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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第三章

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第六十六話 下山の先

 シノブの手当てが良かったのか、アカさんとの喧嘩で負った傷も思っていたよりも早く癒えてきた。

 いや、それどころか軽めのシャドーをしてもキレがあり、トレイナとのスパーでも結構動けた。


「……なんか……御前試合からそんなに経ってないのに……前より強くなった気がする?」


 傷を癒し、ココニール・マウンテンを下山途中で軽めのトレーニングをし、俺は思わず呟いた。

 御前試合の前は二ヶ月間みっちりトレーニングをして成長を実感できたのに、あれから僅か数日で俺は前より強さを感じていた。


『それはやはり、実戦での経験が活きたのだろう』

 

 そんな俺にトレイナは「当然」とばかりに頷いた。



『世界でも強者の部類に入るであろうアカと、手加減なしの命をすり減らす戦いをしたのだ。筋力や運動神経に変化はないかもしれないが、感覚が一皮も二皮も剥けたのだろう』


「感覚が……?」


『そして、もう一つは自信だ。あれほどの強者を相手に死を恐れることなく前へと飛び込んだことによって、感覚だけでなく、精神的にも強くなったはずだ。それに、忍の女との戦いも良い経験になっただろう』



 自分では正直分からないが、言われてみたらそうかもしれない。

 あんなに強かったアカさんと、足を止めて殴りあった。

 あの強力な拳をまばたきせずに額で受け止め続けた。

 あと、ついでにシノブ。

 感覚と精神の向上で、こうも変わるもんなんだな。


「なんか……今ならどんな修行でも耐えれて、もっと強くなれる気がする」

『いい傾向だ。御前試合のような明確な目標がなくとも、自分で「やりたい」と思えることはな』


 そう、現在の俺は「とりあえず強くなりたい」という感じで、明確で身近な目標があるわけじゃない。

 しかしそれでも、強くなる自分が嬉しくて、自らトレーニングしたいと思うようになってきた。



『たとえ、身近な目標が無くとも……手に入れて損をしないもの、それが『強さ』と『誰にも負けぬ特技』と『金』などだ。たとえ、今すぐ必要でなくとも、あることで決して損はしない』


「へぇ……金か。まぁ、たしかにそれなくて不安だったからな」



 必要なくても、あって損はしない。確かにその通りだった。

 そして、今の俺はもっとも「強さ」を欲して、調子も良くなっている。

 得られるうちに、たくさん手に入れたい。


「なぁ、トレイナ。せっかくだし、この山でもうちょい修行しねーか? ここなら、パルクールの特訓もできるし、修行といえば山篭りって感じだしな」


 以前のように、おっぱいだなんだとニンジンぶら下げられているわけでもねーのに、俺自身も何かが変わってきた。

 アカさんとの出会いと喧嘩と仲直りと別れ。それらが確かに俺を少し変えたのかもしれない。

 あと、ついでにシノブ。

 だが、そんなやる気が出てきた俺に対してトレイナは……


『いや、元気になったのならまずは下山だ。トレーニングは平地で行う』

「な、にい? 何でだよ! せっかく山に居るんだぞ? ほら、山って空気が薄いから、ここで鍛えて下界で戦えば、より強くなってる的な感じじゃねーのか?」


 せっかくのやる気に水を差すような、というか以前のトレイナだったら睡眠中でもトレーニングをさせるほどだったのに、どうして? 

 だが……



『逆だ。空気が薄いからこそ、これまでと同じ、ましてやこれまで以上の質の高いトレーニングができないのだ。そうなれば、必然的にトレーニングの負荷を落とさなければならない。高地トレーニングで確かに心肺機能を高めることはできるが、貴様はまだ平地で質の高いトレーニングをした方がいい』


「そ、そういうもんなのか?」


『うむ。理想は、空気の薄い場所では寝泊りなどして体を順応させて、トレーニングは平地で行う……余はそれを、『マジカル・リビングハイ・トレーニングロウ』と呼ぶが、それでも体を順応させるのに数週間以上も要する』



 またもや出た、トレイナ理論。


『貴様に技術やパワーが既に身についた状態で、より高みを目指すのであればそのトレーニングも有効だが、今の貴様はまだ一つの技術や知識でいくらでも成長できる。ならば、平地でトレーニングをし、そして平地で世界を渡りながら知識を増やしていく……今はそれでいい』


 流石はトレイナ。別に優しくなったわけじゃなくて、ちゃんと理由があるわけか。


「そっか、じゃあ……このまま山を降りてってことか」

『そうだな』


 帝都から森に迷い込み、アカさんと出会い、ホンイーボの街にたどり着き、またアカさんの家に戻って喧嘩。あと、ついでにシノブと戦った。

 数日体を休め、そして今は山を登って向こう側に下山している途中。

 明確な目標がなくても、足は軽やかに進んだ。



『さて……となると、この山を下った先にあるのは……どこだ?』


「ああ。ホンイーボから出発して、ココニール・マウンテンを越えたところだと、俺の記憶が正しければ……商人たちが集う街……『カンティーダン』……だったな」


 

 俺も帝都の外の地理を完全に覚えているわけじゃないから、曖昧だけどな。

 


『ああ、それならば余も聞いたことがある。何百何千の商人たちが露店を開いている有名なマーケット通りがあるやつだな。伝説級のお宝と偽ってコピー商品を売ったりしている詐欺まがいな犯罪が行われる一方で、経済効果があるために潰すこともできない街だったな』


「へぇ、あんたも知ってるんだな」


『まぁ、その街は何かと、いわくつきな街だからな。余も噂程度では耳にしている』


 

 いわくつき? なに? そうなのか? それは聞いたことないぞ?

 俺は、色んなものが安くて手に入る街って噂しか聞いたことなかったから。



『丁度よいではないか。貴様は、ハンターにもなれんのだ。この間の戦碁のように金を稼ぐにあたって、その街で掘り出しものでも探そうではないか』


「いやいや、掘り出しものって……俺は目利きできるわけじゃねーし……」



 そんな簡単に掘り出しものなんて見つけられるのか?

 そう思った俺の前では、神々しいオーラを放っていかにもツッコミ入れてほしそうなトレイナ。


「あ~、トレイナ……ちなみに、あんた……そういうのは……」

『この大魔王の瞳は、あらゆる真贋を見分けようぞ』


 あ~、はいはいスゴイスゴイ。なんか、だんだんとこいつがどれだけすごくても、驚かなくなったぞ。



『まぁ、そういう専用の魔法が無いわけではないが、真贋を見分ける能力を培うのも良い経験になる。うまくいけば、一攫千金もありえるぞ?』


「いや、あの……俺はとりあえず、強くなりたくて、別に鑑定士になりたいわけじゃ……」



 とはいえ、流石に街に立ち寄らずに旅を続けられるわけがないから、結局寄るんだけどな。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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