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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百六十九話 二人きりで

 世界を熱狂させたアース・ラガン。

 そして帝国民たちや世界の者たちがその将来を期待せずにはいられない、フィアンセイ、リヴァル、フーたち七勇者の子たち。

 そんな彼らがカクレテールの豪傑たちとともに立ち向かった、かつての伝説である六覇は……


『オレはそこの二人の親、剣聖と大魔導師に殺されたことになってるしな……しかし、その子供が復讐するのもバカバカしくなるぐらい弱いときている。そりゃァ、パナイ物足りないって~もんじゃない?』


 全員まとめて完膚なきまでに叩きのめして圧倒していた。

 もはや、レベルが違う。

 世界が違う。

 圧倒的な力の差。

 これまで戦ったものにしか分からない、特に戦争を知らない若い世代には、これまでの認識を根底から覆されるほどの衝撃だった。


『君らのことは色々知っていてね……だから、最初に一番ガッカリしたのは……ヒイロとマアムの息子という期待せざるをえない血筋がどうしようもない二流だったことだったんだけど……まあ、それはオレだけじゃなくて皆そう思ってたでしょ? 帝都の皇族も貴族も戦士も平民の豚共も……もちろん……ヒイロもマアムも……そして今、君の隣にいる連中もね。他の2世がカスなりにチヤホヤされている中で、君の評価はそれでも辛辣だったみたいだからねぇ。出来損ないのミソッカスってな! 君らや周囲の声にアースくんがどう思っていたか、その気持ちを誰も分かっていないからこそ、尚の事悪い。もし君たちがそれを少しでも自覚していたら、気にかけていたら、アースくんが帝都を飛び出すことも無かった』


 さらに、アースを筆頭にどこまでも嘲笑するパリピのその物言いは、多くの者たちの心を揺さぶった。


 改めて心を抉られる帝国民たちは勿論のこと。


 もう何度目かも分からぬほど心をズタズタにされる、ヒイロやマアム。


 一方で……







「ぬわああああ、パリピいいいいい、ぶっ飛ばす! よくもお兄ちゃんをぉおおおおお!!」

「滅する……ゆるさない……ボクのお兄さんを嘲笑するものは、その口をそぎ落として必ず刎ねる! ユルセルモノカ!」


 怒りマックスのエスピとスレイヤの怒号が集落に響き渡った。



「いや、お前らちょっと落ち着け……いや、あいつはぶっ飛ばしていいけどな。つか、俺も手伝うし。そもそもあの野郎、なんで自分の登場の時とか戦っているときは音楽流したりとか、色々と変えてんだよ」


『色々と編集をするものだな……』



 それは、アースにとっても確かに言われたらムカつくパリピの言葉ではあったものの、既に決着のついた昔の話でもあるため、まるで「現在進行形」でアースがそう言われていると思っている他の者たちの反応は様々であった。


「……本当だよ……あの人……ひどいよ……強くて怖いけど……ひどい人」

「え……」

「どうしてアース様にあんなひどいこと言えるの? アース様……すごいのに!」


 アースの大ファンであるアミクスにとって、アースは子供のころからラガーンマンとして憧れていた人物。

 それを嘲笑されるのは怒りも含めて、悲しみも大きかったようで、アースの手をギュッと握りしめて涙目になる。


「ちょ、お、おちつけ、アミクス、手、手ぇ」

「アース様は誰から、どこから生まれてもアース様だよ……七勇者がどうとか分からないけど、アース様は私にとって世界一カッコいいヒーローなのに」

「やわ、いや、やわ、あ、だめだってば、落ち着けって!」


 握りしめたアースの手を胸元に寄せて涙がポロリ……アースからすればその爆乳の谷間に触れる手に全神経をもっていかれてそれどころではないのだが、アースにすり寄るのはアミクスだけではない。


「まったく、本当にムカつくのじゃ、あの奇人めが。わらわの婿殿に……今度会ったら剣をケツの穴から突き刺して口から出してゴリゴリしてやるのじゃ」

「ふぁっ!?」


 アースの背後から飛びついておぶさる様にして後ろからアースにすりすりする……


「かわいそうに、婿殿。わらわが慰めエッチしてやるのじゃ。耳の穴ぺろりんちょ―――――」

「やめろぉ、おらあああああ!」

「ふぁぐ!?」

 

 ドサクサ紛れの発情雌狐を殴り飛ばす。

 衣服の乱れを慌てて正し、アースは立ち上がる。



「ったく、お前らも落ち着けよ。今こうして俺は無事にいるわけだし、だいたいこの後俺が負けなかったからこそパリピは―――――」


「「「「「ネタばれ禁止イいいいいいいい!!!!」」」」」


「……え」



 色々と皆が感情を爆発させているので、落ち着かせるために「俺はこの戦いで勝ったから今も無事」、「パリピも無理やり部下になった」と改め口にしようとしたのだが、その瞬間、集落全体からアースに怒号が飛んだ。


「お兄ちゃん、何を考えてるの!? いま、いいところなんだよ!」

「そうだよ! 叩きのめされ、罵倒と嘲笑を浴びたお兄さんの、どん底から始まる逆襲を見ようとしているのに! ボクたちはそれ待ち!」

「アース様、先に展開を言うのは……」

「婿殿ぉ、冷めること言うななのじゃ!」

「お兄さんがここで終わらないのは分かってるじゃない」

「ほんとそれ。鑑賞中に史実の結末口にするのは冷めるんで」

「せやで~、お兄はん」


 そもそも全員結末なんて分かっているのだ。

 そのうえで、この鑑賞会を楽しんでいるからこそ、感情移入して色んな声を発することができるのだ。

 結末を知るためではなく、結末に至るまでの道中を楽しんでいるのだ。

 よって、結末を口にするアースに集落のエルフたちも含めてブーイングであった。



「っ、こいつら、人の過去を勝手に楽しみやがって……」


『ねえ、今、どんな気持ちィ! 大事なことなんでもっかい聞くねぇ! 今、どんな気持ちィ? ひはーっはっはっは!』


「うるせえ、このぉおおお! ……はぁ、もう……」



 なんとも自分勝手な一堂にアースは言葉に詰まってしまい、そこでタイミングよくパリピの言葉が空から流れてきて、「もう勝手にしろ」と項垂れてシュンとしながらその場から少し離れた。



「くっそ、パリピの野郎……つか、本当に全部包み隠さずにあいつは流す気かよ……ってことはだ、この後に奴が俺の部下になるとか……」


『だろうな……』


「まじかよ! それって……ちっとまずいんじゃ……」


『ちっとまずいな……』


「やっぱり!?」


 

 ちょっと夜風に当たる様に森を散歩しながらトレイナに問うアース。

 トレイナは難しい顔をしながら頷いた。



『パリピは敵が多い……奴を忌々しく思う者、弱みを握られていた者、死んだと聞いて喜んだ者……それはかつて数多くいただろう。だが一方で、世の中に影響力のある人物ほど嫌われる一方で、支持する逆張りのような連中も居たりする』


「……どういうこと?」


『まぁ、統計を取ったわけではないが、奴ぐらいの知名度があって世界中から嫌われている奴ほど、熱心に支持したりする者も居たりする……奴は単独に見えて、意外と様々な人脈があったりする……つまり、奴が貴様の部下になったということを世界に知られれば、そいつらも……』


「いや……やだよ。そんなパリピ支持するやつとかどう考えても嫌だよ……」 


『それと……パリピはクスリの下りは見事に編集してなかったことにしている……あの天空王を爆破して足蹴にしているところもな……今のところ奴は、とにかく強くて怖い毒舌……としか、知らんものには認識されんだろうな……』



 思わぬトレイナの予感にアースは顔を青ざめる。

 すると……



「あら、女が一人で感傷に浸っているときに、急に現れてブツブツとどうしたのかしら?」


「ッ!?」



 そのとき、森のすぐ近くに流れる小川、賑やかな夜空の下、一人で川辺にある大きな岩に座って微笑んでいるシノブがそこにいた。 


「あ、おまえ、ここに居たのか……」


 そういえば、天空世界での戦い勃発あたりからシノブが席を外していたことを思い出し、まさかここに居るとは思わずにアースは慌ててしまった。


「あら。心配で私を追いかけてきてくれたわけではないのね……寂しいわ」

「え、あ、いや、ちが、ちょ、ごめん……偶然、その……」

「ふふふ、冗談よ。むしろ偶然の方が運命的な気がして嬉しいわ」

「あ、お、おう……」

「ハニーもさすがに恥ずかしくなって居たたまれなくなったのかしら?」

「……まーな……あいつら感情むき出しに怒ったり泣いたりする一方で、ネタバレするなとくるし……」

「ふふふふ、ま、仕方ないわよ。みんなハニーのことが好きで……みんな……君に夢中なのだから……」


 クスクス微笑みながらからかうシノブに照れてしまうアース。


「それにしても、危ないわよ、ハニー」

「あ? 何が?」

「今ね、私も色々と苦悩しているところなのよ……」


 そう言って、どこか物悲し気に微笑むシノブの様子に、アースは思わずハッとなった。


「あ、そういえば、感傷がどうのとか……」


 シノブが席を外したのは『パリピに打ちのめされたのを思い出したくない』からだと思っていたアースに、トレイナは『それだけではなさそうだ』と呟いていたことを思い出した。

 何かあったのだろうか?

 アースがシノブに伺おうとすると、シノブは……


「心が弱っている女の子の前に、惚れている男の子が一人だけで現れるなんて、襲ってくださいと言っているようなものよ? 私がノジャ化しない安全な女の子だと思っているのかしら?」

「ぶ、お、おま!?」

「……ふふ、冗談よ。半分だけね♥」

「つ~……」

「あ、でも、私のことはいつでも襲ってくれていいのよ?」

「襲わねーよ! ったく、お前は人がちょっと心配してるってのに……」


 また冗談交じりでアースを狼狽えさせた。

 色々と照れ臭くなってアースが頭を掻きむしりながらシノブを怒ろうとした。

 だが、シノブは微笑みながらまた空を見上げ……



「ありがとう、ハニー。色々考えていたけれど……偶然でも今、好きな男の子の顔を見れて、少し落ち着いたわ」


「……シ、シノブ……」


「だから……やっぱり、私は恵まれているのよね……あの子と違って……」



 アースはシノブが何を考えていたのかは分からなかった。

 ただ、空からうるさい声が飛び交って空気台無しになるも、夜空の下で穏やかに流れる小川でたそがれている美しい少女の姿に、なんだか幻想的な雰囲気を感じてアースは思わず見惚れてしまった。

 すると、シノブは自分が座っている大岩をポンポンと叩き……


「せっかくだし、一緒にどうかしら?」

「……あ……えっと」

「襲わないから安心して」

「わ、わーってるよ」


 シノブに誘われて、そのままシノブの隣にアースは座った。

 

「………………」

「………………」


 そして、座ったものの互いに無言になる。

 アースはドキドキしながら横をチラッと見ると、微笑みながら空を見上げているシノブの横顔にまた照れてしまい顔を背ける。


(そういや……シノブと二人っきりになるって……今までなかった?)


 これまで何度も自分に恋心をアピールしてきたシノブ。

 出会ってからそれなりの付き合いになる。

 しかし思えば、これまでそのシノブと二人だけになったことはなかったのではないか?

 そう、クロンやサディスやフィアンセイと違い、シノブと二人きりで一緒にいるのは初めてかもしれない。

 そう自覚すると、何だかアースは余計に緊張してしまいそうになるが……


『………………』

『………あ……うん、だいじょうぶ。忘れてない』

『………コクリ』


 そういえば、二人きりじゃなかったと気づいて苦笑するアースの隣で、トレイナが無言でうなずいた。


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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