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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百六十六話 その幻想は間もなく壊れる

 雲の上の天空世界に突入した一同。

 待ち構えるのは武装した天空の戦士たち。


『皆さん。敵は強大です。でも、皆さんならできます! 私は皆さんが日々、どれほどトレーニングをしてきたのかを知っています。歯を食いしばって、ストイックに自分を高めてきた成果を発揮するのは今、この時なのです! 何度でも言います。皆さんならできます!』


 総大将でもあるクロンが改めて激を送る。



『皆さんが……私たちがやれなきゃ、誰がやれるというのです! さあ、いきますよ、皆さん!』


『『『『『うっしゃあああああああああ、いくぞおおおお!!』』』』』


『いざ、尋常に! 天も世界も……』


『『『『『全員まとめてかかってこいやあああああ!』』』』』



 それに持てる力以上のものを発揮し、気合と共に応える地上の戦士たちの熱い熱気が見ている者たちの心をも滾らせる。



【ふん、少しはできるようだが……しかし、いつまで耐えられるかな? このワシに……天に逆らった罪、毛穴の奥まで思い知るがいい!】



 だが、天空族も一歩も引かない。

 強力な戦士たち。

 また、天空王という未だ姿を現さない膨大な力を持った敵の総大将の魔力が天空で荒れ狂い、地上の戦士たちの前に立ちはだかって迎え撃つ。

 人類と魔族がかつて繰り広げた何千、何万の命を散らす大規模なものではないが、それでも「戦」という言葉に当てはめるほどのものであった。



「見たことのない雲のゴーレムに加え、雷や風の魔法の連続……天空王……かなりの使い手だ」



 その戦の状況を、皇帝としてではなく一人の武人として客観的に見て、ソルジャはそう呟いた。

 その考えに周囲の兵たちも同調した。


「ええ。本人が姿を現さずに遠隔であれだけの……流石は王といったところでしょう」

「アース君たちもかなり善戦している。数も数十しかいない上に、砲台となる魔法使いも居ないのに、ほぼ肉弾戦であれだけの……」

「ああ。アースくん。そして、サディス。あとあのマチョウという男……あの三人を中心によくやっている。さらに、クロンという娘の魔眼の効果も……」

「しかし、やはり兵力に差があり過ぎる」


 帝国戦士たちの目から見ても、戦は激しく地上の戦士たちも奮闘している……が、不利なのは地上の戦士たちだというのが彼らの見解であった。



「たしかに……どうしても駒が足らぬな……爆発力のある一騎当千がいるわけでもない……急成長しているアースも含めてな……やはり、大魔王や六覇と死闘を繰り広げた我ら七勇者にはまだ及ばない」



 そのとき、皇帝ソルジャの傍らに一人の男が立った。

 長髪の黒髪をオールバックで後ろにまとめた、長身瘦躯の銀縁眼鏡。

 黒いコートを羽織り、鋭い瞳で空を睨む一人の剣士。



「ライヴァール……お前も来たのか」



 ソルジャが男にそう告げた。

 そう、その男こそ、人類が誇る七勇者の一人。

 現在では帝都で帝国流の剣術道場の総裁の立場で後進の育成に従事している。

 剣聖・ライヴァール。

 かつての戦友でもあるソルジャと並んで立った。



「今日も道場で観賞しようと思ったが……アースがあのヤミディレと戦うは、そのヤミディレが連れて行かれるは、冥獄竜王などという伝説がでてくるは、アースが地上の戦士たちを率いてヤミディレ奪還に向かうは……もう、実家で冷静にいるというのが無理だ」


「そうか……私も来てくれてありがたい。ヒイロとマアム……ベンリナーフまで連絡も取れず、何が起こっているか分からない状況の中で、更にこれだからな……」


「うむ。それに……報告によればカクレテールから帰ってこない未熟な愚息も恐らくこの場に……」


「ああ。たぶん、私の娘も……そして、フーも……」



 二人もまた現在復興活動に従事したり「修行」ということでカクレテールから帰ってこないフィアンセイやリヴァルのことは大よそのことは聞いていた。



「歯がゆいものだ。アースも妙なものに情を抱いたものだ……もし私がこの場に居れば……問答無用でヤミディレの首も、あの大魔王の面影ある娘もこの手で……」


「……よせ、ライヴァール。その件は後だ……いや、もう少し見定めなければならない。今のヤミディレ……そして、あのクロンという娘についても」



 だからこそ、親としてだけでなく……



「いずれにせよ、見せてもらおうじゃないか。六覇や魔王軍との戦争無き時代に生まれた彼らの……現時点の力を……って、アースはもうヤミディレとも冥獄竜王などという伝説とも戦っているけどね……」


「ふっ、しかしソルジャ陛下……気づいていたであろう? 両者とも本気で殺す気だったわけではあるまい……それこそ我らは今のアースたちと同じ年のころは……」


「やれやれ、お前は相変わらず負けず嫌いというか……ヤミディレはけっこう本気だった気もするけど……」


「我らの成したことはそれほど安くも軽くもない。そう簡単に時代は明け渡さん。『大魔王や本気の六覇の力は我らだけにしか分からぬ』ことなのだからな」



 先人としての立場でこの戦いの行く末を見ようとしていた。

 そして、その時だった。


『坊ちゃま、上です!』


 雲のゴーレムが、アースの一瞬の隙を突いて攻撃しようとしている。

 アースは反応が遅れて回避できそうにない状況。

 そこで……


『メガウインド!』


 突如雲の上に転移魔法陣が浮かび上がり、その陣から現れた者たちが……



『お、お前ら……なんで……』


『何でだと? ふざけるな、理由が必要か?』


『我らからいつまでも逃げられると思うなよな? なぁ、アース!』


『ふぇーん、どうして私まで……』


『ハニー。まだ純潔は無事かしら?』



 アースたちの援軍として現れたのだった。





 その瞬間、宮殿だけでなく、帝都でも大きなどよめきと共に熱狂的な歓声が起こったのは当然のことであった。


「お、おい! ちょ、フィアンセイ姫だ! 姫様が!」

「そ、それに、リヴァルくんも、フーくんもいる!」

「おいおい、どうなってんだ!? 姫様たちが不在ってのは聞いてたが……」

「なんてこった! 七勇者の血を引いた次世代の英雄たちが!」

「お、おおおお、やべえ、興奮が収まらねえ!」

「こんなことが俺らの知らない所で起こっていたなんて!」


 帝都から拍手喝采。

 興奮した大人も若者も一斉に声を上げて表情に笑みが零れている。

 特に、アースたちと同年代のアカデミーの生徒たちは顕著である。 


「すげーよ! パワーアップしたアースのとこに、姫様、リヴァル、フーが現れた!」

「私たちアカデミーでも最強の4人が一斉にそろって……一緒に戦おうとしている!」

「くそぉ~、あいつら! こんなことしてたなんてよぉ!」

「ああ! く~~~、俺も知ってたら戦いたかったぜ!」

「ああ。でも、もうこれで怖いものなしだよな!」

「当然よ! あの七勇者の血を……って、これを言っちゃダメだったんだよね……アース君のことで……でも、こんな光景を見たら言いたいよぉ!」

「ああ! あの最強の四人がそろったんだ! もうどんな敵が出てこようと楽勝にきまってらぁ!」

「………………なんか、コマンちゃんいなかった?」

「よっしゃー! いけー! 姫様、アース、リヴァル、フー!」

「俺たちアカデミー、いや、帝国代表の力を天空の奴らに見せつけてやれぇ!」


 この鑑賞会の流れで、世界は、そして帝国民はアースが抱えていたコンプレックスを知り、自分たちのこれまでのアースに対して発した言葉などに罪悪感を抱いた。

 皆もアースがそのことにコンプレックスを抱いたことは知った。

 だが、それでもどうしてもやはり思ってしまうのだ。



「「「「七勇者の後継者の力を見せてやれ!!!!」」」」



 歴史に名を残す人類の英雄である七勇者たちの子であるアースたちと、七勇者の存在を切り離して見るということは、やはりどうしてもできないのである。

 それこそ、アースたちが「七勇者を超える偉業」を果たさぬ限り。


 いずれにせよ、もうじき彼らが目を輝かせる「最強の四人」という幻想はすぐに崩れ去ることになる。


 で、それはそれとして……



『シノブまで……』


『女が惚れた男の元へと来るのに理由がいるのかしら?』


――――――ッッ!!??



 そこに、帝国民の知らない女も一緒に現れていた。


「なあ、誰だあの黒髪の……あの子もアースの知り合……うわ……すげえ綺麗な顔……」

「ほんとう……格好からしてジャポーネっぽいけど……」

「ま、まてまて、い、今……今……アースに向かって、『惚れた男』とか……」


 フィアンセイ、リヴァル、フー、そしてコマンという自分たちも良く知る同級生たちと一緒に現れた異国の少女。

 男だけでなく同性が見ても見惚れてしまうほどの整った顔立ちと、そして威風堂々としたたたずまい。

 


【何者!? この天の世界に土足でズカズカと何人も……不届き者め! クラウドゴーレムたち、そやつを―――】


『愛するハニーとの再会よ? 恋する乙女の邪魔をすると……火傷ではすまないわ! 火遁忍法・紅蓮螺旋!』


 

 そしてその少女もまた、フィアンセイたちに負けないほどの力を示す。

 

『アースこの状況だけでも教えてもらえると嬉しいんだけど……』


 さらに、示すのは力だけでなく……


『あら、私は説明なんていらないわ』

『シノブ?』

『どう考えても話をしている状況ではないでしょう? 大事なのは、自分の目で見た今の状況をどう感じ、どう判断するか。私は、ハニーが懸命に戦っている。それだけで十分だわ。君が戦うのなら、私は君と共に戦うわ』

『い……いいのか? 何も聞かないで……』

『ふふ、後になって後悔するような戦う理由だったとしても……それは私の判断が間違っていただけ。でも、間違っているのか間違っていないかの結果は、後で知ればいいことよ』

『な、なんだそりゃ?』

『ふふ、でもこれだけは言えるわ。今の私の判断が間違っているかどうかは分からないけれど、この恋だけは間違っていないのよ』


 いきなり現れて、さらにはいきなりアースへの恋心を熱烈に語り、しかもそれだけではなくアースと共に戦おうと迷いなく意思を示す。



「「「「「「か……かっ……かっこいい……」」」」」」



 思わず帝国全土から漏れるその言葉。

 シノブ・ストークの鮮烈な世界デビューの瞬間でもあった。


『ちょ、ちょっと待て、シノブ! そ、それなら、わ、我とて! だ、だいたい、わ、我もアースに聞きたいことは山ほどある! それこそ、『あの日』からずっとだ。だが……だが、今は!今は必死に戦おうとするアースと共に戦うだけだ! そのことに、迷いはない!』

『やれやれ……昔からお前は……だが、たまには昔のようになるのも悪くないか』

『そうだね。姫様と、アースと、リヴァルと僕。この四人が協力して何かに立ち向かう……嬉しいよ、またこんな日が来て』

 

 本来、帝国にとって姫であるフィアンセイの婚約者はアースということでかなり認識されており、何よりも結構周囲からはフィアンセイのアースに対する気持ちはモロバレであった。

 だが、これまで見せつけられたクロンという存在。

 さらに、ここに来てシノブの存在。

 空の上で必死に「自分も自分も」と割って入ろうとするフィアンセイの姿に、帝国民たちはどこか複雑な心境であった。



『っしゃ、いくぞ、クロン! お前ら!』


『はい! 第二ラウンドです!』


『『『『『ウオオオオオオオオオオオオッッ!!!!』』』』』













「……シノブちゃんのこともちゃんと映すんですね」

「ん~?」


 そのとき、アジトで世界中の反応を楽しんではしゃいでいるパリピの傍らで、コマンが不思議そうに尋ねた。



「あなた様は……アースくんはクロンちゃんと結ばれるように……世界にそう認識させようと思っているのだと……人間と魔族であろうと関係ないと世界に思わせようと……そうしようとしているのだと思っていました」


「え? そだよ? アースくん……ボスとクロンちゃん結ばれてくれた方が……魔界もパナイ大盛り上がりになるだろうからねぇ」


「じゃあ、シノブちゃんをここで目立たせると、逆に人間側が……フィアンセイ姫の存在もありますし……」



 コマンの素朴な疑問。

 パリピの編集でちゃんとシノブのカッコいいところや、アースに対する恋をちゃんと世界に示している。

 そうなると、これまで「アースとクロンはお似合い」という風潮だったのに、ここでシノブまで登場させて活躍させるのは変なことになるのではないかと。



「だね。ただ……こうすれば、ジャポーネが面白いことになるじゃん?」


「はい?」



 だが、どんな疑問を抱こうとパリピの答えは常に……

 


「あの小娘はジャポーネのブタ王の弟の娘……つまり、王族の血筋。さらに父娘共に国民からの人気も高い……そして、そんな娘が惚れているのが、現在フィーバー状態のボスであり、ボスもまあ満更でもない様子。するとどうなる?」


「……ああ……ジャポーネ内でのゴタゴタがもっと面白くなるかもしれない……ということですか?」


「ことなのです♪ しかも、そのボスはシノブちゃんだけじゃなく、あら不思議。なんとミカドやコジロウからも信頼されてるとくれば?」


「……一緒に今の王政を打倒して、王弟を新たな王に。そしてその次の王はアースくんとシノブちゃんだ……ジャポーネ国民よ、武装蜂起だ的なですか?」


「的なことなのです♪ そうなったら、なんかパナイ面白そうじゃん?」



 面白そうだから、である。



「ま、そんな先のことは置いておいて……ひははは、間もなく……王子と……えっと、名前忘れたあのハゲのシーンを終えたら……いよいよ、天空世界編のパーティタイムの幕開け~い!」




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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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