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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百八十五話 駆け抜ける世界の感想(2)

「世界が割れる……か?」

「うむ」


 それは、ヴイアール世界でのこと。

 世界中が「こんな中途半端なところで眠れるか!」と騒いでいる中で、張本人のアースは疲れてグッスリ……なのだが、意識だけはヴイアールでトレイナと二人で話をしていた。



「天空世界、さらに貴様はヤミディレとパリピを見逃し、そして余と関連を匂わしているクロンとも懇意……そんな貴様を世界はどう判断するか。すべての国がエルフたちのように『わー、アース・ラガンすげー』みたいに単純なものではないからな」


「だよ……なぁ。あんたが言っていた、パリピが世界中から嫌われている一方で、熱心に支持する逆張りする奴らもいるとかっていうのみたいに……」


「そうだ。貴様と知己の者たちが個人的に貴様の味方になっても……国単位となるとな……」



 本当は鑑賞会の途中で抜け出して話をする予定だったが、結局河原でシノブと遭遇して甘酸っぱい空間で過ごしたり、途中からエスピとスレイヤが来たりで、トレイナと二人で話ができなかった。

 と言っても、もはや鑑賞会の流れは止められない。

 次もその次ももう世界に流れることは決定的。

 今からパリピを探し出して鑑賞会を止めることも不可能。

 ゆえに、トレイナが話すのは今後どうするかというよりも、「そういう心づもりでいろ」という話だった。



「だよな~。特に過去にエスピと出会って以降がやばいよな~。魔族に対して。俺が戦争にガッツリ裏で関わってるから、かつて魔王軍だった奴らは俺に対して恨みを抱くかもしれねえしな……」


「まぁ、それもなくはないだろうな。六覇全員が貴様を認めて評価していてもな……」


「ああ……え?! そうだっけ?」



 サラリとトレイナが口にした言葉に驚いて顔を上げるアースだったが、トレイナは呆れたようにため息を吐いた。



「何をいまさら。ヤミディレもパリピも、そしてノジャもゴウダも貴様を認め、ハクキとて立場上は貴様と敵対することになっても、そこに恨みなどはないし、貴様を認めている。ライファントも今後何を知ったからといって、貴様に恨みを抱くほど小さな器ではないし、おそらく既に貴様のことは驚きながらも、ヒイロの息子としてではなく、一人の男として認めているであろう。あやつはそういうやつだ」


「お、おお……そうなのか? なんか……名前を出されるとすげえ面々だな。伝説の六覇総出で俺をとか………」


「ふん。そもそも、その六覇の上に立っている王たる余がとっくの昔に貴様を認めてい―――ッ」


「え!?」



 と、そのとき。会話の流れでトレイナは当たり前のように言おうとしたことにハッとなって固まり、アースはポカンとし……


「認め……まあ、まだまだまだまだまだまだまだまだだけどな! しかしまあ、うむ、よくやっているとは思っているとも」


 とっくに認めているとはいえ、それをやはり面と向かって言うのは今更ながらでも照れるようで、トレイナは少し早口で捲し立て、そんなトレイナにアースは嬉しそうにニッと笑みを返した。



「くははは、そっか。なんか、それがこの世で一番嬉しいし、メチャクチャやる気が出るぜ」


「む……むぅ…………ぼそっ、こやつ最近こういうことを平然と言うように……童のくせに生意気ボソボソ……と、とにかく、メンドーなことになるぞ! 覚えておけ! そして、スパーリングするぞ!」


「ああ……え!? 今から!?」


「当たり前だ! 貴様はこの数日余をほったら……というより、トレーニングの時間が減っているのだぞ!」


「ま、まぁ……そりゃぁ―――」


「いくぞ! 大魔螺旋デビルスパイラル――――」


「って、いきなりかよぉおお! くそ、大魔螺旋ッ!」









 そして朝……



「……あ」


「ふあ?」


 

 アースは真っ白い肌と二つの白い果実をぶら下げた白いショーツ一枚だけの半裸のエルフの乙女と廊下で遭遇。


「アミクス、おま……ふぁ?!」

「え……わ~、アース様ぁ~おはよーございますぅ……むにゃむにゃ……」

「なななな、朝から何ツー格好してんだよ、お前は!」

「え……? んん~…………ッ!!?? ちょ、や、やだ、私ったら! 寝ぼけてて着替えの途中で顔を洗いに……ひィ!?」


 まさに、世界中が眠れぬ夜を過ごしたと言っても過言ではない。

 夜遅くまで続いた鑑賞会を、興奮と混乱の絶頂時に「それではまた明日」となった。

 空へ向けて恨みと怒りを叫んだり、共に鑑賞会した者たち同士で話をし合ったり、気づけば日はまた昇っていた。

 それは、「今後どうなるかが分かっている者たち」にも同じであった。


「う~ん、何の騒ぎい~お兄ちゃん……私は徹夜でお兄ちゃんの部屋に忍び込もうとするノジャと格闘してて眠……って、アミクスぅ!」

「何をやっているんだい、アミクス! お兄さんの前でそんな……」

「朝早くからなんなん……で……って、アミクス! いくら何でも朝早くから攻めすぎなんで! お父さん、許さないんで!」

「なになに、何なの? ……アミクスぅぅうううう!!」


 族長宅で朝早くから響き渡る。

 眠気も吹っ飛ぶアミクスのほとんど裸のボディにアースもよろめいてしまった。


「ふぉがああ、婿殿おお、そのような脂肪の塊ではなく、ここに魅惑のボディたるわらわのプリンプリンの尻とプニプニのマ――――――」

「寝てなさいって言ったでしょぉおおおお!」


 そして、こっちも全身を縄で縛られてミミズのように廊下を這って現れたノジャを、エスピが慌てて取り押さえ……



「ふふふ、朝から賑やかね。ハニーもおはよう♪」


「ん? あ、お、おお……」



 こっちはこっちでキラキラの満点の微笑で挨拶をするエプロン姿のシノブが現れ……


「あらあら、アミクスもノジャも……ハニーも朝から大変ね♪」

「い、いや、その……」

「とりあえず、ハニーも早く顔を洗って庭で皆と食べましょう。そして、今日どうするか、今後どうするかも含めて皆で話をしましょう」

「そ……そーだよな……」

「あと、今日のミソスープは昨日と味を変えてるから、忌憚なく感想をお願いね♪ ハニーの好みも全部把握したいから」

「お……おぅ」


 アースの身に起こったハプニングも微笑み一つでスルーする落ち着いた様子のシノブ。

 その姿に……


「ノジャ、アレだよアレ。ああいうのだからね。お兄ちゃんのお嫁さんになるなら、ああいうのね」

「ぬううう、なんじゃあの小娘はぁあ! わらわの婿の嫁ヅラしおってぇ!」

「はぅ……シノブちゃん……やっぱり大人だなあ……」

「いいからアミクスは服を着なさい」


 一部を除き、一同は「ほぉっ」と感心するのだった。


「うぅ~、アース様に見られちゃった……いや、別に見られてもいいし、アース様は大きいのが好きだって話だからむしろ……えへへ」

「ヲイ」

「はうぅ、そうでした、ご、ごめんなさい、アース様、朝から、本当に私……寝ぼけてて」

「ったく……いや、まあ、そうみたいだけど……何で寝不足なんだよ。俺なんて昨日の鑑賞会でメチャクチャ疲れてグッスリ眠れたのに……」


 慌ててシーツなどでようやく体を隠して顔を赤くしながら謝るアミクスに呆れるアース。

 だが、アースの言葉にアミクスは唇を尖らせて拗ねるように……


「だって、あんな気になるところで終わって、気になり過ぎるんですもん……あの後、アース様と出会った小さい頃の姉さんがどうなったのかとか……」

「はぁ? どうなったかなんて、知ってるだろ? それに俺もエスピもこうしてここに居るんだし、無事だったに決まってるわけだし―――――」

「そういうことじゃないんです!!」

「うお!?」


 と、アミクスが珍しくアースに対して怒ったように声を上げたのだった。


「アース様は分かってないですよぉ! 好きな人の物語で、自分も好きな物語は、展開がどうなるか分かっていたって見たいの知りたいの! それに、その物語が何も知らない世界中の人に広まってるわけだし、みんなどう思ってるのかな~とか、そういうのも気になるんです!」

「……お、あ……」

「って、わああ、好きな人のって、ち、違うんです! あ、いや、違くはないんですけどぉ、ああ~、でも、そうじゃなくって!」

「あ~、ま、まぁ、分かった。言いたいことは分かったからもう大丈夫だから」


 と、鼻息荒くして「ふん! ふん!」と朝早くから叫ぶアミクスだったが、再び自分の発言が恥ずかしいことに気づいて蹲った。

 一方で、アースもまたアミクスの言っていることも分からないでもないと苦笑。



「おい、朝早くからアミクスの声が聞こえたが……何をしているのだ?」


「おお、ラル。おはよ」


「あ、せ、先生~」



 そのとき、廊下の窓の外からラルウァイフが勝手知ったる様子で顔を出した。

 そして、アースはラルの顔を見ながら、色々と思うところがあり……


「世界中の人……か……まぁ、親父や母さん、それにサディスたちもビックリしてんだろうな……おばあちゃまとかひっくり返ってねえだろうな?」

「ははは、お兄ちゃん。絶対皆ビックリしてるよね」

「だな。それに……世界中か……それなら……」

「お兄ちゃん?」

 

 世界中の人が鑑賞会で自分のことを見ている。


「ぬわはは、そういう意味では、エスピは大丈夫なのじゃ? おぬしも昨日は登場したし、おぬしの故郷のベトレイアルの国王……え~っと……くんたーれ……じゃったか?」

「ああ……クンターレ王ね」

「そうそう。そ奴にもおぬしが婿殿と接触してるのとかバレたのじゃ」

「ふーんだ、別にどうでもいいし~、もう絶縁したし~……なんか文句言って来たら……ぶっとばして追い返すだけだし~」


 そう、エスピのかつての故郷でもそうであるように、世界がもはや自分たちのことを認識してしまった。

 このエルフの集落の外で皆がどんな反応、どう思って見ているのだろうかと考えれば、色々と恥ずかしくてどうにかなってしまいそうなアースではあったが、一方で……



「なぁ……ラル……」


「ん?」

 

「この世界のどこかで……見て……くれてんのかな? あの人も」


「……? ……あ…………ああ……そうだな」


 

 少し切ない気持ちになりながらも、アースは呟いた。





 

 そして、同じころ……






「おはよう……あなた。昨日は本当にすごかったのよ?」


 そこは、帝国領土内にある辺境地の小さな村。

 人口も少なく、大きな街からも遠く離れ、周囲も山と森に囲まれた地。

 その中でもはずれにある共用の墓地にて、一つの墓石の前で女が手を合わせていた。


「私たちのアーくんが……いつの間にか世界のどこへ行っても何でもできる人になったんだから……」


 愛おしそうに微笑みながら墓石に向かって語り掛ける女は、一見若さと大人の落ち着きを身に纏っているように見えるのだが、これでも既に孫が居る。


「とっても気になるところで終わって、おばーちゃまとしては気が気じゃないわ。ヒイロとマアムとは喧嘩したままのようだし……それは悲しいことだけれど……でも、私にはただあの子がどこに行っても無事でいてくれることを願うしかないから……」


 そう、アースの祖母にして、マアムの母であるアヴィア。

 住んでいる村で、昔亡くした夫に孫の大活躍を語りかけていた。


「それにしても、アーくんのお嫁さんは誰になるのかしら? サディスちゃんとはああいう形で卒業したみたいだけど……でも、クロンちゃんもシノブちゃんもとっても素敵な女の子なのよね……うふふふ、ひょっとしたら曾孫ができたりしてね♪」


 アースが産まれる前には既に亡くなっていたアースの祖父。

 この小さな村で出会い、結ばれ、アヴィアはマアムを産んだ。

 戦争が終わり、ヒイロとマアムが結ばれて帝都に移り住むようになってからも、度々二人からは「一緒に住まないか?」と言われていたが、アヴィアは夫との思い出の生まれ育ったこの地で生涯を過ごすと決めていた。

 それでも時折長い時間をかけて帝都に遊びに行き、アースと同じく孫同然のサディスの二人と会っては二人を猫かわいがりすることを楽しみにしていた。

 しかし、ここ数ヶ月の間は、アースが行方不明になったことと、ヒイロとマアムとも連絡がつかなくなったことで落ち込んでいた日々が続いていたが、鑑賞会でアースの大活躍を見ることができ、すっかり元気を取り戻していた。


「おっ、アヴィアさん、おはよーございます!」

「アヴィアさん! 早いですねぇ~」


 すると、村の者たちも徐々に家から出てきたのだが、その目に隈ができていることをアヴィアは見逃さなかった。


「うふふ、皆さんもおはよう。どうやら、あまり眠れなかったようね」

「当たり前じゃないですか~。あんなところで終わって……ほんっと、お孫さんどうなってるんですかァ!?」

「そうねぇ……どうなっているのかしらねぇ。私もあまり眠れず早起きしてしまったから。いずれにせよ、私も夜までに今日の畑仕事をしないと。アーくんの姿を今日も目に焼き付けるんだから」


 もはや現在では世界中が大騒ぎの二日間。

 この、普段はのどかで平和な村の住民たちもそうだった。


「そうだ……その……アヴィアさん。例の件……どうします?』

「……そうね……」


 そして、村の男からのある問いに、笑顔だったアヴィアも少しため息を吐いた。


「昨日、村の男たち皆で森の中を見に行ったら、『今日中に森から出ていくから見逃してほしい』……って言ってたみたいですけど」

「……そう……」

「やっぱり、街に行って駐留する戦士に今日にでも報告したほうがいいですよね?」


 それは鑑賞会とは別に、この小さな村で起こったある出来事の話。

 

「ううん、待って。私は……例の彼と少し会って話をしてみようと思うの」

「え!? いやいや、危険すよ!」

「そうかしら? 森の中で獣に襲われそうになっていた子供たちを助けてくれて……子供たちも『すごく優しい』って言っていた。私は……悪い人ではないと思うの」

「で、ですが! 相手は人じゃ―――」


 その出来事の対処にどうすべきかと悩む村人たちの中で、アヴィアは自ら率先して……

 

「それに、自分の孫が……相手に角が生えていても、翼が生えていても、そんなこと関係なく接しているんだから。私もおばあちゃまとして、心の狭い恥ずかしいことはしたくないわ。なんだったら将来、自分の孫が角の生えている女の子と結婚して、曾孫に角が生えているかもしれないんだしね♪」


 優しい笑顔ながらも強い意志の籠った瞳でそう告げるアヴィア。

 

 

 それは、のどかで平和な村の朝の風景であった。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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