第五百七話 食前食後に読んではいけません
★★警告 タイトルの通りです★★
『もう……およめしゃんになれな……しぇきにん……とれぇ……なのじゃぁ……』
魔王軍の六覇の一人、幼女闘将ノジャ。
魔王軍が人類に敗れても、その名を歴史に刻み、戦後の世にもその名は教科書にも登場する偉人。
だが、実際にその名を知っていても、本人のことを知っている者は限られている。
そんな中で本日、世界はノジャのことを知った。
『……色々『出てる』……ばっちい』
そして、エスピの容赦ない一言と共に、悲惨極まりない光景が空に映し出された。
「アース、さ、さすがに、それは……ひ、ひどいと思います。わ、私も、思わず、お尻抑えちゃいました……」
建設現場ではクロンがお尻を抑えて内股状態。
「……な、んということを……あんな攻撃想像すらしたことない……ノジャ……あ、あんなところに大魔螺旋を……うっ、く、この私でも……」
ヤミディレも顔を真っ青にしながらクロンと同じようにお尻を抑えて内股に。
かつて肩を並べた同志の悲惨な過去をこんな形で知ることになるとは思わなかった。
「アレは……むしろ生きてる方がすげえ……」
「あ、あんなの、こ、怖くて、お、お兄さんの前に立てないのん!」
ブロもヒルアも恐怖した。
事故とはいえ、相手が人類の敵である六覇のノジャで手加減無用の相手とはいえ、「ひどすぎる」と同情してしまうほどに。
しかも……
「……い、色々出てても……映すなよぉぉおおお!」
「うぷっ……」
「ひどいし、おそろしいし……ばっちい……」
もはや見ていられない。
アヘアヘして痙攣状態でうつ伏せになっているノジャの姿から、建設現場の男たちも色々な意味で目を瞑ってしまった。
そして、翌日女神のカリー屋の売り上げは少し落ちた。
そう、本来なら伝説の六覇を平伏せさせたという歴史的な大偉業をアースは果たしたのだ。
しかし、それに対する祝福の歓声はどこからも上がらない。
帝国でも多くの者たちが絶句する中、幼い子供が……
「見てーママー、あの狐さんお漏らししてるー!」
「ほんとー、きたなーい!」
「にひー……よーし! パパにやってみよう! てりゃー」
ノジャの痴態に笑い、嬉々として「指で攻撃だー」と恐ろしいことをマネし始めた。
「ちょ、こら、やめなさい!」
「見ちゃダメ、マネしちゃダメ!」
「ぐぅ……アースのやつ、いくら何でもあんな……それでも八人目の勇者か!」
「アース、いくら何でもそんなので勝つなんてありえねーよ!」
「子供の教育に悪影響だ!」
と、マネする子供たちを諫めながら、その元凶となったアースを非難するほどに……
『おい、ノジャ! 捕虜となった男たちは解放して撤退しろ!』
『ふ、ふざ……ふざけるなぁ……わらわを誰だと思って――――』
『おにーちゃん、こんなやつもっと懲らしめちゃおうよ! 私のふわふわパニックで――――』
『ぎょわあああ、そ、それはやめるのじゃぁ! 後生なのじゃ、それはやめるのじゃ! も、もっと、で、出てしまうのじゃ! 大噴射で撒き散らしてしまうのじゃぁ! はうっ、ど、怒鳴ったらまた……か、括約筋が……ふごっ』
そして、むしろ……
「「「「「もうやめてあげろよぉ、かわいそうじゃないかぁ!」」」」」
故郷の帝国すらノジャに同情してしまう事態に。
『じょ、じょうけん……が、あるのじゃ…きょうのぉ、た、たたかい……新たな強者登場とかなっ、たら……戦の詳細……ほうこくせねば……ひぎぃ……そ、それだけは……んご……だ、から……このたたかい……捕虜……エスピたすけ……そ、それぐらいにトドメ……んぐぅ……貴様のことはぁ……部下たちに緘口令……というか、もう、幻術で記憶を……ふぎいいい、今は何も考えられぬぅぅ! とにかく……せめて海にぃぃぃ! 海の中でええええ!』
『つまり、俺のことは内緒。戦いの詳細も内緒。あんたの部下にも黙っているようにさせるし、捕虜の男たちは気を失ってるし、このまま詳細省いてエスピが捕虜たちを助けたぐらいに留めて欲しい』
そして、宮殿でもまた思わぬ決着に頭を抱えていた。
『そうか。緘口令を……これはノジャも流石に報告できなかったはずだゾウ……あんな場所に大魔螺旋などと……まさに、菊が散ったか……しかし、パリピめ……慈悲はないのか!?』
「そして、このとき捕虜になっていた連合の戦士たちも最初のノジャの一撃で気を失っていたからか……なるほど……あとはノジャと部下が報告さえしなければ、歴史の流れもおかしくはならなかったわけか……」
「ふごふご……」
ライファントが同志の余りの姿にそう叫び、それにはソルジャと口を塞がれているライヴァールも頷くしかなかった。
ただ、ノジャはかわいそうな一方で……
「む?」
「ん?」
カクレテールでフィアンセイとサディスの目尻が動く。
『うぅぅ、もういじめりゅなぁ……そんな、そんな目で……♡』
アースに見下ろされているノジャの反応が、ただ括約筋に力を入れて漏らさないようにしているだけではなく、何か心境に変化があることを察した。
「おい、サディス……なんか……同情していたのだが、あやつ……なんか……」
「ええ。何かの目覚めを感じます……」
そう、二人の勘は正しかった。
「……目覚めた? 何がだ?」
「そ、そうなの? もう僕には気の毒すぎて見てられないけど……」
こんな状況下で何がある? カクレテールでも総出で尻を抑えてノジャを哀れんでいただけに、皆もそれどころではなかった。
唯一、尻を抑えていなかったのは……
「ぐわーはっはっはっはっは、ひーー、ひー、腹痛いたわい、ぐわははははは、ぐわーっはっはっは、傑作じゃ、いや、ケツサクか? ぶわっはっはっはっは!」
もはやのたうち回るぐらい腹抱えて笑いが止まらないバサラと……
「きたない……くそきつね……」
「「「「「アマエエエエエエエエエエッッ!!??」」」」
容赦のないアマエだった。
『はあ、はあ、んぐ……じぇ、じぇ……全軍撤退なのじゃぁああ、今すぐこの場から、捕虜を置いて遠くへ行くのじゃぁああああ! これは命令なのじゃぁああ、わ、わらわは海を泳いで、ご、合流するから、ぜ、絶対に来てはならぬのじゃあああ』
いずれにせよ、大将であるノジャの緊急事態のため、兵力も戦力も未だ十分なノジャ軍もノジャの指令で撤退することになる。
戸惑う部下たちにノジャがそう叫びながら恨みがましく……
『ふぐぅ、おのれぇ……しかしあのエスピがここまで懐いて……強くて……ラガーンマン……ラガーン……ラガン? そ、そうか……こやつ……そういうこ……どうわぁぁぁぁぁ……お、おぉ……こ、この恨み忘れぬぞ……そして……いつか……せ……責任取らせるのじゃぁぁぁぁ!!』
そして、ノジャのその一言で……
「ああああああああああ!!」
「まさか!?」
ヒイロとマアムが叫んだ。
「い、今のってあれじゃねえか? ラガーンマンって名前から、ノジャのやつ、アースのことを俺と勘違いしたんじゃねえか?」
「責任……ちょ、ひょっとしてノジャがヒイロに執着して結婚とかなんとか言ってたのって……え!? そういうこと!?」
「じゃあ何か!? 大戦時も大戦後もノジャがいきなり俺に……それってコレが原因だったのか!?」
「で、でも、確かに六覇相手に一人で渡り合える人間なんて七勇者以外でそうはいなかったわけで……そこで、ラガーンマンからのラガン……ヒイロ・ラガンと連想しても……」
ノジャは大戦期にヒイロに執着して我が物にしようとした。
戦後もノジャはヒイロとマアムの結婚式を妨害しようとしていた。
それはすべてこの時、尻に大魔螺旋をされたことによる恥辱に塗れた責任を……
「アレ? でも、ちょっと待て。その後、アースが生まれたら、今度はノジャはアースをよこせって言ってきてたな……」
「そうよね。それはてっきり、ヒイロと結婚できなかったから息子のアースと結婚とかそういう意味かと思ってたけど……」
そして、更にそれが現代へと繋がる。
ハクキは神妙な顔で目を瞑りながら……
「つまり、現代のノジャは既に知ったのだろうな……ラガーンマンの正体はヒイロではなく、実は未来から来たアース・ラガンということを……」
「「ッ!?」」
「ノジャは戦後、エスピと度々接触しているという情報はあった……その流れで知ったのだろうな……つまり、ノジャにとってアース・ラガンはヒイロの代用品ではなく、本命そのものということだ」
そう、現代のノジャはもうラガーンマンの正体を知っている。
ただ、それはそれとして……
「それにしても、やはり見るに堪えん……パリピめ……もう少しぐらい配慮を…………配慮……」
パリピに対して配慮という言葉を口にしたハクキはそこでハッとなる。
配慮? パリピが?
もっとも程遠い言葉。
「ひははははははははははは! パナイ笑いが止まんねえ~、世界中でノジャちゃんムーブメントが起こってるじゃ~~ん♪」
パリピはゲラゲラと笑っていた。
「……あれだけ盛り上がった第三部も、今頃皆さん言葉を失っているかと……良かったんですか? こんな汚い結末を見せてしまって」
「ん~? いーのいーの。だって、ケツマツだし~、なんちゃって♪ ひはははは! でも、これはボスのためにもパナイ大事なことなのだよ」
眉を顰めるコマンだったが、パリピは笑いながら、しかし少し真剣に……
「ノジャちゃんは今後もボスと共に行動する。もう離れないし、魔界新政府も知ったこっちゃねぇって感じでしょ? でも、それでもノジャちゃんは元魔王軍の魔族。これから世界を渡るボスの周囲でうろつくには、やはり地上の人間どもは眉を顰めるだろう……帝国のクソ共とか……あ、クソって言葉は今はシャレにならんか~、ならカスね。帝国のパナイカスどもとか一般市民共はどうしても敬遠したがる……」
「……それはやはり……力ない者たちとしては異業をあまり受け入れるのは難しいですからね……そもそも六覇のノジャは魔族の中でもさらに異質ですし……」
「そう。でもこうすれば、『ノジャちゃん可哀そう~』、『アースくん、ノジャちゃんをもう少しぐらい可愛がってあげろよ~』、『可愛そうなノジャちゃん飴でも食べる?』、的な感じで、人間どもの見る目も接する態度も変わってくるだろう」
どこまで本気か分からない口調で語りながらパリピは……
「今、世界ではノジャちゃんが魔族だろうと関係なく、人間どもはノジャちゃんを同情し始めている……魔族に対する大衆の意識が変わるかもしれない……化け狐だろうと………………オーガだろうと……このノジャちゃんの恥は、実は人類が魔族に歩み寄るパナイ大事な一歩になる……」
「……あの、いい話風に思わせぶりに仰ってますけど、とても悪魔のような笑みで仰っても全然説得力ありませんが?」
「えへ♪ いや~、今度ノジャちゃんに会った時の言い訳用に考えてたんだけど、ダメかな?」
「無理かと……」
「そうか……なら、仕方ない!」
悪魔の笑み変わらぬまま、更にワザとらしく頷きながら……
「ならば、どうせ殺されるなら最後の最後までとことんやってやろう! 編集で加えた、『効果音』と共に!」
そして……
「ノジャ……お、おい、ノジャー……おーい」
「……………」
エルフの集落で、アースがどれだけ話しかけてもノジャは呆然と無言のままだった。
「アース様ぁ、ノジャちゃんを慰めてあげてよぉ……ちょっとハグぐらい……じゃないと可哀そうだよぉ……」
「ハニー……その、きょ、今日ぐらいは私も……嫉妬するかもだけど、やはり哀れだもの……」
「あははは、ノジャ、その、私もごめんね~、今更だけど。私、あのとき必死で良く分かってなくて……」
「まぁ、僕もあの場でやられそうになった身なのに同情したよ」
「なんとまぁ……むしろノジャ、よく尻が再起不能にならなかったのう……」
「お兄さんもエスピ嬢もえぐいことするじゃな~い」
「せやけど、快感に目覚めている兆候もあったの、ウチは見逃しとらんぇ?」
そんなノジャのつらさを流石に他の皆も……と、その時だった。
『じゃあ、このまま逃げるか!』
『うん!』
ノジャとの交渉も終わり、兵たちも撤退し、あとは這い蹲っているノジャを置いてそのまま立ち去ろうとするアース、エスピ、スレイヤ。
史実では、このままノジャは海に入り……アースたちももう『その場面』は目撃していないので本当に分からないわけなのだが……
「ん?」
「あれ?」
「急に場面が……」
「どういうこと!?」
急に場面が真っ暗に暗転したのだ。
ここで終わりか?
そうではない。
場面を映さず暗転した状態のまま……
『出てしまうのじゃ! 大噴射で撒き散らしてしまうのじゃぁ! ほわああああああああああああああ!!!!』
ノジャの絶叫と共に……
―――ブリブリブリブリビジャビチャブシャーブシューブリュブリュドビュルビュルビブビュウウウウ(※パリピが付け足した効果音)
「「「「「ッッッ!!!???」」」」」
「……ほわ?」
凄惨な効果音だけが世界に響いた。
「え、な、なにこれ、きたね、……え、俺知らな……!?」
「そうだよ、な、何この汚い音……うぷ」
「え、お兄さん、これ……」
「いやいや、小生も知らぬぞ! これは……」
当時その場にいたアース、エスピ、スレイヤ、ラルウァイフですら知らない音。
それは、パリピが編集で勝手に付け足した効果音。
だが、知らない者たちからすれば……
「わー、もらしたー! ノジャちゃんがもらしたー!」
「きったねー、お漏らしノジャちゃん、●●●たれノジャちゃんだー!」
「大魔螺旋カンチョー! ぶしゅ! わーい!」
「一に気を付け、二に構え、三四がなくて、五に大魔螺旋~!」
「ノジャちゃん、海の中でおしっこしたり、お外でお漏らししたり、トイレの使い方知らないのー?」
まだ理解できぬ幼い子供たちが嬉々としてはしゃいで死体蹴り。
「ちょ、あんたたち!? やめなさい!」
「あ……いや、ノジャさん、いいんだよ、仕方ない! お尻にあんなことされたらお漏らししてもね……」
「うん、私たちは気にしな……あはは」
「ノジャちゃん、だだだだ、大丈夫だから、ね!」
そして、他の大人たちは「ノジャが本当に粗相した」と本気で勘違いしてしまい、顔を引きつらせながらフォローするという、こちらもある意味で死体蹴り。
無論、これは世界全土で起こっているわけで……
――あぁ、大変ですぅ……ううー、ノジャさん! どんとまいんど、なのです!
――我が同志……なんと哀れな……
――我、こんなことになったら……生きていけんぞ……
――私もです……坊ちゃま……
――そりゃ、ノジャから責任取れと言われても……ってか、これで勘違いしてしばらく俺を恨んでたわけか……
――私がノジャに同情する日が来るとはね……私たちの結婚式邪魔しようとしたときはマジで怒ったけど……うん、もう許すわ……
世界から本気で勘違いした同情の声が上がり……そしてノジャは……
「……なんかもー……どーでもいーのじゃ……こきゅうたのしい……まばたきたのしい……あれ……目から水が出るのじゃ……ぐす……」
「「「「「ノジャあああああ!!!!」」」」」
恥ずか死んで心を完全に壊してしまったのだった。
タイトルで忠告したのに、読んだのは自己責任ということで~。
【お願い】
先日も紹介しましたが、下記にて新作始め……
日間ハイファンタジー【3位】になりました!!!!!
まだ読まれていない方は、是非にお読みいただき、応援お願い申し上げます。
『冗談で口説いたら攫われた大魔王~知らなかった? 女勇者たちからは逃げられないよ』
https://book1.adouzi.eu.org/n1660hv/
下にもクリックで直接飛べるリンクがあります!!!!




