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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第五百三話 第7波

『『マジカルふわふわフィッシング!』』



 空飛ぶ船から、アースのレーダーを利用しての住民避難。

 アースとエスピの合体技が、多くの命を救っていく。



『轟け雷鳴! 小生の復讐道を妨げる不届き者どもに、地獄を見せてくれよう! ギガサンダーッ!』


 

 そこに立ちはだかる魔王軍の新星、ラルウァイフ。


『上・上・下・下・左・右・左・右!!』

『うんっ! ほっほーい♪』


 しかし繰り出される強大な魔法をエスピの能力が全て回避。


『ほんと、お前はすごいやつだ、エスピ!』

『にへへ~♪』

『ふ、ふん……なにさ、ボクのことは小ばかにしたくせに……あんなに褒めてベタベタベタベタ……』


 さらに……


『………ボクの方が強いし」

『んにゅ!? きみ、何言ってんの?!』

『ボクの方が……そんな子よりずっと強いし役に立つしすごいし! だ、だから、ちゃんと見てよ……』


 魔王軍の精鋭たちを相手に、エスピとスレイヤが張り合うように躍動する。

 まだチビッ子の二人とはいえ、七勇者と有名なハンターの二人。

 敵ではなかった。


「アーくん……ふふふ、あんなに強くて可愛い子たちにあれだけ慕われて……それに、すっごく頼もしいわね」


 空に映し出されている光景は戦争である。

 しかし、アースの祖母であるアヴィアは、アース、そしてエスピとスレイヤの頼もしさに思わず頬が緩んでしまっていた。

 あの三人が力を合わせれば何も恐れるものは無いのだと。


「うふふふ、ほら、あなたも見て! アーくんが……って、あら?」


 そのとき、アヴィアが孫の大活躍を誇りながら、先ほどまで近くにいた者に話しかけようとしたら、その人物がいなくなっていた。


「あら? 『彼』は?」


 アヴィアが周囲を見渡す。

 すると村に住む幼い子供たちが……



「あのね、『オニーちゃん』は、ちょっとオシッコだって~」


「うん、『オニーさん』、ずっと我慢してたから~って……」


「でも、せっかくいいところだったのに~、『オニィ』はせっかちだよぉ~」



 可愛らしい子供たち。

 先日、森で迷子になって危なかったところを一人の男に救われた。

 アヴィアの尽力と子供たちの嘆願によって、この村に住むことになったその男は、まだ多くの村の住民たちから少し距離を置かれていたのだが、大きくて強くて優しいその男に、子供たちもすっかり懐いてベッタリだった。


「……そう……ちょっと見てくるわ」


 アヴィアは少し心配になってその男を探しに行く。

 トイレに行った……とのことだが、それでもアヴィアは心配だった。

 それは、その男が優しすぎるため、村人たちの心境を気にしすぎて、隙を見て村から立ち去ろうとするのではないか? というのが気が気でなかった。

 すると……


「あら? あんなところに……」


 だが、男はすぐに見つかった。

 ちょっと村の外れにある大木に身体を預けて蹲っている。


「……何をしているのかしら? ひょっとしてどこか具合でも?」


 トイレではない。ならば、何をしている? 

 アヴィアが気になって近づいたら……



「うぅ……う……う……」


「ッッ!!??」



 アヴィアは思わず息を呑んだ。

 何と男は泣いていたのだ。

 いや、初めて会った時も男はその図体に似合わずワンワン泣いていたのだが、それにしても何故泣いているのか?

 戸惑うアヴィアだったが、そのとき男は……




「……ラルお嬢様…………」




 微かにだが、男は泣きながらその言葉を口にしていたのだった。








 そしてその頃、その張本人であるラルウァイフがいるエルフの集落では……


「うっそだ~、あんなのラルせんせーじゃないよー」

「そうだもん! スレイヤお兄ちゃんと同じで、ラルせんせーのにせものだもん!」

「いんちきいんちきー!」


 ラルを慕う子供たちは、自分たちの知るラルとあまりにもかけ離れている戦時中のラルウァイフの姿を偽物と声を上げる。

 だが、それでも空に映るラルウァイフは紛れもなく本物。


「……まぁ、私たちももう一緒に居すぎて、ピンと来なくなっちゃったけどね」

「ま……うん。最初はね……」


 イーテェや族長を始め、その当時のラルのことを知る者たちは切なそうに空を眺める。

 ラルがああなっていた時に出会い、そして何よりもラルがあのように憎しみに駆られていた理由を知っているからだ。


「ラル先生……アレが、ラル先生だったの?」

「……そうだ、アミクス。小生は……愛する男を人間に殺されたと思い込んでいた当時の小生は、狂気だった」


 教え子たちの中では一番年上のアミクスは、空に映るラルウァイフが偽物ではないのは分かるが、それでもやはり驚きは隠せなかった。

 今ではこの集落でエスピやスレイヤと並び、皆から愛されて慕われて、姉のようで母のようでもあるラルウァイフの闇。


「その……私も名前だけ知ってるけど、その人が亡くなったって……その時は……やっぱりラル先生は……」

「ああ……もし、生きていると知ることが無ければ……いつ死んでも良い……一人でも多く道連れに……そんな狂気の中に居た」


 隠すことではないが、知られずに済むのであれば、できればアミクスや子供たちには知られたくなかった過去であった。



 だが、そんなラルウァイフの存在を気にするのは、あくまで限られた箇所のみ。



 世界中のほとんどの者たちは、アース、エスピ、スレイヤ三人の大活躍で魔王軍を蹴散らして人々を救っていることにしか意識がいっていない。



 このまま、皆を救出して、無事に――――――



 そんな甘いものではない。



 むしろ、ここからが本当の戦争(?)が始まるのだ。




 

 カクレテールでは……


「エスピお姉ちゃんと坊ちゃまの協力技……なんと強力な……そして、お姉ちゃん、なんと感情剥き出しに……」

「すごいな。やはり、エスピ殿は七勇者……あれほど幼いころからあれだけの……」

「いや、あのハンターのスレイヤもすごい。造物魔法、そしてあの動き。並の者では手も足も出ん」

「そんなスレイヤを手玉に取ったりムラを指摘したり、そして結果的にエスピさんもスレイヤからもああやって接されているアースもやっぱすごいね……」


 ラルウァイフの存在が後々また重要になってくるなどとは思ってもいない、サディス、フィアンセイ、リヴァル、フーは、ただアースたちの活躍と救出劇に笑うしかなかった。


「……ぷん―――だむぐぅ」

「はーい、アマエはもうプンダ禁止~♪」


 アマエがもはや何度目か分からない「ぷんだ」もカルイがその口を塞いだりして防ぎ、三人の活躍に歓声が上がる。

 ただ……



「くわ~~~~~~あ……眠くなってきたの~」



 そこで、バサラだけはつまらなそうに欠伸をしていたのだった。



「し、師匠! 何を……」


「だ~って、どう見ても小僧たちの方が強かろうに。多少の縛りやらがあったところで、小僧たちの敵ではないと分かっておる相手に無双しているところを見せられても、あ~んまり爽快感がないのぅ」



 過去の魔王軍相手にエスピとスレイヤと共にアースが躍動しているということだけでフィアンセイたちは興奮なのだが、バサラからすれば「これぐらい当然だろう」という様子で、少し飽きてきている様子だった。


「小僧の圧勝する俺ツエ~な場面を見せられても仕方あるまい。強敵相手に立ち向かってこそじゃ」


 と、今にも寝そうなバサラだった……のだが……



『ハツノーリカーラノゴセンイェンチョーカ……中距離移動魔法タクスィー』



 そのとき、アースたちに敵わないと判断したラルウァイフが呪文を詠唱。

 その魔法と共に、アースの姿が歪む。


「ぬっ、ワープの魔法じゃな」

「え!? ちょっ、坊ちゃま!?」

「ヤバい、アースが!」

「スレイヤも一緒だ! あ、エスピさんは……」


 少しだけバサラが目を覚まし、サディスたちは慌てる。

 ただでさえ過去の時代という場所に飛ばされているアースが、今度はどこに飛ばされてしまうのか?

 すると……



『な……ナンダコレハ?』


「「「「「うげっっ!!??」」」」」



 目を見張り、しかしすぐに全員疑った。


「ん? ぷらぷらがたくさんある」

「ちょ、アマエは見ちゃダメええええええええ!」


 カルイ、高速でアマエの目を塞ぐ。


「ちょっ、うぷ……ななな、なんだこれはぁ?!」

「ぼ、坊ちゃまは一体どこに飛ばされて!?」

「な、なんなのかなぁ、これは!?」


 そして女性陣は一斉に悲鳴のような声をあげてしまう。

 何故ならそこには……


『なんでこいつら、全員が裸なんだよ!?』


 そう、大平原でパンツすら穿いていない何百人以上もの全裸の男たちが両手を縛られた状態で、縦横長蛇の列を作っていたのだった。


「ほうほう、何が……ん? 男だけ……全裸の捕虜……じゃと? ……ん?」


 と、そこで、更に目が覚めたバサラが急に体を起こす。

 そして……


『な、に……っ、これは……う、う……』


 全裸の男たちにドン引きしていたアースが、更に何かに気づいた。

 いや、何かの気配に感づいて、顔を青くしている。


「ん? どうした? アースの様子が……」

「坊ちゃま、どうしたというのです?」


 流石に鑑賞している自分たちではその場でアースが何の気配を感じたのかは分からない。

 だが、顔を青ざめさせて震えている。そして、アースだけでなく、周囲の捕虜たちも同じ反応を見せている。

 明らかに何かが……


 

『いや~、すまぬすまぬすまぬのじゃ』



 そのとき、どこからともなく声が響き、同時に海の方から巨大な水しぶきと共に、海の下から何かが顔を出した。



『酒飲み過ぎて、おしっこしてたのじゃ。いや~、水の中でするおしっこは格別なのじゃ♡』



 それは、九つの尾を生やした超巨大な狐の化物。



「おおお~~~~、なついのぉ~~~ほほ~う! こうなったか! ほほおおう!」



 そして、バサラは完全に目を覚まし、先ほどまでつまらなそうにしていた態度を一変させ、急に眼をワクワクさせた。


「んなっ!? なっ……なな、なんだぁ!?」

「なんですか、あ、あれは?!」

「ば、ばけもの!? 竜よりも……デカい!」

「お、大きい……狐? あんなの初めて……」


 しかし、フィアンセイもサディスもリヴァルもフーも……


「ちょ、どうなってるのかな?! 外の世界にはあんなすごいのがいるのかなぁ?!」

「やべぇっす! 天空族とか、そういうのとはまた別の凄さが……」

「お~……」

「空気を触れなくても見ただけで分かる……ヤバいぞ……アレは……」

 

 ツクシもカルイもアマエもマチョウも、それどころかその場にいたバサラ以外の全員が腰を抜かしそうになるほど驚いた。



「ぐわははははは、よいぞ! よいではないか! 退屈になっていたところでコレか! やはりあの小僧は大した星の下に生まれておるわ!」



 とにかくバサラだけは猛る。

 口角も上がり、武者震いのように全身震わせる。


「し、師匠……師匠はご存じなのですか? 坊ちゃまと対峙しているあの巨大な……化け物……」


 アレは一体何者か? サディスの問いと共に皆がバサラに注目すると……



「あやつの名は……ノジャ! トレイナの下に居た時は、幼女闘将とか名乗っておった……トレイナの六本腕のうちの一つじゃぁ!」


「「「「ッッ!!??」」」」



 カクレテールの住民たちは分からなくても、サディスたちには分かる。


「よ、幼女闘将!? あ、アレが!? え、だって、幼女闘将ノジャは、も、もっと小さい姿で……」

「あ、あれが……わ、我も初めて見る……教科書でしか見たことなかったから……」

「伝説の六覇が……いやい、あの港を襲っていた連中はノジャ軍の部隊とのことだったが、まさか大将本人も……待て待て……で、では、アースは……」

「え……ど……どうなっちゃうの? これ、どうなっちゃうの?」


 まさかの六覇とアースの遭遇。

 これはどうなるのか?

 どうなってしまうのか?

 サディスたちの反応にツクシたちは首を傾げながら、



「ねえ、サディスさん。一体……」


「え、ええ……魔王軍の六覇……あなたたちのよく知る、ヤミディレ、そしてパリピ……二人とかつて肩を並べた六人の大将軍の一人……歴史に名を残す伝説の住人です」


「……うぇ!? だ、大神官様や、あの天空世界で戦ったパリピと同じ……ッ!? え、それ、ヤバいんじゃないかな!? アースくん!」


「ちょ、あのパリピに私ら全員がかりでボコボコにされたのに、あんちゃん大丈夫なの!?」


「お……お兄ちゃん……」


「師範やパリピと同じレベルの……だと? ……アース……!」



 ヤミディレやパリピと同格ということで、事の重大さを理解したツクシやマチョウたちも、目を大きく見開いた。



 そして今、世界中が本日鑑賞会の終盤で再び衝撃の声を上げる。



 ヒイロとマアムは―――――いずれにせよ、ノジャ本人は……



「ふんぎぃ〜〜〜おふっ♡ ぐぬぅ、極限なのじゃ……はぅっ♡ ま、また波が来たのじゃ……だ、第7波なのじゃ……ゆるみはダメなのじゃ……お゛ぉ゛ん!?」



 トイレで極限状態だった。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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