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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第五百十四話 保存して

 世界は夢のような時間に心を奪われていた。


『さて、寝るぞ~』


 満天の星空の下、布に包まって川べりで仰向けになって寝ようとするアース。

 そこに……


『お兄ちゃん……さむい』

『ん~? もう一枚何か巻くか?』

『ん~ん……いい。その代わり……』

『あっ、おい、こら、エスピ何やってんだ!?』

『いいの~』


 アースが包まる布の中に侵入するエスピ。

 そのままスポッと首を出して、ニタリと笑う。


『にひ~、お兄ちゃんあったかい~。おやすみ~』

『ったく……』

 

 寒いとかそういうことではなく、ただアースとくっついて寝たいだけ。

 甘えんぼ全開のエスピにアースも苦笑する。

 すると……


『何をやっているんだい、君は。いったい自分をいくつだと思っているんだい?』


 ブスっとしたスレイヤが二人の脇に立つ。

 するとエスピは威嚇するように歯を剥き出しにして……


『べ~、スレイヤくんはあっちで一人で寝ればいいよ。私はお兄ちゃんも寒いだろうから一緒に寝るの。は~、ぬくぬくすりすり~、えへへ~』

『こら、エスピ。お前も……』

『やだー、いっしょ! いっしょにねるの! いっしょ!』


 布の中で両手足をアースの胴体に巻き付けて絶対に離れないエスピ。

 一方で……


『ふ、ふん、な、なんだい、まったくいつまでも子供で、なさけないね、ほんとうに、……ほんとうに……べたべたべたべたべたべたべた……』


 ぶつぶつぶつぶつと不満の呟きを漏らすスレイヤ。

 感情表現があまり得意でないスレイヤも、明らかに不機嫌だということはアースにも分かっていた。

 そこでアースは……


『は~~~~~……ったく、スレイヤ……ほれ、おいで』

『ふぇ!?』

『ちょ、お兄ちゃん!?』


 アースは布から手を出してスレイヤを手招きした。お前もこの中に来いと。

 その瞬間、スレイヤの顔がボンと真っ赤に染まる。



『ななな、何を言っているんだい、お、お兄さんは、僕を何歳だと思っているんだい? エスピのような子供と違って、僕はもう誰かの添い寝とかそんなの必要ないぐらいな大人なわけで、そんなベタベタくっついて寝るなどというむしろ寝にくいようなことに僕を誘おうと? あっ、いや、これは違うな。そうか、お兄さんは寒いんだ。うん、そうか。うん、寒いときは人肌と言うからね、流石はお兄さん……で、では……』


『もー来なくていいよー! お兄ちゃんは私のだもん!』



 慌てたように早口でまくし立てるスレイヤだが、「そんなことするわけがない」から一瞬で「仕方ない」と勝手に結論をだし、ぎこちないながらもアースの包まる布にスレイヤも侵入。



『お~……あったけ……ぎゅ~~う』


『そ、そうかい? ふぁ、お、お兄さん、んもう、そんなに抱きしめて……』


『むぅ~、お兄ちゃん~……もっとギューして』



 アースの両腕にスレイヤエスピを抱き寄せて三人で一枚の布に包まって温もりを感じ合いながら……


『なんか、星も綺麗だな……』


 美しい星空を眺める。

 そのひと時にアースは微笑み、そして……


『しゅぴ~……ん……おに……さ……』 

『すぅ~……おにいちゃ……ん……』


 気づけば七勇者と天才ハンターとしてその名を世界に轟かせる二人が可愛く寝ている。

 その様子に……


「う~~~~~、兄さんと姉さんがかわいいよ~~~~~~~~♥ っていうか、アース様も、もうなんていうか、尊いよぉ!」


 と、アミクスの声が集落に響き、周囲からも頷く声が響いた。


「エスピ姉ちゃんとスレイヤお兄ちゃんがあまえんぼだー!」

「おこちゃまだー!」

「あまえんぼさーん」


 と、子供たちからも冷やかす声。


「いや~、ほんとあの時代のあの二人はほんと……お兄さん好き好き病ね……あ、今も変わんないわね」

「ふぉっふぉっふぉ……あれがエスピとは……」

「エスピ嬢もスレイヤの兄さんも、心許し過ぎじゃな~い」

「ハニーって……子供ができたらメチャクチャ可愛がりそうね……ならば、私は多少厳しくするスタイルの方が……でも、私もかわいがりたいし……」


 大人たちも温かい眼差しで微笑み……



「「………………いきなり隠れたい……」」


「……いや、お前ら今でも俺にくっついて甘えてくるじゃん……アレはいいのかよ……」


「「それはそれ……」」



 スレイヤとエスピは耳まで真っ赤に染まった顔を隠してうずくまっていた。

 ただ、恥ずかしがる二人はまだいいとして、問題は昨日の件で恥ずかしさを通り越して死んでしまった者もいた。


「ったく……なぁ、ノジャ……ほら、鑑賞会始まってるぞ?」

「……………」

「……いーこいーこ……おい……少しぐらいなんか反応してくれよ……」

「……………」

 

 もはや頭撫でながら膝枕しても返事なくただの屍と化して呼吸だけしかしないノジャ。

 アミクスのお願いがあり、こんなノジャを頑張ってあやすのが本日のアースの鑑賞スタイルとなった。








 天空世界がジャポーネの上空に現れたその日、何かが起ころうとしているのかと身構えたアースたちだったが、結局天空世界に何か動きがあったわけでもなくそのままどこかへまた消えてしまい、その後も特に何も起こらなかった。



 偶然通り過ぎるには低すぎる高度だったため、何かしらの意図はあったのだろうとアースたちも考えたが、結局天空世界が何をやりたかったのか分からぬまま夜になってしまい、そしていつも通り鑑賞会がスタートした。



 そして、鑑賞会開始早々で、世界がほっこりし、ある場所では――――


 










「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」



 歪んだ目で鼻息荒くして興奮状態で、周囲がドン引きするほどの蕩けた顔をしたサディスはカクレテールで悶えまくっていた。


「かわいい坊ちゃま小さな子供たちを可愛がってギュッとして寝て……あぁあああ、わ、私もあそこに入りたい! あぁ、坊ちゃまぁあ~、はあはあはあはあはあはあ! この光景を絵にして永久保存したい! 私の坊ちゃまコレクションに加えたいです!」


 もはや人目も気にせず奇行を晒すサディス。


『お兄ちゃん、疲れてなーい? 肩もみしてあげるよ?』

『あっ、あざとい! お……お兄さん、疲れないかい? ボクがマッサージしてあげるよ』

『はい、二人とも。いーこいーこ』


 サディスは両目をハートにし、鼻血が垂れるほど興奮してのたうち回る。


「ふぁぁああああああん!? 坊ちゃまがもう、いーこいーこぉ、私が坊ちゃまにいーこいーこして食べちゃいたいです! いや、というよりエスピ姉さんたちが羨ましい……私も幼児化して坊ちゃまに可愛がっ……ッ!?」


 そしてサディスはその脳内で……



――坊ちゃまお兄ちゃん……


――おいで、サディス。今日は俺と一緒に寝ようか


(あ、いいですよ! これ、いいです! 私はいつも坊ちゃまを可愛がるスタイルでしたが、これはこれで……)


――ほら、サディス、いーこいーこ。ぎゅっ


――あ、ん、坊ちゃまお兄ちゃん……あぅ……


――ふふ、そんなのモジモジしてどうしたんだよ? ほら、こちょこちょイタズラしちゃうぞ~


――ひゃっ、あう、くすぐったいよぉ、坊ちゃまお兄ちゃんの……えっち


――サディス可愛い、ちゅっ♥ ほら、お兄ちゃんにもチュウしてくれよ


――ん、坊ちゃまお兄ちゃんだいすき、ちゅっ♥


(ふぁあああ!? 幼児化した私を積極的に可愛がってくださる坊ちゃま、どこまでいってしまいますの!? こ、これは早速今宵のヴイアールで検証しなければ!?)



 サディスはこれまで妄想とヴイアールでアースに関するオカズは網羅してきたと自負していたのだが、自分が小さくなって大きなアースに可愛がられるパターンは考えていなかったため、新ジャンルを開拓してしまったと激しく興奮。

 そんなサディスにドン引きの周囲だが、それでも空を見上げればホッコリした。


「はは、でも、サディスさんの気持ちも分か……いや、分からないゾーンに入ってるかもだけど、でもかわいーなー、あの三人。兄弟妹?」

「そっすね~。ま、あんちゃんが年下に甘々なのは前から……ほら、アマエ~、ぷんだしない」

「ぷっみゅ~~~」


 苦笑するツクシに、頬を膨らませたアマエのぷんだを口塞いで止めるカルイ。

 

「まぁ、確かに……アースは子煩悩だな。子供を甘やかすタイプだな……父親になったら…………父親……アースが……父に……アースが……ん……」


 サディスほどのレベルではないが、色々と妄想にふけるフィアンセイ。

 そして……


「とはいえ……あんな無垢で無防備だが……それでも七勇者と凄腕ハンターか……」


 リヴァルがそう呟くと、場面が一変して、翌朝になって山を歩くアースと、エスピ、スレイヤは…… 


『ふわふわパニック! よし、三匹目だよぉ!』

『ノーザンクロスシューティングスター! ボクも三匹目だ!』


 まさにその力を示すかのように火竜の群れを競うように蹴散らしていく。


「……強い……」

「すご……野生の火竜をあんなに……留学中に僕とリヴァルが火竜と戦ったときなんて……」

 

 かわいいだけじゃない。強い。

 それを見せつけられるリヴァルは息を呑んで拳を握りしめて震え、そしてフーは……



『へへ、そういや……フーとリヴァルは留学先で火竜の群れに襲撃され、それを討伐したってことでドヤ顔してたな……まっ、俺もやろうと思えばこんなもんだな』


「わぁ~~~、やめてぇ~、アース。今になってそのことで図に乗ってた自分が恥ずかしくなるからぁあ~~~」



 過去の自分のことをアースに触れられて、恥ずかしさで蹲った。

 もちろん、一般的に火竜は一匹でも倒すだけで「竜殺し」の異名を得られるほどの偉業なのである。

 しかし、もはやアースたちはその一般のレベルを超越していた。


「この時点でアースは既にヤミディレ、パリピ、そしてノジャという六覇三人もの戦闘を乗り越えている……そこに七勇者のエスピに、天才ハンタースレイヤとやら……もはや昨日のノジャのようなジョーカーでも出ない限り、敵なしの最強パーティーだ……」


 言いながらリヴァルは悔しそうにする。

 アースがエスピとスレイヤを可愛がって子ども扱いし、二人があれほどの強さを持ちながらもアースに甘えられるのは、単純にアースが二人よりも強いからである。


「俺たちが天空世界で再会したときよりも……差が圧倒的に広がっている……」


 自分もこの地で修行に明け暮れた。少しでもアースとの差を詰めるために。

 しかし、現状ではその差が広がっていた。

 そんな中で……


『状況によっては魔王軍と戦ったりもしたが、俺自身は人間でも魔王軍に対して恨みや憎しみがあるわけじゃねーし、仮にそういうのがあったとしても……文化や技術に種族は関係ねえよ。優れたものは柔軟に受け入れることが成長のコツだ』


 アースがスレイヤとエスピ相手にカロリーフレンドを見せながら悟す言葉が世界に流れた。

 

「ぐわはははは、ま、貴様らも成長している……が、壁を超えるための実戦経験が小僧より不足しているからのう。ヴイアールやワシとの模擬戦も、所詮は模擬戦だからのう。とはいえ、小僧のエンカウントが異常なだけとも言えるがのう」


 壁に直面しているリヴァルにバサラも笑うが気持ちは理解している様子。

 ただ……



―――この森で何をしている……薄汚れ……ているようには見えない……人間たちよ……


「「「ッ!!??」」」



 アースの異常なエンカウントは終わらない。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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