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いちゃいちゃしています。

R15です。ご注意を。

 お揃いの指輪は、小さな夜空がきらめく微弱な魔力を発する宝石。

 灯りを消した寮の自室、その柔らかな光だけが闇の中を照らして明滅していた。

 そっと、宝石に触れると明滅していた光は、薄く発光して光はそのまま留まった。

 光が薄く発光した状態で話すと会話が出来る魔道具。携帯電話みたいなものだ。

「こんばんは。フェリクス殿下」

 長年の淑女教育は伊達ではない。

 完全に戸惑ってしまい、内心パニック状況だったけれど、これくらいなら取り繕える。

 フェリクス殿下に迫られた時の方が無理だ。


 はっきりとした発声を意識したら、思いの外、凛とした声が響いた。

 ベッドにそっと腰掛けていれば、その衣擦れを聞いたのだろう。

『もしかして、寝てた?』

 申し訳なさそうなフェリクス殿下の声が指輪から聞こえてきた。

 私はふふっと小さく笑う。

「いいえ、ただ、横になっていただけです。寝ていないのでご安心を」

『その……大丈夫? 昼間、様子がおかしかったから』

 フェリクス殿下の声と共に、風の音やフクロウの鳴き声が小さく聞こえる。

 レンガの道を歩く一定のリズムが聞こえて来たので、どうやら殿下は今、外を歩いているところらしい。

 念話と違い、様々な音が聞こえるというのも、味があって良いと思う。

「ええ。ご迷惑をおかけいたしました。話を中断することになってしまい。一時的に調子が良くなかったようですが、あの後しばらくしてからは通常通り業務はさせていただきました」

 動揺してしまい、三十分も浪費してしまったのは痛手だったけど、なんとか切り替えた。

 正直、今も戸惑っていて衝撃を受けているのは確かなのだけど……。

 暗闇の中、ルナがベッドの横へとトコトコと歩いて来て、私の足元へと伏せる。


『思ったよりも元気そうだね?』

「ふふ。色々と考えすぎたようです」

『人身売買なんて物騒な話を聞いたんだ。戸惑うのもおかしくないよ。今、こうやって繋いだのも、レイラの様子が心配だからなんだけど』

「はい、ありがとうございます」

 申し訳ないと同時に、心配してもらえるのは嬉しかった。

 それと同時に、ますますフェリクス殿下に対して罪悪感が募っていく。

 私のことをこんなに心配してくださっているのに、私は他の男に対して心を許している。

 その状況ってとても罪深い。

 ならば、せめて心配をかけないようにして、フェリクス殿下に憂いを与える隙すらなくしてしまえば良い。

 今のところ、それは成功しているようで、足元に座っているルナが感心していた。

『これが長年の淑女教育というものか……。王太子が発情して迫って来た時は意味を成さなかったが、よもやここで』

「ルナ! そういう風にからかうのは禁止!!」

 咄嗟に言い返せば、フェリクス殿下が小さく忍び笑っていた。

『また私とのことで赤裸々発言でもしたのかな、ルナは』

「……」

 大体合ってる。

 クスクスとしばらくフェリクス殿下は笑っていたが、しばらくしてから、予想外のことを言い出した。


『声は元気そうだね。なら、やっぱり今からそっちに行かないとね』

「今から!?」

 というか、今の話の流れ的におかしくなかった?普通、元気なさそうなら、だと思うの。

『今、私は王城からの帰りなんだ。徒歩で』

 時刻は夜の九時。普通に危ない気がする。

「徒歩ですか? 何故、わざわざ……」

『たまには歩きたくなる時もあるんだよ。私は戦闘力もそれなりにあるし、護衛も居るから安心して。あ、護衛といえば、最近引き継ぎが終わったから、明日から専属としてレイラに付けようと思う』

 そういえば、護衛の話が出ていたことを今更ながらに思い出した。

 でも、聞こえてくる限り、足音は一つなんだよね。もしかしてその護衛の方、足音を消して歩いてる。

 というか、やはり護衛を私に移すの大丈夫なの?

 フェリクス殿下は強いけど、世間的に問題は……。

『私に護衛が居なくなっても心配しないで。護衛は他にも居ると思うし』

 と言っても、一番信用出来る護衛が今の人なのではないだろうか?

「前にも申し上げましたが、フェリクス殿下優先ですからね?」

『心配症だね、レイラ。……っと。この辺かな。窓の外を見て』

 え?何?本当に来たの!?


 慌てて窓の方へと寄って行き、カーテンを開けて窓を開け放つと、二階に位置するバルコニーから地上を見渡すと、軽く手を上げている人影。


 フェリクス殿下?

 見慣れた姿。暗闇の中、浮かび上がる金髪碧眼の美しい王子。

『ちょっと下がって』

「は、はい……?」

 言われた通り、引っ込んだ瞬間、気が付けば音もなくバルコニーに着地しているフェリクス殿下。

 え?今、跳躍して来たの?

 魔力反応があまり感じられなかったのだけど!?

 最小限の魔力で、ここまで最大の効果を発揮することが出来るなんて。

 なんというか、隠密に最適な気が……。


「来ちゃった。あれ、今日は今は素顔だね。まあ、眼鏡をしたままで、寝ないから当たり前か」

「ええと、これは一体どういう?」

 窓から入ってくるフェリクス殿下は、悪戯めいたように笑った後、部屋の真ん中でナイトドレスのまま立ち尽くす私の前まで颯爽と歩み寄った。

 私とフェリクス殿下の指輪の光は通信を終えたため、光はすうっと消えていった。

『この辺りの警備をして来る』

 ちょうどその瞬間、狼姿のルナが部屋の外へとドアの隙間から影を伝い、廊下へと出て行った。

 ルナは自主的なパトロールに出て行った。

 どうやら二人きりにしてくれたらしい。

「どうされたのですか? 私は、元気ですが」

「うん。声は元気そうだと思ったんだけどね」

 私の前に立っているフェリクス殿下からは、夜の大気の香りがした。

 フェリクス殿下は、私の肩を掴み、そっと耳元に唇を寄せてこう囁いた。


「凛とした力強い口調。一音一音がハッキリとしていて聞き取りやすくて、まるで淑女のお手本のよう。美しくて思わず聞き惚れる程だったけど、私は誤魔化されないよ? レイラ」

「……!?」

「他の者なら誤魔化し切れただろうけど、私を誤魔化そうなんて無理だ。私は普段から貴女の声を意識して生活しているのだから。ふふ、いつもよりも僅かに力強く凛とした声だったから、違和感を覚えたんだ。それが空元気だと分かった。貴女は完璧過ぎたんだよ、レイラ」

 涼やかな声には、私を責める色も感じなくて、ただただ爽やかな美声。

 そっと私の耳から顔を離したフェリクス殿下は、私の両腕を手を添えたまま、彼の方こそ完璧に美しく微笑んだ。

 私の淑女としての対応は完璧だと褒めてくれているが、素直に喜ぶことは出来なかった。

 完璧過ぎてバレるって、それはないのでは?


 冷静さを失いかける寸前で私は我に帰り、念の為、惚けてみる。

「気の所為ですよ。私はいつも通りです」

「……」

 フェリクス殿下は無言で微笑むと、私をベッドの上にまで導いて、ぽすんっと座らせると頭をゆるりと撫でた。

「大丈夫だよ、レイラ」

 ここでフェリクス殿下の声が私を心配するような労るものへと変わる。

 頬を滑る手は、私の頬を壊れ物でも触るようだった。

「私の前でくらい淑女の仮面を剥いでしまっても」

 猫の顎を撫でるみたいに、指先で私の顎を擽る指。

 私を見つめる蒼い瞳は心配そうな光を浮かべている。


 結局、心配をかけてしまった……。

 私よりもフェリクス殿下の方が一枚上手だったのだ。

 わざわざ、この方は私のところまで様子を見に来てくれた。純粋に心配して、来てくれた。

 どうしよう?

 信じられるとか信じられないとか関係なく、今はどうしようもないくらいに、この人が愛しい。

 考えなくてはいけないことはたくさんあるのに、今の私の頭の中にある衝動は単純なものだった。

 この腕に抱き竦められたら、どんなに幸せだろう。胸元に顔を埋めたら、相手をしてくれるだろうか?

 この指先は、私を可愛がってくれるだろうか?


 抱き締めたい。抱き締められたい。……触れられたい。


 触れたい。



 その衝動は抑えきれるものではなくて、フェリクス殿下が、ベッドに腰かける私の目線に合わせて腰を屈めた瞬間、私はおかしくなった。


「レイラ? 本当に大丈夫? なんだか、少し震えて──んっ…?」


 その唇が言の葉を紡ぐのを見て、思わず。

 彼の唇を奪った。

 彼の首の後ろに腕を回して抱きつきながら、こちらに引き寄せるようにして唇を重ねた。

 女の方からこんなことをするなんて、はしたないことは分かっていた。

 今までの習ってきた令嬢教育の教師が見たら、発狂してしまうに違いない。

 それに、フェリクス殿下の方はただ心配して来てくれただけで、そのつもりなんてなかったことも知っていた。


 驚いたような息遣いを感じながら、離すものかとばかりに彼の唇に、はむっと甘噛みをした。

 フェリクス殿下は目を見開き体がピクリと震え、戸惑ったまま、そっと吐息を漏らしていて。

「はっ…んっ……」

 柔らかな唇の感触に恍惚として溜息が漏れかけた瞬間、フェリクス殿下の方も動いた。

 私の後頭部を支えて、ぐっと引き寄せる。

「んぅ……!?」

 驚いていたはずの彼は、いつの間にかその気になったらしく、応えるような唇の動きと共にゆっくりと体を密着させて来た。

 ベッドの端に座る私に覆い被さるような体勢で、半分乗り上げるようにしている。

 突然、強引に吐息を奪われ、思わず上げかけた悲鳴は彼の唇にしっかりと飲み込まれた。

 ぎしっとベッドが軋む。

 彼の首の後ろに回した手を解いて、胸板の辺りに弱々しく添える。

 彼の方からもキスしてくれていることに安心しと、ゆっくりと目を閉じた。

「んっ……んっ…」

 甘えたような声を出してしまうのが恥ずかしい。フェリクス殿下がそんな私の声を聞く度に、興奮したように迫り来る。

 ちゅっ……ちゅっ……と可愛らしい音を立てながら、角度を変えながらも優しく口付けられる。

 はしたないことをしてしまったことを忘れて、私はその熱だけを感じたくて仕方ない。

 吐息。唇の感触。その生々しさ全てを。

 角度を変えて口付ける度に相手の切なげな吐息が唇越しに伝わって来るから、それがどうしようもなく甘くて仕方ない。

 お互いの息遣いは若干荒い。求め合うように口付けて、お互いの息を奪い合った。

 目を細めて、フェリクス殿下の睫毛を間近で眺めながら、唇への熱を感じることだけに夢中になった。

 温かい……。濡れた感触が気持ち良い……。

 いつの間にか頬に添えられていた手が移動して、私の顎を彼の指先が捉えていて。

 ちゅうっ……と口を吸われ、甘い痺れが背中を通り抜ける。

 息が苦しいのに。その苦しさは甘くて、息が苦しいのに。

「んっ……はぁ…」

 そっと離された唇の隙間から、息を整えていれば、フェリクス殿下が熱の篭った余裕なさげな声で私の名前を呼んだ。

「……レイラ?」

「何も……何も仰らないで、ください」

 掠れた声。自分でも何がしたいか分からないまま、この時の私は欲に忠実で。

 触れたい。もっと。蕩けるまでもっと。


「殿下。前みたいな……深いキスをくださいませんか?」

 私は貴方に触れたい。


「……っ」

 フェリクス殿下はまたもや動揺したように一瞬体を震わせて、目尻をほんのりと赤く染める。そのまま私に覆い被さったまま熱い瞳で見下ろして居たが、やがてコクリと喉を鳴らした。

「きゃっ」

 おとがいを掴み、グイッと上向けると、私の唇に思い切りかぶりついた。

「んっ……! ん──!」

 突然の貪るようなキスに戸惑いながらも、私は彼の背中へとそうっと腕を回して控えめに引き寄せた。

 びっくりした……けど、大丈夫。フェリクス殿下だもの。

 だから徐々に体の力を抜いていって。

「はっ…んぅ……ぁっ…」

 あっ……柔らかい。

 舌がゆっくりと私の唇の隙間からゆっくりと入り込んでいく。ぬるりとした感触が粘膜を擽り、口内の柔らかく熱い場所を探っている。

 やわやわとした感触は官能的で頭の中の意識がどこかへ飛んでいきそうだった。

「ん……む……」

 歯列を辿る舌が上顎を擽った後、分厚い舌に絡め取られるようにして、それらは擦り合わせられた。

 フェリクス殿下は息を微かに息を荒らげながら、時折悩ましげな吐息を漏らしている。

 ぬるぬるして気持ち良い。中を抜き差しされる感覚がいやらしくて、気持ち良い。

 回した背中にしがみついて、縋った。

 もっと掻き回して欲しくて、絡められた舌をゆっくりと彼のそれに擦り付けると、彼の器用なそれがリードするように舌先を攫う。

「んっ……あっ……」

 唇だけ離れてしまっても、舌を引っ込めることなく、そのまま舌を出したまま、ねっとりと絡め合う。

 フェリクス殿下の目に宿っている凶暴な熱の色に興奮した。

 今、私は食べられている最中だ。

「んっ……んっ…んっ……」

 背中が仰け反っていって、僅かに腰が引けていっている。

 覆い被さるフェリクス殿下の唇と舌に翻弄されていれば、やがて、ドサッとベッドの上に背中から倒れ込んだ。

 顔の横に手をついて、身を屈める男はさらに身を屈めていって私の唇を僅かに舌先でなぞった。

 もちろん、それだけでは終わらない。

「……あぅ」

 離れかけていた唇同士が再びしっかり重なり合って、その肉の柔らかさを堪能するように、ゆっくりと合わさった二人の影は揺れ動く。

 くちゅくちゅといやらしい音を立てながら、舌を粘着質に擽り合い、やがて絡み合っていた舌がゆっくりと解かれていく。

 顔が離されて、銀の糸がぷつんと切れた後、私は胸を上下させていた。

 覆い被さったままの状態の彼を見上げると、フェリクス殿下は少し息を荒げながら、内緒話でもするように問いかける。

「こういうキス、好きなの?」

 私の濡れた唇をぐいっと指で拭うと、淫らに指先でなぞりあげる。

「ん……好き……」

 コクリと頷いて見上げていると、フェリクス殿下は堪らないとばかりに呻いた。

「レイラ、目が潤んでる……」

 もう一度唇を重ねようとしてくる殿下の唇が触れ合う寸前に私はぼんやりとした頭で陶然とした口調で語る。

「こういうキス…好きです……。貴方と触れ合った感触が分かりやすいから……。私に触れているのは、この人だって分かるから」

「そっか……」

 吐息混じりの掠れた声には熱が篭っていた。

「それに、気持ち良くて堪らないんです。すごく、ドキドキする……」

「レイラ……」

 押し倒されたまま抵抗しない私の髪をフェリクス殿下は撫でていたが、おもむろにその手が私の首筋を伝い、胸の上に優しく置かれた。

「あっ……んっ!」

 やんわりと私の胸を揉むような仕草に身震いした。胸を僅かに下から持ち上げられて。


 フェリクス殿下の指先がナイトドレスの裾から中へ侵入して行き、太腿をなぞるような手を、きゅっと目を閉じて受け入れようとした瞬間だった。



『ひゃああああああっほおおおおおお!! 有給取れるかどうか賭けようぜええええ!!』

 ここは二階。真下からの叫び声。


「…………」

「………………」


 お互いにピタリと動きを止めた。


 フェリクス殿下がすまなさそうに、ナイトドレスに入れていた指を抜いて、胸を覆っていた手を退ける。

「ごめん。女子寮なのに。不純異性交遊は禁止だったよね。忍び込んじゃったけどよく考えたら、いけないことをする寸前だった」

 よく考えれば、ここ男子禁制だった。

「ご、ごめんなさい。あの……はしたない真似を……!」

 起き上がった私は、サッと乱れた裾を直して俯いた。

 高揚しきっていた頭が冷静になっていく。

 私、なんでこんなこと……。


 それにしても今の声、一階から聞こえてきた気がするんだけど。

 女の人の声だけど、なんだろう。夜明けのテンションとか、連続徹夜してハイになった叔父様みたいな。

 そういえばこの学園、有給が取りにくいことで有名で、先生方は苦労しているらしい。

 賭けって。


 叔父様も私が居ることで有給が取りやすくなったと喜んでいた。

 二つ程言いたい。

 普段、全く医務室で生徒に対応してないよね?

 それに有給取っても、研究に没頭するし、普段とやること変わりない……。


「フェリクス殿下。今更ですけれど見つかれば、騒ぎになると思います」

「もしもの時は空間転移をするから平気だよ」

 大魔術の使い方としては間違っていると思う。

 ベッドに腰かけた私の隣にフェリクス殿下も並んで座る。


「フェリクス殿下……」

「……レイラ」

「ひゃっ」

 名前を呼ぶと、振り向きざまに目蓋にちゅっ……と口付けが落とされる。

 それを受け止めながら、私は照れながら彼を見上げた。

「……何だかんだ色々ありますけど、今夜触れ合って分かりました。やっぱり私は貴方にしか触れられたくないし、触れたいとも思わないということが。こんな衝動で私がおかしくなってしまうのも、貴方だけなのだと」


 罪悪感は消えないけれど、それだけは再確認出来た。

 思い悩む時間は長かったのに、この方に会って触れ合って、それだけは分かった。


 私は罪深い人間だけれど、熱に浮かされるような相手はフェリクス殿下だけ。


 まだ……よく分からないけれど。とりあえず今のところはそれで良しとするしかない。

 真摯に向き合い、自分の出来る限りにおいて誠実に向き合えば、これ以上悪い方へ悪化することはない……と信じたい。

 ほんの少しだけ、モヤモヤが晴れた。


 フェリクス殿下は何故か頭を抱えていた。

「勘弁して……こんなの生殺しだ」


 なまごろし、とは。


 その後、階下に誰かの気配を感じるまで、私はフェリクス殿下に深いキスを強請った。

 彼もそれを受け入れてくれた。

 ……本当に癖になってしまったのだと思う。


 何度も重ねる口付けに恍惚としながら、時間は過ぎていった。

 キスを求めたのは私だったけれど、途中から彼の方が夢中になって貪り始め──。

 時間が経つ度にフェリクス殿下の様子はおかしくなって、やがて「辛い……限界」と言い出したので、もしかしたら男心を弄んだのかもしれないと、最終的に私は反省した。

 はしたないことはしばらく止めようと思った。


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