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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第十一章

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第六百二十六話 ド突き合い

 それは、あまりにも不条理だった。


(この野郎、パンチの打ち方の基本も知らねえのかよ!)


 何度も反復練習。そして絶え間ない実戦。そうやって培ってきたアースのパンチ。

 それを、フォームもメチャクチャ、タイミングも組み立てもクソもないブンブン振り回すだけのパンチ。

 それに手を焼かされてしまっている。


「怒羅ァァァァ!!」

「カウン……いや、駄目だ、クソ!」


 メチャクチャすぎてタイミングが取りづらい。

 そして、避けにくくなっている。

 一発でも被弾すれば吹っ飛ばされるし、掠ってもタダでは済まないため、アースが慎重になるのは当然のこと。

 ジャブを何発くらおうと、目の前にカウンターのパンチが飛んで来ようと、構わず突っ込んでくる。


(くそぉ、何かこんなのに振り回されて……情けねぇ……これだけスピードも違うんだから、俺が振り回すぐらいじゃねえと)


 そんなタツミヤ相手に、冷静に対処しなければと頭で分かってはいても、アースも段々と自分にイライラしてきた様子。

 だからこそ、改めてタツミヤを振り回してやろうと技を披露する。


「アース・ミスディレクション・シャッフル!」


 まさに敵を翻弄するための、アースのステップ。


「出た、お兄ちゃんの必殺フットワーク! ヤミディレ、パリピにも通用していたあのステップなら……」


 そう、六覇相手にも通用して振り回してきたこのステップなら……とエスピたちも思った。


「ウキキ、いやァ、どうかなァ?」

「ソレに振り回される方ではないですよ」

「……確かに、私には効いたが……そやつには……」


 だが、ゴクウたちや、ヤミディレ本人、そして何よりも……


『フェイントは……ある意味で、相手の動きを意識している相手にしか通用しない』


 そう、相手の動きをよく見るのは戦闘において当たり前。

 しかし、自分が攻撃すること以外何も考えていない者も稀に存在する。

 だからそういう存在は、ただ相手の位置だけを認識して、後はただガムシャラに突っ込むだけ。


「怒羅ァァァァ!」

「ここだ、ココでタイミングをズラし……って、見てねえ?! 俺を? ただ真っすぐ突っ込み――――」

 

 アースがどんなフェイントを繰り出そうと、そもそもフェイント自体を見てないので関係なかった。


「やばっ、コレ―――」

「もういっちょ、怒羅ァァァ!」


 寸前でステップを止めてガード。しかし、ガードしたアースの両腕を吹き飛ばす。


「んで、もういっちょ――――」

「あっ―――――」


 追撃。大きく振りかぶっての一撃。

 両腕を吹っ飛ばされてカウンターができない。

 

(ふざけんな! なんだこいつ! こんな理不尽で下手くそで、何の読み合いもクソもない……不良? ブロと同じような……いや、ブロはヤミディレ直伝の蹴りでちゃんとした体術の基礎があって……このメチャクチャさはゴウダに……いや、なんか―――)


 そう、どこかタツミヤのそのスタイルはゴウダを髣髴とさせた。

 だが一方で、このときアースは不意にある人物も脳裏に過った。



――あっ、できた


「ッ!!!!!」



 そのとき、「なんか試したらできちゃったけど、俺何かやっちゃったか?」みたいにとぼけた顔の父親。

 苦労も努力も関係なく、才能の一言で片付いてしまう常識が通用しない相手―――


「潰れろやァァァァァ!」

「うるせえこの野郎ぅぅぅぅ!」

「ッ!?」

「うるあああああああ!」


 向かってくるタツミヤに対し、アースは両腕のガードを弾かれて使えない。

 だが、そこでアースは、何故か不意に爆発したイライラの全てを発散するかのように、全身を投げ出すように頭突きを繰り出し、その額をタツミヤの人中に叩き込んだ。


「大魔ヘッドバット!」

「うごぉ、ごぉお、おごぉ!」


 まさに痛恨の一撃。


「いっ、うわああ、お、お兄ちゃん!?」

「こ、これは、い、いっ……」

「わ、わわ」

「んあああああ、ゴツンっていったのおおおん!」


 それは見ているだけでもゾッとする光景。

 そしてそれは同時に……


「ウキキ、アース~」

「おやおや……」

「アース・ラガン……タツミヤの舞台に」

『ふむ……上がったか……上げさせられたか……いずれにせよ―――』


 ゴクウ、ツウ、ヤミディレは理解し、そしてトレイナは『仕方がない』と頷き。


「……はっは~……今のは……ガツンときたでぇ?」


 そして痛々しい真っ赤に染まった口元で、それでもタツミヤは笑みを浮かべた。


「ほな、もういっぺんいこかァ!」

「うるせえ、パンチってのはァ、こうやってぇ!」

「ほぶっ?!」

「こうやって、こうやって、こーーーーーやるんだよぉ!」


――大魔ラッシュ!!


 もはやアースも組み立て一切無視の、スピードと勢いに載せただけの左右のラッシュ。

 その全弾がタツミヤの顔面を撃ち抜く。


「はっはー、ええのぉ! だんだんお行儀いい坊ちゃんパンチから、粋がよくなったでぇ! 怒羅ァァァ!!」

「へったくそぉ!」


 タツミヤが構わず振りかぶり、振り抜く。

 一方でアースも踏み込む。

 先ほどまではタツミヤのタイミングを的確に読めずに躊躇していた。

 だが、もうキレたアースは、やぶれかぶれのようにヤケッぱちのカウンターを繰り出す。

 しかし、ソレが運よく、そしてある意味で運悪くタイミングが合った。

 タツミヤのパンチをギリギリで躱しながら身を乗り出して、更に拳に捻りを加えた右拳で……



――大魔コークスクリュージョルトクロスカウンター



 頭突きで撃ち抜いた箇所とまったく同じ個所に渾身の拳をアースは叩き込んで―――


「秘技・ガチンコカウンターッ!!!!」


 その刹那、自分のパンチを回避されながらカウンターを叩き込まれる勢いを逆に利用し、タツミヤは顔面を更に投げ出して、アースの渾身のパンチにぶつけ―――


「こ、の野郎ぅ!」

「ごほオおおお、ぐう、はァ、はっはああああああ!」


 グシャッと肉が潰れる生々しい音と、骨が砕ける鈍い音。

 しかしタツミヤは顔面真っ赤に染まりながらも、拳を受けながらも、また笑いながらアースの拳を押し返し、更に前へ出て―――


「大魔スマッシュッ!」

「おごっ!?」


 その前へ踏み込もうとした瞬間、間髪入れずにアースの左のアッパーが繰り出され、タツミヤの顔面が跳ね上がる。

 しかし……


(あっ、やば……俺の右拳……)


 左のアッパーを撃ち抜きながらも、タツミヤの顔面に叩き込んだ右拳にアースは異変を感じる。


『指にヒビ……手首も痛めたか……当然だな。奴の強固な頭蓋を両者の勢いを乗せてぶつけ合ったのだから―――』


 トレイナもアースの異変に気付く。

 そして、アースがその痛みに僅かに眉を潜めた瞬間、アースが回避したタツミヤの左手が、そのまま後頭部からアースの頭を掴み……


「ええで、ええでぇ! ワイにもコレやらせぇ!」

「ッッッ!?」

「怒怒怒羅ァ!」


 アースの顔面にタツミヤの頭突きが叩き込まれた。


「あ……やばっ、お、お兄ちゃんの……」

「これは……いけない、モロに!」

「アースのお顔に……あう、うう、アース、がんばって!」

「んああああ、めちゃんこ痛いのぉぉんん!」


 またもや目を背けたくなるほどの痛々しい攻撃。

 鼻血と口内を切った血で、アースの顔も真っ赤になる。


『童……闘志を燃やして勇敢に身を投げ出すように一歩を踏み出すことと……もうどうにでもなれとやぶれかぶれのラッキーパンチを狙うのとでは、まったく違うぞ? アオニーとの戦いも、ゴウダとの戦いも……闘志や根性をむき出しにしても、破れかぶれでは決してなかったはずだぞ?』


 そんなアースをトレイナは腕組しながら厳しい目で見つめ……



『運よく勝つのではない……ちゃんと納得したうえで、勝つべくして勝て!』



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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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