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第120話 いざ修学旅行へ

 待ちに待った修学旅行が始まった。俺達は観光バスに乗って長野県のスキー場へと向かっている。

 小学生の時も中学生の時もそうだったけど、何だかんだ言ってこの移動時間も楽しかったりする。

 出発する時は決められた座席に座っているけど、いざバスが走り出したら仲の良い友人達と集まるのは恒例である。

 俺は一哉(かずや)雄也(ゆうや)、そして陽介(ようすけ)慎吾(しんご)の体育会系5人組で集まっていた。今はスマートフォンで遊べるトランプのアプリで対戦中だ。


咲人(さきと)、お前はどうよ?」


「まあまあだよ」


「ホントかぁ?」


 現在はポーカーで遊んでいる。トランプを使用する様々なゲームを遊べるのが特徴のアプリで、ババ抜きや七並べ等ポピュラーな物が揃っている。

 ただこのアプリではテキサスホールデムと言う、普通のポーカーとはルールが違うポーカーが採用されている。

 手札を5枚配られるのが通常のポーカーだが、このルールでは手札は2枚しか配られない。

 そして場に5枚のトランプが配置されており、手札2枚と場の5枚から役を作ると言うルールだ。

 日本ではあまり有名ではないルールだったからこそ、このアプリが出た時に結構な人気が出た。


「咲人って勝負事になると表情に出ないから厄介なんだよ」


「そうでもないと思うけど」


「いや、一哉の言う通りだ」


 雄也にも指摘されたが、相手に内心を悟らせないのは勝負事の基本だ。そう思われているのであれば、成功していると言える。

 と素直に言えれば格好いいのだろうけど、実際は別に理由がある。これまでの美佳子(みかこ)さんとの生活で、平静を装う技術が身に着いただけだ。

 初期の頃から当たり前の様に、下着があちこちに散らばっていたのだ。そんな環境でもポーカーフェイスを貫くのは非常に困難を極めた。

 決して下心は無いのだと、自分に言い聞かせて来た日々の集大成だ。こんな下らない理由を人前で披露する勇気はない。


「それよりほら、進ませるぞ」


「急かすなって咲人」


「いや普通にターン終わらせろよ」


 テキサスホールデムは、少し特殊なルールをしている。場のカードは5枚の内、最初は3枚しか表向きになっていない。

 つまり最初は手札と合わせて5枚しかないのと同じだ。ここから賭けるか降りるかを決めて行く。

 最初のベットが終わると、4枚目が公開される。この段階で役無しなら、結構厳しい状況だ。

 不安ならこの段階で降りておくのも1つの手だろう。更なるベットが行われると、最後のターンになり5枚目が公開される。


 ここで最終的に作れる役が確定するのだが、難しいのはテキサスホールデムの特殊性だ。

 例え役無しでも、最後の1人になれば総取りとなるのだ。つまりブラフで自分以外の全員を降ろす事が出来た場合も勝者となれる。

 見えている5枚とリアクションが重要で、通常のポーカーよりも心理戦の要素が濃いゲームだ。


「レイズ」


「おいおい咲人、強気で来たな」


「まあね」


 一哉達が俺の方を見ながら悩んでいる。俺がこのゲームに強気であるのはもう一つ理由がある。

 それはこのアプリが美佳子さんの運営するVtuber事務所、VB(ブイビー)ことVirtual(ヴァーチャル) Box(ボックス)とコラボをしたアプリだからだ。

 コラボは夏休み中に行われたので、美佳子さんのキャラである園田(そのだ)マリアのアバターを入手するまで必死に頑張った。

 だからこのアプリに入っているゲームは全てやり込んでおり、大半のゲームに慣れてしまっている。

 ただ俺と美佳子さんの関係がバレてしまわない様に、皆の前では厳つい男性のアバターを使用しているけれど。学校では結構流行っているから油断は禁物だ。


「フルハウス」


「はぁっ!? ハッタリじゃないのかよ!」


「騙されたーーー!!」


「咲人うめぇわこのゲーム」


 伊達にやり込んでないからな。シンプルに面白かったのもあるけど、やっぱり園田マリアのアバターは持っておきたかった。

 配信者を恋人に持つ人が皆こうなのか分からないけど、少なくとも俺は全力で取りに行った。

 試合をしまくって石を貯めて、ガチャを何度も回した。そのお陰でどのゲームで勝負をするとなっても、そう簡単には負ける気がしない。

 流石にプロ相手に勝てる自信は無いけれど、学生としてはそこそこ強いつもりだ。まあ異常なまでに強い、美佳子さんには惨敗しているけど。


「なあ一哉、最下位はデコピンって決めたのはお前だったよな?」


「ちくしょーーー!」


「大人しく食らえ」


 この負けたらデコピンだとか、何らかの罰ゲームを設けるのは男子特有らしい。美佳子さんに聞いたら、そんな事はやった事がないと言っていた。

 澤井さん達もやらないと言っていたな。確かにちょっと子供っぽい気もするけれど、俺はこうやってワイワイ楽しく遊ぶのが好きだ。

 特にこんな風に本来なら退屈なだけの筈の移動時間を、楽しい想い出に出来るのが良い所だ。


 その後も俺達は遊ぶゲームを変えながら、勝ったり負けたりを繰り返しながら騒いでいた。

 白熱の勝負が繰り返される内に、今が移動時間である事を忘れる程に俺達は盛り上がった。

 流石にテンションが上がり過ぎたせいか、途中で担任教師の関谷先生にもう少し静かにしろと怒られた。

 その点については反省をしたけど、やっぱり友達と過ごす時間は楽しいものだと改めて思った。

男子高校生、しっぺとかデコピンとかやりがち

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