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第123話 園田マリアのゲーム配信④

 咲人(さきと)が修学旅行に行っている頃、いつも通り美佳子(みかこ)園田(そのだ)マリアとしての配信を行っていた。

 本日は海外の有名なFPSシリーズを視聴者参加型で配信していた。ウォーフォールドと名付けられたシリーズの最新作だ。

 60対60人の大規模バトルを行えるのが特徴である。視聴者の中から一度に59人も参戦出来るのが、この作品における大きなメリットとなっている。

 このシリーズでは戦車や戦闘機など、乗り物が豊富なのも人気の理由である。ただしその分、プレイヤースキルも要求される敷居の高さも孕んでいる。


「さ~今日も戦争だ~! 皆行くよ~」


『FPSニキがんばえ~』

『良く考えたらシスターのやるゲームじゃなくね?w』

『今更だけどシスターって設定忘れそうになる』

『まあほら、そんな作品だってあるし』

『マシンガンをぶっぱするシスターって何か良くない?』


 本人の私生活と言動がアレ過ぎて忘れられそうになるが、園田マリアはシスターと言う設定である。

 真っ白な髪に清純派なビジュアルだが、中身は破戒僧そのものだ。そのギャップがあるからこそ受けているので、世の中何が人気を得るか分からないものだ。

 さてそんな園田マリアの中の人、美佳子の腕前はと言えば結構上手い。昨今ではFPSをプレイする女性ユーザーや、配信者が非常に多い。

 一昔前を思えば、有り得なかった現象が起きている。ユーザーの殆どが男性であった時代は終わり、今ではFPSが切っ掛けで交際が始まる事だってあるのだ。


「よ~し皆行け~! バンバン前に出るよ~」


『相変わらず画面が凄い』

『120人対戦はすげぇよな』

『これで処理落ちしないんだよなぁ』

『バグはちょいちょいあるけどな』

『良くやれるよなぁ、こんな大規模バトル』


 60人対60人という滅多にない大規模な戦いである為、画面内で起きる戦闘は非常に迫力がある。

 初期配置にいる間はそうでもないが、戦闘ヘリや戦車などが使われ始めるとあちこちで爆発が起きる。

 もっともスタートの時点で60人も一堂に会するので、人の多さと言う意味でも十分な濃さだ。

 最近流行りの少人数でチームを組む作品とは異なり、このわちゃわちゃとした絵面が人気の1つだ。

 3人や6人等のチーム制FPSにはない、独特の映像を視る事が出来る。それもあって、自分ではプレイしない視聴者でも楽しむ事が可能だ。


「誰かヘリ取った~? 空から狙撃したいんだけど」


『このゲーム、航空機の操縦ムズイんよな』

『俺は慣れなくて辞めたわ』

『乗り物が使いこなせないとなぁ』

『WFは歩兵戦だけのゲームじゃないからね』

『戦車は漢のロマンや。なお対空』


 様々な兵器がゲーム内に登場するので、ゲームが進行するにつれて激化していく。戦車砲やミサイルが飛び交う正に戦争と言うべき戦いだ。

 それ故に普通のFPSとはかなり勝手が違うので、合う合わないがハッキリと出てしまう。

 単なる射撃の腕だけでは全てが決まらず、如何に乗り物を上手く使いこなすかが重要である。


 そこが他の作品とは明確に差別化されており、銃火器の撃ち合いと言うより現代兵器戦だ。

 昔から様々な戦争をテーマに置いたシリーズである為、この様なゲーム内容となっている。

 昔からのファンからは概ね好評であるが、FPSに触れたばかりのユーザーからはやや不評であった。


「あ! 向こうもヘリだ! 撃ち落とせ~!!」


『的確にパイロット狙撃してて草』

『何で今の当たるんwww』

『ちょいちょい上手いの笑う』

『この酔っ払い狙撃はうめぇのよな』

『退役して教会に居る酒浸りになってた歴戦の猛者感』


 美佳子が主に得意とするのは遠距離からの狙撃である。FPSの配信ではその才能を発揮して、視聴者を驚かせて来た。

 アルコールが入っている時の方が上手いと言う、これまたネタ感の強さも相まって良く切り抜かれている。

 異様に上手い女性配信者として、FPS界で話題になった事もあった。酔っ払いなのに強いと言う点が、一定の需要を生んでいる。

 これを観たくて配信に来ているファンも多い。やはり酔っ払いキャラが強者であるパターンは、ある種の王道として人気があるのだ。


「よーし、次々~! 進軍開始~!」


『マリアも凄いけどヘリの人も上手くね?』

『確かに。ヘリニキ凄い』

『操作難しいのに良くやるよ』

『野生のプロおる?』

『マリアの配信って凄い人多いよなぁ』


 それからもマリアのチームは快進撃を続けた。もちろん常勝とまでは行かず、勝ったり負けたりの繰り返しだ。

 一方的に勝ち続ける事なんて不可能であり、メンバーだって一戦ごとに入れ替わるのだから。

 そもそも勝利を目指して集まったプロチームではなく、皆で遊ぼうと言うだけの企画だ。

 ゲーム自体の敷居の高さから、この作品で視聴者参加型は珍しく、参加を希望するプレイヤーが沢山集まった。


 普段はマリアの配信を観ない人からも注目され、今回の配信も最後まで盛り上がりを見せた。

 特にマリアの腕前に興味を持ったらしいFPSユーザーから、ファンになった人々が更に増えたのは大きな成果だ。

 そして盛り上がったと言う事は、その分美佳子のアルコールも進んだと言う事である。

 ホテルのベッドに入って、密かに配信を観ていた咲人は遠く離れた長野の地で頭を抱えていた。

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