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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百七十九話 現れた理由

「マスターキー……ふ、ふふふ……パリピめ……奴が持っていたとは……ふふふ、しかもそれをホイホイと何も知らぬアース・ラガンに……いや、ある意味で知っているとも言えるわけだが……いずれにせよ、アレを賭けの対象にしてもらわんとな」


 アースがパリピからの差し入れのような物資を受け取り、中身を確認して取り出したものに、ハクキはギラついた瞳で笑みを浮かべた。

 

「おい、ハクキ、どういうことだ? 偽造の身分証だとかと一緒にパリピが送ったものの中に何があるってんだ! あの札みたいなもののことか?」

「ますたーきー? 何それ? しかも、賭けの対象ってどういうこと!?」


 その様子にヒイロとマアムも只ならぬ雰囲気を感じ取った。

 何も知らない二人に苦笑しながらも、ハクキは……


「吾輩がアース・ラガンに負けたら奴の子分になるのだ……だが、吾輩が勝ったらアレを貰わんと……そうでなければ釣り合わないであろう?」


 アースが手にしたマスターキーが一体どのようなものなのかをまるで知らない二人に、ハクキは説明する気はない。

 そもそも説明したところで理解できるわけがないからだ。

 そのため余計に二人は気になるのだが、事態は……

 

『あー、いたいた。こんなところにいたんだね。探しちゃったよ。さっ、カリーを作ろうじゃないか。お兄さん』


 森でサバイバルしようとしていたアースの元に現れた道具屋店長スレイヤ……そして……



『あ~、みーつけた~。妹を泣かせる、最低最悪なお兄ちゃんをね♪』


「「え……?」」



 彼女が現れたのだ。

 そのため、その衝撃の前には、よく分からないマスターキーの存在などすぐに二人は頭から抜けてしまった。


「な、あ、あいつ!?」

「……エスピッ!?」


 エスピ登場の衝撃は世界を駆け巡る。










「……ま……間違いない! エスピだ!」

「なんということだ……エスピ……べトレイアルと絶縁して以降行方不明とのことだったが……今までどこに!」


 かつての戦友でもあり、自分たちと同じ七勇者の一人でもある世界的な英雄のエスピがここに来てアースの目の前に現れた。

 その展開には、当然ソルジャとライヴァールも驚きしかなかった。


「おいおい、七勇者のエスピ様だ!」

「ああ、間違いない……面影がある。私もかつて連合軍で拝見したことがある」

「陛下やライヴァール様も仰っているのだし……本人か……」

「し、信じられない。あの七勇者のエスピ様がアース・ラガンに接触を!?」


 当然、エスピの名前は歴史に名が残るほどのもの。

 その存在に兵たちも、そして帝都でも、さらには世界中で大騒ぎであった。


「まさか、行方不明になっていたエスピがここに来て……アースに……そもそも二人に関りは……」

「……愚息やアースたちが生まれて間もないころ、たまに帝国にエスピが立ち寄ったりしていたのは覚えているが……それ以外で関わりはないはずだ」

「私もそう記憶している。戦後からそれほど経っていない時期に関わって……それぐらいしか……」

「分からん……分からんがもしかしたら……」


 それにしても、なぜエスピはアースに接触したのだ?

 その理由をソルジャとライヴァールもすぐに思い浮かばなかったが、ライヴァールは予想として……



「エスピは我々にとっては妹のような存在……特にヒイロとマアムに関しては……エスピは素直ではなくいつも尖ってはいても内心では二人を兄や姉のように慕っていたはず……何故ならば戦争のころ……『二人が命の危機に陥る場面には感情的なまでに飛び出して、二人を絶対に死なせるものかと叫んでいた』ほど、二人のことを大切に思っていたのだからな……」


「……なるほど……そうだったね……マアムが重傷を負ったときは、激しく取り乱したり、つきっきりで必死に看病していた……『絶対に死なせるもんか』と叫んでいた……つまり……」


「うむ。アースが御前試合のアレで家出したのは関係者たちの間ではなかなかのニュースだった。エスピもどこかでその情報を知り、兄や姉であるヒイロとマアム、二人の子供であるアースのことを気にかけて探していたのかもしれんな……」



 仲間であるエスピの行動の真意をそう予想した。









「エスピ……あの小娘がアース・ラガンに接触していただと!?」


「ん~……お母さん、誰です?」


「……あの女は、アース・ラガンの両親である、ヒイロとマアムと同じ七勇者の一人……当時はまだ幼い年齢でありながらもその才覚を認められ……まぁ、裏では称号を得るために色々と根回しがあったようですが……いずれにせよ、我ら魔王軍の宿敵の一人となった者です」


「まぁ! そんな方なのですか……」


「奴はヒイロやマアムにとって妹分のような存在でもありましたので、アース・ラガンに接触しようとしても不思議ではありませんが……しかし、ずっと行方不明だったあの女が……噂では、あやつがべトレイアル王国と絶縁するまでは魔界でノジャと何度も外交していたと聞きましたが……」



 しばらくはカリーとコーヒーのことで頭がいっぱいでずっとブツブツと頭を抱えていたヤミディレだったが、流石にかつての宿敵だったエスピの登場には顔色を変えた。










 そして……


「おらぁ! あれって、この間ここに来ていた姉さんだろ?」

「うん、間違いないかな!」

「あの時、謎に登場したのに、何もしないで謎にいなくなった人っすよね?」


 カクレテールでも、エスピの登場に大きく揺れた。


「エスピ姉さん……本当に坊ちゃまに接触を……」

「七勇者のエスピ殿……」

「うん、僕もこの間はビックリしちゃったよ……会ったことないもんね?」

「うむ。俺たちが赤ん坊のころには会ったと言っていたが……」


 幼いころより関わりのあったサディス。

 面識はなかったが、父たちの戦友として、何よりもかつての英雄としてその名前だけは知っている、フィアンセイ、フー、リヴァルもマジマジと空を見上げて、登場したエスピに注目していた。


「我もこれまで関りはなかったが……サディスはあの方のことを『姉さん』と呼んでいたな?」

「え、ええ……戦争中のころから……よく遊んでくださいましたし、とてもかわいがってくださいました。坊ちゃまが生まれた時も屋敷に来て、坊ちゃまを抱っこしたことだってあるのですよ?」

「うむ……」

「しかし……私の知る限る、エスピ姉さんと坊ちゃまの関りはそれぐらいのはず……なのになぜ……」

「……う~む……そういえば、『妹を泣かせる兄』をどうのと言っていたが……あの方は、アースがアマエを泣かせたことになぜそんなお節介を?」

「さぁ……ただ……エスピ姉さんは、旦那様や奥様にとっては妹のような方でしたので、何かご自分と重ねたのかもしれません……」

「う~む……」


 いずれにせよ、エスピの登場は驚きと同時に、一方で「何しに来たのだ?」と誰もがその登場の理由が分からなかった。

 それどころか……


『ねえ、どういうことなの? スレイヤくん。どうして君がいるのかな? お仕事は?』

『何か問題でもあるのかな?』


 エスピとスレイヤのそんなやり取りに、一同は更に驚いた。


「え、あの店長とも知り合いなのか!?」

「エスピ姉さん……一体何を……」


 謎に現れ、その上で謎にアースに接触するスレイヤとも知り合いと思われる状況に、幼いころからエスピを知っていたサディスでも何が起こっているのか分からない状況だった。

 ただ……


『うふふふふ、驚いてる驚いてる♪ でも、覚えてはないかな? 私が最後に君と会ったのは……君がまだオギャーオギャー言ってる時だったからね』


 ニマニマとすごく嬉しそうにアースに近寄ってエスピは……



『あんまり抱っこさせてもらえなかったから……うふふふ、懐かしいな~。君を抱っこさせてもらうと、サディスちゃんが……『はい、十秒経ちました。終了です。坊ちゃま抱っこしていい時間は終わりです。坊ちゃまをずっと抱っこしていいのはサディスだけなんです』……なんて言われちゃって、すぐ取り上げられたからね♪』


「「「「「………………」」」」」


「…………姉さんよくそんな昔のことを覚えて……っ、な、なんです、皆さん! そ、その目は! し、仕方ないでしょう! あの頃の坊ちゃまはそれはもう……かわいくてかわいくて、私は学校にまで連れて行こうとしたぐらいなんですから……」



 エスピの口から語られたサディスのアース好き度に、皆が目を細めて温かい眼差しを送っていた。







 そして、……帝都では――


『七勇者のエスピ……だってのか? ッ、俺に何の用だ! 親父たちに言われて来たのか? 何のつもりだ?』

『別に~。ヒイロもマアムも関係ないよ。私は君にお説教と、一発ぶん殴りにきたの』

『な、なに?』

『妹を泣かせる最低最悪の男をね』

『……は?』


 エスピ登場に他の者たち同様に当然驚いてザワついたものだが、アースに対するそのやり取りに、皆が不快な表情を浮かべていた。


「おいおい、なんだよあの人……いきなり現れて……七勇者ってのには驚いたけど……」

「見る限り、アースくんとはほぼ初対面でしょ? それなのにいきなり現れて、妹を泣かせる最低の兄とかどうとかって、アマエちゃんのこと?」

「アースはもうアマエちゃんとちゃんとお別れしたってのに、何も知らないくせにいきなり出てきて『殴る』とか、なんなんだ?」

「そうそう、ほっぺにチューまでして……アマエちゃんもつらいけど、分かってくれたんだもんな」

「いくら七勇者でヒイロ様たちの戦友だったとはいえ、アースくんのこと何も知らないのにね!」

「そうだよ! あいつはヒイロ様とマアム様……勇者の息子……じゃなくて、アース・ラガンなんだからよ!」


 と、皆がこれまでの鑑賞会で既にアース寄りの心になっているからこそ、いきなり現れてはアースに絡むエスピに皆がいい顔をしなかった。

 

『とにかく、ボクは今からお兄さんとカリーを作るんだから。邪魔をしないでくれるかな?』

『……カリー? ……カリー!? 食べたい食べたい!』


 さらに、スレイヤとも知り合いで、もはやダブルでアースに絡んで来ようという状況。

 そんな二人に対し……



『ちょ、待てよテメエら! さっきから黙って聞いてれば一体どういうことだ! つか、そこの七勇者も結局何が目的だ?! 妹を泣かせた云々は、アマエのことか?! それならもう解決したぞ! もう仲直りもしたし、ほっぺにチューまでしてもらったんだぞ! 俺が妹分を泣かせたまま放置するわけねーだろうが! それともあれか? 事情はよく知らねえけど、あんた、親父と母さんにとっても妹分みたいなもんだって噂で聞いたことがある! なんかそこら辺で拗らせてんのか? ああん? だいたい、そこの店長も急に現れては無表情で勝手なことをペラペラと……どんだけカリーが好きなんだ!』



 エスピとスレイヤ、二人に対して怒って捲し立てるアース。

 アースの言葉に皆が頷く……が……



『んも~、スレイヤくんの所為で怒られちゃったじゃん』


『まったく、君のおかげで怒られちゃったじゃないか』


『テメエら二人共の所為だよッ! ウゼーなこいつらぁ!!』


「「「「「なんか、本当にウザい!! なんなんだよあの二人は!!」」」」」



 皆がアースに同調するように批判の声を上げた。

 相手が七勇者だろうと道具屋店長スレイヤに続き、「七勇者のエスピウザい」の声が世界で続出だった。

 もっとも……



『ごめんね、私の『彼氏』が迷惑をかけちゃったかな?』


『すまないね。ボクの『彼女』が不快な思いをさせてしまって』



 その言葉に……





「「「「「「え!!?? 二人、付き合ってるの!!!???」」」」」」





 と、それは遠く離れた場所も含めて世界各地で同時に叫ばれたのだった。





 そんな中……



「……やっぱり、君もウザいよ……エスピ」


「は!? 何言ってんの、スレイヤ君!」


「だって、お兄さんに直で言われてるじゃん?」


「違うよぉ! 言われたのはスレイヤ君がほとんどだよ!」


 

 張本人であるエスピとスレイヤは集落近くの川辺でアースの目の前で口論を始めてしまっていた。


「あはは……好かれてるわね~、ハニー」


 苦笑するシノブに対し、アースは頭を掻きながら……



「つか……その、あれだ。この時は俺が全部悪いだろうが……二人は俺の妹と弟なんだから……これぐらい絡んできて当たり前で……ようするに、二人ともウザくないし、俺は二人とも大好きなんだから、もういいんだよ」


「あら……」


「「ッッ!!??」」



 照れ臭そうにそう告げるアースの言葉にピタリと停止する二人。

 そして二人は呆然と数秒するもすぐにガバッとアースに飛び掛かり。



「私もお兄ちゃん大好きだよぉ~~!」


「僕もお兄さんが大好きさ!」



 と、一斉にアースに抱き着いて左右から頬ずりをしてジャレついた。



 そう、世界がどう二人に印象を抱こうと、二人の知ったことではないし、どうでもいい眼中にないことであり、二人はただただ今この瞬間が幸せでたまらなかった。




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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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