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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第五百四話 奴が来た

 帝国は大混乱だった。


「おい、アレが六覇のノジャってマジかよ!?」

「あ、あんな大きなモンスターが……うそっ……」

「どど、どうすんだよ、アースは!」

「へっ、何慌ててんだよ、みんな。あいつは、冥獄竜王とだって戦った帝国6人目の勇者だぜ?」

「そうだ、アース! やっちまえ! 勇者の力でぶっとばしちまえ!」

「で、でも、どうなるのかな? 六覇のノジャって戦後も生きてるけど……」

「ママぁ……お尻がいっぱい、おじさんたちチンチンも出してる~」

「あの狐さん、海でおしっこしてたのぉ? お漏らしさんなのぉ?」

「しっ! 見ちゃダメよ! あと、お漏らしの人とか絶対にもう外では言ったら駄目よ!」


 ノジャが現れたこと。

 あまりの異形さに驚愕したこと。

 それでもアースならどうにかしてくれると思う反面、歴史的にどうなるのか?

 流石にそれには皆が気が気でなかった。



「……なんということだ! まさか、アースがノジャの居る場所に……ひょっとしたらここから―――――ふごっ!?」


「少し黙……静かに見ようライヴァール……と、そしてこれはどういうことだ、ライファント! ノジャは以前からアースのことを知っていたのか?」



 帝国の宮殿にて、何かを喋ろうとしたライヴァールの口をソルジャが塞ぎながら、魔界のライファントに向かって問い合わせる。

 しかし、この状況にはライファントも驚いているのだ。


『分からぬゾウ。たしかに、ノジャがヒイロに対して息子を寄越せ的なことを言ってはいたが……それは、ノジャがヒイロと結婚できなかったから、その息子を貰おうという意味と捉えていたが……ううむ、どういうことだゾウ?』


 かつて同じ六覇であり、そして戦後も魔界の新政府の重役として共に居たライファントですら知らないという事実。


『では、死にたくない奴だけ犬のようにワンワン吠えてわらわに媚びるのじゃ。わらわの気が向けば、飼ってやらんでもないのじゃ』


 まさに、当時の時代を知っている者たちすら知らない、歴史の裏で起こった出来事なのである。


「っていうか、世界では幼い子供たちも見ているのに、流していいのか!? ノジャ関連大丈夫なのか!? というか、既に発言やら捕虜たちやらダメではないのか!? パリピぃ!」


 と、為政者として別の心配もするソルジャであった。








 ヒイロとマアムは頭を抱えていた。


「いや……あのよ……アースは過去で歴史に影響を与えないように行動していた……はずだよなぁ?」

「うん……偶然ゴウダ軍の部隊に囲まれて、エスピと出会って、コジローと出会って、ノジャ軍の部隊とも会っちゃって……」

「いくら戦争中とはいえ、世界は広いんだから……普通にしていれば、七勇者とか六覇とかと簡単に遭遇できるわけがねえ……」

「ええ、それなのに……それなのに、よりにもよって!」


 かつて自分たちが命を懸けていた大戦期。

 その歴史の裏で実は未来から息子が来ていたというだけでも驚きだったのに、まさか……


「「よりにもよってノジャ本人と遭遇してたの!? っていうか、アースはどうして立て続けに大物ばかりと!?」」


 六覇の中でも特殊な存在であるノジャを目の当たりにしているアースの姿に、ヒイロとマアムはパニックになった。


「どうなってんだよぉ! ただでさえ、あいつはヤミディレと戦ったり、冥獄竜王だったり、天空王だったり、パリピと戦ったり、その上でノジャと遭遇してるのかぁ!?」

「とと、とにかく、どういう歴史に?! わかんないけど、とにかく逃げなさい、アース! そいつに捕まったら色々と終わるわよ!」


 果たして歴史がどうなったのか? それは分からぬが、ノジャは色々な意味でまず過ぎるとヒイロとマアムも焦る。


『ふざけるなぁ、六覇のノジャよ! 何という仕打ち! これが、これが貴様のやり方か!?』

『うっさい、まだ話の途中なのじゃ』


 また、その全裸で捕まっている捕虜たちの様子もまた……


「って、あれ、マルハーゲンのおっさんじゃねえか!」

「本当! うそ、将軍はこのこと何も言ってなかったじゃない!」


 見知った顔もいる。

 果たしてこれはどうなるのか?

 自分たちの知っている歴史の裏で何が?


『ふっとべなのじゃ~!』


 尻尾を振り回し、強力な突風を巻き起こして全裸の捕虜たちを一斉にふっ飛ばす阿鼻叫喚の地獄絵図が世界に流れる。

 だがそれでもヒイロとマアムだけでなく、世界も本来は悲鳴を上げる場面だが、「六覇・幼女闘将ノジャ」とアースが出会ってしまったという事態に気を取られてしまっていた。



『気の強い男……屈強で折れぬ心を持ち、死ぬまで曲がらず抗い続けるような牙を持つ、ダンディなイケメン……それを首輪つけて飼いならしたい! 裸で四つん這いにさせ、片足上げて放尿させ、更にはゴワゴワのお毛毛を剃ってツルツルにして、尻に色々つめこんだり……ぐふふふふ、泣かせて嫌な顔されながら滅茶苦茶にしたいのじゃ!!』



 そしてまた、ノジャの名を知っていても、その性癖やら変態性を知らなかった者たちもまた顔を青ざめさせる。

 そして、そんな世界の気持ちを代弁するかのように……



『もっとマシな奴はいないのかよ、六覇は!? ヤミディレやパリピの時ほどの緊迫感が何故かねえ! 能力や実績だけじゃなくて、人柄とかも選べよ! 天災みたいな力持ってる変態とか勘弁しろ!』


「「それはまさに!!」」



 と、ヒイロとマアムだけでなく、世界中がその意見に同意した。

 ただ……



「とはいえ、ノジャはアース・ラガンの存在を認識していなかった。謎の強敵出現などといった報告も当時は無かった。ならばここをどう切り抜けるか……」


「「え?」」



 ハクキは苦笑しながらも、ヒイロとマアムのように取り乱さずに、落ち着いた様子で状況を見ていた。


「で、でも、マルハーゲン将軍とかは生きているわけで、今だってぶっ飛ばされたけど死んでは……」

「ってことは、アースというよりもスレイヤとかエスピが……?」

「吾輩も分からぬ。だが、何かがあったのだろうな。半端なニアミス程度であれば、あのパリピならサラっと流すだろうが……そうではないということは……」










「……もう何が何だか……」


「お母さん? あの、大丈夫ですか! アースもピンチのようですし、お尻がいっぱい飛んでますし……どうなるのでしょう!?」


「クロン様……すみません。私も頭の中の整理に時間が必要でして……少々お待ちください」


「それに……お毛毛ツルツル……それって、この間の本……『理想の夫婦性生活』に記載されていた――――」


「その本のことは忘れましょう、クロン様!」



 ナンゴークとの橋を繋ぐための建設現場でヤミディレも項垂れていた。

 過去にこんなことが起こっていたなど、聞いてないし、知らないと。


「しっかし、あんなデッケー化け狐が噂の六覇とはな……マジでバケモンだな……そして……変態だな」

「ノジャって僕も聞いたことあるのん。おとーちゃんの飲み友達って言ってたのん!」


 ブロも呆気に取られ、ヒルアも父親の繋がりでノジャの名を知っていた。

 もちろん建設現場にいた男たちも……


「いやぁ……マジかァ……ほんとに、六覇が出てきちまったよ」

「ああ。俺らも戦争の事はそこまで詳しくねえけどよぉ、何万人もの軍を率いる将軍と、簡単に会えるのかよ?」

「クロンちゃんの旦那はほんとにどういうエンカウント体質なんだよ」


 歴史の教科書にも名を残し、戦後も生き残っている六覇の一人であるノジャに驚くしかない。

 ただ、それはそれとして……


「つーかよ……なぁ?」

「ああ……だよなぁ?」

「あの人……そうだよなぁ?」

「ああ、さっきのアマゾネスなんたらの……本人なんだよなぁ?」


 建設現場の男たちは別のことを気にしている様子。


「皆さん、どうしたのですか? 何か気になりますか? アースのことですか?」

「おい、おっちゃんたち。何かあんのか?」


 この状況下で更に何か気になることが? クロンたちが気になって尋ねると……



「いや、さっきふっとばされたマルハーゲンってオッサン……ナンゴークに住んでるぜ?」


「「……え?」」


「オッサンは戦後にナンゴークに移り住んできて島の発展に大貢献したんだよ。当初ナンゴーク名産のフルーツも、本来は島の中でも決して人の足では踏み入れられない断崖絶壁のような場所にあった幻みてーなもんだったみたいなんだが、『オッサンの嫁さん』が協力してその幻のフルーツを収穫し、そしてその種を島の安全な場所に植えて栽培して大量に生産し、それを海外に売ってバカ売れして、大発展してんだよ」



 まさかの意外な縁であった。

 それには頭を抱えていたヤミディレも顔を上げた。


「なに? ちょっと待て。あのマルハーゲンがナンゴークに居たというのか? ということは、この橋の建設工事はあやつの……」

「ああ、そうっすよ、姐さん。島の代表になったマルハーゲンのオッサンが、商社に発注したんすよ」

「な、なんと……ううむ、七勇者ほどではないとはいえ、一応は私も知っているあの豪将が……というか、魔族である私やクロン様の存在を奴に知られたらまずいのでは!?」


 かつて敵対して殺し合っていた敵の一人。それほど深く関りがあったわけではないものの、敵として認識していた将の存在にヤミディレも難しい顔を浮かべる。

 だが……


「あ、いや、そういう魔族とかそういうのは大丈夫なんじゃねーかと……」

「何故だ?」


 ヤミディレの不安に軽く首を横に振る労働者たち。

 それは何故か?


「だって、オッサンの嫁さん……噂じゃ元魔王軍だったって話でよぉ……」

「……なに!?」

「そもそもオッサンは、その人との結婚が元居た国じゃ法律的に認められてなかったってことで、将をやめてナンゴークに移り住んだって話でよぉ……まぁ、俺らも全然関りがねえから噂だけだけど、島の連中はあんまり悪いイメージはないみたいだぜぇ?」

「そ、そんなことが? 元魔王軍の兵と、マルハーゲンが結婚していただと? そんなことが!?」


 ノジャ登場の流れから少し変わってしまったが、それでも驚く内容だっただけにヤミディレも戸惑ってしまった。

 自分は戦後はずっとカクレテールに住んでいたこともあって、かつての兵や残党たちがどうしているかなど、ハクキあたりを通して得られる情報しかなかったからだ。

 そして……


「まぁ! 素敵です! ということは、人間の男性と、種族の違う女性が結婚して……うわぁ! それです! 私の夢です! 何という素晴らしいことなのでしょう!」


 まさに自分がアースとそうなりたいという将来を体現している者たちがいるというのは、クロンにとっては希望であり、嬉しさのあまりに目をキラキラと輝かせた。



「ははは、だから俺らも驚いたよ。さっき名前が出てきたし……」


「「「「…………え!?」」」」



 まさに、縁であった。


『くっ、離せ! ぐっううううう!』

『おほ♡ いいのじゃいいのじゃ! その目、嗚呼、気概、メチャクチャに泣かしてやりたいのじゃぁ♡』


 ただ、ノンビリ話をしている場面でもない。


「あぁ! いけません! 店長さんが……」


 少し目を離したところで、スレイヤがノジャに捕まってしまった。


「店長さんが……アース、どうしたのです?」


 こんなとき、アースなら何とかする……と思ったクロンだが、なかなかアースが出てこない。


「クロン様……ここでアース・ラガンがノジャ相手に飛び出したりすると、本来出会うはずのない二人が出会うことで色々と――――」

「お母さん、アースはそれで目の前の人を見捨てるようなことをする人ではありません!」

「っ、クロン様……」

「アースはきっと……そんな縛りとか歴史とかを飛び越えて、きっと―――――」


 そう、連合軍の大量の捕虜たち。捉えられて辱められそうなスレイヤ。

 歴史の流れが気になってアースは身動き取れない?

 理屈は分かっても、世界はアースにソレを求めていない。

 そして、その想いに応えるように……



『わーはっはっはっはっは、わーはっはっはっは! それまでだ幼女闘将ノジャ! これ以上の非道な行いは決して許さないッッ!』


「……え?」

  


 ついに奴が来た!


「今の声、アースです!」

「な、なん……なんだぁ? ヘルムとマントを身に着けているが……アレは……アース・ラガン?」

「おいおい……な、なにやっているんだ……あいつ」

「お兄さん、どういうことなのん?」


 それは変装したアース。

 アースのことを良く知る者たちからすればそんなことで正体を隠せるものではないのだが、それでも会ったことのないノジャ相手ならばこれでやり抜くことができる。



『俺は……いや、私はこの世に涙を流す子供が居るのなら、たとえ相手が怪物であろうと容赦しない! 良い子の味方! ラガーンマンだっ!!』



 口上と決めポーズでノジャにぶつけるアースの姿。


「アース……良い子の味方ラガーンマン? ……か……カッコいいです、アースぅ! カッコいい!」


 その姿にクロンはドツボにハマって大はしゃぎし……


「え? く、クロン様? ……ら、らがーんまん?」

「……ら、らがーんまん……」

「お兄さん……」


 ヤミディレ、ブロ、ヒルア、そして現場の男たちは……



「「「「だせぇえ!」」」」



 と、酷評であった。

 そして、世界では――――



【新作書いてみました】


『冗談で口説いたら攫われた大魔王~知らなかった? 女勇者たちからは逃げられないよ』

https://book1.adouzi.eu.org/n1660hv/


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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