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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第十章

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第五百五十三話 危険すぎる出会い

「陛下、お待ちを!」

「裏切り者たちがどこにいるか分かりませぬ。お一人になられるのは―――」


 醜悪な容姿、でっぷりと肥えた男がイライラしながら小走りで宮殿内を駆けていた。


「ぐぬぬぬ~下級国民共がうるさいでおじゃる! 何がアース・ラガンでおじゃるか! 何がシノブに恩赦を与えてアース・ラガンと結婚させてジャポーネに迎え入れろでおじゃるか! あんな愚弟の血を引く仏頂面のぺちゃぱい姪なんぞを持ち上げる等、なんとも無礼でおじゃる! 子供の頃から朕に冷たい目をしたあのガキ……朕は王でおじゃる! 朕は国家でおじゃる!」


 ジャポーネ王国の現国王であり、シノブの叔父でもあるウマシカ。

 先ほどまで自分の耳に入ってきた周囲の言葉にイラついていた。


「このイライラを解決するには、やはりマクラでおじゃる! マクラで安眠するのが一番の癒しでおじゃる……ぐひひひひ、朕にはやはりマクラだけでおじゃる~!」


 そのイラつきを抑えるためにもと、自分の妻として迎え入れた女の下へと駆けるウマシカ。

 だが、その時だった……


「シノブは確かにオッパイ小せぇ……だけどな、イイ女だと俺様は思うぜ?」

「おじゃっ?!」

「どーしてこんなのを仲間に迎え入れるのかは俺様も分からねえが……とりあえず――――」


 突如ウマシカの背後から聞こえた声。 

 ウマシカが振り返った瞬間、視界と意識が暗転する。


「っと、これでよし。流石は俺様、瞬殺! ……いや、殺してないけどな」

「「陛下ッ!!??」」


 ウマシカの首筋に手刀を当て、意識を失ったウマシカを抱きかかえるのは、ゴクウ。

 予定通り人知れずにジャポーネ宮殿内に侵入し、更にはウマシカまで容易に辿り着いてしまった。


「なっ、何奴!」

「貴様、一体何者! どこから! いや、陛下に何を!」


 そして、ゴクウの侵入にも今の動きにも反応できなかった王の護衛の侍は慌てて抜刀する。

 本来、ただウマシカを誘拐するだけなら、目の前の護衛もすぐに意識を断つものであり、ゴクウならばそれも容易。

 しかし、ゴクウはしない。



「わーっはっはっはっはっは、俺様はとっても悪い侵入者だー!」


「「な、なに?」」


「王の身柄は頂いていくー! 王都の中央通り沿いの屋根の上から逃げるが~、捕まえられるものなら捕まえてみろー!」



 そしてゴクウはそのまま通路の壁を壊し、そこからウマシカを抱えたまま外へと飛び出し、ワザワザ逃走ルートまで教えた。


「な、へ、陛下!」

「曲者ぉ! 陛下が攫われたー! 場所は……王都の中央通り沿いの屋根の上から逃げ……何故逃走ルートをワザワザ? とにかく、今すぐ追いかけよー!」


 その瞬間、王都全体に警笛が響き渡る。王宮の侍、忍、さらに各地域の見張りが一斉に笛を鳴らし、その報は一瞬で王都に広がる。


「いたぞ、あそこにいるぞ!」

「おのれぇ、不届き者め、今すぐ討ってくれよう!」

「忍法―――」


 また、ゴクウは逃走の際に本気で逃げなかった。

 ワザと見つかりやすく、さらに追っ手が追いつけるようなスピードで屋根の上を飛び回り……



「へっへ~、きたきた! だが、お前らに俺様の相手がつとまるか~見せてもらうぜぇ!」



 そしてゴクウは笑みを浮かべながら自分の髪の毛を数本抜き、それに息を吹きかけると……



「身外身の術ッ!!」


「「「「ッッッ!!!???」」」」



 髪の毛が、全てゴクウに変化した。

 ジャポーネの忍びたちのお株を奪うかのような分身の術を披露。そして……



「さぁ、暴れろ! そしてかかって来やがれーッ!!」



 その伝説の力を披露する。










 派手に逃げ回り、適度に暴れるゴクウ。


「おいおい、どうなってんだ? 屋根の上で誰か……」

「さっきの笛と言い、何かあったのか?」

「見ろよ、あそこ! 誰か戦ってるぞ?」

「あれ……おさるさん?」


 そして、その騒ぎが民たちにも届き、民たちも王都の通りに次々と姿を見せ、そしてゴクウとジャポーネの戦士たちの姿を見つけて声を上げる。

 その様子を物陰で眺めながら……


「……おお、本当に攫いやがった……」

「信じられないわ。いくらコジロー様たちが居ないからと言って、王宮にアッサリ侵入して、本当に容易くあの人を攫って来るなんて……」

「わ~~、やっぱすごいね、あの人」

「いやぁ~俺っちもスゲー奴に兄貴呼ばわりされたもんだぜ」

「うむ……そして、坊や、シノブ、そろそろスタンバイしておいた方がよいだろう?」


 アース、シノブ、エスピ、オウナ、ガアルとその従者たち一行が苦笑しながら様子を窺っていた。

 

「そうだな……まずはある程度のジャポーネの戦士たちをゴクウが返り討ちにしたのを見計らい、シノブと俺が登場して、色々と演技をやって……」

「ええ。で、その後の流れについても……ハニー、打ち合わせ通りにお願いね、二人の共同作業なのだから♥」


 そしてこの後に自分たちがやる一連の段取りについてを確認し合いながら、アースとシノブも登場しやすい位置へ移動して準備に入る。


「でも、『アレ』……本当にやっていいのか?」

「あら、どうしたの?」

「いや、なんか……改めてやるとなると緊張して……」

「ふふふ、とってもいいと思うのだけれどね。何よりも……すごい盛り上がりそう。細かいことや多少の不自然を流せるぐらいにね」

「……そ、そうかなぁ?」

「ええ。それにしても、こういうことを思いつくのだから……ハニーの友達も色々と曲者ね」


 ちょっと恥ずかしそうに頭を掻きながら走り出すアースに、寄り添いながら微笑むシノブ。

 これからジャポーネ中の注目を浴びながら、二人はゴクウと組んであることを計画している。

 そのシナリオを描いたのは……


「いやぁ~、自分で提案しときながら、俺っちもドキドキしてきた~♪ しっかし、これをジャポーネでしか見れないとなると、ちょっと残念」


 どこまで真面目なのか分からない笑みを浮かべてウキウキしているオウナだった。


「あはは、ま、私もちょっと楽しみだけどね~」

「ふふふ、僕も是非に生で見せてもらおうじゃないか……伝説をね」

「「楽しみですね、王子♥」」


 エスピやガアルたちもこれから起こることを楽しそうに心待ちしている。

 すると……



「いやです、いや、あの、だ、あ……あ、だか、ら―――――」

  

「「「??」」」



 エスピたちの背後の物陰から妙な気配、そしてボソボソと呟いている女の声が聞こえた。

 そして……



『ひはははははは、いーじゃん、いーじゃん、教えてもらおうよー!』


「だ、声が大き……っ~……」


「「「ッッ!?」」」



 同時に聞こえてきた、陽気な声。その声に、エスピたちは一斉にハッとなった。


「ちょっと、なに? 出てきなさいよ!」

「ふ……ふふ、この声……よくもまあ、僕たちの前に現れられたものだ……」


 エスピもガアルもその声をよく知っていた。

 彼女たちが身構え、そして出てくるように促すと……



「…………こんにちは……謎の覆面です」


「「「……え?」」」



 物陰から小柄な何者かが出てきた……が、その者は何故か全身を外套で覆い、顔を布で覆い隠して出てきた。


『あ~コ「謎の覆面です!」ン……ちゃん? いや、どうした~? まあいいけど……』


 それは、エスピたちも一度会っており、その人物がアースのかつてのクラスメートだったコマンであることは、彼女の手に持っている魔水晶から聞こえるパリピの声で分かっていた。

 しかし、彼女は頑なに今更顔を隠した。

 パリピもそのことに魔水晶の向こうで不思議がっている様子。

 ただ……


「あれ? この声……」

「謎の覆面です。考えたら殺します。あと、あなたと会話もしません」

「わ……」

「ですので、あとはどうぞ我が主と……」

「……この声……ひょっとして……」


 そのことを分かっていないオウナが、その声に聞き覚えがあるなと首を傾げた瞬間、謎の覆面状態のコマンが異様な殺気を放った。

 それは単純に「この男に自分の正体を知られたくない」という拒絶の空気であった。



『ひはははは、こんばんまっする~、エスピ~。それに~ガアルちゃん~♪ まさかまだジャポーネにいたとは思わなかったねぇぇ~』


「っ、パリピ……まだ何か企んでんの?」


「ふん……何か用かい? 一応僕たち天空世界は、君の提案通りにアース・ラガンの物語が嘘ではないという証明のため、ジャポーネを通過した……まだ何かあるのかい?」



 とりあえず、エスピやガアルからすれば、コマンよりもむしろ気になるのはパリピである。

 なのでパリピにまずは問いかけると……


『それはむしろオレの方が気になるよ~。な~んか、すごいことになってんじゃん! あのバカ猿……な~んで生きてて、しかももうアースくんたちと繋がってんの? ナニソレ、オレ、聞いてない! ボスの右腕であるオレがこんなおいしい面白いヤバいことを知らないままだったなんて~ムカ着火ファイヤーだぜぇ! しかもさー、何をやろうとしてるの? 何かデカいことをやるんだったら、ボスの右腕でもありマネージャーで広報担当でもあるオレにも教えてくれないとー! ホウレンソウのルール、分かる? 報告、連絡、壮大に盛り上げ! っていうルール!』


 と、むしろパリピの方が拗ねたような口調でまくし立ててきた。



「は? 何言ってんの? あんたさ~、……いや、あの鑑賞会は個人的にはナイスだったけど……でもぉ、お兄ちゃんの周りにあんたがウロウロすんのはもうやめてよ、ほんと、ぶっとばすよ?」


「まったくだね。僕ら天空世界の住人からすれば、あまり面白くはないね」



 そんなパリピにカチンときた様子で、エスピとガアルは棘のある言葉をパリピにぶつける。

 すると、その時だった。


「あ、ちょいタイム、妹さんに、王子、今はそういう言い合いは時間が食うだけだからさ、ここは落ち着いて」


 と、オウナが間に入って二人を制した。

 そして……



『ん~? そういえば君……ああ、ちょっと待った、確かコマ―――帝国に潜入させてたオレのスパイから情報が……」


「あ、どうも。アースッちの親友のオウナ・ニーストです。なんかサラリとパリピって名前が出て来て驚いたけど、本当に六覇がアースっちの子分になったんだね」


『ひはははは、まあね』



 本来であれば、絶対に巡り合うことも絡むこともない二人だったが……



「実は今からジャポーネ王都でちょっとしたヒーローショーをやる予定なのね」


『ほぉ~……ヒーローショー……』


「タイトルは……伝説と伝説……みたいな?」


『ほうほう!』


「実は俺っち、自分で提案しながら思った……コレ……世界が知らないのって、もったいなくね? って」


『ほほぉ!』


「そこで相談なんだけど、六覇の力でどうにか――――」


『楽勝ッ!! 今夜の鑑賞会は予定変更、今夜の分は明日に回し、今日の分は……ライブで実況中継だ!』


「流石は六覇、話が早い!」


『君もいいね~、話が合いそうだ!』



 パリピとオウナのファーストコンタクトであった。



「ただし、懸念点がある。実況中継されてんのがバレたら、アースっちは怒ってやめる可能性がある」


『ぬぬ、それは確かに……よし! なら、現地で直接見れるジャポーネ民の視界を……そうだ、ガアルちゃん、天空世界の雲でジャポーネ王都の空を覆い隠して! ボスが空の中継に気づかないように!』


「おっ、それなら何とか!」


『ひはははは! あとは……あ、音声はどうしよう!? 雲で空を隠しても、声は聞こえちゃう!』


「ぬぬぬ……ふむ……音か……音とは振動……そうだ、妹さん。あんたの能力でその振動をジャポーネ王都に届かないようにコントロールできる? 名付けて、ふわふわ指向性!」


『おお、それある! やるじゃん!』


「ふふふふ、いつも人の気配を気にしながらシコシコしたりエロ本読んだりと音に敏感だった俺っち……あと~アカデミー時代に~、気になる女の子が~、音に関して色々とアレだったからねぇ~ピロピロ笛を吹く~女の子~」


『おお! じゃ、コマーー謎の覆面ちゃんも、音のスペシャリストとして、エスピのサポートを!』



 そう、繋がってはいけない二人が繋がってしまったのだった。


「いやいや、何を言ってるんだ! いきなり天空世界をもう一度ジャポーネ王都の上空に?」

「しかも、何その指向性何とかって! え? サラリと私にヤバい新技開発させようとしてない?」

「……謎の覆面の私はノーコメントです」


 無論そんな二人のどんどん勝手に進む話や、いきなりの無茶ぶりの指示に待ったをかけるエスピたち。


「大体、そんなこと勝手にしたらまたお兄ちゃんが怒るよ! 何でそんなことするの?」


 そして、エスピが何で? と聞くと、二人は同時に―――



「『何でって……その方が面白いから♪』」



 迷いなくそう答えた。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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