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第118話 2学期の期末テスト

117話の冒頭で、時間軸に関する記述が抜けていたので昨日中に追加しています。班決め→予選通過が11月中旬の出来事です。

 修学旅行にクリスマス、年末年始とイベントがもう直ぐ纏めてやって来る。しかしそんな楽しい数々のイベントの前に、先ず期末テストをクリアせねばならない。

 11月の終わりに、俺達生徒は揃ってテストを受けている。現在は現代文のテストを終わらせたばかり。休み時間に入って一哉(かずや)と雑談をしている。


「で、咲人(さきと)はどうだった?」


「何とか解けたかな。でも自信はないよ」


「ははは! 俺達は勉強に力入れるタイプじゃねぇしな」


 一哉も俺もスポーツ推薦で入学した者同士でしかない。座学の方はそれ程得意ではなかった。

 流石にどの教科も赤点と言う程に酷くはないが、平凡な出来上がりでしかない。一哉も俺と同じく、大学もスポーツ推薦を狙っている。

 幸いにもお互いにそれぞれの得意分野で好成績を残せている。部活動を辞めたりしない限りは十分狙える範囲だ。

 特にウチは父子家庭であり、共働きの家庭とは違う。塾や家庭教師のお世話になるよりも、陸上の成績で進学する方が金銭的な負担も少ない。

 もちろんその分、陸上部で頑張り続ける必要はあるけど。何の苦労も無しに推薦が貰えるとは思っていない。


「次は数学かよぉ~。だりぃよなぁ」


「本当にな。将来使わないのにさ」


「それな。いつ使うんだよ」


 学者とか目指すのなら必要なのかも知れない。ITエンジニアとか、建築業とかでも使うんだったか?

 生憎俺も一哉も、それらの職業を目指すつもりはない。典型的な体育会系でしかない俺達には、通常の授業にあまり意味は無い。

 まだ完全に将来を決めた訳じゃないけど、英語だけは出来て損はないってぐらいだろうか。


 長距離ランナーとしては、世界陸上は夢のある舞台だ。そこで英語が出来ないよりは出来た方が良い。

 まあ出場する為には先ず選手に選ばれないと意味がないから、今から考えても仕方がないのだけれど。

 そんな会話をしていたら、比較的に席が近い雄也(ゆうや)が声を掛けて来た。


「何だよお前ら、もう諦めムードか?」


「バカちげぇよ。面倒だって話していただけだ」


「そうそう。俺達だって諦めてはいない」


 テストを諦めてしまう程に、俺達の成績は悪くはない。どこまも平凡な領域にいるだけだ。

 対して雄也は、勉強も出来るタイプだ。サッカー部で明るくて、勉強も出来る男前。これでモテない筈がない。

 だから河田(かわだ)さんとの色恋話が出て来たりするんだよな。ぶっちゃけそこだけは羨ましいと思っている。

 モテるのは大変だろうけど、勉強が出来るのは良い事だ。俺だって出来ないよりは出来た方が良いのは理解している。

 だけど今更勉強に時間を必要以上に掛けたくはない。その分をトレーニングに使いたいし、美佳子(みかこ)さんとの時間も大事だ。何よりも、頭の出来は今更変わらない。


「じゃあ勝負するか?」


「却下だ。宮下(みやした)が勝つって分かってるだろ」


「そうだぞ雄也、勝負として公平じゃない」


 俺と一哉は大体7割8割と言った点数で落ち着くだろう。だが雄也は確実に9割を取っていく。これではまともな勝負にならない。

 誰が勝つか分からないからこそ、勝負として面白いのだ。最初から勝敗が分かっていては興醒めだ。

 そんなのは賭けとしても成立していない。俺達の抗議で勝負は不成立となり、ただの雑談に戻る。

 そう言えば、もうすぐ1年が終わるんだよな。中学を卒業して、高校生になって、美佳子さんと出会った。

 友人達とこうして何気ない日々を送って来たけれど、入学からもう半年以上も経っているんだよな。


「あっやべ、シャー芯がない。咲人、貰ってもいい?」


「雄也お前、また忘れたのかよ」


「悪い悪い」


 こんな気安いやり取りをする様になり、これまで目立った諍いも無く当たり前の様に高校生活に馴染んでいる。

 高校生になったら、大人になると昔は思っていた。だけど自分がなってみたら、案外そうでも無かった。

 中学と同じで、授業を受けてこんな風にテストを受ける。日々の生活にそれほど大きな変化は結局無かった。

 恋人が出来たという違いこそ有るものの、学校での暮らしは似た様なものだ。全く同じではなけれど、大人になった気は特にしない。

 小学生の時に中学生が大人に見えたのと何も変わらない。俺はやっぱり、まだ子供のままだ。


「サンキュー咲人」


「明日は忘れるなよ」


「お、チャイム鳴ったか。じゃあ後でな咲人」


 一哉と雄也が前を向き、関谷(せきや)先生が教室に入って来た。これからは数学のテストが始まる。

 2学期の期末テストが終わったら、その後に待っているのは進級だ。楽しいイベントも間に挟まるけれど、そろそろ俺もどんな進路を歩むか決めないといけない。

 一応進学はするけれど、その先をどうするかはまだ決めていない。本格的に料理の道に進むのか、このまま陸上一本で行くのか。


 大学にはスポーツ推薦で行くとしても、料理の道に進むのであれば調理師免許の取得を考えなければならない。

 2年以上飲食店で働いて、勉強をして試験に挑む。それとも本気でプロの陸上選手を目指すのか。

 もしくはそれ以外の道を選ぶのか。どの道を選ぶにしても、美佳子さんとの将来を考えるならそれ程ゆっくりはしていられない。

 どんな大人を目指すのか、そのビジョンを明確に決める必要がある。俺のなりたい大人って、結局どんな大人なのだろうか。

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