表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/252

94

 今日は某侯爵家の屋敷で行われた夜会だった。

 主な枢要貴族たちが集まる夜会ということで、最後の貴族が会場へと入場したのを確認してから、夜会の開催が告げられる。

 挨拶回りは出来る時にしておくのが基本だ。


 私たちの場合は、お揃いの夜会服に、対の指輪などのあからさますぎる主張の、おかげで、婚約発表をする前から貴族の間で話題に上がっていた。


 決定的な場面をリーリエ様に目撃された後、私たちは何食わぬ顔をして会場に戻った。

 長年の教育の賜物か、お互いに何かをやらかすこともなかったし、フェリクス殿下が私に向けてくる視線の甘さは変わらなかった。

 ただ、先程よりもさらに密着していた気がした。

 私の着ているドレスや、ネックレス、お揃いの指輪などに興味津々の貴族たちにいつの間にか囲まれた時のフェリクス殿下の対応など、先程昏い目をしていた人物とは思えない程だった。

「指輪はレイラの作品なんだ」と嬉しそうに語っていたり、「神秘的な色合いの髪と瞳に似合うのは──」などと私に似合いそうなドレスについて語る姿は上機嫌そのもので。

 ただ、時折私を見る眼差しには、罪悪感のようなものがチラリと窺えたけれど。

 それ以外は、いつもと変わらないフェリクス殿下だった。

 それはもう普段通り過ぎて違和感を覚える程に。


 だけど、最後の入場者が現れてから、予想外のことをされた。

 壇上の上の主催者が開催を告げた後に、私はフェリクス殿下にエスコートされて行ったのだけど、肩を引き寄せられて歩き出す刹那。

 何やら真面目な顔をした彼は、私に近付くと、「ごめんね、レイラ」と呟いた。

 何故、謝るのかと不思議に思って問い返そうとした折。

「……っ!?」

 彼は、急に頬に唇を寄せて、口を付けた。

 それはさり気なく行われた口付けで、柔らかく触れた瞬間すぐ離れていったのだけど、皆が注目しているのだから、もちろん目撃者は多数。

 女性の黄色い歓声や、野次馬な方々の盛り上げるような声で溢れた。


 婚約発表? 真っ赤になっているうちに終わった。

 よく覚えていない。

 呆然としたまま、終わってしまった。


『ご主人! ……ご主人!』

「あっ……!」

 ルナに何度も名前を呼ばれて、ようやく我に返った。

「ルナ……。私、おかしなことはしていない?」

『普段の教育の賜物か、完璧な挨拶だったぞ』

 何を言ったのか、覚えていない。

 そんな私の様子を窺うように見つめる、ある意味元凶であるフェリクス殿下は、私の耳に唇を寄せた。

「ひゃっ……そこは」

 耳に寄せるだけでなく、そっと柔らかな唇が耳朶に這わされている。

 く、唇が、耳に……。

「しっかり見せつけておく必要があるんだ。執拗なくらいにね。リーリエ嬢にも……あの男にも」

 冗談でこんなことをしている訳ではないことは分かった。その声に、私をからかう意図を感じなかったからだ。

 耳に直接、吐息混じりの低い声を吹き込まれただけでも、おかしくなりそうだというのに。

 脳内にフェリクス殿下の声だけが甘く反響していく。

 ぞわぞわとした得体の知れない快感が背中を伝っていくと同時に、何故か下腹の奥もきゅんと疼いた。

「っ……!」

 ぱっと彼から身を引いて、慌てて耳を押さえても、触れられたところがもう熱くて仕方ない。

 感触が、消えない。


 辺りがざわめいた。黄色い声が再び周囲に攪拌していく。

 当たり前である。なんてことをしてくれちゃっているのだろうか。

 フェリクス殿下の目は先程の昏い色を孕んでいて、彼はどこか仄暗さを含んだ微笑みを浮かべた。

 この人はどんな時も美しく笑う。

「私と噂になってしまえば良い。誰も奪うなんて気が起きないくらいに」

「でも、こんな……人前だというのに……」

「レイラ。貴女は私のものだ。悪いけど、そのためならどんな手段だって辞さない覚悟だ」

「……」

 羞恥から、私はそっと視線を外して俯いた。

 恥ずかしがっている場合ではない。

 今、伝えるべき想いがあった。不安そうな彼に、伝える言葉が。

『ご主人』

 ルナが勇気づけるように私を呼んだ。

 そうだ。私は1人の令嬢としてここに参加しているのだ。

 淑女として、狼狽するのはこれ以上は止めにしなければ。

「お話があります」

「……そう? なら、少しバルコニーにでも出ようか」

 そっと背中を押されてエスコートされていく私たちに周囲はサッと道を開けて行く。

「ねえ、レイラ。気付いてる。私たちを見る者たちの羨望の眼差しを。私たちはもう、皆にとって理想のカップルだ」

「……そう、ですか」

 そこまで不安だったのだろうか? 私たちの仲を完膚なきまでに見せつけるまでに。

 夜の風に当たるため、バルコニーに出たら、火照った体が少し冷めた気がした。

 くるりと向き直る。月に照らされる中、私はフェリクス殿下を見上げて、ぎゅっと手を握り締める。

「それで、話があるんだって?」

 声は優しいけれど、どこか固い声。

 やはり、今夜の彼の様子はおかしい。

 特に、クリムゾンと会った後は。

 無理矢理、淑女の微笑み顔を貼り付けて、私はお腹の奥から声を出した。

「……フェリクス殿下。恥ずかしいので、これ以上は、……止めましょう? 周囲に見せつけるからといって、キスをするのは止めましょう?」

 私はこんなにも弱々しい声を出すような人間だっただろうか。

 もっとハキハキと話すことを心がけているというのに。

「貴女が私のものだと、知らしめたいと思ったんだ。奪われたくなどないんだ」

 フェリクス殿下の瞳が動揺で揺らいでいる。

 もしかしたら、自分の感情を上手くコントロール出来ずに持て余している部分もあるのかも。

 奪われることなどないのだと伝えたかった。

 ああ、もう。上手く舌が回らない。

「どうして、そこまで……?」

「貴女を好きな人は多いから、かな」

 彼は珍しく視線を落としていて、私から目を逸らしていた。

 私には貴方だけなのに。

「……心配など、しないでください」

 心配するなと言うのは簡単なのに、それをどう証明すれば良いのだろう。

「フェリクス様……」

 2人きり。約束の通り、名前を呼んだ瞬間、フェリクス殿下はパッとはじかれたように顔を上げた。

「……名前…………」

「フェリクス様。……私、私は貴方のことを大切にすると、決めているんです。問題を抱えている私ですけれど、貴方のことが好きなのは……本当です。私だって誰にも、フェリクス様を渡したくなど……」

「え?」

 鳩が豆鉄砲を食らったような呆然とした表情。

 フェリクス殿下がこんな顔をするのは珍しい気がした。

 どうして、そんなに驚いているの?

 大切にするのは当たり前なのに。

 私はもしかして、普段から想いを伝えていなかった?

 私はその事実に慄いた。

 目を見開いたフェリクス殿下の綺麗な瞳に、私の驚愕の表情が映り込んでいる。

 一瞬だけ、彼の瞳が潤んだような気がしたのは、私の気のせいなのだろうか。

 フェリクス殿下は感極まったように私の肩にそっと手を伸ばした。

「……レイラ」

 肩を掴む手は、一瞬だけ震えていたけれど、その声に昏い色はもうなくて。

 耳に馴染むような静かな泉のような透き通った男の人の声。

 いつもの……いつもの殿下の声だ。

「……あの、フェリクス様?」

「……さっきはごめんね。不安だったとはいえ、少しやりすぎた……かな」

 今は先程よりも安堵しているからか、どこか落ち着いた様子のフェリクス殿下に、思っていたよりも不安にさせてしまったことを知った。

 フェリクス殿下は、私のことを……そこまで。

 労るように背中を撫でる手は、相変わらず優しかった。

 そっと背中から手が離れたので、見上げると、フェリクス殿下は嬉しそうに微笑んだ。

「どうかされたのですか?」

「両思いなのに、私ばかりが貴女のことを好きなのかと思っていたんだ。だから、ね。さっきの言葉は嬉しかった」

 ああ。やっぱりそうだったんだ。

 私は何度も彼を不安にさせていたのだろう。

 きっと私の知らないところでも。

『ご主人。この男の扱い方には重々気をつけることだ。元々欲のなかった人間が執着を知った時程、厄介なものはない』

 ルナはそう忠告した。

 何を言っているのか、よく分からなかった。

 執着……。

『執着と恋心はとてもよく似ている。ご主人はもっと周りの執着に気付いた方が良い』

 周りの執着。

 意味深な単語の数々に、深い思考に囚われそうになった刹那。


「そろそろ、戻ろうか」


 柔らかいフェリクス殿下の声がその思考を中断させたのだ。

 そして、私たちが会場へと戻った瞬間のことだった。




「破廉恥!! 侯爵令嬢のくせに!」


 突如、頬が熱くなったと思ったら、私は床にへたりこんでいた。

 じんじんと痛む頬を押さえながら、一瞬遅れて気が付いた。


 今、私……叩かれた?


 目の前には仁王立ちのリーリエ様が私を見下ろしていた。


 え? リーリエ様?


「信じられないよ! フェリクス様を誑かして、おかしくしちゃうなんて! あの人は、いつも紳士的なんだから! あんなことをしてたのだって、全部、貴女のせいだよ! 自分の思い通りにしようなんて間違ってる!」


 一息で告げられた言葉に、私は呆然としたまま動けなかった。

「え? ……え?」

「レイラ!?」

 フェリクス殿下が床にへたりこんだ私を、抱き起こしてと思ったら、自らの腕の中へと閉じ込めて、リーリエ様の視界から隠した。


 周囲はリーリエ様の突然の暴挙に何も言えなくなっていた。

 時折、噂が漏れ聞こえる程度だ。

「あの人は誰? フェリクス殿下の婚約者に手を上げるなんて、なんて非常識な……」

「男爵令嬢って聞いたぞ?」

「光の魔術が使えるんじゃなかった?」


 ひそひそとした話し声以外は、何も聞こえない。

 突然の出来事に、夜会特有のざわめきはなりを潜め、バックミュージックでさえ止んでしまった。


「リーリエ嬢。どういうことだろうか? 突然手を上げるとは、令嬢が聞いて呆れる」

 私はフェリクス殿下の背中に隠され、刺々しい響きをした彼の声を確かに聞いた。

 どんな表情をしているのか、それを窺うことは出来ないまま、私はリーリエ様の顔が興奮で赤く湯だっているのを目にするのみ。


「騙されちゃ駄目だよ! フェリクス様はその女に騙されてる! だって、貴方は紳士的な人で怒ったりだってしないし、女の子に迫るような人でもなかったもの!」

「私は騙されていない。勝手に決めつけないでくれ」

 彼の声は地を這うように低くなった。

「嘘! 私が知ってるフェリクス様は、いつも穏やかだったもの! 感情に振り回されることなんてなかった!その女が近づいて来てからだよ!? 様子がおかしくなったのは! 私は貴方と居たんだよ!? 貴方のことは私がよく知ってる!」


 周囲の貴族たちがひそひそとリーリエ様を指差しては、眉を潜めて不快そうに目を逸らした。


「非常識……」

「非常識な子ね」

「でも、学園でフェリクス殿下と一緒に居たのは本当みたいよ。光の魔術の使い手なのだから」

「フェリクス殿下が感情を露わにしているのは……ねぇ?そういうことよね」

「そうそう。そういうことだ。見れば分かることだよ」


 貴族たちは私たちを遠巻きにしながら、面白い見世物でも見るように目を輝かせた。

 ああ。これは、なんて茶番なのだろう。


「確か、リーリエ=ジュエルム男爵令嬢がレイラ=ヴィヴィアンヌ侯爵令嬢を虐めているとか」

「逆では? リーリエ嬢が虐められてたんだよ」

「違う違う。リーリエ嬢が横恋慕をしたって噂」

「そうじゃない。きっぱり振られたんじゃなかったか?」

「いいや。三角関係だよ」


 皆、好き勝手言っている。

 笑い事ではないというのに、皆、人の噂話は大好物のようだった。


 遠巻きにされていくのが、リーリエ様には分からないのだろうか。

「ねえ! 元のフェリクス様に戻って! 私が助けてあげる!」

「私を勝手に決めつけるな。それに助けなど、求めていない!」

 フェリクス殿下の声は鋭く、既に女子に向けるものではなくなっていた。


「……違う! 貴方らしくないもの! 私がそう言うんだから絶対なの。紳士で誰にでも優しくて、怒らない。いつも優しい口調でキツイ言い方なんてしないし、私を助けてくれて……それで」


 リーリエ様が言い募るのを聞いて、私はフェリクス殿下の背中から前に出た。

 頬はじんじんとしたままだし、転んだ拍子にドレスには皺が寄ってしまった。

 だけど、伝えたいことがあったのだ。


 しっかりと背筋を伸ばして、優雅でこれ以上どうにも出来ないくらい丁寧に、美しく、凛々しく、そして力強く。それでいて繊細に。


 淑女の礼。


 痛む頬を堪えていたとしても、淑女として貞節で慎み深く居ることは必須だ。

 痛みなど感じさせない程、たおやかに。

 心からの微笑みを。


「どんな表情をされていたとしても、それはフェリクス殿下ですよ、リーリエ様。私はね、紳士的ではない彼の表情も大好きなんですよ」


 それは私にとっての最大の惚気だった。


「嘘だよ! そうやっていい子のフリをしているだけでしょう? 全部、貴女の腹の中を明かしても、そう言えるの?」


 ぶわりと、魔力の風が吹き荒れた。


 光の魔力。その奔流。

「フェリクス殿下!」

 私を取り巻こうとした大量の光の魔力から、遠ざけようと彼を突き放した。


「貴女の心の闇も何もかも、全部! 見せてもらうんだから! もう、フェリクス様を好き勝手なんてさせない!」


 心の、闇?

「いやっ……」

 走馬灯のように、私の中を様々な記憶が過ぎって──。

 前世での恐ろしい記憶が表層までせり上がり、そのトラウマも、恐怖も全てを呼び起こされそうになって──。


 ジャラ、と鎖の音が聞こえて。


 夜会の会場の中心に居たというのに、体を浮遊感が襲った。



「何!? なんなの!?」

 リーリエ様の悲鳴に近い叫び声。


『ご主人! 空間転移魔術が使われている!』

 ルナの声と共に私は空中から放り出されるような感覚を覚えて、そして──。


 ドサリ、とどこかへ投げ出され、身を固くしたところで、何かが私を支えた。

 柔らかいクッションのような何か。背中からひっくり返ったまま、何かを下敷きにしていた。

「おっと。危ないところでしたね、レイラ」

「クリムゾン?」

 先程の会場に居たはずのクリムゾンを下敷きにしているこの状況。

 辺りを見回して分かったのは、ここがどこかの空き室だということ。

「よいしょっと」

 難なく起き上がったクリムゾンは、私を支えながら起き上がり、私は彼の膝の上にちょこんと座っていた。

「えっ? あっ……!」

 慌てて立ち上がる私を微笑ましく眺めていたクリムゾンは、そのまま悠々と体を起こすと私の隣に立った。

「ここは、先程のホールと比較的近い場所です。少し離れては居ますが、同じ屋敷の中ですからご安心を」

『どうやら、奴が助けてくれたらしいぞ』

 髪は赤ではなくて、ブレインとしての髪の色。

 空き室と言いつつも、客が泊まれるように常に整えられており、ベッドメイキングも完璧な客室の中。

 ふかふかの絨毯の上に、彼女は転がっていた。

 鎖でぐるぐる巻きにされた状態で。

「さて、と。光の魔力の持ち主と言うのは、頭の中がアッパラパーなんですか? あんな場所で余計な魔術を行使するなど」

「貴方誰!? その女の仲間なの!?」

「ああ、面倒くさい……」

 ジャラリと大量の鎖の音がして、クリムゾンの周りから突如出現したそれ。

 ジャラジャラと音を立てて、さらにリーリエ様に巻き付いていく。

「いやっ! なにこれ! 離してよ!」

 闇の魔力の塊で出来ているらしい、クリムゾンの物理的な武器。

 確か……。

「何これ、魔術が効かない!?」

 そう。確か。

「魔術を抑制する……鎖」

『光の魔術──審判の魔術とやらを発動する前に、その鎖とやらがそこの娘の魔力を抑制して魔術を阻止したらしい』

 ルナの状況説明で大体把握した。

 私は審判の魔術で、過去の──それも前世の記憶までも掘り出されそうになったのだ。

 危うく、それらが晒されそうになった瞬間に、クリムゾンがリーリエ様ごと、ここへ連れて来たらしい。


「いくら魔力が高いからって、人のプライバシーの詮索は不粋なのでは? 特別なお姫様扱いでもされて、勘違いしきったあげく、頭のネジが数本飛んでマトモな判断すら出来なくなったのですかね?人間、こうはなりたくないものですよね。愉快、愉快」

『この男、煽りよる……』

 クリムゾンは誰かを煽らないと生きていけない呪いにでも罹っているんだろうか。


「どうして!? 私の魔力は誰よりも高いのに! どんな魔術でも振り払えるのに!」

 リーリエ様が鎖から抜け出そうともがいている。

「自分が選ばれた存在で、特別な存在とでも思っているのならご愁傷さまです。光の魔力なんて欲しがるのは、切羽詰まり始めた俺の主くらいですよ」

 主?クリムゾンの? 彼には従っている誰かが居るということ?

「どうして、そんな酷いこと言うの? 貴方の主なんて知らない!」

「本当のことですからね。それと魔力量は、俺とどっこいどっこいです。多少は貴女の方が上ですが。まあ、俺の魔力量はあと少し増えたらマズいから抑制しているところはありますがね」

 魔力が増えたらマズイ? どういうこと?

『ご主人。この世の理とは、窮屈なものが多い。真実自体は取るに足らない簡単な事実だが、そこに至るまで我々は口出しが出来ないことになっているのだ。上級精霊が決めたことだからな』

 ルナがよく分からないことを言っている間に、クリムゾンはぐるぐる巻きにしたリーリエ様を転移魔術の術式の上にぽいっと投げ込んだ。

「面倒ですし、後は騎士に任せますか」

 鎖でリーリエ様が引きずられて行って、転移魔術の光の中に彼女は消えて行った。

「リーリエ様はどこに?」

「先程の会場にあのまま戻しました」

 夜会では、ある一定以上の魔力を行使すると、問答無用で騎士たちに取り押さえられるという決まりがある。

 クリムゾンが任せると言ったのは、騎士たちに後は任せるという意味である。

 どうやらぐるぐる巻きのリーリエ様をそのまま、先程の場所へと再び転送したようだ。


「さて、邪魔者はおらず、2人きりですね?」


 クリムゾンは体調不良で顔色が悪い中、心から嬉しそうに微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ