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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第五百三十六話 お前たち二人は最高だ!

 魔界では多くの魔族が涙を流す。


『ぐ、ぐっあああああ、舌がやけるうう、歯が溶けるぅ、いってええええ!』


 魔族も含めてほとんどの者たちが知らなかったゴウダのとっておきの力。

 ブレスを吐けば舌が焼けて歯も溶ける。

 まさに死ぬ前提での大暴れ。

 だが……


『は、はは、なんてやつだ……自分も痛いのかよ……もう、メチャクチャじゃねぇか』

『ちっ、……はあ、はあ、……ガハハハハハハ! ま……仕方ねぇだろうが。テメエがアッチー野郎なんだから、俺様も熱くならねぇと嘘だろうがァ!』


 ゴウダは笑っている。

 そして世界は理解する。コレがゴウダなのだと。


「ふ、ふはははは、そうだ……仕方ないゾウ! ゴウダ! 流石に仕方ないゾウ! お前が引けるはずがないゾウ……それほどの男に出会えたのだから……」


 目頭と胸を熱くさせながら、ライファントももう笑うしかなかった。


「むしろ羨ましいゾウ! ハクキもヤミディレもノジャもパリピも……小生だけではないか! アース・ラガンと会っていないのは! 拳を交えていないのは! 除け者にされていることを恨めしく思うほど今のお前が羨ましいゾウ、ゴウダッ!」


 そしてライファントだけでなく……


「すごーい! ゴウダって、すごーい! おとーさん、ゴウダってすごいね! カッコいい!」

「おう! よく見ておけよ! オオオォォォーーー!! ゴウダ様ァ!」

「うおぉおおおお、ぐっ、ひっぐ……ゴウダ様ァ」

「ばかやろう、泣くんじゃねえ! ひっぐ、ゴウダ様のライブを最後まで見届けっぞ!」

「だ、だってよぉ……」

「ゴウダ様が……俺らの子供の代にはゴウダ様を知らない奴らだって多いんだ……ヒイロに敗れた六覇としか知らない子供だっている中で……」

「ゴウダ様が、あんなイカした人だったなんて……」


 多くの魔族……特に多くの男たちが中心となって、もはや涙を流していた。

 ゴウダのどこまでも熱く滾った姿に涙が止まらなかったのだ。

 だが、そこに……


「なんだ、メソメソと不愉快極まりない声が……いつから魔界の男たちはそれほど脆弱になったか! はっ、これでは人類に負けるわけだ、嘆かわしい! ゴウダ大将軍も呆れていらっしゃるだろう!」


 涙を流す男たちを一喝する、巨漢の魔族たちが集団で現れた。

 先頭の男がそう言うと、男に連れられた他の者たちも続いて……


「そうだ! 見よ、ゴウダ様を……あんな姿になっても、楽しそうに、嬉しそうに笑ってらっしゃる!」

「そうだ、アレがゴウダ様だ!」

「今、この世界の者たちの目は涙を流すためのものではなく、あの方の雄姿を目に焼き付けるためのものだ!」

「そうだ、泣くなど、話にならぬ……うぅ、まっだく、はなじにならぬぅ!」

 

 荒々しく民たちを怒鳴る集団……その姿に民たちはハッとする。


「元ゴウダ軍の……」

「ピッグゴリだ……」

「ねえ、お母さん……あのおじちゃんたち自分たちも泣いて―――」

「しっ、見ちゃダ……ううん、よく見なきゃダメよ。あなたも男の子なんだから……」


 かつてゴウダと共に時代を駆け抜け、そして主君なき時代も生き残ってしまったゴウダ軍の生き残りたち。

 その先頭でピッグゴリは、かつて自分の敬愛した将軍を、そして自分たちの人生を狂わせた男に声を上げる。



「いけぇ、ゴウダ様! だから、冷めることはするではないぞ、アース・ラガンッ!」


「「「「「うおぉおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」



 その響き渡る魔族の声がライファントにも届き、そして胸を打たれる。

 戦争で人類に敗れたものの、一応は戦争が終わり、形の上では人類との和睦を交わし、平和な世界になった。

 少しずつだが人々も笑顔が戻った。

 しかし、これほどまでに魔界に熱気が溢れることなどこれまでなかった。


「ゴウダよ、この魔界を見よ! 今、かつて貴様がやろうと思ってできなかったライブよりももっと巨大な規模で、もっと多くの者たちの心を震わせ、お前たち二人のライブに震えているゾウ!」


 まさに、戦後最大の魔界の熱気。


『もうメチャクチャだけどよぉぉぉぉ、聞けよなああああ、俺の歌をなァ!! アンコールはねぇからよぉぉぉ!!』

『ああ、俺も……一緒に歌わせてもらうぜ!』


 普段は生真面目で武骨なライファントも興奮ではしゃがずにはいられない。


「そうだ、歌えゾウ! そして聞かせてくれゾウ!」


 この声が、魔水晶を通じて帝国にも届いていることなどもう忘れている。

 だが、たとえ認識していたとして、聞かれたとして、それがどうした?



『ガハハハハハ! なら、やってやろうじゃねぇか! だが、テメエは俺様のロックについてこれるかぁ!?』


『ついていくさ!』


「ついていけゾウ!」 



 六覇としてでもなく、現魔界の重鎮としてでもなく……



『どこまでも!』


「どこまでも見届けるゾウ!」



 一人の観客として、同じ男として、ただ熱く声を上げた。



『うおおおおお、これが俺様の全力全開だああああ! あっちいいいいいいいいいいい!! ウガアアアアアアア!!』


『大魔螺旋・アース・スパイラル! もっと……もっとデカく……! 部分魔呼吸!!』


 

 燃え上がる太陽となるゴウダに対し、極限を突破した大魔螺旋を披露するアース。


「ふ、ふははは、部分魔呼吸? 何だそれは! いや、言葉はいらぬゾウ! ただただ、小生たちに見せて、聞かせてくれゾウ!」











「ふ、ライファント……こっちが聞いてると忘れているか? いや、同じこと……気持ちは分かるさ。もう、私も同じだ……七勇者? 皇帝? 知らん! ただ見せてくれ! 聞かせてくれ! アース! ゴウダ! 二人の最高の歌をッ!」


 ソルジャももう今は細かいことを考えない。

 ゴウダの真実やら、エスピに関連したベトレイアル王国のことやら、アースが今後の世に起こす影響だとか、もう今はいい。

 ただ叫ぶ。



「ッ……ちぇすとおおーーーー! ちぇすとーーー! ちぇすとーーーー!」


「「「「ッッ!!??」」」」


 

 すると、普段は寡黙な鉄面皮のライヴァールが、突如剣を抜いて勢いよく空へと突き上げて奇声を上げる。

 そのことに驚くソルジャや臣下たちだが、すぐに意図を理解する。

 ライヴァールももう余計なことは何も言わないことにした。

 しかし、この戦いを見せられて声一つ上げられないなど苦痛以外の何ものでもない。

 だからこそ、剣を振る形でただ気合の声を出すだけ。

 それがライヴァールなりのエール!


「お、おおおおお!」

「てりゃああああ!」

「うおおおおおお!」

「そりゃ! そりゃ! ていやー!」


 そのライヴァールの姿に感化され、その場にいた兵たちも皇帝の前だというのに剣を勝手に抜いて、各々の思いを込めて、アースとゴウダに向けてエールを込めて叫んだ。





 帝国中が……世界中が……天地魔界が二人へエールを送る。





 もちろん……



「いけぇ、アース! ゴウダ! 真の歴史を世界に、俺たちに刻み込んじまえッ! 誰も知らない者などいなくなる、本当のお前らの姿をッ!」


「アースッ! ゴウダァ!」



 ヒイロとマアムももはや七勇者としてでも親としてでもなく、この世界に生きる観客としての声を上げ……




『限界突破だ! 極限大魔螺旋アース・スパイラル・リミットブレイクゥゥゥ!!』


『完全燃焼太陽面大爆発激ッッ!!』




 交差する二人の魂が奏でる熱いロックに天地魔界の心が穿たれる。

 そして同時に世界も吼える。



『くははははははははははは! あんたぁ……!!』

『ガハハハハハハハハハハハ! テメエは……!!』


――お前たち二人は……



『『サイッコーじゃねぇか!!』』



――最高だ!!!! 



 と、全人類の心が一つになった瞬間だった。

 そして……



「ああ……最高だぜ、アース! ゴウダ!」


「ええ……本当に、最高よ……あんたたち二人とも……」



 人類に真実の歴史が刻み込まれた瞬間でもあった。












「……貫いた……アースが……ゴウダを……」


 ソルジャがそう漏らしたと同時に、人々の目に太陽を穿つアースの姿が映し出された。

 

「……アースが……ついにゴウダを討ったか……これが歴史の真実……アースがゴウダを討ったのか」


 余計なことは喋らない……はずが、流石にここではもう言葉を不意に放ってしまったライヴァールだったが……


『あぁ……ほんと……に……たの……さいご……たのしくはじけ……たな、アースよぉ……たのしく……うたっ、て……最後は……寿命で死ぬかぁ……ロックンローラーとしてはしまらねえが……ま……』


 ゴウダはアースが殺したのではなく「寿命」で死ぬのだ。














『寿命って……俺が――』

『寿命だぁ……』


 その「寿命」であるという謎のこだわりに、ハクキはただ笑った。


「ふ、ふははは……そうか……ゴウダよ。お前はヒイロに殺されたわけでも、アース・ラガンに殺されたわけでもなく……ファイナルライブ後に寿命で死んでいたのか……」


 言葉遊びではあるが、しかしゴウダがそう言っているのだ。


「最後の最後にとんでもない言葉を遺しおって……これは……大きな意味になるぞ。世界が証人なのだからな」


 ゴウダは人間に殺されたわけではない。

 寿命で死んだのだ。

 ゴウダ本人がそう言い張ったのだ。

 

「ゴウダ……」

「……ゴウダは……アースに背負わせないために……?」


 ヒイロとマアムも先ほどまではただうるさい位に声を張り上げていたのだが、今ではただゴウダの最後の姿に目に涙を溜めていた。

 かつて自分たちが戦った宿敵の真の最後の姿に。


「……バカ者が……まったく……貴様は本当に……」


 マアムの言葉通りなのだろうとハクキも否定せず、ただ苦笑して皮肉を口にするしかなかったが……


『すま……ねえっす……大魔王さ……』


 そのとき、今にも逝きそうなゴウダが呟いた一言に、ハクキは怒りの形相を浮かべる。


「ふざ……ゴウダ! 貴様は何――――」


 だが、

 

『ゴウダ、謝るなあああ!』

「ぬっ!? ……アース・ラガン……」


 ハクキが怒る前に、アースがゴウダに向かって叫んだ。


「あ? アース―――」

「しっ……黙っていろ……ヒイロ……」


 そのとき、ハクキだけでなく……





「婿殿……」



 ノジャが……



「……ゾウ?」



 ライファントが……



「アース……ラガン……」



 ヤミディレが……



「ひははは……」



 パリピが……





『むしろ、大魔王トレイナはあんたのことを……あんたのことを心の底から誇りだと言っている!』



「「「「「当然!!!!」」」」」




 そのとき、今は世界各地バラバラになってしまった元六覇の五人が、同時にそう頷いた。

 大魔王トレイナが、ゴウダを誇りと思わないわけがない。

 誰もがそれを分かっていた。

 そして、アースの言葉がただゴウダを慰めるためだけのその場限りの安っぽい言葉ではない。まさに「大魔王トレイナの想い」を代弁した重たいものだということを彼らは理解した。

 だからこそ、彼らは同時に……





「ありがとうなのじゃ……婿殿……そして、本当にさらばなのじゃ、ゴウダ」



 ノジャが……



「ゴウダの戦友として感謝するゾウ……そして、確かに見届けたゾウ、ゴウダ」



 ライファントが……



「礼を言う……アース・ラガン……そして、聞かせてもらったぞ、ゴウダ。最高のライブとやらを」



 ヤミディレが……



「ひはははは……ゴウダァ……十数年かかったが、時代がようやくテメエのロックに追いついたァ……そしてテメエは今日から伝説だ! なぁ? ボス、二人で楽しませてくれて、ありがとよ!」



 パリピが……



「……大魔王トレイナは心の底から誇りに想っていると……『言っている』……か……ゴウダには何よりの手向けだな……今度会ったときに、礼は言わせてもらおう……アースよ」



 ハクキも、六覇の五人は笑みを浮かべてアースに礼を言い、そして……



『ガハハハハハハハハハ!』



 そしてゴウダは最後にニッと微笑んで……



『ありがとよ……そして、あばよ! 最後に出会った……心のソウルメイト!』



 六覇全員が同時にアースに礼を口にした瞬間、ゴウダは豪快に散った。







 そしてこの日、全世界は魔界の太陽の壮絶なる真実を知り、歴史上初、全人類があらゆる種族の壁や歴史の問題を忘れ、ただ一つとなって心の底から歓声を上げた。




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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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