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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第九章(三人称)

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第四百五十八話 世界が噴いた

『アース。どうされるのです?』

『あ~、なんでも……ドラゴンを召喚して雲の上まで連れて行ってもらうんだが、そのドラゴンを手なずけるためにも、お前に協力してほしい……ってことなんだが……』

『ドラゴン!? それって、よく絵本とかに出てくる、あのドラゴンですか!?』


 召喚魔法。

 それは魔法を扱えるものにとっては、それほど珍しい魔法ではない。

 しかし、それは召喚するものによって大きく意味が変わってくる。



「……ドラゴン……だと? アースが召喚魔法を使うなど知らなかった……まぁ、これまでの戦い方から何から何まで知らないことばかりだったが……なんと……」


 

 帝国の宮殿のテラスで空を見上げながら、また知らなかったアースに関することに、皇帝であるソルジャは頭を抱えた。

 地面に魔法陣を描いていくアース。

 その形をソルジャだけでなく、帝国騎士や魔導士たちも興味深そうに凝視する。


「陛下、あれは……十二芒星ですね」

「五芒星や六芒星ではなく……これはまた随分と特殊な……」

「確かに、その辺の動植物や鳥を召喚するのではなく、ドラゴンを召喚するのだから……し、しかし……」

「ヤミディレを倒したほどの力を持っているのだ……ドラゴンを召喚……まぁ、変ではない……が、なぁ?」


 帝国騎士や魔導士たちも、徐々にアースに対する感覚が狂ってきてしまっていることに自分たちでも気づいた。

 普通、「ドラゴン」を召喚などというのは、世界でもかなり高位の魔導士でなければできないことである。

 ドラゴンを使役するというのだから。

 しかし、カクレテールでの特訓、大会、そしてヤミディレとの戦いを見た者たちであれば……



 アース・ラガンならドラゴンを召喚してもおかしくはない。



 そう思ってしまっていた。



「恐らくは、野性の飛竜あたりを使役したのだろう……確かに、飛竜を倒すぐらいならば、今のアースであれば容易いかもしれんが、召喚獣として使役しているとは……本当に驚かされる」



 ソルジャのその呟きに、帝国騎士や魔導士たちもしみじみと頷いた。

 それは街でも……



「マジかよ、アースくん。召喚魔法まで……」


「召喚魔法って私たち、アカデミーでも習わないものじゃない!」


「ああ。姫様とか、魔導士の家系のフーとかは使えるけど……でも、それってウサギとか伝書の鳥とかそういう類だったよな?」


「うん。前に見せてもらった時にはね。でも、アースくんは……それを飛び越えてドラゴンだなんて……」


「フーくんやリヴァルくんが留学先でドラゴンを討伐したって聞いたときはスゲーって皆で大騒ぎしてたのに……アースくんはドラゴンを召喚できるって……もう、なんか……」



 特に、アースとかつて同じ学び舎にいたアカデミー生たちには衝撃だった。

 もっとも……まだ、本当に驚くのはこの先なのだが……

 そして……



――ドラゴンを召喚すると告げた少年は、そこで少女に向き合って、ある要求をする。



 再び流れるパリピのナレーション。

 そして向かい合うアースとクロン。



『アース。ち? 血の事ですか? 私の血が何か必要なのですか?』


――召喚を行うには、少女の血が必要なのだと……




 その瞬間、召喚魔法のことを知る者たちは思わず首を傾げた。


「アースが召喚するのだろう? なぜ……あのクロンという娘の血が?」

 

 ソルジャのその疑問は、世界の至る所で起こった。

 アースが召喚するのに、なぜクロンの血が必要なのかと……











「こ、これは、これも流すのかぁ!? ちょ、流石にまずいだろうが、アレの召喚を世界中に流すとか、マジで! ヒルア登場だけでいいだろうが! ま、マジかァあ?!」


 エルフの集落で、アースは頭を抱えて大声で叫んだ。


「お兄ちゃんどうしたの?」

「お兄さん、何かまずいことでもあるのかい?」


 キョトンとするエスピとスレイヤを始めとする集落の者たち。


「なるほど……そういう流れだったのね……」


 何となく流れが予想できたシノブだけは苦笑している。

 これからアースとクロンが協力して召喚されてしまうもの。

 それが世界に知れ渡ってしまう。


『どどど、どーすんだよ、トレイナ! 流石にまずいよな!? つか、パリピも流石にそれは……ぼかすか!?』

『……ぼかさぬだろう……その方が、皆が大騒ぎして面白そう……と思う奴だしな』

『だよなあぁあああ!』


 トレイナももう打つ手なしといった表情で半笑いしている。


「お兄ちゃん? ひょっとして、見られたらまずいことでもあるの?」

「うぅ……うん……」

「えっ!?」


 その問いかけに頷くと、エスピもスレイヤも顔を強張らせる。

 兄であるアースがここまで頭を抱えて唸っている。

 つまり、ここから何か普通でないことが……



「あれ! ねえ、空がいきなり真っ暗になって、何も見えなくなっちゃった!」


『「「「ッ!?」」」』


 

 そのとき、アミクスの驚きの声と共に、集落の者たちもざわつき出す。

 アース、トレイナ、エスピ、スレイヤも何事かと慌てて空を見上げると、確かに空が真っ暗になっていた。


「あ、あれってたしか……お兄ちゃんがサディスちゃんと、エッチなことしようとしていた時の!」

「え……?」


 まさかの場面暗転。

 アースもトレイナも予想外の事態。


「ひょっ、ひょっとしてパリピのやつ……流石にアレはまずいと思って編集したんじゃ!」

『な、なんだと!? バカな……あ奴がそのようなことを……するわけが……』


 そう、するわけがない。



――ここから先は一部音声のみでお送りいたします


「……は? 音声……?」



 音声だけで送る。その意味が理解できなかったアースとトレイナは思わず首を傾げる。

 すると……




『私……こういうこと、初めてで……できれば、優しくしてくださいね?』



「「「「「「…………ッッ!!??」」」」」」



「……え?」




 音声だけで聞こえてきたのは、どこか緊張したクロンの声。



『ああ。俺に任せろ』


『はい……私を……アースに委ねます』



 そして、アースの声。

 流れてくるのは音声だけ。



「「「「「……………………」」」」」



 つまり、流れてくるアースとクロンの声だけで何をやっているかを想像しなければならない。

 暗転した場面の向こうで……



『痛いのは最初だけだ。肩の力を抜いてリラックスしろ……』


『こ、こうですか? ……ん~、やっぱり少し強張ってしまいます……そうだ! アース……手を……握ってもいいですか?』


『……ま、まあ……そ、それで安心するなら……』


『ありがとう! アース……おっきい……そして、逞しくて温かい……』


『やめろ、照れるだろうが……』



 二人が何を……



「「「「「…………………………え!?」」」」」



 二人が……



『ちょっとドキドキしますけど……私、もう大丈夫です。アース……はやく……きて』


『あ、ああ……』


『あ、ん、……ッ!』


『クロン!?』


『だ、大丈夫です……さ、アース……続きです……アースの好きなようにしてくださ……んん!?』


『頑張れ。まだ、先っぽが少し――――』



 二人がナニを……



「お、お、お兄ちゃん! ち、血って、血って『ソッチ』の血なのっ!?」


「お兄さん……お兄さんの言ってた、『見られたらまずい』って……」


「う、うそ、あぅ、あ、アース様……アース様って本当は……もう……」


「ちょ、ハニーっ! わ、私、これは聞いていないわ! どど、どういうことなのかしら!? 先っぽってなな、ナニの先っぽ!?」


「はぁ~……なんや、童貞やなかったん?」


「……子供たちよ……もう、お家で休むのだ」


「え~、ラル先生、なんでぇ~!」



 その瞬間、何も分からない子供たち以外は顔を赤くしてしまった。

 クロンとアースの声だけで、ナニをしているのかを想像―――



「って、これじゃなああああああああああああああいい! どこ編集してんだあのボケはああ! ってか、これはクロンの指に針を刺す場面で、普通に流せばいいのに、何で音声だけにする! 何でもないのに、なんか勘違いされんだろうがぁ!」



 そう、これは召喚に必要なクロンの血を採取するために、クロンの指に針をチクッと刺す場面である。

 艶めかしいクロンの声と、少し緊張気味のアースの声。

 場面さえ映し出されれば特段問題のある場面ではない。

 しかし、声だけだとどうしても想像力豊かな大人たちは勘違いをしてしまう場面であった。






 カクレテールでは……


「あ、あぅあ……うそ……あ、アースは既に……く、クロンと……? うそだぁ! サディス! お、お前はこのことを……サディス?」


 フィアンセイがポロポロ涙を流し……


「……おはながきれいです……おそらもきれいです……」


 サディスはこの場面を知らなかったので、ショックからか瞳孔の開いた無の感情で現実逃避……






 建設現場では……



「うぇっ!? ク、クロン様、す、既に、既に実はアース・ラガンと!?」


「うぉ、おおい、妹分、まま、まじかぁあ?!」


「「「「「クロンちゃんがぁああああああ!!??」」」」」



 ヤミディレ、ブロ、涙を流した労働者たちが口を大きく開けて驚愕し……


「はい? どうしたのでしょう、空が真っ暗に……?」


 無垢なクロンは皆がなぜ驚いているかも分からずキョトン顔。



「クロン様ぁ! こ、この、このとき、アース・ラガンに、あの、そ、そのぉ! キズモノにされたのですか?!」


「ん? この時ですか? んふふふ~、この時は私もよく覚えてます。私は遠慮しないでって言ったのに、アースも緊張してしまって……うふふふ、お互い緊張でしたが……はい! 私はアースにキズモノにされました!」


「おあ、お、ぉおおお? な、な、なんと……」





 そう、世界が二人は『そういうこと』をしているのではないかと勘違いした。





 唯一勘違いしていないのは……


「ったく、うるさいのじゃ! ぜんっぜん考えがまとまらんのじゃ!」


 エルフの集落に居た化け狐だけであった。


「ちょ、ノジャは何でそんな感じなの?! お、おお、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが~!」

「んあ? なんなのじゃ?」

「だから、お兄ちゃんが~!」


 本来こういうことには真っ先に反応するはずのノジャ。

 だが、ノジャは溜息を吐いて……



「は? どーせ、婿殿があの小娘を小さな針かなんかでチクッと指でも刺そうとしているのであろう?」


「「「「「……………!?」」」」」


「挿入前の先走りの汁やら愛液の音も何も聞こえんのだから、そんなの当たり前なのじゃ。これだから無知な奴らは困るのじゃ」



 その一言で、パニック起きそうになっていたエルフの集落が落ち着いて静かになった。



――こうして、少年は女神から血を採取……なお、本件は女性の身体に針を刺すというショッキングな場面ゆえに音声のみでお送りさせていただきましたことをご了承ください♪ 小さなお子さんたちはお父さんお母さんが顔を赤くしているのなら、何で赤いか聞いてね♪


「ほらな、なのじゃ」



 そして、パリピからのネタ晴らし。

 その瞬間、世界中が「ムカッ」とし、唯一世界でアースが深く安堵。



「あ~……ま、まさか、……ノジャの発言をありがたいと思う日が来るなんて……」



 アースが震えながらそう呟いた。

 そう、ヤミディレVSアースの時から静かに、そしてクールになったノジャ。



「まったく、わらわは今、色々と考え事をしておるのじゃ。婿殿のことで驚くのは分かるが、騒ぎ過ぎは――――」


 

 だが、しかし……



『アマァゾォラクテンヌヤホーデツーハンサガーワヤマトハイターツ!』


「……ふぇ?」



 次に聞こえてきた、アースの声。それは召喚の詠唱である。

 流石にそれを聞いた瞬間、ノジャはクールな表情からアホ面になって固まり、ギギギとゆっくりと空を見上げる。

 皆もまた見上げると、暗転していた場面が再び映し出され、そこには魔法陣の中心でクロンと共に詠唱するアース。



『強制召喚魔法・ソクジーツ!』


「ぶぼぉおおおお!!」


 

 ソレを聞いた瞬間、ノジャは噴出し、同時に空に閃光が走った。


「ぶっぼほぉぉ!?」

「強制召喚? そんな詠唱、聞いたことがないじゃな……御老公、急にお茶噴いてどうしたじゃない?」

「…………」

「御老公?」

「……ふぃ~……おちゃがうまいのう……」

「御老公!? な、なんか現実逃避している感じじゃない?!」


 そのとき、ミカドも噴いた。








 さらに、世界各地では……








「ぶっごほぉお!」


「わっ!? お、お母さん?」


「……クロン様……どういうことです?」


「はい?」


「わ、私は……アース・ラガンと一緒に空を飛べるモンスターを召喚したとしか……それがこのカバなのでしょう? そ、そのとき、この詠唱を?」


「?」



 ヤミディレが噴いた。







 さらに……


「ぶっごほぉほおおお! どどど、どういうことだゾウ!」


 魔界でもライファントが噴いた。










「ぶっごほぉ! こほっ、こほっ、な……にィ!?」


 ハクキがワインを噴出した。


「な、アースのやつ、召喚魔法まで!? ってか、ハクキ……お前までそこまで驚くなんて……」

「でも、私も驚いたわ。あの子、いつ覚えたのよ! ってか、強制召喚? って初めて聞いたけど……それに、あんな詠唱も聞いたことないわ」


 ヒイロとマアムもアースの召喚魔法に驚く……が、ハクキがワインを噴いた理由はそこではなく……


「………ごく……ふぅ……」


 ハクキはワインをもう一度飲む。


「なるほど……だからあえてあの人形……いや、『クロンの血』が必要なわけか……」


 そして、目を細めて呆れたように半笑いし……

 


「しかし……それはないであろう……いくらなんでも……ソレの召喚はさすがに反則であろう……」 



 空に向かって、そう呟いた。

 そして……



『なんじゃあ? 食事中に無理やり呼び出すとは……どこのアホンダラじゃ?』



 凶暴な肉食獣であるベヒーモスの死骸を食いながら現れた、朱色の巨大なドラゴン。

 その姿に、世界が噴いた。

まだまだいくで! 引き続きよろしくお願いします! 

また、よろしければ、ポイント評価欄『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂ければ、今後の執筆の大変励みになります。


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また、本作はカクヨムでも重複投稿しており、30話ほど向こうが先行しております。

もし「今すぐにでも続きを!」と思われましたら、こちらもどうぞ~


https://kakuyomu.jp/works/1177354054918478427

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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