第159話 園田マリアのゲーム配信⑥
世界中の人々が新しい生活を始める4月。入学式や入社式が全国的に行われ、ニュースでも取り上げられた。
温かい陽気に包まれ、あちこちで桜の花が咲き始めて間もない初旬頃、園田マリアのゲーム配信が始まった。
今回は人気RPGシリーズの最新作、『アリアの研究所』という複数のプラットフォームで展開している作品だ。
研究シリーズという20年以上の歴史を持つタイトルであり、研究と冒険を並行して行うゲームとなっている。
難易度はそれ程高くはなく、お手軽に遊べる所が人気の理由だ。今回の配信は企業案件であり、制作会社から直接提供されている。
主人公のアリアとマリアの語感が似ているから、と言うわりと安直な理由で選ばれたのは秘密である。
「皆の新生活はどんな感じ~? ボクはもちろん殆ど変わってないよ」
『クラス替えがマジで終わってる』
『社会人デビューしたよ!』
『上司が良い人で助かった』
『子供が小学生になったよ』
『隣人ガチャ外れた』
新しい年度が始まって、人それぞれ生活に変化が出ている。進学したり就職したり、新居に移り住んだり昇進したり。
色々な変化が訪れた人も居れば、そうでは無い人も居る。リスナー達の新生活について、様々な報告がコメントとして画面を流れていく。
学生から大人まで、年齢層が幅広い事は見るだけで分かる。それぞれのコメントについて反応したり、応援したりしつつ美佳子はオープニングトークを終わらせる。
早速ゲームの説明に移り、あらすじ等を紹介する。案件である為に、単に実況するだけではなくPRもしっかりと行う。
それから中盤以降のストーリーが、まだ配信制限がされているので途中までになる事も伝える。
『配信に制限があるから、そこまでにはなっちゃうんだ。残りは解除されてからだね』
『えぇ~残念』
『まあRPGやしな』
『しゃーないしゃーない』
『本来買わないと見られないものだし』
『ネタバレ配慮してくれるの助かる』
ゲーム実況がこの世に生まれてから、その行い自体を批判する人々が減らない。彼らは自分で買ってやるべきだと意見を述べる。
対して宣伝効果があるだろうと、反論する人々もいる。そんな議論は今もされており、どりらが正しいのかはハッキリしていない。
ただ販売する側もある程度は認めており、条件を付けて許可している会社が殆どだ。こんな風に会社側が人気配信者に案件として発注する場合もある。
インディーズだと自由にどうぞと全面的に許可する人も居るが、大手企業はそうもいかない。
特にシナリオが売りのRPGやノベルゲームは一定の期間、配信しても良い範囲を予め決めている。
「この子がアリアちゃんです。可愛いねぇ~元気系の女の子だ」
「かわよ」
「エッッッ」
「デッッッ」
「デカーい! 説明不要!」
「あ、この声優さん聞いた事ある。誰だっけ?」
ゲームが始まり主人公のアリアが生まれ育った街を歩いていた。アリアのモノローグと共に映像は進んでいく。
ムービーの中で街の人々とアリアの交流が描かれ、どの様な評価を受けていてどんな女の子かが分かる。
アリアは少々お転婆な所があり、元気で明るい女の子だ。ただ特徴的なキャラクターザインをしており、控えめに言って少々胸が大きめである。
最近ではその様なキャラクターはそれ程珍しくはないので、特筆する程ではないが目には付く。
おまけにゲーム内ではしっかり揺れる仕様であった。少なくとも男性受けは良さそうな主人公だ。
「君達さぁ~~すぐおっぱいばっかり見るよね。ちゃんと可愛い顔も見てあげてよ」
『だって胸がそこにあるから!』
『男の性なんや許して』
『ちょっと男子ぃ~』
『ワイは貧乳派なんで』
『とりあえず水着に着替えさせよ?』
大きな胸には夢が詰まっている。そんな風に言われる事もある女性の胸のサイズ。昨今ではやや過剰な表現も増えており、奇乳だと嫌う人も中には居る。
逆に極端な大きさでないと満足出来ない人もおり、言い方次第では戦争もかくやと言う非常にデリケートな問題だ。
好みの問題として、この議論は長い歴史を持つ。こんな事で議論になるのを悲しむべきか笑うべきか。
意外と女性でも異様に胸が大きなデザインであっても、寛容な人も居るのが不思議な話ではある。
むしろ女性のクリエイターが、意図的にそう書く場合もあるぐらいだ。最近は胸以外にも太股で似た論争が起きるケースもある。
「こらこら~おっぱいのサイズで議論しないの。ゲームに集中してよね」
『さーせん』
『盛り上がり過ぎやろお前らwww』
『人は争う生き物なんやなって』
『キノコとたけのこに匹敵する火種』
『ワイはちゃんと見てました』
議論が始まると異様に盛り上がる胸のサイズ論争。しかしそれもマリアの静止によって終了となる。
以降はリスナー達も、ゲームに関するコメントばかりに変わる。特に最新作として申し分ないグラフィックと、新しくなった戦闘システムが主に注目を集める。
程よいテンポと明るいストーリーも合わさって、1万人以上も居るリスナー達の反応は良い。
結構な人数の興味を集める事に成功し、企業案件としては十分な役目を果たせたと言って良いだろう。
配信終盤になっても相変わらず胸の揺れに魅了されているリスナー達がおり、マリアが意図的に揺らす事で滅茶苦茶盛り上がった。
これで良いのかとも思わなくもないが、揺れる仕様に作ってあるのだから多分良いのだろう。
本日もいつもの様に、楽しい時間が過ぎて行った。なおこの配信の翌日に、咲人もやっぱり大きい胸が好きなの? と聞かれる事になり流れ弾に被弾したという。
( ゜∀゜)o彡゜おっぱい!おっぱい!




