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第102話 衰えを感じ始めるのは20代後半から

 文化祭が迫る中で様々な準備もしているけれど、同時に自身の身体づくりも忘れてはならない。

 冬の駅伝大会に向けて、部活だけではなくジム通いも続けている。全体の筋力バランスを保ちつつ、体力増強が現状の課題だ。

 今回も担当する2区の4kmは既に走れているのだから、後はそのクオリティを上げて行かねばならない。

 安定したペースを常に最高の状態で発揮する。それがこれからの課題になる。出来るだけムラを無くし、状況に左右されないメンタルの管理も大事だ。

 課題がハッキリしているので、やる事に迷う必要がないのは楽で良い。本日も一定のペースを順調に保ちながらランニングマシンのお世話になっている。


「……ふぅ。こんなもんか」


(あずま)君お疲れ様。これが食事の改善案だから良く読んでおいてね」


 山崎(やまざき)さんから今後の食事内容に関するプランが掛かれたデータを預かる。冬に向けての体調管理と、栄養バランスに関する話が細かく書かれている。

 こう言うのはただの学生には分からないので非常に有難い。やはりプロの目線から見た評価と情報はお金を払うだけの価値がある。

 摂取カロリーの適切な量なんて、こうやって出してもらわないと分からない。それっぽい事が出来るアプリもあるけど、どこまで信用して良いのか怪しい所だ。

 やっぱり資格を持っている人に聞くのが一番安心出来る。トレーニング内容も込みでデータ化されているのも大きい。


「そう言えばこれから文化祭だっけ? 食べ過ぎに注意してね」


「あ~まあ、そんなに回れるか分からないですし」


「え~でも篠原(しのはら)さんを呼んでいるんでしょう?」


 またこの人はどこから仕入れて来たんだその情報。何故知っているのか……ってそうか一哉(かずや)だ。

 大人のお姉さんと会話する為に、俺の情報をダシに使うなよ。相手が山崎さんだから良い様なものの、さほど知らない人にまで話していないだろうな?

 美人で有名な美佳子(みかこ)さんの恋愛模様が、話のネタにし易いのは分かるけどプライベートだぞ。

 今も沢山の大人の女性がジム内に居るけれど、美佳子さんはやはり群を抜いてスタイルが良い。

 あれだけバカスカ酒を飲んでいても、体型はしっかり維持されている。うちの父親なんてすっかりビールっ腹だと言うのに。


「別にそんな、食べ歩きをする訳じゃないし」


「あ、アレかな? 使われていない空き教室に連れ込んだり?」


「しませんよそんな事!!」


 ニヤニヤと笑う山崎さんにしっかりと抗議をしておく。文化祭でそんな不埒な真似が出来る訳がない。

 一切考えなかったと言えば嘘にはなるが、教師達が巡回もするんだから現実的ではない。

 そんなのはドラマや漫画の中だけでしか不可能であり、実際にはそんな美味しいシチュエーションは無い。

 部活動や個別で出し物をやる生徒達も沢山いるので、空き教室自体がそんなに多くない。

 更衣室や一時的な倉庫として使われる事も多く、殆どは何かしらの用途がある。もちろん憧れはするけどさ、学校で美佳子さんと青春っぽい何かをするのも。


「相変わらず真面目だなぁ~」


「当たり前じゃないですか」


「ちゃんと見る時は見ている癖に~」


 クッ……澤井(さわい)さんと言い女性の鋭さは一体なんなんだよ。そんな露骨に見ているつもりは全く無いんだけどな。

 たまにチラッと見ている程度でしかない。今何をしているのかなって、気になるのは仕方ないだろう恋人なんだし。

 一切下心が無いとは言わないけれど、この程度は自然な心の動きだろう……と思っているんだけどなぁ。

 女性には何かそう言うセンサーでも備わっているのだろうか? 澤井さんは良く一哉の視線にも気付いて……いやアレは本人が隠していないから参考にはならんか。

 エッチな男として認識されても、許されているのはある意味羨ましい。ああなりたいとは思わないけど。


「ま、あんな美人だと仕方ないよね。女性でも見ちゃうし」


「そう言うものですか?」


「そりゃそうよ、30代であのスタイルは憧れるわよ」


 今は美魔女って呼ばれる人も多いからなぁ。美佳子さんはまだそんな年齢ではないけど、多分40代になっても変わらないだろうな。

 老いても美しいままで居るビジョンしか浮かばない。今はまだ俺も10代だから気にしていないけど、大人になったら老いを感じたりするのかな?

 体力とか筋力とか、ずっと維持し続けるのは難しいらしいし。でも70過ぎてもマラソンに出ている様な人も居るしなぁ。

 どうせなら俺もその方向性を目指したいけど、70歳なんて50年ぐらい先の話だ。俺がその頃どうなっているかは全く想像もつかない。


「私もね~もうアラサーだからさ」


「山崎さんも全然若く見えるじゃないですか」


「おや? ナンパかな?」


 そんなつもりは一切ないし、揶揄われたのは分かっている。ただ本当にそう思ったから素直な感想を伝えたまでだ。

 美佳子さんにしても山崎さんにしても、まだまだ若く見えるのにな。それぐらいの年齢になれば、俺にも分かるのだろうか?

 もう若くは無いと感じる様になる日が来るのかな。まあそれよりも先ずは、高校を卒業する事の方が大事だけどね。

 美佳子さんとの関係が、大人と未成年じゃなくなる日が俺にはまだ遠く思える。そんな風に考えながら、山崎さんとトレーニングに関する話題に戻った。

 最後には山崎さんも文化祭を見に来てくれると言う話になり、後はその日を待つのみとなった。

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