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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第十一章

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第六百三十二話 暗躍

「ああ。『帝国コーヒーのホシノコーメダ』……女神のカリー屋さんにお届けしてくれたかい? え? 現場に誰もいないから置き配? ああ、それでいいよ……彼らも、それどころじゃないんだろう。深海のお姫様や王子が出るぐらいにね……ま、それだから、第二竜宮城がスカスカになってしまったわけだけどね……」


 それは、ディパーチャー帝国領土の中でも有数な大都市であるイナーイ都市にいるとある人物が、魔水晶を使って遠くの人物としていた、とある会話だった。


「それにしても……ふふふ、ハッキングはそこそこの腕前で魔眼持ちの姫に、伝説級の戦闘力を持った王子……結構厄介だから、こっちはどう目を盗もうかと思っていたところで、彼は真正面から喧嘩……ああ、見たかったなぁ、俺の推し・アース・ラガンの新たな伝説……ま、闇の賢人が録画してくれていることを祈ろう」


 その大都市を取り囲む巨大な城壁の上に建てられている望楼にて、執務用のデスクと大量の書類に囲まれながら、一人の男が空を見上げて笑みを浮かべ……


「で? 例のモノはちゃんと回収できたかい? 王子と姫……ゴクウ、ベアキン、ツウ、ゲンブの邪魔な害獣四天王やらが全部海上に出張っているんだから……まさに予想外のチャンスじゃない? 油断しているところ、お尻にブスリ……うふふふふ、これが最高に気持ちいいサプライズだ♪」


 人知れずに世界の裏で暗躍していた。

 













 クロンの世界一可愛いダソソに皆が意識を奪われているところに、突如として野太い怒声が響き渡った。



「「「「「うおおおおお、クロンちゃんと姐さんを守れぇええええ!!!!」」」」


「二人に何かあったら、覚悟しろよぉ!」


「おうよぉ、冗談じゃなくマジで人柱にして建築資材にしてやらぁ!」


「そこの亀ぇ! クロンちゃんと姐さんは無事なんだろうなぁ!」


「もしクロンちゃんに傷一つついてたらお前ら、許さねえ! ついでに一緒にいるアースもぶん殴る!」


「そうだぁ、クロンちゃんを死んでも守れよぉ、アース・ラガン!」


 

 急に聞こえる騒がしい声。

 声のした方へ振り替えると、泥だらけの屈強の作業員の男たちが帆船に乗って声を張り上げていた。



「まぁ~、兄弟たちがいるからむしろ世界一安全だと思うけどよ……」



 そんな一団の先頭、帆船の船首の上に両腕組んで脚広げて立ち、その表情は男たちの荒ぶる空気に当てられて苦笑している。


「あら? お母さん、あれはブロです! それに、現場の皆さんもいます!」

「ん? ……労働者共か……あやつら……やれやれ、足手まといだから来るなと言ったのに……ブロめ、珍しく押し切られたか……」


 クロンたちが世話になっている建設現場の男たちが、ブロとともに船に乗ってこちらに近づいてくる。

 それに気づき、アースたちも思わず笑った。


「おいおい、こりゃどういうことだ?」

「あははは……お兄ちゃんとクロンちゃんの帰りが遅くてね……私とスレイヤ君とヤミディレが捜索に出るって言ったのに……みんな我慢できずについてきちゃったようだね」

「やれやれ……本当に人間だとか魔族だとか一切関係なく、心の底から大人気なんだね……彼女は」


 そう、そもそもことの発端は、アースとクロンとヒルアがカリーの配達の途中で深海族に攫われたことによるもの。

 アースの捜索に、エスピとスレイヤとヤミディレが動き、それだけで十分だったのだが、クロン行方不明という事態に建設現場の男たちは我慢できずに船を用意して駆けつけたようだ。

 

「くはははは、だけどもう全部終わってるんだけどな……」

「えへへ、だけど嬉しいです……でも、同時に申し訳ないです。こんなに心配させてしまいまして……」

「じゃあ、手でも挙げて無事をアピールしてやれよ、クロン。じゃないと、せっかく戦い終わったのに、あいつら普通に殴り込む感じでこっちに来るぞ?」

「ええ、そうですね」


 アースに言われて、クロンもニッコリ微笑んで両手を挙げてその場で飛び跳ねる。



「おーい、みなさーん! 私たちは無事ですよー! ここですよー! みなさーん、私もアースもヒーちゃんも、みーんな元気ですよ~!」


「「「「「うおおおおおお、クロンちゃんだー! よかった、無事だ! うおおおお、クロンちゃーん!!」」」」」


「はーい、無事でーす!」



 殺気立って怒号を上げていた男たちが、一斉に目を輝かせてだらしのない笑みを浮かべて、先ほどとは違った種類の声を張り上げる。


「よかった、クロンちゃーん、心配したぞー!」

「もしクロンちゃんに何かあったら、俺らぁ、俺らぁ~」

「うおおおお、よかったよー!」

「あ~、もう、可愛いぜぇ!」

「くそぉ、あんなに可愛いから誘拐されるんだ、ほんとにおっちゃんは心配だぜ」

「アース・ラガン、流石だ! よくぞクロンちゃんを守ったぁ!」

「ヒルアー、お前も頑張ったんだろーなぁ?」


 安心したら殺気は失せ、あとはもうクロンの可愛さにデレデレになる男たち。

 そして、もう気分が盛り上がったのか……


「よーし、もう無事を祝して、アース・ラガン……クロンちゃんにチューでもしてやれぇ!」

「そーだ、チューしろ!」

「キッス! キッス! キッス!」


 と、ふざけたことを煽り始めた。


「ちょっ、な、何言ってんだよ、あのおっさんたちは!」

「あははは……お兄ちゃん……するのぉ?」

「お兄さん、一応お兄さんからのキスはあらゆる意味で重いから、軽はずみにはね……まあ、本気なら応援するけど」

「んあぁ! おにーちゃん、するのん! おにーちゃん、クロンちゃんとブチュってするのん!」


 その煽りにアタフタするアース、ニヤニヤするエスピに、真剣な顔で腕組してるスレイヤに、嬉しそうなヒルア。

 そして……


「クロン様、民衆が味方しており、流れに身を任せるビッグチャンス到来です! 空気を読むということで、ここはひとつ!」

「あ、う、き、きっす……アースと……あ、あうう……」

「クロン様! いつも、手をつなぎたい、ハグしたい、キスしたいとと言っていたでしょう! 今こそ、サクランボで鍛えたキステクニックのお披露目です!」

「そ、そうなのですが……うう……」


 魔眼をキラリと光らせて、クロンの背を押しまくるヤミディレ。

 一方でクロンは急にモジモジウジウジして顔を真っ赤にして俯いてしまう……



「だ、だって……い、いま、キッスなんて……アースとしたら……幸せすぎて心臓が爆発しちゃいます……は、恥ずかしい……」


「はうっ!?」


「「「「「「「か、……わ……い……」」」」」」


 

 先ほどのタツミヤとの戦いでアースに完全に惚れに惚れ直して、逆にいつもの積極性が身を潜めてしまったクロン。

 しかしだからこそ、そのいつもは見せないモジモジしているクロンの姿に、ヤミディレも男たちも心奪われ、なぜか涙を流してしまう。


「おのれぇ、アース・ラガン! クロン様にこのような顔を……ええい、何をやっている! ここは男の貴様からクロン様を抱きしめてブチュっとしないかぁ!」

「クロンちゃんがあんなに……本気の本気の本気で恋した乙女……か、可愛すぎる!」

「ちくしょぉ、やっぱアース・ラガンは許せねえ! マジでクロンちゃんを幸せにしなきゃ許さねえ!」

「ちくしょお、殴らせろぉ、アース・ラガンッ!」


 その感情の矛先は何故かアースにぶつけられる。


「な、なんで俺に……俺にどうしろってんだよぉ……」


 神経をすり減らすタツミヤとの戦いを終えて、自分も結構疲れているというのに理不尽すぎる声に項垂れるアース。

 そして、そんな光景には、立ちはだかっていたゴクウたちも笑ってしまった。



「ウキキキ、やっぱ大人気だなぁ~……お姫様。こっちのオツちゃんもあれぐらい愛想があればいいのによー……そうしたら、もっと皆がその恋を応援してくれるのによ」


「やめるのです、ゴクウ。とはいえ……そうですね……これほどまでに、異種族の女を慕い、その恋を応援する……何とも皮肉なものですね……」



 そして、笑うと同時に、自分たちの立場として複雑な心境にもなった。

 心折られ、俯き、そして大粒の涙を流している自分たちの姫の姿を見て……



「……アース・ラガン……クロン……ッ、うう……わちしは……わちしは……イリエシマ様……ッ―――――――」



 この光景を同じように見せつけられているオツが立ち上がろうとする。

 だが、


「動くな。目を閉じろ。つぶすぞ?」

「あ、いちおー、もうこれ以上はやらないつもりだけど、そっちがするなら私たちが許さないからね?」

「言っておくけど、僕もエスピもヤミディレも、あの二人を守るためならこの世の誰よりも残酷になれるからね?」


 立ち上がろうとしたオツ。もはや戦意はない。

 それでも、決して油断も見過ごしもしないと、今の今まで笑える空間にいたはずの、ヤミディレ、エスピ、スレイヤの三人が冷たい容赦ない目でオツの四方を取り囲み、その両目をヤミディレが寸止めで目つぶししようとし、後頭部にはエスピがいつでも能力を発動できる状態で構え、横からスレイヤはいつでも首を落とせるようにナイフをオツの首に添えていた。


「ちょ、おい、ヤミディレ、エスピたちも、もうオツちゃんをそれ以上イジメないでやってくれ。タッちゃん負けた時点でもうどうすることもできねーからよぉ」

「虫がいいのは承知だが……もう、ここまでにしてもらえないでしょうか?」


 ゴクウたちももう争う気はなく、何とかヤミディレたちを宥めようと頭を下げる。

 それほどまでに、今のオツはもう見ていられないほどの悲惨な表情をしていた。


「ひぐっ……あ……う、あ、……ああ」


 今この場だけでなく、今後も何か企まぬように徹底的に心を折るかのような圧をかける三人。

 それだけでオツは本能に刻まれる。



(勝てない……計画もここで潰され……会えない……に、二度とイリエシマ様に……あ、嗚呼……も、もう、何もかも終わり……何もかも―――こうなったら、もはや今世であの方に再会できぬなら……こんな世界―――『古代兵器・ 海爆』で―――)


「魔極真虎口拳」


「はがわ、ああああ、め、あ、目ぇがあ!?」


「ちょ、お、オツちゃああああん! や、ヤミディレ、お、お前!」


「いま、よからぬことを考えた目をしていた……ので、眉間を殴って一時的に視力を奪った……」



 そして、脅しでないことを分からせる意味でも、ヤミディレだけはさらに容赦しなかった。


 






 たが、そんな海上のやり取りとは別に……


「……おいおいおいおい……パナイまじで?」


 クジラの中にいたパリピが、クジラの体内の指令室のような場所で顔を引きつらせていた。


「おい……クマるベア……闇の賢人。少し見学したい……それができたらもうハチコたちは見逃す……引き上げる……という条件とはいえ、あまりガチャガチャと操作されるのは気になるベア」


 そんなパリピを見張るように、クマの獣人のベアキンがため息を吐きながら立っている。

 だが、そんなベアキンの言葉など無視して、パリピは顔を引きつらせながら、目の前の巨大なガラスに映し出される文字と、妙なボタンをカチャカチャ押しながら何かを調べている様子。

 そして……



(……古代兵器・海爆……面白くなさそうだから、調べて処分しとこうと思ったけど……保管されている場所のセキュリティ……破られて、警報鳴らないように小細工されてね? こいつら深海族や獣人の脳みそ畜生レベルの奴らじゃ気づかないんだろうけど……俺なら……え? いやいや、これ……誰か、こいつらのアジトに侵入して……海爆……盗まれてね?)



 海の中で、そしてさらに深海にて、自分たちの知らない間に何かが動き出していることに、パリピだけが先に気づいていた。




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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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