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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第十章

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第五百六十八話 強さではなく性能

 異形な何かがやってきた。

 通りを埋め尽くす謎の集団。生命とは違う何か。

 そして、その奥からゆっくりと地響き起こして向かってくる超巨大な何か。


「ななな……なん、なんだありゃ!?」

『……異質な……それにあの巨大なもの……バサラよりもデカいぞ。何者? いや、何物だ?』


 アースとトレイナを始め、シノブたちも、そしてジャポーネの民たちも気づいていく。

 いきなり現れた「何か」に。


「……おい、猿。雉。アレも本当におぬしらのオモチャじゃないのじゃ?」

「だから知らないっつーのぉ!」

「むしろお前らじゃねーのか? もしくは天空世界が何か持ってきたか?」

「いや、僕も知らないよ……」

「ふぁ、え、あぅ、何アレ……で、でもアース様がいるんだもん、何も怖くないもん! ……だけど……」


 ノジャもゴクウたちもこの瞬間は争いを忘れて首を傾げている。

 ただ、状況は理解できずとも、互いに嫌な予感を感じ取っている。

 すると……



「「「「「で、でっかい!?」」」」」


「な、なんだぁ、こいつら!」


「こわい……なに? なんなの?」



 ずらりと並ぶ鉄髑髏たちではなく、最奥から近づいてくる、見上げるほどの超巨体。

 並のドラゴンよりも遥かに巨大なその異常な存在に、ついに民たちも悲鳴の声を上げた。


――何だアレは!


 と。

 すると……



『反逆の徒……いかなる理由も不要。国家を乱すテロはすべて否定し、全て弾圧し、全てを罰します。この、正義の破壊神・ゴドラと、新たなるジャポーネの戦士・ターミニーチャンたちによって』


「「「「ッッ!!??」」」」



 そして、前方から聞こえてきた冷たい声。声からして少女。

 その声を聞いた瞬間、シノブはハッとした。


「この声……マクラ……」

「マクラ? シノブ、それって確かお前の……つか、ゴドラ? ニーチャン? なんだそりゃ?!」


 声は巨大な『何か』から……マクラが名付けたゴドラの中から聞こえてきた。


『……童、油断するな』

『いやいや、トレイナ。あんなデカくてヤバそうなのやら、ピカピカの髑髏の不気味な集団相手に油断なんてねーだろ!』

『うむ……ただデカいだけではない……あの兵たちも人形のようだが、それゆえ不気味……強さが判断できん』

『……たしかに』

『そして……強さというよりも性能……』


 戦いにおいて、対峙した相手の力量を図るのは重要なこと。

 相手が大したことないのか、それとも強者なのか、相手の雰囲気やたたずまいなどからある程度察することができる。

 しかし、現れたターミニーチャンたちやゴドラという存在に対し、アースたちは力が判断できなかった。

 ただ不気味で、そして未知であると。



「なんか、俺様もよく分かんねー匂いやらが混じってどうすりゃいいんだって感じだけど……でも、あの中にシノブの友達いるんだろ?」


「ゴクウ?」


「あの中から引きずり出してやりゃいいんだろ?」



 現れた何かたちの力が図れぬなら、ぶつかってみればいい。そんなノリでゴクウが駆け出す。


「ウキーッ! つーわけで、俺様はいっくぜー!」


 その足を誰も止めることはできず、そのままゴクウは振りかぶった拳を突き出して、


「猿拳ッ!!」

 

 ゴクウが勢いよくターミニーチャンの一人を殴った。


「うわ、は、速い!」

「さっすがぁ!」

「まともに入ったぁ!」

「うおおお、いーぞー、ゴクウ!」


 ゴクウの速攻に民たちも沸く。

 ゴンッと鈍い音が響き、ターミニーチャンも体が揺れる。

 だが……



「かっ、かった……うお、かってぇ~~~~! なんだぁこりゃ!?」


「「「「ぇ……」」」」


「ふいー、拳潰れちまうぜ~、おー、いちちちち、なんだよぉ、こいつぅ!」



 殴ったゴクウが拳を痛めて涙目に鳴りながらブラブラさせていた。

 一方で、殴られたターミニーチャンはよろめいたバランスをすぐに戻して、何もなかったかのように元の態勢に。


「ゴクウ、まじか?」

「まるで堪えてない……ノーダメージ? ゴクウの攻撃を!?」

「……痛みが無いというか、やはり生き物ではないのじゃ。ゴーレムの一種なのじゃ?」

「ゴクウくんのパンチを……驚きだっつーのぉ!」

「わ、わわわ、な、なんなの!?」


 ゴクウの拳にノーダメージ。

 しかも、雑兵と思われる同じ髑髏の顔と体格のターミニーチャン1体がだ。

 それが数百体は見える。

 アースたちもゾッとする。


「お、おかあさん、な、なに? どうなっちゃうの?」

「あ、あなたたちは後ろに下がってて……」

「おい、どうなってんだ? なんなんだよこいつら……」


 この事態に先ほどまで大盛り上がりだった民たちも不安そうに後ずさりする。

 この後何が起こるのか?

 自分たちはどうなってしまうのか?

 すると……



「テロを行うものに歓声を上げる……称賛する……そんな反ジャポーネ国民も同罪です……危険思想は根絶やしに……ユルサナイユルサナイユルサナイ! テロ現場で悲しみではなく歓声を上げる愚か者たちは、全員逮捕ッ! 反逆は死刑ッ!」


「「「「ッッッ!!??」」」」


「ちょ、……マクラ! 待って、マクラッ!」



 暴走で狂ったマクラからの怒号と共に、列を作って歩いていたターミニーチャンたちがその目を赤く光らせ、一斉に動き出した。

 民衆を取り押さえようと次々と―――


「きゃああ、いや、なんかきたー!」

「た、たすけてくれーっ!」


 慌てた民たちが悲鳴を上げるも、密集していて動けない。

 そこに……


「おいおいおい、なんかもーわけわかんねーけど何やってんだぁ!」

「させないわ、マクラ!」


 アースたちも動き出し、民たちを守るようにターミニーチャンたちの前に立って行く手を塞ぐ。

 そして……


「大魔ソニックフリッカーッ!」

「土遁・岩礫!」

「疾きこと風の如く!」

「音響破壊波歌!」

「メガ・ウィンド!」

「スパイラルアローッ!」


 アースたちの一斉攻撃。

 ターミニーチャンたちは避ける動作もなく、真っすぐ向かってくるだけ。

 それゆえ、アースたちの攻撃を正面から直撃。

 しかし……


「うお、マジ固ぇ! いや、重い?!」

「礫が砕けた!?」

「……手応えなし……なのじゃ」

「崩壊できない?」

「魔法も……耐性が?」

「わ、私の矢が貫通しない!?」


 アースの拳を弾き、シノブの術に怯むことも、ノジャの尾に飛ばされることも、セイレーンの歌に破壊されることも、ガアルの魔法も通じず、アミクスの矢も貫通しない。

 しかも……


「排除」

「うお!?」


 ノーモーションからの急激な加速で一気にアースたちとの間合いを詰めてきた。


「ハニー!?」

「婿殿、ぬ、こやつら……」

「結構速い!?」


 鈍足かと思えば決してそんなことなくスピーディーで、さらに―――


「排除」

「ッ!?」

『避けろ、童!』


 振りかぶったターミニーチャンのナックル。

 アースが回避すると、その拳が屋根に突き刺さり、軽々と屋根に大穴を開けた。


「そ、そんなぁ! アース・ラガンくんたちの技が?!」

「うそでしょぉ! なんなのよ、なんなのこれ!?」

「しかも、速いし、パワーもあるぞ!?」

「それに、あの巨大なバケモノの中から……あれって、マクラ……王妃の……」

「と、とにかく巻き添えくらっちまうぞ!」


 ゴクウに続き、アースたちの攻撃にもターミニーチャンたちは倒れない。

 そのことに民たちは余計に顔を青くする。

 だが……



「ちっ、速くてパワーもあって、そしてカテー……並の攻撃じゃ弾かれる。パワーを集中して捻じ込むしかねえ……でも……」


『うむ。頑丈なボディだ。数十体程度を殴り壊すぐらいなら問題ないが……それ以上は、拳が壊れるな』


「だからそこを気をつけろってことだな。あとはどんな性能を持っているかだけど……それでも―――」


『……ふふ』



 トレイナの言う通り、相手のボディの想像以上の頑強さ。拳から感じる相手の密度や重さなどから、アースもそれを実感していた。

 そのほかにどれほどの性能があるかは分からない。

 だが、それでもアースに焦る様子はない。


「アース・ラガンがこれぐらいでビビってたら……笑われちまうからな」

『ああ。ゴーレムなんぞに後れを取るな……穿ってやれ』


 トレイナもアースのその言葉に頷き……するとその傍で、



「やれやーれなのじゃ……だが、相手が生命なきオモチャであるなら何も遠慮も心も痛まぬのじゃ。雷霆……思う存分磨いてくれるのじゃ!」


「ったく……変なおもちゃを俺様に向けてきやがって……なら、お返しに見せちゃうぜ? 伝家の相棒! その名も――――如意棒!」


「もう怒ったっつーのぉ! みんなして私の歌に無反応……本気で歌っちゃうっつーのぉ!」



 ノジャ、ゴクウ、セイレーンら伝説の戦士たちも怯むどころか、むしろ口角鋭く野生の牙をむき出しにして笑い、



「変なものを出してきたようだけど、それでも引かないわよ、マクラ! 今こそ自分の無力さに嘆いたパリピとの戦いからの積み重ねを見せる時よ! 必ずあなたにたどり着くわ!」


「レディ、君は下がっていた方がいいかもよ。僕が、皆や坊やを守―――」


「う、うう、怖くないもん! アースさまなら、あんなのケチョンケチョンだもん! だから、そんなアース様を私はサポートするもん!」



 シノブもガアルもアミクスも出遅れないように身構えた。

 だが、ターミニーチャンの力もまだまだこんなものではない。



「排除」



 その手が、拳から「筒」に変形して、それをアースたちに向ける。






 そして……





「えーっと、状況がまるで分かんないけど……どうなの? 私、参戦した方がいいのかなぁ? 心配無用? え、どっち?」






 空で一人蚊帳の外で、パリピとオウナの悪だくみによる役目を忠実に果たしていたアースの妹が、どうすればいいかと混乱していた。


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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