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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第八章

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第四百二十八話 伝説を刮目

「はっけよい!」


 マクシタは次の瞬間、タックルするかのように俺に真っすぐ突進してきやがった。

 まあまあ速いし威力もありそうだ。


「あっ、おい、まだこっちは相談中―――」


 まだ俺がトレイナと話をしている途中で先に仕掛けてきやがった。

 だけど、動きも単調でスピードも俺からすれば……避けるのもカウンターで顎に入れるのも簡単そうだけど……


「どすこいいいいいいい!」


 マクシタは遠慮も手加減も一切せず、突進の勢いを利用して掌を俺に突き出してきやがった。

 全体重を右腕に乗せて、力任せに俺の顔面をぶちかまそうとしてきやがる。

 動きも力も結構いい馬力だ。

 俺もそうだからなのか、結構地道な足腰の鍛錬を積み重ねて身に着けたもんだってのが伝わってくる。

 だが……



「大魔ヘッドバット!」


「ッッ!!??」



 少し足を前後にずらして、タイミングを見計らって俺は自分から飛び込んだ。

 正面から額で受けてやった。

 ガツンという衝撃音が響く。 

 流石に……少し痛い……少し……だけどな。


「なっ、なにいいい!?」

「バカな! た、隊長の張り手に、自ら飛び込んだ!?」

「何を考えているのだ、あの小僧は!」

「お、おい、顔面潰れたんじゃないのか、あのよそ者!」

「な、なんてバカなことを……」


 人から見れば俺の今の行為は意味不明。

 周囲のサムライや民衆からは驚愕の声が上がる。

 一方で……


「あ~あ。やっちゃった~」

「相手の力量も分からず無闇に突っ込むか……甘く見られたものだね、お兄さんも」

「お、おお……あ、あの技は……かつてアカというオーガ相手にやった、あの技か!」


 俺の技を知っているエスピ、スレイヤはほくそ笑む。

 この技を見たことがあるフウマや仲間の忍者たちは感嘆の声を。

 そして……


「ぐっ、ご、ごおお、ぐっ、ぬうううう!?」


 俺の額に攻撃したマクシタは、急に右肘を抑えて苦悶の表情を浮かべて片膝をついた。


「な、た、隊長?!」

「な、なぜ? なぜ攻撃した方の隊長が!?」

「ど、どういうことだ?!」


 攻撃を食らった俺ではなく、攻撃した方のマクシタがダメージを負う。

 この異様な光景に周囲が更にどよめく。

 ま、そんな難しい話じゃない。


『腕を最大限に伸ばした状態で逆に押し返される……あの非力で痩躯な男が全体重を乗せた一撃を逆に押し返されたのだ……肘と肩を痛めただろう。脱臼までいかなかったのは、童なりの配慮か……』


 結構いい威力だった。

 ただ、アカさん、アオニー、あんなスゴイ二人の攻撃を受けてきた俺の額。

 今更この程度でビクつくものでもなけりゃ、壊せるものでもないってことだ。



「ぐっ、き、貴様ぁ、ぼ、僕に、な、なにを……」


「ん? いや……俺は何もしてないぞ? あんたにただ殴られただけだし……なぁ?」



 そう、俺は攻撃したとはいえ、傍から見れば俺はただ殴られただけにしか見えない。

 ちょっとワザとらしくエスピとスレイヤに同意を求めると、二人もニコニコしながら頷いた。


「うんうん。お兄ちゃんは殴られただけだよね~♪」

「まったく、ジャポーネのおもてなしか分からないけど、失礼な国だね、お兄さん♪」


 本来ならば俺に対してサムライたちが公務執行妨害やらなんやらで束になって力ずくで抑えにかかるんだろが、連中も状況が分からずに狼狽えている。

 

「な、何もしてないって……いや、でも……ぐっ……」


 それはもちろん、マクシタも同じだ。

 とりあえず、さっきまでは話もできないぐらい怒り狂っていたのでどうしようもなかったが、これでひとまず落ち着いた。

 なので……



「なあ、マクシタっつったな?」


「ぬっ、な、なに、なん……でごわす……お前は……」


「俺は別に喧嘩に来たわけじゃねーんだ。ただ、ちょっとシノブの兄ちゃんのことに目を瞑って欲しいだけだ」


「は、は!? そ、そんなことできるわけ……」


「もちろん、タダとは言わねえ」



 そこで俺は本題に入る。

 この問題を平和的に……平和……平和なのか? トレイナ? 本当に平和なのか? 何だか俺も疑わしく思っちまうが……



「戦碁で俺があんたに勝ったら見逃してくれよ」


「…………は?」



 いや、確かに「は?」だよな。俺もそう思う。


「うんうん……って、ちょ、お兄ちゃん?」

「え、暴れるでも逃げるでもなく、戦碁? なんで?」


 エスピとスレイヤも流石にそれには驚いたようで目をパチクリさせている。

 だけど、これはトレイナも言ってることでもあるわけだし……



「えーと……『ジャポーネは誰もが幼少の頃より戦碁を学び、学校の授業の中でも戦碁を取り入れるほど文化として定着している盛んな国なんだろ? その戦碁の大会で優勝しているあんたに、他国の俺が胸を借りる……って、あんたシノブに負けてんだっけ?』 で……えっと」


「ッッ!!??」



 なんで戦碁? それは分からないが俺はトレイナに耳打ちされた通りのセリフをそのまま言ってやった。多少棒読みだけど。

 すると、これまで「なんで?」、「何言ってんだ?」みたいな顔をしていたマクシタの表情が再び怒りに変わった。



「お、おまえ……だ、誰に向かっ、こ、の僕に、よそ者があろうことか戦碁で僕に挑むと!」


「ああ」


「ふん、いい度胸でごわす! 何がシノブに勝っただ! どうせ何か卑怯な手を使ったでごわす! いや、そもそも今の僕はシノブ以上の力でごわす!」



 卑怯な手? それは正解。俺はある意味ですごい反則を使ってるし。

 だが、こいつ乗っちゃったよ……トレイナの思惑に……



「おい、戦碁盤を置くでごわす!」


「は、はい!」


「もう許さないでごわす! コケにされた恨みは何倍にしてでも返すでごわす! 貴様が負けたら、シノブの居場所もちゃんと話すでごわす!」


 

 そう言って、部下のサムライが天下の往来に戦碁盤をセットし、その盤前にマクシタはドカッと座った。

 気の毒に……そう思いながら俺も対面に座った。


「ちょ、いいの? お兄ちゃん」

「大体お兄さん、戦碁にそんな自信が?」

「ん? いーんだよ」


 少し心配そうに駆け寄ってくるエスピとスレイヤ。だが、俺は二人に対して笑みを浮かべ……



「ハッキリ言って、俺に戦闘で勝つよりも、『こいつに』戦碁で勝つ方が何百倍も難しいんだからよ……魔王の一手にはな♪」


『ふふふふふふふ』


「「あ……あ~……あ~~~、そういうこと……」」



 俺の笑み、そして傍らでとっても悪者のような笑みを浮かべる我が師匠。

 俺の思わせぶりな言葉に、トレイナの姿は見えなくともエスピとスレイヤも理解したようで、顔を引きつらせながら半笑い。


「おいおい、ちょっとどうなってんだ? なんで、戦碁が始まるんだ?」

「さあ、でもあの外国人の坊主、よりにもよってマクシタ隊長に戦碁を挑むなんて……」

「いや、さっきのフウマくんたちの話では、彼は戦碁でシノブちゃんに勝ったって言ってたぞ?」

「確かに……いや、でもよ、それってシノブちゃんが手を抜いたとか、指導戦碁だったとかじゃないのか?」

「ああ。シノブちゃんは大人相手どころか、『戦碁棋士』たちにだって負けないんだからよ」


 そして、ギャラリーたちも適度に盛り上がり、何だか既にお尋ね者のフウマを捕らえたとかそういう話題を誰も気にしなくなっているような気もするが……いずれにせよ……


「ほら、先番はくれてやるでごわす! さ、来いでごわす!」

「おっ、そうかい? それじゃあ……お願いします」

「ふん、でごわす!」


 戦碁発祥の地であるジャポーネにて、今日この場に居る者たちは……



『よし、じゃぁ……いくぜ、トレイナ!』


『うむ……ふふ、肩慣らしに少し遊ぶかな? ではッ! 初手、中央……天元!』



 魔王の一手を見ることになる。



「なっ……い、いきなり……天元でごわすか!?」


―――――――――ッッ!!!!????



 それは、通常の戦碁では初手からいきなり打たないような場所なんだろう。

 盤のど真ん中に俺は石を置いた。

 戦碁の発祥であり、文化として根付いているジャポーネ人たちからすれば、それだけで驚き目を見開くような場所に、俺は……いや……トレイナは打った。

 たった一手だけで周囲がザワつきだした。



「ふ、ふん、いきなりで驚いたが……ふざけるなでごわす! 定石も何もない、そんなコケ脅し……徹底的に叩き潰してやるでごわす!」


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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