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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百八十八話 そして再び夜が来る

「ライヴァール……ア……アレは……」

「なんということだ……もはやこれでは……捏造などと誰も言えぬぞ……」


 その日、七勇者や多くの帝都民たちが空を見上げて呆然とする中で、巨大な大雲とペガサスに跨った天空族たちが上空を通過した。


「ふふふ、地上の人々は驚いてますねぇ、王子」

「午前のべトレイアルというところもそうでしたけど、どうやら地上人たちにとって私たちは本当に伝説だったようですね」


 そんな地上の人々の反応に天空族の乙女たちは「悪い気はしない」という様子で笑みが零れる。

 そんな一団を率いるのは……


「ふん。あの闇の賢人の口車に乗るのは癪だったが、あの坊やと僕たちの……いや、天空世界を救った坊やが捏造だ何だと言われるのは僕たちにとっても屈辱だからね……色々と交換条件も悪くなかったし……それに……」


 先頭を駆け抜ける、短いスカートを履いた王子は、午前はべトレイアル王国の上空を通過し、そして午後には帝国の上空に辿り着き、帝都の者たちの反応を見ながら……


「坊やの生まれ故郷にして、坊やを追いやった国もこうして見れたのだ。あの鑑賞会でどういう認識になっているかは知らないが、僕たちは大恩ある坊やの味方だとアピールしとかないとね」


 パリピの提案通り、ガアル達天空族の一団は、その姿をこれまで秘匿としながらも、ここに来て世界に姿を晒した。

 今更隠すのは無理だということ、ならば立ち位置だけでもハッキリとさせるといった理由もあり、本来は天空世界を傾けさせたパリピと交渉するなど以ての外であったが、王子は柔軟に受け入れた。


「坊や……君を嘘つきになんて……させないよ……♥」

「……王子……ど、どうされたのです!? 王子が、み、見たこともないような表情を!?」

「か、カッコいい王子が……か、かわ……い……」


 もっとも、個人的な理由はなくもなかったりするのだが……


「あっ、コホン。とにかく、これで帝国とやらはもういいだろう。向こうが呆然としている間、接触してくる前にさっさと去ろう。え~っと次は……今日はもう無理だが……『ジャポーネ王国』……とやらだな。まったく、人使いの荒い……まぁ、その分今日の鑑賞会がもうじき始まるだろうから、それを楽しむか♪」


 いずれにせよ、天空世界が地上に干渉を始めた。










 夜になれば、世界中の人々が浮足立つ。

 鑑賞会の始まりが近づいてきているからだ。

 昨晩は「これからどうなるのだ?」と気になる場面で終わったので、誰もが続きを気にしている。

 そして、今はそれだけでなく……


「なあ、アレ……やっぱ、そうだよなぁ?」

「うん……びっくりしちゃったよ……でも……つまり、そういうことなんだよね?」

「ああ」


 帝都でも至る所で騒がしい声が夜になろうと関係なく響いていた。

 それは……



「帝都上空を通り過ぎた巨大雲と、あのペガサスに乗った天使連中……アースくんたちが戦った天空族……」


「本当にあったんだ……天空世界……そして、天空族は本当にいたんだ……」



 そう、本日は朝から世界各地で天空世界や天空族たちの目撃情報が入った。

 まるでワザと人目に付くように、そして特に何かをするわけでもなく、ただ通り過ぎるだけ。

 戦闘の意志どころか、挨拶をすることもなく、ただ地上に住む人類に存在だけを見せつけるだけ。

 しかしそれでも、民たちにとっては十分であった。

 それこそが、アース・ラガンの物語は全部本当のことなのだという証拠になったからだ。


「くぅ~、しっかしどうなるんだろうな?」

「ああ。過去に行ったアース君が、七勇者のエスピと遭遇……」

「そんなの教科書にも載ってないけど……どうしたのかなあ? どうなるのかなぁ?」


 そして、一部で起こっていた「流石にこれは捏造じゃないか?」という意見ももはや叩き潰され、世界の民たちはアース・ラガンの物語は本物として、そしてその続きをただ純粋に待ち望んでいた。










 勿論それは、その結果を知っている者たちにも同じ。


「どーれ、どっこいしょ~なのじゃ♥」

「え?」


 集落の広場で地面に腰を降ろして空を見上げる一同。

 その中で、アースの膝の上にノジャが腰を降ろした。


「いちゃいちゃなのじゃ~、婿殿ぉ♥」

「ちょ、おま、なんで、離れろよぉ!」

「や~なのじゃ~♪ わらわもそろそろ婿殿を本格的にゲットしに行こうと思ったのじゃ~」

「は!? ちょ、おま、な、なにって、おおい! 動けねえ!」

「婿殿、拒否るななのじゃ! じゃないと犯して孕むのじゃ」


 プロポーションは壊滅的とはいえ、それでも露出の多い衣装を纏っているノジャ。

 肌と肌を擦りつけ、さらにはいやらしく舌でアースの頬や首筋を舐めてくる。

 アースが慌てて飛び退こうとするも、胴体に巻き付いたふさふさの九つの尾がアースの動きを封じる。


「ちょ、何やってんの、ノジャ! お兄ちゃんの膝からおりなさい!」

「狩られたいようだね、ノジャ! 僕のお兄さんから離れたまえ!」

「ノジャちゃん、アース様の膝の上に……いいなぁ……」

「べー、なのじゃ。昨日はわらわは色々と気になることがあっても婿殿に深く追求しなかった良い女だったのじゃ。それなのに、昨日は婿殿は途中からシノブと二人でイチャコラ……不公平なのじゃ! それに天空世界のあたりでクロンという小娘も婿殿とイチャイチャしとったし、わらわだけのけ者なのじゃ! 今日はわらわはここで見るのじゃ!」


 この場に居る全員の中でも年齢は上から数えた方が早いというのに、ただの駄々っ子のようにノジャは譲らなかった。

 だが……


「のう婿殿ぉ~……」

「ああん? いいからお前、離—————」

「わらわも……女なのじゃ……」

「……は?」

「惚れた婿殿とこうできる日を一日千秋の想いで待っていたのじゃ……少しぐらい許して欲しいのじゃ」


 何だかんだで十数年以上も想い続けた相手に、これまで弟妹の妨害や交渉もあって手出ししないようにして、しかしそれがようやく解禁になったのだが、当のアース自身はシノブだったりクロンだったりとイチャイチャ。

 ノジャはノジャでアースのことをノジャなりに想っているのだと、少し殊勝な態度を見せるが……


「…………少しも無理。少しも許さん。今更そんな顔したって騙されねえよ」

「ほぎゃ!? し、しどいのじゃぁ!? もう、絶対今日はここを譲らんのじゃ!」


 今までが今までなだけに、ノジャの殊勝な態度を一切アースは信用せず、結局ノジャは余計にアースにくっついて離れなかった。


「ふふふ、あらあら、ハニーも大変ね」

「あれぇ? シノブちゃんは余裕? 怒ると思ったのに……今日もお兄ちゃんと二人で~とか、思ったりしないの?」

「ええ、私は昨日十分すぎるほどハニーを堪能したので……これ以上は私の理性が持たないし、ハニーにもウザい女と思われるかもしれないしね……」


 そんなノジャをどこか落ち着いて微笑ましそうに眺めるシノブ。


「ほぉ~、シノブちゃん大人だねぇ~……それに比べてノジャは……はぁ~~~、やれやれ」

「ちょま!? エスピ! 何なのじゃ、そのため息は! というか、シノブは昨日散々婿殿と二人きりだったのだから、今日譲るぐらい何なのじゃ!?」


 シノブに感心し、ノジャにため息のエスピ。

 シノブの余裕とエスピのため息に暴れるノジャ。

 

 しかし、ノジャとエスピはこのとき、すっかり頭から抜けていた。


 二人にとっては十数年以上も昔の話のためか、今日の鑑賞会がどこまで区切られるのか、分かっていなかった。


 世界は今日、教科書に載っていないノジャの真実を知ることになる。かつての六覇の面々も含めてだ。

 パリピが自重も忖度もするはずがなかった。


 それを見た一同は「膝の上で甘えるぐらい許してあげよう」という気になるほど……






 一方で……


「陛下……」

「うるさい、観賞会じゃろ! 民たちにちゃんと家から出ぬようにしたのじゃろうな!」

「無理です、既に民たちは大人数で一斉に外へ……兵たちもどうすればと戸惑っており……何より、兵たちもまた『我が国の英雄エスピに何があったのか?』と気になっているようで……」

「ぬぐぐぐぐ……」


 玉座にて苛立ちを抑えきれない様子の、ベトレイアル王国のクンターレ。


「ええい、コレも全て……あ奴らの所為だ! 天空族……天空世界! まるで狙いすましたかのように朝早くから現れ……おのれぇ!」


 それは、クンターレにとっては予想外のことだった。

 早朝に行った、帝国の皇帝ソルジャとの会談。

 ベトレイアル王国の地位向上。そのために帝国の信頼を連合の中でも落とすことが手っ取り早かった。

 幸い、アース・ラガン絡みで帝国を責められるネタはいくらでもあったので、クンターレはチャンスと思って強気に出ていた。

 七勇者のエスピが国から出た以上、世界で最も力があり、七勇者が五人も健在のディパーチャー帝国を少しでも……と思っていたところで、まさか自分たちの不利益になる展開が来るとは思っていなかった。

 

 帝国を責める要素に使っていたアース・ラガンが世界的に支持されるほど、民たちの心が傾いていたこと。


 ならば、「アレは捏造だ」ということにして民衆の認識をコントロールしようとした。仮に本物だとしても本物だと誰も証明できないと思っていた。ところが、これまで伝説と言われていた天空世界が、まさか堂々と世界の上空を「人々が見える高度」で飛行するとは思っていなかった。


 これにより、アース・ラガンの物語はむしろ真実味が増すどころか、全員が「本当だった」と認識してしまったのだ。


 そして……



「「「「「始まったぁああああああああ!!!!」」」」」



 宮殿の外、王都より民たちの拍手喝采が沸き起こる。


「……我らも出るか」


 それはすなわち、ベトレイアル王国国王であるクンターレにとって胃が痛くなる時間が始まったとも言える。

 そんな王の心境を感じ取った臣下の者たちは……

 


「しかし、陛下。仮にアース・ラガンの物語が本当だったとしても……当時のエスピはまだ子供。あの頃のエスピは命令に忠実でしたし……あまり我が国の評判を落とすようなことを口にすることはないのでは?」


「ぬっ……むぅ……」


「確かに、連合に秘密裏にしていたゴウダ暗殺作戦は明るみになりましたが、当時の戦争であればそういったことは何もおかしい話ではありません。暗殺作戦も、下手に情報漏洩されるのを避けたということにすれば、我が国や国王様の評判……ましてや十数年前の戦争の話ですし……それほど気になされるほどでもないかと……」


 

 臣下の言葉にクンターレは「確かにそうかもしれない」と思い始めた。

 言われてみれば、それほど気にするような――――


 

『もう……殺せばいいよ……』



 それは、開始早々に半死半生で生気を失った瞳をした傷だらけのエスピが口にした言葉で……



『わかってた……わたしは……任務に失敗した……もう……いらない子……戦争でいっぱいころせば……きつい実験も減らされた……叩かれなかった……でも……私は失敗した……国の命運がかかってるって言われたのに……』


「ほごぉぉおおお!?」



 初っ端からエスピはクンターレにキツイ一撃を叩き込んだ。

 当然それは、すぐに世界各地、そして当然ベトレイアルの王都の民たちにも届き……


「お、おい、どういうことだ?! エスピ様に……きつい実験!? 叩かれるってなんだ!?」

「……そんなことをエスピ様はされていたのか!?」

「エスピ様は、当時はまだあんなに小っちゃい……女の子に……」

「おいおい、どういうことだよ!」


 秒で国民の怒りを買った。



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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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