表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/306

第100話 お揃いという特別感

 本日はいつもの美羽(みう)駅前ではなく、もう少し離れた場所にある繫華街へ美佳子(みかこ)さんと2人で来ている。

 駅前が主に学生などの若い世代に向けた店舗が多いのに対して、こちらはもう少し大人向けだ。

 もちろん俺と同じぐらいの学生の姿もあるけれど、基本的には大人の方が多い傾向が見られる。

 普段はあまりこっちの方に来る機会は少ないけれど、これまでにも何度か来た事はあるんだよな。

 まあそれは綺麗なお姉さんを探そうなんて言う、一哉のバカげた計画のせいだけど。


「ふーん、最近はこんな店が出来たんだ」


「えっと、カフェですか?」


「いや、アクセサリーショップみたいだよ」


 町屋風のオシャレなカフェみたいに見えるけれど、実際には製作体験も出来るアクセサリーショップだった。

 中に入ってみれば複数の作業台があり、お客さんが自分達で指輪等を作っている。お客さんと言うか、まあカップルである。

 どう考えても製作体験は恋人に向けてやっているサービスだ。一目見るだけでそれが分かった。

 店員さん兼職人さんが作ったアクセサリーも陳列されているが、スペースの差を考えればどちらがメインかは言うまでもない。

 ペアアクセ製作は幾つかの種類があるみたいで、ペンダントトップや指輪など色々と選べるらしい。


「ね、面白そうだしやってみない?」


「良いですよ、俺も興味あるんで」


「じゃあどれにしようか?」


 結構色んな種類があり、指輪だけでも形状は様々である。太さが違ったり宝石が嵌りそうな台座があったり、いざ選ぶとなると結構悩まされる。

 そして美佳子さんとのペアアクセだと考えると、尚更気合を入れて選びたいところだ。

 ここでセンスの悪いチョイスだけはしない様にしたい。元モデルである美佳子さんには敵わないとしても、せめてダサいと思われたくはない。


 ペンダントトップにするか、それとも指輪か……へぇ、ピアスやイヤリングまで作れるんだな。

 ただ普段から身に着ける事を考えたら、指輪かペンダントトップだな。ピアスなんて開けてないし、学校に着けていけば呼び出しを喰らう。

 イヤリングも同様で、着けているのがすぐ分かってしまう。没収は勘弁なので目立たない物が良い。


「このペンダントトップとかどうです?」


「お~良いねぇ。可愛らしい」


「あ、でも指輪を選んでも革紐がついて来るのか」


 ペンダントを選ぶとその用途でしか使えないが、指輪の方なら指輪としてもペンダントとしても使える。

 革紐の分金額は高くなるが、トータルの金額から考えたら誤差である。2人で色々と相談して、最終的にはペアリングのコースを選んだ。

 予約はしていなかったので、空いている枠に入れて貰った。時間になるまで適当にブラブラとしてから、再び町屋風アクセサリーショップへと戻って来た。

 店員さんの案内で作業台に向かい、アクセサリー製作のレクチャーを受ける。基本的には複数のハンマーで叩いて模様をつけていくらしい。


「外側のハンマーから順番に使っていって下さい」


「ふんふん、なるほどね」


「意外と体力いりそうですね」


 手先を使った器用な作業かと思いきや、意外とパワー系みたいだ。続いて俺と美佳子さんの指輪のサイズを測る。

 色んなサイズの指輪が鍵束の様になった、指のサイズを調べる道具があるなんて初めて知った。

 これを知らなかったから、告白する時に緩々なんて失敗をしたんだよな。ちゃんと結婚式をする時の為に覚えておかないとな。

 美佳子さんの薬指は9号で、俺は13号みたいだ。それから該当のサイズであるペアリングを手渡され、いざ作業を開始する事になった。

 先ずは指環を木の棒にセットして、グラグラと動かない太さになっている位置で固定する。それから指示された通りにハンマーで指輪を叩く。


「うーん、どうですかねコレ?」


「良いんじゃない? ちゃんと模様が出来ているよ」


「もうちょっと叩こうかな」


 先の尖ったハンマーで金属を叩く音が、俺と美佳子さんの手元から響き渡る。先端の大きさが違うハンマーを使い分ける事で、指輪に模様を付ける作業だ。

 シンプルだけど、結構奥が深いぞこれは。どんな模様にしていくかが悩ましい。最初はなんの凹凸もなかった指輪に、叩いた分だけ模様がついていく。

 気になりだすと色んな部分が気になってしまい、中々これだという実感が湧いてくれない。

 美佳子さんも自分なりに納得が行くまでハンマーを振るっている。それからもハンマーで叩き続けた俺達は、30分ぐらい作業を続けた。


「内側にメッセージや名前の刻印も出来ますが、どうなさいますか?」


「どうする咲人(さきと)?」


「せっかくだし入れましょうよ」


 入れる文字数にある程度の限りがあるらしい。大体の人はイニシャルのみか名前だけにするとの事。

 なので俺達も名前だけにする事にした。完成イメージとしてはSAKITO&MIKAKOと言った感じになる様だ。

 何かこう、カップルらしくて良いなコレ。恋人になったという実感が増すし、常に一緒に居るみたいだな。


 だから皆お揃いの何かを持とうとするんだな。こうして実際に体験するまでは、意味があんまり分かっていなかった。

 一体感と言えば良いのか? 特別な関係であると感じる事が出来るんだ。完成したペアリングをお互い薬指に嵌めて、その日はデートを楽しんだ。

 これから学校に行く時はペンダントとして、それ以外はペアリングとして使う事にしよう。

公式にネトコンの告知が出たのでこちらも予告を。

本作のヒロイン美佳子さんにパチンカス要素を入れなかった事を実は後悔していました。

そんな理由からネトコンに合わせて、ヤニカスで酒カスでパチンカスな主人公がテーマのコメディを新作として用意しています。

本作が落ち着くか完結するぐらいの時期、多分4月か5月ぐらいに投稿を始める予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ