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第122話 2日目の朝と朝食

 スキー教室初日は楽しく過ごす事が出来たし、特にこれと言って大きなトラブルは無かった。

 夜にまた盛り上がってしまい、巡回していた阿坂(あさか)先生に見咎められたぐらいか。ただそれでもやっぱり疲れていたのか、気付けば朝になっていた。

 念のため美佳子(みかこ)さんに朝ごはんをちゃんと食べる様にと、挨拶も兼ねてメッセージを送信しておく。

 放っておくと食事のタイミングをバラバラにしてしまうし、食べずに済ます事もある。それは健康に良くないので、たった5日間だけとは言っても気には掛かる。

 ある程度は日持ちする料理を作っておいたけど、明後日には足りなくなるだろう。美佳子さんとメッセージを交わしていたら、一哉(かずや)が俺達の部屋にやって来た。


「うーっす! お前ら、食堂行こぜ」


「着替えるからちょっと待ってくれ」


「早くしてくれよ」


 ホテルの部屋は出席番号順である為、俺と一哉は別の部屋だ。姓が(あずま)の俺は出席番号が1番で、坂井(さかい)の一哉は10番である。

 各部屋に3人ずつであり、一哉とは結構部屋が離れている。幸いにも苗字が安達(あだち)慎吾(しんご)が同室なのが幸いか。

 まだ寝ている慎吾を起こして、着替えたり洗顔をしたり。10分程で用意が終わった俺達は、ぞろぞろとホテルの食堂へ向かう。


 途中で合流した雄也(ゆうや)陽介(ようすけ)達と適当な席に座る。ホテルの朝食はバイキング形式で、朝から結構ガッツリと料理が用意されている。

 幾ら料理が出来る俺でも、この量を朝から作るのは不可能だ。ホテルの料理人さん達に敬意を払いつつ、好みに合った料理を選んで行く。

 もし料理人になる未来を選んだら、こうしてホテルで働く道もあるんだよな。そんな事を考えながら、朝食が載せられたトレーを持って席に戻る。


「一哉お前、朝から食べ過ぎじゃないか?」


「大丈夫だって、朝からガッツリ運動するんだから」


「スキー場のトイレって、結構込むぞ?」


 俺もそれなりの量を選びはしたけれど、ある程度は加減している。中途半端な位置でトイレに行きたくなったら結構大変だからだ。

 夏の海やプールと違って、あちこちにトイレはない。雪山で腹痛に襲われたら地獄である。

 最悪夏場なら茂みに入って、と言う選択もあるが今は真冬だ。極寒の中でトイレを済ますのは遠慮させて頂きたい。

 分かっているのか分かっていないのか、どうにも分からないが一哉はモリモリと食っている。

 気持ちは分かるんだけどね。朝からホテルのバイキングなんて、学生には十分豪華な食事だ。


「このカレーお美味しいなぁ。作り方が知りたい」


咲人(さきと)ってそれ良く言うよな」


「そりゃあね。自分で料理するし」


 友人達と外食している時でも、レシピや味付けが気になる事がある。特に今回はホテルの料理が沢山並んでいるんだ。

 純粋に知りたいと思う気持ちは強い。家庭料理より少し進んだ先、そこにある物を試してみたい。

 例えばこのカレーだって、きっとスパイスから作っている筈だ。俺はまだその領域に至れていない。


 気にはなっているけれど、どうにも思い切れない。ターメリックを追加する程度のアレンジならやった事があるけど。

 こうしてホテルのカレーに刺激されたのも良い機会と思うべきか? 帰ったらスパイスカレーに挑戦してみるのも良いかもしれない。

 寒い時期だし、美佳子さんも喜んでくれるかな? 純粋にレパートリーを増やす意味でもプラスになるだろうし。


「……きと……おい、咲人!」


「え、あ、ごめん。カレーのレシピについて考えてた」


「スキー場に来てカレーの作り方を考えるのはお前ぐらいだよ」


 ついホテルのカレーに集中していたら、呼ばれていた事に気付けなかった。一哉達は今日1日をどんなプランで動くか話がしたかったらしい。

 1日目で初心者を脱出した友人達は、中級者コースまでは滑れている。ただ2日目の朝から上級者コースに行くのは少々不安な気もする。

 午前中はまだ昨日の復習に留め、午後から上級者コースに挑戦するのが無難ではないだろうか。

 うちの班は皆優秀なので、多分大丈夫だけど念には念を。まだ2日目なのに朝から無理をする必要はない。

 下手に怪我をしない様にする意味でも、しっかりと段階を踏んだ方が良いだろう。


「いきなり上級者コースも悪くはないけど、まあまあ危険だしさ」


「え~俺らなら大丈夫じゃね?」


「女子がどうかまだ分からないだろ。速攻上級者コースは不安に思うだろうし」


 そりゃあ俺達男子組は、このまま勢いだけで上級者コースに挑めてしまうだろう。だけどそれは俺達だからであって、澤井(さわい)さん達女子組はそうでは無い筈だ。

 気合と根性と、その場のノリだけで生きてはいない。男子のノリは、女子から見たら勢いに任せ過ぎに見えるだろう。

 そんな話合いをしていたら、澤井さん達も遅れて食堂にやって来た。丁度良いタイミングだったので、近くのテーブルに座った女子達と相談を始める。


 いざ聞いてみれば、やっぱり朝から上級者コースは渋っている。結局俺を含む経験者組が手厚くフォローをする前提で、午後から上級者コースに行く事が決まった。

 本音を言えば俺も沢山滑りたいと言う気持ちはある。皆に教えるのも悪くはないけど、一気に上から滑り降りる爽快感を楽しみたい。

 あの楽しさを皆にも知って貰う為に、今日もしっかり教えよう。こうして修学旅行2日目の朝は過ぎていった。

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