第五百話 候補者
★★500話達成! あとがきでお願いがあります★★
『やれやれ、子供みたいに家族に甘えて……かと思えば自分勝手に怒って……恥ずかしい子だね』
『うにゅ!? 恥ずかしくないもん! 私はお兄ちゃんと仲良しだからいいんだもん!』
『ったく……だから、落ち着けっての……それにお前もだぞ? ……女に冷たくするんじゃねーぞ? 女には……ヤサシクシロ』
海の上で出会ったスレイヤ。
幼いながらも冷たい眼光で相手を睨む。
そして勃発するスレイヤとエスピの諍い……それも現代では……
「そうそう! スレイヤ君は家族に甘えるのは恥ずかしいみたいだし~、というわけで、スレイヤ君はシッシッ! お兄ちゃんは私が独り占めするから~! お兄ちゃ~ん、すりすりすり~♪」
「む! お兄さん……どうやらこれはパリピが過去の記録を改竄しているようだ。このような発言……僕は記憶にない。というわけで、アレはでたらめだ! うん、そうだよね、お兄さん! つまり、エスピ。君がお兄さんを独り占めなど許されないわけだ!」
二人でアースを取り合うというぐらい、スレイヤはアース大好きブラコン状態になっているのだった。
一方で……
「そうなのじゃぁ、婿殿! わらわを優しく抱いてくりゃれええ! いや、抱いてくれるなら乱暴でも構わんのじゃ! この魅惑のボディでズッコンバッコン乱暴にしてく……おほほほ、わらわを優しく抱いていただけたらとても嬉しいのじゃざます♥」
「優しくできるかぁ! つーか、お前も情緒が色々不安定かこの野郎!」
アースがスレイヤに対して『女には優しくしろ』と告げた言葉に……
――うむ、アースよ……わ、我にもいつか……お前の優しさをぉ……いや、その前に我にはすることがあるのだがぁ~……うぅ~
――坊ちゃま……なぜそこで、どもるんですか?
――ぶぅ……お兄ちゃんに……また増えた……プンダ
――おのれ、アース・ラガンめ……ならばその優しさでクロン様を優しく傍に置けばよいものを……
――んもぅ、お母さんってば……アースは優しいです♪
世界中から色々な反応があったり……
「そうそう、お兄ちゃんは女の子に優しく~、だよね♪ あ~、スレイヤくんとは大違い~♪」
「あら、ハニーは元々優しいわよ……女性だけじゃなく……友達にだって……相手が異種族だろうと関係なく……」
「ぬわぁ、わらわにも優しさ欲しいのじゃぁ~……欲しいのですわなのじゃ」
「でも、アース様は本当に優しいと思うけどなぁ……というより……カッコいいが一番あるんだけど……♥ でも、それはそれとして……」
そして、この集落でもそういった反応があったりと様々である。
ただ、そんな中でアミクスは首を傾げながら……
『ボクは他人に興味を持たない。誰とも心通わせる気も無い。一人で戦い、一人で生きていく……家族で甘やかし合ってヘラヘラしている人に説教されたくないね』
「えええ!? ねえ、スレイヤ兄さんって昔はあんなこと本当に言ってたの!? ねえ! 見た目はスッゴイかわいいけど、あんな兄さんやだよ~」
「い、いや、僕は言ってないぞ、アミクス! アレはパリピという男の改竄で……」
スレイヤの『この時代』を知らないアミクスや集落の子供たちからすればまさに驚きの光景である。
「そうだよぉ、スレイヤお兄ちゃんじゃないよぉ……」
「アレはスレイヤ兄ちゃんの偽物だもん!」
「そうだよ、スレイヤお兄ちゃんはすっごく優しいんだ!」
「うん、僕らといっつもラガーンマンごっこしてくれるし!」
「私たちとおままごともしてくれるもん!」
そう、この集落においてのスレイヤはエスピやラル同様に子供たちからすれば「大好きなお兄ちゃん」という立場であり、そしてスレイヤも積極的に皆と接して絆を深めていた。
そのため、子供たちからすれば「あんなスレイヤお兄ちゃん知らない」と悲しくなるようなシーンでもあった。
さらに……
『う~~、なーに、あの男の子! ブスっとしちゃって、口悪いし! それに暗いし! 私……ああいう男の子、大きっらい! ベー! イーっだ!』
「「「「「そして、恋人になるのに、最初はこうだったの!!??」」」」」
スレイヤに対して「大嫌い」発言した上でアカンベーをしている子供時代のエスピに、皆がさらに驚いた。
今では付き合っているという状況の二人も昔はこうだったのかと。
ただ……
「まぁ、エスピとスレイヤみたいに出会いも最初の印象も最悪だけど、どうなるか分からないっていうのはその通りだけどね……私も……最初は……あの人ったらいつもブツブツ呟いて、そしてひねくれてるし……だけどある日……素直じゃないけど、本当は芯の通った優しさを持ってるって気づいたら、もう……ね♪」
「ふむ……そういうことなら小生も……あやつのことを最初はただのウジウジした木偶の坊などと思っていたが……誰よりも優しいと知ってからは……惚れるしかなかった……」
「せやな~ウチもそうやったからな~優しさと温かさに……最初の印象悪いと、あとの好感度はアップする一方でついに我慢できずにウチの方から押し倒してもうたからな~♥」
と、イーテェ、ラルウァイフ、そしてカゲロウまでが少し大人の乙女の雰囲気で微笑んで、その姿にシノブやアミクスなど若い乙女たちは思わず照れて顔を赤くしてしまった。
そんな様子に……
「ふぉっふぉっふぉ……皆……若いのぅ~」
「ほーんと、甘酸っぱいじゃな~い」
ミカドとコジロウは笑った
「ワシからすればコジローも随分若いがのう」
「オイラは飲み屋の姉ちゃんたちとワイワイするので十分じゃなーい。それに、それなら御老公にも色々と若いころはあったんじゃな~い?」
「ふぉふぉふぉ……ワシが憧れた方は毒舌じゃったからのう……ワシだけでなくバサラやハクキにまで毒づく程……」
「あ~……カグヤ様とやら……」
「ま……もう昔の話じゃよ」
そして、ミカドとコジロウは自分たちにはもうない甘酸っぱい時代を過ごす者たちに色々と思うところがあるようで、温かい眼差しで微笑んでいた。
『こやつら……これからハクキ対策を考えて修行するぞというときに、急にベタベタがやがやと騒いで童にまとわりつきおって……』
と、アースが取られている間は蚊帳の外になってしまっているトレイナがまた拗ねた。
『あ~トレイナ……俺、この状況でどうすればいい?』
『……』
『す、拗ねるなよぉ……』
『拗ねとらんわ!』
拗ねていた。
そんな中で……
「まあまあ、あの男の子が道具屋の店長さんなのですね」
「ふーむ……あの神童スレイヤとこういう形で出会ったと……ううむ……私にも分からぬ過去の真実……」
建設現場にスレイヤ子供時代の登場にクロンたちは目を丸くしていた。
そしてその態度が、現代でアースにウザ絡みしていたとは思えないほど冷たく、他人に対して拒絶の空気を醸し出していることは驚きであった。
「あれ? エスピと店長さんは恋人同士になるのですよね?」
「ええ、昨日の話ですと……」
「ふむふむ……二人は恋人……エスピは……アースの妹……ッ! 大変です! エスピと店長さんが結婚したら、店長さんはアースの弟に! 私、アースの家族に挨拶しないといけない人がいっぱいです!」
「い、いえ、そこまで慌てる必要もないかと……」
「何を言っているのです、お母さんも親戚になるのですよ!」
「ッ!?」
クロンの気づき。そしてヤミディレもハッとする。
「な、そ、そうでした……ぬぅ……ヒイロとマアムだけでなく、七勇者のエスピとハンターのスレイヤまで私の親戚に……ッてぇ! それは別に私はクロン様のアレ的なではなくて!」
「むぅ! お母さんの意地っ張りですぅ!」
危うく自分がクロンの母親という会話を自然に受け入れそうになって慌てるヤミディレに、クロンはむくれる。
(((((しつけぇ~)))))
そんなヤミディレの態度に「さっさと受け入れろ」とブロを始めとした男たちは呆れていた。
ただ、クロンの危機感は的外れでもなく……
『妹の将来の結婚相手になるんだろ? だったら、ちゃんとどういう奴なのかを知っておかねえとな……けしからん奴だったら、……くははは、なんてな』
それは船上でアースがスレイヤを気にかけて口にした『独り言』……と世界には映ったが、実際には『会話』である。
しかし、パリピはそれを勝手に編集し……
――このとき少年は思った……もし、あのスレイヤが妹のエスピの恋人になるというのであれば、自分にとっては他人ではない……気になると。
そして、独り言を言っているアースの場面にナレーションを入れて……
――そして同時に少年は一瞬焦った。自分は未だに異性との交際経験もないのに、妹の方が先に結婚するのでは……と……だが!
『実際にはあいつの方が年上になって……つか、俺だってクロンとか、シノブとか、サディスとか、将来結婚するかもしれない相手はいるし!』
――と、少しクズな考えで己の精神を保つのであった。
「ッッ!!??」
パリピが勝手に入れたナレーションと独り言の場面。しかし、その独り言がクロンにとっては何よりも重要なものであった。
「アースッ! うぅ……う~~~、わぅ!」
クロンはこれでもかと飛び跳ねてハシャイだ。
「嬉しいです! アースが……アースが私をそういう相手の候補者の一人にって、アースが思ってくれています! うぅ~~! アースも意識してくれているのです! うぅ~~~、アースぅ~」
嬉しさのあまりに、走り回り、スキップしたりしていた。
「アース・ラガンめ……そこはクロン様一択であろうが!」
「でも、クロンちゃんはとても嬉しそうなのん!」
「嬉しいですう! う~、アーススキスキスキスキ大好きなのです~♥」
たったこれだけで幸せの絶頂のようなクロン。
他では……
カクレテールでは……
「ぼ、坊ちゃまったら……んもぅ……不意打ちですよ……」
サディスの顔は無表情……を全然装えていなく、真っ赤で、そして嬉しさのあまりにニヤケそうになる口角がヒクヒクしており、その様子に周囲もニヤニヤしている。
「いやぁ~、一見クズ男発言な感じだけど、あんちゃんやるねぇ~」
「ははは、でも、アース君は選び放題で、その選べる相手がみんな素敵ですごいかな♪」
「……お兄ちゃんのお嫁さんは女神様…………でも、シノブお姉ちゃんも……むぅ……」
ただ、そんな中……
「は、はは……ど、どう声かけようか? リヴァル……」
「……今はソッとしておこう……」
幼馴染のフーとリヴァルは哀れむような目で横を見ると、砂浜で座り込んで……
「ず~~~~~~~~~~~~~~~ん……いや、分かっていたとも……だからこそ頑張らねばと……だが……ず~~~~~~~~~~~~ん」
と、項垂れているフィアンセイの姿があった。
そして当の本人は……
「ふがぁああああ! パリピィいいいいい、あの野郎ゥううううう!」
『うーむ……余が童に対して言った内容をナレーションでカバーしている……恐ろしい奴め』
頭抱えて、もはや何度目か分からぬ辱めに叫ぶアースと、この時のアースの独り言ではなく会話の相手であったトレイナは苦笑。
そしてもちろん……
「んふふふ~、シノブぅ~よかったやん。ライバルはおるけど、ちゃ~んと意識されとるぇ~?」
「…………………」
「シノブ?」
ニヤニヤとからかうカゲロウに対して、俯いているシノブ。
そしてシノブは両手で顔を隠して溜息を吐きながら……
「はぁ……………はにー………………すきぃ~」
と顔を隠しながらも隙間からでも分かるほど顔を真っ赤にして頭から湯気の出ているシノブがそう呟いた。
「ぬぅ~、シノブが出とるのに、なんでわらわの名前がないのじゃ!」
「いや、このときノジャはまだお兄ちゃんと出会ってないし……ってか、出会ってても出るわけないし」
「ま、自分の胸に手を当てることだね。お兄さんにあなたはふさわしくない」
一方で納得できずに地団駄のノジャ。少し前までは外面を気にするような態度をしていたのだが、ここに来て名前が挙がらなかったことには本気で不服の様子。
「ふん、ちょっとわらわの出会いの順番が先だったら……なのじゃぁ!」
「なんじゃぁ、ノジャよ。いい歳してまるで子供じゃのう」
「うるさいのじゃ! わらわは貴様のように枯れとらんのじゃ! カグヤに何も出来なかった草食系め~」
「……おぬしまでどれだけ古い話をしておるんじゃ」
とはいえ、この時点ではエスピの言うように、まだ出会ってすらいないので当たり前のこと。
そんなエスピに周囲や付き合いの長いミカドは呆れたように笑った。
『さて……童、いつまでも悶えてないでさっさと鑑賞会しながら修行するぞー』
『ぐっ、トレイナ……でもぉ……』
『いちいち何かあるたびに反応して悶えるな。何かに集中していれば流せる……はず。それよりもだ、時間を有効に使え』
『自分だって拗ね―――』
『拗ねとらんわと言っているであろう!』
そしていつまでも前に進まなくなると、トレイナもタイミングを見計らってアースに告げる。
だが、ノジャやエスピやスレイヤが四方にまとわりつく状況下で……
『わかったよ……でも……こんな皆にくっつかれたり、ちょっと席を外そうとしたら捕まったりするような状況で何するんだ?』
この状況で何をする? 何ができる?
そう疑問を口にしたアースに対し、トレイナは……
『大魔螺旋……の魔力はそのままに……小さな手のひらサイズにしてみよ』
『…………は?』
そのとき、トレイナの言葉をすぐには理解できず、アースはとりあえず……
『手のひらサイズって……もう『大』じゃないじゃん……』
『………』
と、返すしかなかった。
500話!
500話! 500話! 500話! 500話! 感謝ぁぁぁああああああ!!!!
まさかここまで続くとは、だけどもうちっとだけ続くんじゃ。なので、もうちっとだけお付き合いくださいな! 頑張ります!
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