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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百九十六話 ジャポーネの英雄との接点

 カクレテールでは、フィアンセイたちが声を上げていた。


「行け、アース! 誰だか知らんが、そんな変なやつはさっさとぶちのめしてやるのだ!」

「っしゃ、いけぇ、あんちゃん! エスピちゃんを守るのだー!」

「おらぁ、アース! やっちまえ!」

「弟君、いつものようにガンバ!」


 アースに声援を送るフィアンセイとカクレテールの住民たち。


『大魔フリッ―――』


 いつものようにキレのある足で相手を翻弄して、相手の意識を断ち切る鋭いパンチで打ち抜く。それがアースのスタイル。

 しかし、今のアースは……


『……くそ……』

『……おっ……どうした? 来ないじゃないの?』

『おにーちゃん!?』


 踏み込んで得意の左を繰り出そうとするも、急に後ろへ跳んで距離を取るアース。


「ぬっ?!」

「な、ど、どうして? アースが逃げたよ?」

「……今のは……」


 それは、フィアンセイたちも初めて見た、アースが攻撃を仕掛けられなかった瞬間だった。


「……いや……逃げたというより……避けたのかもしれん」


 リヴァルは空を凝視しながら、その頬に汗を流しながら呟いた。


「どういうこと? リヴァル……」

「……フー……もし、今アースが踏み込んでいたら……アースの左手は斬り落とされていたかもしれん……」

「……え?」


 それは、剣士として一流の腕を持つリヴァルだからこその勘。

 アースと対峙する謎のジャポーネ剣士が醸し出す雰囲気やたたずまい、そして反応含めた一つ一つの所作すべてがリヴァルには寒気がするほどのレベルを感じたのだ。


「……うむ……今の一瞬、我もそう感じた……あのジャポーネ剣士……何者だ?」


 フィアンセイも数秒前まで「いつものようにぶっとばせ」と声援を送ったはずが、この一瞬の攻防で相手が簡単な相手ではないことを察した。


「え~、そんなにすごい人かなぁ? エスピちゃんに簡単にふっとばされたじゃないかな?」

「そっすよね~……ひょろそうだし……」

「いや……自分はそうは思わない。あの男……底知れぬ雰囲気を感じる……ただ鍛えているだけでなく、恐らくは実戦派なのだろう……」

「マチョウさんがそこまで……でも、オラァ、アース、ビビってんじゃねえ!」


 そして、カクレテールの住民たちの間でも評価は二つに分かれた。

 そんなにすごそうに見えない。底知れない強さ。という二つに。

 そんな中で……



「ん~~~~~……」


「どうした? サディス?」


「いえ、姫様……う~~~~~~~ん……あの男……う~~~~ん……まさか……いや、しかし、そんな都合よく坊ちゃまと出会うなど……う~ん……」



 サディスは目を細めてジッと空を見つめながら、アースと対峙する男の正体に心当たりがあるようで、ずっと唸っていた。



『……アース・ミスディレクション・シャッフル』



 だが、アースも手をこまねいているわけではない。

 一旦下がったものの、すぐにその足で再び前へと出る。

 今度はより一層多くの幻惑を交えて。


「出た、アースのあのステップ! あれなら!」

「あのヤミディレをも翻弄し、ヒイロさんやマアムさんをも置き去りにした、全身のあらゆる部位でフェイントを繰り出す……レベルの高いものほどその全てのフェイントに反応して翻弄されてしまう」


 頭のてっぺんからつま先まで用いた全身のフェイント。

 相手に先読みすらさせずに翻弄する、アースの最強のフェイントステップ。

 これまでのアースの戦いを見ていた皆からすれば「あのステップなら」と信頼にも似た安心感があった。

 だが……


『これはすごいじゃない……うん……並の使い手じゃ訳も分からぬままってやつじゃない……オイラも鬼ごっこしたら捕まえられないじゃない……』


 流石にこのステップであれば、相手も思わず唸る。

 相手が強ければ強いほど、アースの繰り出しているフェイントがいかに凄まじいのか理解できるからだ。

 しかし……


『キレがあって、しかも力強い……でもね……抜く気がない、殴る気がない……同じことじゃない。オイラには目に見えるフェイントは通用しない』

『ッ!?』


 男はアースのフェイント全てに一切無反応。


「は!? な、なに!?」

「うそ! アースのあのフェイントに……」

「一切動じない……だと!? 見切られたというのか!? あ、ありえん……それこそヒイロさんたちが裏をかかれたのだぞ!?」


 フィアンセイ、フー、リヴァルは「ありえない」と震えが止まらなかった。

 なぜなら、力を追い求める自分たちの最終到達地点が両親である七勇者たちで、その最高到達地点がヒイロである。



『確かにこっちから動いても君は捕らえられないじゃない。でもね、どれだけ縦横無尽に動いても、パンチを打つために踏み込もうとする瞬間にはどうしても君の体は『パンチを打つ』という筋肉の動き……いや、合図を放っているじゃないの』


『ッ!?』


『恐らく血の滲むような反復練習で体に染み込ませたんじゃない? だからこそ、君がどれだけフェイントしようとも、オイラは君の筋肉が『踏み込んでパンチを打つ』という合図を出すまで待っていればいいってことじゃない』



 そのヒイロ、ましてや六覇のヤミディレまで翻弄されたアースの技が、突如現れた通りすがりの男に看破されているのだ。


「そ、そんな破り方が……いや、筋肉の合図を読み取るなど……」

「そういう感覚的は僕には……リヴァルは……どう? できる?」

「無理だ。たしかに、目で見てから反応してはどうにもならないレベルの戦いにおいては、相手の動きを先読みするのが常……アースは特にそれに特化している……だが、そのアース以上の感覚がなければ、こんなことは……」

「つまり、そこまでの人……」

「ああ。それに、アースのステップも、フェイントを織り交ぜることでそういった達人たちの先読みを翻弄するもの……それに一切引っかかることなく、本命となる動きだけを感じ取るなど……そんなこと……人間にできるのか?」


 いくら、戦時中で戦う者たちが多い時代だったとはいえ、これは「ありえない」と。

 だが、ありえるのだ。



「やりおるな……あやつ……あれだけできれば、かなり名の通った奴だと思うぞ?」


「「「「「ッッ!!!???」」」」」


「パワーもスピードも数値化すればもっと優れている者はおるであろうし、あの男に魔力もない……しかしそれでも……経験値が小僧とは段違いじゃな。持っている引き出しを開けるだけで、小僧に対応できるだけの手があやつにはいくらでもあるのだろうな」



 眺めていたバサラも笑みを浮かべて一言そう口にした。

 だが、その一言だけで十分すぎる重みがあった。


「……まさか……やはりあの御方が!」


 そのとき、サディスだけは確信した。


「おい、サディス、さっきから何だというのだ?! お前はあの男に何か心当たりがあるのか?」

「……姫様……私もあの御方とは会ったことはありますが、そこまで関りがあったわけではないので……ただ、戦い方というより、あの独特なしゃべり方やらが、その……いえ、私ももう何年もお会いしていないので……ですが……おそらく……」


 そして、そんなサディスの予想に対する答えが―――



『七勇者……『コジロウ』?』


『勇者なんてよして欲しいじゃない。オイラぁそんな輝かしいもんではないじゃない』


「「「ぶぼっほぉおおお!!?? え、ええええええええ!?」」」


「やっ……やっぱり」



 アースが対峙する男にそう告げた瞬間、男はまた笑った。

 その瞬間、フィアンセイ、フー、リヴァルの三人は盛大に噴いて空を凝視した。


「ちょ、ちょぉ!? な、なん、七勇者のコジロウだと!? わ、我も幼少期に一度か二度しか会ったことはないが……あの男が!?」

「う、うそでしょ!? いや、有名どころかもう教科書に載るような……えええ!? え? ちょっと待って……なんでそんな大人物とアースは偶然出会っちゃうの!? しかも競馬で!?」

「あれが、父たち七勇者の中でも最年長にして、最古参……伝説のコジロウだというのか?!」


 自分たちの身内以外の七勇者。

 父たちの戦友ということ以外で、実際のところそれほど関りがあったわけでもなく、むしろその男のことについては教科書に載っていることしか知らない。

 だが、それだけで十分伝説。


「え、なにさ、あのおっちゃんそんなに有名なんすか?」

「……その七勇者って、アースくんのお父さんや、あのエスピちゃんと同じ肩書かな?」

「……そして、フィアンセイ姫たちの両親と同じ……というアレなのだろうが……あのコジロウというのもそれほど有名なのか?」


 だからこそ、このカクレテールのように鎖国されて外の世界の情報が遮断されている地において、七勇者のコジロウが出現しているというのにキョトンとしているのは珍しいのである。


「ふっ、有名なのは驚かんが……ふむ……同じジャポーネといえど……、あのサムライはミカドとはまた違う、実に飄々とした奴じゃのう」


 一方で、そういう肩書などには左右されず、あくまで見たままで判断するバサラにとっても、コジロウは興味深いと唸らせるほどのものであった。





 しかし、いずれにせよカクレテールで驚いているのは、フィアンセイたちだけ。





 外ではこんなもので済むはずがない。





 何よりも――――





「国王様! 大変です!」

 

 ジャポーネ王国宮殿内で、上級の将や大臣たちが兵を引き連れて王の下へ。

 王の寝室の扉の前で待機し、中の王へと急報を入れる。


「ん~? なーんでおじゃる、騒々しい」


 しかし、中から聞こえてきた王の声はいかにも気だるげであった。



「国王様、お疲れのところ失礼いたします。しかし、鑑賞会による王都での騒ぎも大きくなっています! まさか、あのコジロウ様……いえ、コジロウがかつてアース・ラガンと関りがあったとは……」


「それがなんでおじゃる?」


「……コジロウは逆賊のオウテイたちストーク家側です。そして、そのストーク家のシノブはアース・ラガンとも親密な関係。そのアース・ラガンもコジロウと接点があります。父親が七勇者のヒイロであるということ以外に、個人的な接点が」


「……ふあ~~~あ……だーから、それがなんでおじゃる? これは大昔の話であろう?」


「ですから……逆賊たち側に、アース・ラガンも味方する……ということも考えられ、そうなれば……元々ストーク家は国民に人気もありましたし、これを機に国民も奴ら側につく可能性も――――」



 国の基盤を守る上役や将たちにおいてもっとも懸念するのは国民がどう割れるのか。

 いや、割れるだけならまだいいかもしれない。

 彼らもバカではないため、国民の大半が今の国王に不満を抱いているのは分かっている。

 そのため、もしアース・ラガンまでオウテイたちについてしまえば、今は自分たちの生活を守ることで精いっぱいの民たちも蜂起するかもしれない。

 それが一番彼らにとって避けたいこと……なのだが……



「くだらんでおじゃる」


「「「「「ッッ!!??」」」」」


「マクラ~、もっと耳は優しくかいてほしいでおじゃる~」


「はい、国王様。大きな赤ちゃん、存分に甘えてください♡ いいこいいこ」


「むほ~! 朕にはマクラがいればそれでいいでおじゃるぅ! マクラ、またいくらでも何でも予算を使うがいいでおじゃる!」



 臣下たちの懸念などどうでもいいと、国王は部屋から出てこなかった。 

 それどころか、中で女と……



「国王様! これは重大なことです! もし国民が一斉に蜂起すれば――――」


「あ~、うるさいでおじゃる! 国民が武器を持ったらどうだというでおじゃる? 我が精強のジャポーネ王国軍が少し動けば素人共など簡単に鎮圧できるでおじゃる」


「で、ですが、それでは国民が……」


「国民がどうしたでおじゃる! 国とは王でおじゃる! そして女王でおじゃる! 朕とマクラが国でおじゃる! 下々が騒いだぐらいで何だというでおじゃる!」


「っ……国王……」



 耳を疑い、そしてこれが現実なのかと嘆き、王の部屋の扉の前で臣下たちは絶望に染まった表情で立ち尽くしていた。

 自分たちは何に仕え、何をしているのかと。

 ただ、そんな中で、部屋の中では……



「……アース・ラガンくん……か……シノブちゃんが好きな男の子……お金じゃ靡かないだろうけど……ジャポーネの美人な女の子たちを見繕って彼にあげたらどうかな? 童貞みたいだし、情を抱いた女の子には弱そうだし」



 気持ちよさそうに膝枕されながらスヤスヤと眠る国王の頭を撫でながら、部屋の窓から見える空を眺めながら、マクラは……



「シテナイ社長も彼が関わるならジャポーネの内乱からは引くって言ってるし……ハクキも関わる気はなさそうだし……泥船はこっちの方になっちゃいそう……でも、そんなことはさせない。それじゃぁ、私の人生があまりにもバカ」



 黒く歪んだ瞳でそう呟き……



「とりあえず、アーナ・ニーストの息子……帝国に居た頃彼と知り合いだったっぽいし、彼のことを少し聞いてみた方がよさそうかな? 女の子関係とか……」


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