで明るい雰囲気を保ちつつ、園田マリアの配信は続いていく。
かつての美佳子のスタイルは、2019年とか2020年ぐらいまでのVtuber界隈を参考にしております。
それから昔のニコ生辺りですかね。




