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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百九十五話 伝説たちが対策

『さて……行方不明と聞いたが……とりあえず、無事でよかったじゃないの。エスピ嬢。魔王軍に連れ去られていたり……なんか危ない奴に攫われているわけじゃなさそうだけど……な~にしてるじゃな~い? みんな、心配してるじゃない』


 エスピを知る一人の男の唐突の登場。

 その姿、その声に、幼いエスピは怯えたように震える。

 子供っぽい姿を見せられて世界も忘れかけていたが、エスピは七勇者。

 そのエスピがここまで怯える謎の男の異様な雰囲気に世界は息を呑んだ。

 一方で……


「い~や~、オイラの登場じゃな~い、懐かしいね~エスピ嬢~お兄さ~ん♪」


 天蓋を被っているのでまだ顔を隠しているが、このエルフの集落ではもはや勿体ぶることでもない。

 現れた人物が誰なのかなど、もう分かり切ったこと。

 そのため、コジローはネタバレと分かりつつも、己の登場に興奮して笑った。


「ま~、でも確かに『この瞬間だけ』は私も泣きそうになっちゃったかな……お兄ちゃんとの幸せな時間……いつまでも~ってところで現れたんだから。ほんっと空気読めないよねえ~♪」

「くはははは、俺はもう頭を抱えちまったな~」


 エスピとアースもまた当時のことを思い出して笑った。


「へぇ~、この時にハニーはコジロー様と出会ったのね」

「ふふ、しかも~、この時代のコジローはん……やはり顔を隠しても雰囲気あるえ~」

「ジャポーネの英雄でござるからな……」

「とはいえ、彼はこの時代のコジロー様とまで……」


 シノブ、カゲロウ、オウテイ、フウマのストーク一家も同じジャポーネ人であり、ジャポーネの歴史に名を刻む七勇者のコジローの登場に笑みが零れた。

 そして、ミカドも……


「ふぉふぉ。まぁ、あの時代のあの時期……であれば、まだ『普通に殺す気で戦えば』コジローが七勇者で最強であったからな」

「え、そうなの!? 親父より強かった!?」

「まぁ、ヒイロはテンションに左右されて安定しとらんかったからの~」


 と、それはコジローのことを実際よく知らないエルフの民たちまでどよめく程の言葉を放った。


「ねえ、ラル先生ぇ~、コジローさんってそんなに強いの?!」

「え? ああ……もちろんだ、アミクス。七勇者のコジローといえば、ミカドと並んで長く魔王軍と戦い続けた天敵のような存在……まぁ、小生は直接戦ったことないが……」

「エスピ姉さんよりも強いの?!」

「……まぁ、今はどうかは分からんが……どっちにしろ、あの男は底が知れんからな」


 ラルウァイフも直接コジローと戦ったことはなくとも、コジローの強さがどれだけ魔王軍にも轟いていたかは十分認識していた。

 だからこその言葉に、アミクスや他のエルフたちもそれまで「居候の侍のおじさん」という認識を抱いている者も多かったため、認識を少し改めそうになっていた。

 ただ……



「でじゃ、コジロー」


「ん?」



 ニコニコ微笑みながらミカドは……



「おぬし……あの時代のあの時期に、どーしてあんな所におったのじゃ?」


「……ゑ?」



 その問いに、コジローはピタッと口を開けたまま固まり……



『そう、ほんとに困るじゃないの。もし、オイラがこのことを報告したら……オイラがサボってお忍びで遊びに来てることがバレちゃうじゃない? ミカドのジーさんにも怒られる。でも、行方不明の仲間を見つけて放置していることがバレても怒られる。でも、このことを報告してエスピ嬢が連れ戻されると……嬢は泣いちゃう……お仕置きされる……やだねぇ……嬢がこのまま行くことを望んでいるなら叶えてあげたいじゃな~い……でもねぇ……』



 空から「サボっていた」という自白が世界に流れた。



「ちょぉ、いやいやいやいや、こんなの時効じゃない!?」


「……ヲイ……おぬし……あのクソ大変な時期にのう……しかも、エスピと遭遇しとったとか、ワシも何も聞いとらんぞぉ? 聞いとらんかったぞぉ!? え? ワシはそんなに信用無かったかぁ?」


「ちょ、もう十数年以上前の話! いまさらいまさらいまさらじゃな~い! ってか、パリピ、これ流す意味ないじゃな~い!?」


「ヲオオオオオオイ!」


「ぎゃー、温和な御老公が阿修羅になってるじゃなーい!?」

 


 まさに十数年の時を経てのバレなくてもいいサボりがバレてしまったコジロー。

 さらに……


『ふっとべええええ!』

『んあ? ちょ、嬢、ま、まっ、ぬぼおおおおおおおお!?』


 コジローがエスピの力でふっとばされて、壁の外まで突き抜けて飛んで行ってしまったのだった。


「わー、エスピおねーちゃん、つよーい!」

「やっぱ、エスピ姉ちゃんの方がツエーんだ!」

「おじちゃんよわーい!」

「いいぞーねえちゃーん!」


 そして、その見たまんまの場面に、子供たちから容赦ない声が飛び……


「お~、トホホじゃな~~~い」


 せっかく楽しみにしていた自分の登場だったのに、あまり見られて欲しくもない場面まで流されたコジローであった。








 ゆえに、現時点……までであれば……帝国では―――


「おい、なんだったんだ~? あの変なやつは」

「ああ。思わせぶりに現れたと思ったら、いきなりやられてるしさ」

「さぁ、金でもせびろうと思ったんじゃないのか? 貧乏くさそうだったし」

「なるほど、しかし相手が悪かったと……」


 エスピにぶっ飛ばされた男は何者だったんだろうか? 

 そうやって笑いながら帝都で話題になっていたところ……



『まったく、めっさ困るじゃないの!』


『『ッッ!!??』』


『人が見逃すかどうかを考えているときに逃げられると、体が自然と追いかけちゃうから勘弁してほしいじゃない!』



 ぶっとばし、街中を走って逃げていたアースとエスピの前に、コジローが回り込んだのだった。


「うわ、あの変なやつが急にまた現れたぞ!」

「しつこい奴だな……だけど、相手が悪かったな」

「ああ。相手は七勇者のエスピと、あのアースだ!」

「アース、そんな変なやつぶっとばしちまえ!」


 そして、それだけに帝国民を始め、世界中のほとんどの者たちがこの時点ではまだ分かっていなかった。 


『あんた大丈夫なのかい?』

『ん? お気になさらず。かわいいお嬢ちゃんの癇癪だ。あえて笑って受けてあげるのも、大人の務めじゃないの』

『とはいえ、こんな簡単に追いつかれるとは、ちょっと驚いたぜ』

『どーも。エスピ嬢はもとより、お兄さんの足音も筋肉の流れも覚えちゃったじゃない。だからこの街程度の大きさならば……どこへ逃げても、分かっちゃうじゃない? オイラぁ、そういうのは敏感なのよ』


 目の前にいるのが誰なのかを。


「なんか、あいつ……ただ者じゃないのか?」

「やっぱ、エスピの知り合い……連合軍の戦士か?」

「なーに、ジャポーネのサムライ戦士とか、所詮は田舎の剣士だろ!」

「ああ。見てみろよ、あんなヌボーッと立ってよ……腰が高くて構えがなってない」

「あれじゃあ、アースのステップについていけねえな……もっと腰を下ろさないとな。どうやらそういうのも分からない相手のようだな」


 それどころか、アース相手に真正面にゆらゆらと立っているだけで、そもそもそこに居る男が手練れとすら思っていなかった。

 そのため……


『いくぜ! 大魔キラークロスオーバー!』


 それは、アースがヒイロとマアム相手に尻持ちつかせた最強のステップ。


「出たー! アースのステップ!」

「へ、ジャポーネの田舎サムライなんか、みっともなく腰抜かせばいいんだ!」

「私たちのアースくんが、あんなのに止められるわけないもんねー!」


 そのステップを繰り出せば、相手は対応することもできずに抜き去られる未来が確定……


『な~んか、色々とやってるけど……フェイントかい? 最初から抜く気のない筋肉の音……全部偽物……抜きに来ると見せかけて、先にこっちが動くのを待っている……気配でバレバレじゃな~い?』


 のはずが、抜けない。


「止まった!?」

「うそ、アースが……諦めて後ろに下がった?」

「なんで? アースがビビったのか?」

「おい、アース! 臆病な心では何も守れないんだぞー!」


 ステップで抜けず、バックステップで一度距離を取るアース。

 それの意味を一般の者たちではまだ分からないのだった。










 分かるのは……


「ほ、ほん、……本物だ……」

「あのたたずまい……何をやっているのだ、あいつは……」


 ソルジャとライヴァールは二人同時に顔に手を当ててその場で中腰になってガックリと項垂れていた。

 

『うーむ……意外な展開だゾウ。まさか、奴が……フカインパクトに続いて驚きを相変わらず休ませてくれんゾウ……パリピのやつは……いや、アース・ラガンか』


 魔水晶でリモート参加のライファントも呆れたように呟く。

 そして三人のそれまでの話で、現れた人物が何者なのかを聞いた臣下たちはどよめいたままであった。


「アレが……七勇者最古参の一人、伝説のコジロウ様?」

「うわぁ……御三方が言われるのだ、本物なのだろう……すごい」

「ああ。それに、アース・ラガンたちの前に回り込んだ速力も……それに――――」


 彼ら世代にとってはモロ憧れの存在でもあるコジローなだけに、表情が嬉々としている。

 さらに……



「ああ。アースのステップに対して、腰を下ろして身構えるのではなく、あくまで脱力した状態で立ち……捕まえるとか、抜かせないとかではなく、フェイントにつられないことを第一に……か。ああいう破り方があるとはな」


「とはいえ、ヒイロとマアムが同時に引っ掛かったステップ……俺とてどうだか……コジロー……」


『しかも、恐ろしいのはそれだけじゃないゾウ。度重なる実践経験、ヤミディレやパリピとの激戦も乗り越えてきたアース・ラガンのステップ……アレはまず、その見事な足さばきや体のキレに思わず見惚れてしまう……しかし、あやつは目が見えないからといって、初見で一切のフェイントに引っ掛からなかった……やはり、恐ろしい男だゾウ』



 未だコジローの正体に気づいていない世界の大多数たちと違い、この場ではコジローがいかにすごいのかの評価が上がっていっていた。

 そして、アースとエスピの前に立ちはだかるコジローは、腰元の刀に手を添えて……



『この距離での話し合いをするじゃない? でも、次にお兄さんがオイラを抜きに来るなら……オイラもコレを抜くかもしれないじゃないの。それはお兄さんも、嫌じゃない?』


『ははは、何言ってんだ。挑発してるようにしか見えないぜ? もっと来てみろってな』


「「『明らかに』」」


 

 そして、当時のコジローが考えていることについて、アースに同意するソルジャたちであった。








 そして、同じようにコジローだということに気付いているこの場所でも……



「フェイントに引っ掛からないようにすることを第一に……そういう破り方があったとはな……だが、あんなのあいつにしかできえねえ~……つまり本物だよ……」


「ええ。アースのあのステップを、目で追ってフェイントに引っ掛からないようにするなんて無理ね。だいたい、そうやってボーっと立っている間にあの高速のパンチが飛んで来たら対応できないし……」


「もしまた俺らがあのステップを目の当たりにすることになれば……それはもうステップを繰り出される前に叩く……踏み込みの前……もしくは……シンプルに周囲広範囲に渡る全体攻撃でドカーン……それしかねえな」


「ええ。トップスピードに乗られたら、それこそ捕まえるのは不可能……って、おいおい私たちってば何を……」



 アースのステップに対する初見での破りに、コジローが本物であることを確認し、さらにその破り方について議論するヒイロとマアム。

 だが、話しながら二人は苦笑した。


「まったく……六覇をぶっ倒したんだ……当たり前と言えば当たり前だが……俺たちが……」

「アースの技に驚くだけでなく、自分たちならどうすべきかの対策を真剣に考えることになるなんてね……」

「ああ。そして……そうしないとあいつは捕まえられないと身をもって知らされたからな……」

「こんな貴重な場面を目の当たりにしているというのに、私たちもほんと……」


 もはや、何の対策もなしにアースをどうにかできるものではない。

 ヒイロもマアムもそう思っており、改めて自分の息子が踏み込んでいる領域に呆れて笑うしかなかった。


「今まで六覇とは戦ったアースだが……」

「私たちは抜きにして、七勇者とガチで対峙するなんて、あの子も初めてだしね」

「ってか、エスピも早くアースにそいつが誰なのか教えてやれ!」

「そうよ! アース、そいつは只者じゃないどころか――――」


 こんな貴重な場面を見られるというのに、自分たちは何を話し合っているのかと。



『俺も、とんでもない伝説遭遇率だな……でも……いいぜ、試すぐらい。ついでに、テメエの度肝も抜いてやるよ』


「「って、気づいていた!?」」



 そう、それは世界も初めて見る。

 アース・ラガンがヒイロ・ラガンの息子だと分かっていない。

 しかも、戦時中の現役バリバリの全盛期とも言える状態でアースが七勇者と対峙する。

 そこに、忖度などない。


「そうか、アース……なら、どうするんだ?」

「ええ、あんたなら……そんなコジローをどうやって攻略するの?」


 そして、七勇者を前にしてアースはどうやって乗り越えるのか?

 ヒイロとマアムは自然とワクワクしたように笑みを浮かべていた。



「まさに、その通りの遭遇率。そして……伝説はまだ続く……ということか。フハハハハハ! まあ、見せてみるが良い。吾輩ら六覇が敗れたところばかり見せられていたからな……フェアではなかろう」



 ハクキもまた楽しみにしていた。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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