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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百八十一話 お前だったのか!

 世界が震撼する……わけではまだなく、現時点ではまだ一部でしかない。

 それこそ、「あの二人」をよく知る者以外には、現時点ではまだ「偶然」と捉えられている。

 だが、それ以外には……


『なあ、あんた一体何者なんだ!? 帝国騎士なのか? それともまさか……勇者様か!』

『ヒイロを助けてくれてありがとうございます。ヒイロ、あんたももっとお礼言いなさいよ! 弱っちいくせにバカやって皆に迷惑かけるんだから!』


 幼いころのヒイロとマアム。

 その目の前で瞳を白黒させているアース。

 その光景を空に映し出されて……


「な、なぁ、サディス……こ、これは……ぐ、偶然であろう? そうであろう?」

「あ、あはは、だ、だよね? ちょ、ちょっと面影があって、な、名前がたまたま同じなだけで……こんな偶然が……」

「……当たり前だ……偶然だ……偶然に……決まっている」


 苦笑しながらも、その全身を震わせるフィアンセイ、フー、そしてリヴァル。

 三人は「偶然」だと何度も言葉にする。それは、それだけアースの身に起こっている事態が非現実的なものであるからだ。


「な、なあ、あんたらよぉ! ヒイロとマアムって、あのアースの親父さんとおふくろさんだよな?」

「うん……僕たちも会ったけど……でも、確かにあの子供は……面影は……うん。でも……」

「ヒイロとかマアムって名前は、外の世界ではそんなに珍しくないの?」


 オラツキやモトリアージュたちも「偶然面影がある」、「偶然名前が同じ」と思っている。

 しかし……


「うそ……です……こ、こんなこと……こんな……」


 この場にいる者たちの中で最も動揺しているのは、サディスであった。

 顔面を蒼白させ、歯をガチガチと震わせ、常に涼しい顔をしているサディスには珍しいほど動揺した姿。


「お、おい、サディス! 偶然に決まっているのだから、そ、そのような反応をするな! だ、だって、だって……」


 これは「偶然だ」と笑い話にしたいフィアンセイたちは、サディスの反応にゾッとしてしまった。

 なぜなら、この場にいる者たちの中で一番、ある意味でアースよりも長い間、ヒイロとマアムと一緒に居て、二人を誰よりも知っているサディスがそのような反応を見せるからだ。

 そして……


『ヒイロくん! マアム! 何をしているの!』


 それがただの偶然ではないと、これで分かることになる。


「あ……な……『アヴィア様』……が……」


 そう、その人物の存在を見ては、流石に偶然では済まされない。


「おいおい、アレこそアースの母ちゃんじゃねえか?」

「うん、確かに似ているけど……」

「いや、でも少しだけ大人に見えるけど……って、いやアースくんのお母さんは見た目アレでも大人だけど……」

「なんだか、大人のお姉さんの感じするんだな」


 そこに現れたのはマアムに似た若い女。

 二人は幼い子供二人を強く抱きしめて、そしてアースに深々と頭を下げる。


『あの……旅のお方! この子を助けてくれて……この村をお救い下さり、本当にありがとうございます』

『は、はい!? え、あ、はい!』


 アース自身も激しく動揺しているのが伝わってくる。

 アースもまたその目の前い現れたマアム似の女性を分かっているからだ。


「や、やはり、間違いない……アヴィア様……」


 そしてサディスはもはや腰を抜かしていた。

 この事態をどう理解すればいいのか分からなかった。


「お、おい、サディス、あの女性……たしか、アースの……というより、マアム殿の……それに、アヴィアという名は……」

「う、うん……アースの……おばあちゃんの名前だよね?」

「俺も幼いころ何度かお会いしたことがあるが……ばかな! ばかな! これはどういうことだ!」


 そう、現れたのはアースの祖母である。

 ただでさえ若作りのアースの祖母が、更に若々しい姿で、しかも幼いころのヒイロとマアムと一緒にアースの目の前にいる。



「ど……どういうことです、これは! 坊ちゃまの身に何が起こっているのです! エスピお姉ちゃんは一体何を――――」


「ヌワハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」


「「「「「ッッッ!!???」」」」」

 

 

 そのとき、サディスが頭を抱えて叫ぼうとしたとき、その場で頬杖ついて空を眺めていたバサラが愉快そうに笑った。



「夢でも幻でもない。あのヒイロという子供と、マアムという子供……本人じゃな。先ほど、小僧との追いかけっこで見た時の二人と根源的なものが一致している……ま、ワシの勘ではあるが、ワシは確証を持って断言できる。アレは、間違いなく本人じゃ」



 バサラは「勘」と一応は付けてはいるが、冥獄竜王であるバサラの断言ほど重いものはない。

 事態がどれだけ非現実的なものでもだ。



「し、師匠……し、しかし、ありえません……ほ、本人って……旦那様も奥様もこれほど小さいとなると……少なくとも、20年以上は……私ですらまだ生まれていないです! そ、そんな、そんなところに、ど、どうして坊ちゃまが!?」


「どうして? まぁ、状況を見る限り……時を越えて、過去の世界に跳んでしまったのじゃろうな」


「……は?」


「空の色……発展して環境が微妙に汚染されている現在とは少し違い、まだマシに澄んでいる。なるほど、正確には分からぬが確かに20年以上……25年前後といったところじゃろうな」



 全員が耳を疑った。

 バサラの言う通り、もし空に映っている光景がアースの見ている夢や幻でない限り、そうでないと考えられない状況。

 しかし、だからこそ、そのありえなさに驚愕した。



「と、時を越えて……か、過去の世界に……し、師匠、な、何を……」


「ぬわははは、信じられぬか? とはいえ、『そんなことできない』と断言して証明できる論もあるまい? ならば、全ての先入観を除いて素直に見たら、それが答えじゃ……シソノータミの技術も絡んでいるのであればな」



 バサラがそう言うものの、他の者たちがすんなりとその考えを素直に受け入れることも納得することもできない。

 人間が過去へと行くなど、時の流れを捻じ曲げるような行為が現実にありえるはずがないというのが、常識だからだ。




 当然……





「ライヴァール……ど、どう思う? アレは……本当に、ヒイロ、マアム……そして、マアムの母君なのだろうか? し、しかし、なぜそんな……ところに、アースが……」


「……エスピが渡したあの時計のようなものが発光した……あの光はひょっとしたら幻を見せるマジックアイテムなのかもしれん。つまり、あの光景は現実ではなく幻なのだろう!」


「「「「「(……ライヴァール様がそう言われるということは……あれは幻じゃなく、現実だということに……大変失礼だけど……)」」」」」



 帝国でも……







「………………」


「お母さん?」


「………………」


「お母さん、どうしたのです! 先ほどからぼーっとして! っていうか、ヒイロ君と、マアムちゃんって、アースのご両親と同じ名前ですよね? あの女性もアースのお母さんに似ています。偶然でしょうか?」


「………………」


「お母さん、どうされたのです?」


「…………ばかな……」



 ヤミディレも……








 だから当然……


「う、うそだ……そ、そんなこと……」

「うそでしょ……で、でも、それじゃあ、あの時……」


 本人たちもだ。


「ふふふ……まぁ、吾輩もアース・ラガンがこんなことまでしていたとは思わなかったがな……だが、そういう意味ではこの時代にあやつが貴様らを助けなければ……世界の歴史は大きく変わっていたのだろうな」


 唯一、「アースが過去の時代に行った」と先入観なくバサラ同様に分かっているハクキは笑いながら、そのことをヒイロとマアムに告げた。

 無論、二人もそれを簡単に納得できるはずもない。

 しかし、それでも……


「お前だったのか……アース……」

「アースだったっていうの? あのとき……あのとき!」


 もはや二十年以上も昔の幼いころの話。

 その出来事だけはハッキリと覚えている。

 そもそもヒイロにとっては、人生の分岐点ともいうべき出来事だった。

 惜しむべきは、その時に出会った人物とゆっくり話もできず、マントを羽織ってフードを被っていたので、顔までよく見えなかったこと。



――なあ、親父……親父は……何で戦士に……帝国騎士になりたいと思ったんだ?


「お、お前が……」



 そして、同時に思い出すのは、数か月前のこと。

 あの御前試合でアースが家出する少し前、まだアースと一緒に暮らしていた時、二人で少し話をしたことがあった。

 


――…父ちゃんは……そうだな……仲間や友達を守りたいとかそういうのもあったが……最後はやっぱり人類や世界のためにと思って戦った……でも……原点は……俺は……正義の味方になりたかったんだ



 将来の進路に少し悩んでいたアースに自分のことを聞かれ、そのときヒイロは答えた。

 どうして自分がこの道に進んだのかを。

 


――ガキの頃、父ちゃんと母ちゃんがまだ田舎の村に住んでいた頃……モンスターに襲われている所を、正義の味方に助けてもらったことがあるんだ。俺も……あんな風に誰かを助けられる人になりたい……全てはそこから始まったんだ


「お前が……あのとき……お前が!」



 幼いころの自分が目を輝かせて、アースに向かって叫ぶ。


『待ってくれよ、あんた! あんた、名前なんて言うんだよ!』

『名乗るほどの者ではない。さらば!』


 アースは明らかにこの状況を「まずい」と思い、顔を隠してそそくさと走って立ち去る。

 だが、幼いころの自分はその時、その姿を……



『すげー……カッコいい……あんなに強いのに、全然えらぶらないで……決めた! 俺、あんな正義の味方になる!』


――俺らを助けて、そのまま名前も言わずに行っちまった……だが、その誰かを助けるのが当たり前みたいな姿に……俺はスゲーカッコいいと思って……憧れた



 そして今、全てが重なった。



「お前だったのか、アース! あのとき俺たちを助けてくれたのは……そして、俺が憧れた正義の味方は、お前だったのか! アースッ!」



 自分の命の恩人であり、憧れた正義の味方が、自分の息子だった。

 そんなこと、誰が分かるものか。












 



「あなただったの? ……アーくん……」


 帝国の辺境にある小さな村で、20年以上も昔に現れた正義の味方の正体を知って驚いたのは、祖母も同じであり、孫の姿にただ驚きと涙を浮かべていた。


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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