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第113話 友人達と恋愛と

 マラソン大会で気分転換が出来た俺は、学校帰りに友人達とファミレスに立ち寄っていた。

 もちろんその目的はクラスメイトの河田(かわだ)さんから頼まれた依頼の為である。サッカー部の宮下雄也(みやしたゆうや)が彼女の事をどう思っているのか。

 それを遠回しに確認するのが最大の目的である。そして最大ではない目的というのが、俺の辛い現状を皆に相談する事だった。

 あんなに綺麗な女性と付き合っているのに、法的な意味で清い交際が求められているのだ。


「とまあ、そんな状態でさ」


「うわぁ……マジかよ咲人(さきと)


「マジだよ。卒業まで待たないといけない」


 一哉(かずや)を始めとする友人達が、俺の置かれた状況を知って同情の視線が集まる。そうだよな、やっぱ皆もそう思うよな。

 恋愛に抵抗感があった俺だって、性欲まで失った訳じゃない。それはそれとしてちゃんと存在していた。

 恋愛が理解出来なくて怖い事と、異性に興味がある事は両立する。ましてや思い切って告白して、恋人が出来た以上は尚更だ。

 そりゃあ恋愛として先に進んだ関係を求める気持ちはある。俺は別に女性が嫌いだったのではないのだから。

 しかも人生で出来た初めての彼女なんだぞ? 考えるなって方が無理だろう。


「じゃあ何? あんな美人と付き合ってるのに、咲人って童貞のままなの?」


「雄也……お前、もう少し声を小さくしてくれよ」


「いやだって、なぁ?」


 今日の集まりには一哉の雄也の他にも、野球部の川上陽介(かわかみようすけ)とバレー部の安達慎吾(あだちしんご)も参加している。うちのクラスで良く話すメンバーが勢揃いだ。

 そんな彼らは雄也の言葉に頷いている。悲しい事に俺以外は全員経験者であり、既に男として一歩先の領域に居る。

 言い方は悪いかもしれないが、正直羨ましい。美佳子(みかこ)さんとそう言う事が出来たらなぁ……しかも本人は卒業したら良いと言っているんだぞ?

 オッケーは出ているのにまだ出来ない。この生殺し感が凄く辛い。でもじゃあ美佳子さん以外と致す、なんてのは論外だ。

 ただ行為がしたいのではなく、恋人としたいのだ。出来るなら誰でも良いという話ではない。


「大人の女性が恋人って羨ましいと思ったけど、話聞いてたら微妙な気がして来たわ」


「いや、幸せではあるんだぞ? ただ俺の年齢がな……」


「そりゃ法律上の問題はしゃーねぇけどさ」


 雄也が微妙な表情で俺を見ている。一哉なんて考え無しに阿坂(あさか)先生を狙ったりしているけど、実際付き合うとなったら色々と大変なんだぞ。

 大人の女性は魅力的だけど、だからって何でも出来る訳じゃない。実際に未成年に手を出して捕まる女性も世の中には居る。

 それこそ年に1回ぐらいはニュース記事を見掛ける。だからこそ俺は、必死の想いで耐えているのだから。

 俺の辛い現実を打ち明けたお陰で、話題がそっち方面に移行してくれた。良い感じに一哉が話題を展開し、クラスメイトの女子なら誰が良いかと言う話になる。


「やっぱ巨乳の澤井(さわい)は外せないよな」


「一哉、お前ほんとその内殴られるぞ」


「でも皆それは思うべ?」


 確かに澤井さんはグラマラスであり、思春期男子的に気持ちは理解出来る。そう言う目で見てはいないけど、クラス内で理想的なのは誰かと問われたら候補になる。 

 勉強もスポーツも出来て、優しくて美人でスタイル良し。人当たりも良くて友達も多い人気者の1人だ。

 クラスに限らず1年生全体で見ても上位に入る逸材である。他に挙がる名前も霜月(しもつき)さん等の人気者ばかりだ。

 こう言う話題になったら、どうしても話題になる人は決まっている。だからこそ、丁度良いタイミングだ。ここで雄也にそれとなく話題を振る。


「そう言えば雄也って、河田さんと仲良いよな?」


「え、ああ。まあな。席も近いから」


「派手ではないけど、結構可愛いよな」


 ここに居る全員が俺の意見に納得している様だ。澤井さんが突出しているだけで、河田さんも結構体型に恵まれたタイプだ。

 あんまりメイクとかには興味が無さそうなだけで、十分女性らしい魅力を持っている。

 そして雄也の反応を見る限りでは、わりと好感触である様に見える。そもそも河田さんぐらいの領域に居る女子を嫌がる男は居ないだろう。

 俺達は確かに目立つ美人に注目しがちだけど、そうじゃない女子だって魅力的な所はちゃんとある。

 話をしてみたら可愛い所が見つかったりする事だってある。同じ様に雄也のリアクションに思う所があったのか、一哉が雄也を少し揶揄う。


「え、宮下って河田とそう言う感じ?」


「ちげぇって! そんな関係じゃない」


「ホントかよコイツ~」


 おや? 案外これは良い線行っているのでは? 興味が全くない人間のリアクションではない。

 これは放っておいても、上手く行くのではないだろうか? 少なくとも懸念していた様な面倒事にはならなさそうだ。

 案外皆、ちゃんと恋愛をしているんだな。俺が過剰に怖がっていただけで、誰もがこうして普通に恋をするものなのだろうか?


 恋愛ってのは難しいけど、案外身近でありふれたモノなのだろうか? あれだけ理解が出来ていなかった俺にも恋愛は出来ている。

 自分がしてみるまで、全然分からなかった色々な事。独占欲とか嫉妬心とか恋心とか、お互いに思い合う2人の時間とか。

 それらはこうして、世の中に溢れ返っているんだな。始めは厄介事だと思ってしまったけど、改めて思い返すとこれはこれで良い経験になったのではないだろうか。

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