第四百二十一話 幕間(おっぱいエルフ)
「だ、だめ、ん、だよぉ……」
どうして? どうしてこんなことになってるの?
「お願いだから、や、やめてぇ、これ以上……」
私は無理やり胸を……おっぱいを揉まれている……。
子供の頃からコンプレックスで、おデブさんって思われるような醜い胸。
でも、男の人と女の人が結ばれるときは「そういうこと」をするっていうのは私も知っている。
だから、いつか私のこんな体でも好きになってくれる人がいたらなって……でも、でもこんなの嫌だよぉ……
「ふあ、あん、んっ、んん!」
私は好きでもない人に、胸を強引に揉まれている。
物のように乱暴に扱われ、引っ張られ、叩かれて、それにそれだけじゃない……
「ひっ?! いや、何するの!? や、そんなところに、嫌ァァああ!!」
私のスカートをめくって……いや! ぱ、パンツが、パンツの中に何を……いや、いや!
「ひ、いや、いやあああ! 助けて……たす、助けて、アース様ァああああああああ!!」
私の体をこれ以上弄ばないで……こんなの……こんなの……
「もっと揉ませるのじゃやあああああ! なんなのじゃ、この胸は! 何が詰まっておるのじゃぁ! この柔らかさ、弾力、体温、偽物でなく本物とな!? どうなっておるのじゃああああ! しかも尻までボボーン! エルフは反則なのじゃぁあ! 存在するだけで、わらわへの嫌がらせなのじゃぁぁああ!!」
「ノジャちゃん、やめてええええ!」
戦いに出たアース様たちはみな無事に帰ってこられた。
どうやら敵に捕らわれていた人たちも解放できたようで、流石アース様。
だけど、その中で……朝までは可愛かったノジャちゃんが、帰ってきたらとってもエッチなモンスターになっていて、みんなの無事やエルフのかつての集落奪還を祝う宴の席で、私のオッパイをとにかく揉んできて、尻尾で私のスカートの中とかお股とかまで弄ってきた。
「やめんかああああ、あんた! うちの娘に何やってんのよ!」
「大将軍、それまでにしてください! その娘は小生の教え子でして、まだ純真無垢なのです! どうか!」
「……なんと……アレは本物であったか……はっ! い、いや、何でもないぞよ……」
「御老公のような枯れたジー様でも気になるとは……まぁ、オイラは見えなくてよかったじゃな~い」
「やはり……アレは本物なのね……いいえ、ハニーはお尻も好きなはず……いえ、あの子はお尻の形も……で、でも私にだって……私には将来があるわ!」
「せや、シノブ。ウチが巨乳なんやから、シノブも将来はバインバインやえ? 今は乳袋より、スキルを磨く時期やえ」
「ふむ、最初は父として複雑でござったが、ミカドまで奪還できたとは……アース・ラガン……確かにシノブの婿になってくれたら、某もありがたいでござる」
正気に戻ったと言われているノジャちゃんが、私の体にエッチなこといっぱいしてくるの!
っていうか、これが正気なの?
お母さんも先生も止めるの遅いし!
「うぅ、恥ずかしいよぉ……」
それに今ここには集落の皆だけじゃない。
アース様たちが助けられたというミカドっていうオジーさん。
さらに、シノブちゃん、そのお父さんとお母さんまで。
そう、今この集落には外の世界の人がいっぱい集まっていて、そんな中でおっぱいとかお尻とかパパパパ、パンツとか……うぅううう
「ぐへへへへ、まだなのじゃ~。乳を吸わせるのじゃぁ! 先っぽや乳輪の形もチェックするのじゃ~」
これ以上は無理だよぉおおお!
「これこれ、それまでにせよ。ノジャよ」
「ああん? なんなのじゃ? ミカドぉ~」
「聞けばおぬしもここでは匿ってもらっておるのじゃろう? 慎むのじゃ」
「わらわに命令するななのじゃ!」
でも、流石にみんなもやりすぎって思ってくれたみたいで、ノジャちゃんを宥めるようにミカドおじーちゃんがノジャちゃんを私から引きはがしてくれた。
「敵の時はメチャクチャ厄介だったくせに、味方になったとたんにアッサリと捕まって洗脳される役立たずが何の用なのじゃ? さっさと隠居してすっこんでおるのじゃ! 草葉の陰でカグヤも泣いておるのじゃ!」
「そ、それを言われるとワシもつらいが……いや、おぬしもハクキに敗れて捕まって洗脳されたのじゃろう?」
「いや、わらわの場合は貴様と少し違うのだ。わらわはそんなピンチを愛しき婿殿に救われて、もう色々と深まってしまったのじゃ♡ つまりは、わらわのは恋愛イベントなのじゃ♪」
「……おぬし、ヒイロが好きだったのでは?」
「はん! あんなのもうどうでもいいのじゃ!」
あっ、でも一触即発……の空気だけで腰が抜けちゃうぐらい空気が痛いよぉ!
っていうか、今までお父さんと先生と兄さんと姉さんぐらいしか強い人知らなかったのに急に増えたというか、外の世界の人たちって、みんなこんなに強いの?
「うぅ……こわい……アース様、たす……け……あれ? あれ?」
こんな怖いとき、助けてくれる正義のヒーロー。それがアース様。
アース様ならきっとこんな状況でもどうにかしてくれる……と思ったら……
「あ、あれ?」
アース様がいない?
あれ? 兄さんも姉さんもいない?
どこに……あれ? お父さんもいない?
「……あ……分かった」
そのとき、私はピーンと来た。
きっと内緒話をしてるんだ。
アース様がこの集落に来られてから、アース様たちは人目を避けるように内緒話をしている。
ふふ~ん。でも、私を除け者にしようとしても無駄なんだから……なら、私も……コソコソコソコソ抜き足、差し足で宴の輪から離れて……
「えっと……あっ、いた。虫さん虫さん。お父さん見なかった? あっ、あっちにいるの? うん、ありがとう」
ふっふっふ。お父さんのように強制的にじゃなくて、私の場合はちょっと魔力使うけど、こうやって私もお父さんみたいに動物とか鳥とか虫とかと会話することができる。
だから、私相手にかくれんぼしたって絶対に……
「ハニーたちはあっちにいるのね」
「えっ……ふゃあああ!?」
って、いつの間にかシノブちゃん!? 全然気づかなかった! って、でもあっちの宴会の中にもシノブちゃんはちゃんと……
「あっちにいる私は分身よ。まぁ、皆には気づかれているかもしれないけど……ほんと、自分でも強くなった気でいたけれど、レベルの高い人たちばかりで本当に……本当に、そんな中心にいるハニーは流石ね♪」
そう言って、シノブちゃんはニコニコしながらアース様を……あれ……なんか胸がチクチク……?
「えっと、シノブちゃんも……行く?」
とりあえず、シノブちゃんはアース様のことを恋しちゃってるぐらい好きみたいだし、それならばと私も誘ってみた。
私はシノブちゃんは喜んでついてくる……と思っていた。
だけれど……
「いいえ、行かないわ。私はあなたを止めに来ただけ」
「え?」
シノブちゃんは意外なことに首を横に振った。
しかも、私にも行かないようにって……どうして?
「ど、どうして?」
「人目を避けて話をしているということは、聞かれたくない話ってことでしょう? そしてその話の場に呼ばれていないっていうことは、私たちは蚊帳の外の話なのよ。それなのに黙ってコッソリ聞き耳を立てるのは、あまりよくないわ」
「シノブちゃん……でも、シノブちゃんはアース様のことが好きなんでしょ? だったら何の内緒話をしているか気にならないの? 私は気になるよ……だって、憧れのアース様が兄さんと姉さんと、しかも私のお父さんと……何を話しているか……すごく気になるよ……」
「ええ、気になるわ。でも、それは自分が聞きたいだけの話。そしてハニーたちは聞かせたくない。であるならば、私は好きな人が嫌がるようなことはしないわ。聞きたいなら……いつかハニーの口から話してくれるぐらいの存在に……その内緒話の輪に加えてもらえるような存在になれるように自分を磨く……それだけしかないと思うわ」
それは、とても強がりとかそんなふうに見えなくて、とっても自然に当たり前のようにシノブちゃんは私に言った。
その瞬間、私は何だか頭をガツーンと叩かれたような気がした。
「ほら、あなたも行きましょう……と言っても、六覇のノジャがまだあんな状態だし、少し時間を置いた方がよさそうだけれど……」
そう言って、シノブちゃんはアース様たちがいる方向に背を向けた。
本当に気になるのに、でも聞こうとしないんだ……そんなシノブちゃんを見て……何だか私はこれまで森の中や家の床下とかで聞き耳立てていた自分がすごい恥ずかしくなった。
「シノブちゃんって、私やアース様と同じ歳ぐらいだよね? すごいな……大人だよ」
「そうでもないわ。だから苦労しているのだし」
すごい。顔も可愛くて、体も私のようなおデブさんじゃなくてほっそりスラッとしているし……考え方も大人だよ……
「ううん! すごい……えらいよ……兄さんと姉さんもシノブちゃんのこと褒めてたし……うん、シノブちゃん! 改めて私とお友達になって!」
こんな素敵な女の子……アース様だって好きになっちゃうよ……カッコイイ!
「え……? 友達? ライバルじゃなくて?」
「うん! お友達! 私、すっごい大切なことを教えてもらったもん!」
「あら、そう?」
「私も今度から聞き耳なんて立てない! 『アースくんの気持ちとか何も考えないで勝手に自分の気持ちを優先するような最低なこと』はしないよ!」
気づいたら、私ももうアース様たちの内緒話をコッソリ聞こうと思わなくなり、シノブちゃんの手を握っていた。
それよりも、お友達ができたことの方が嬉しかった。
「ふふふ、あら、嬉しいわね。お友達……友達……か……」
「シノブちゃん?」
「え? あ、ううん。何でもないわ。ええ、いいわ。こちらこそよろしくね、アミクス」
「う、うん……ん?」
姉さんは姉さんだから、こういう人間の女の子のお友達は初めて。
だけど、今……
「シノブちゃん……何か……その……何か気になることあるの?」
「え?」
「その、いま……少し顔が曇ったから……あ……ひょっとして、わ、私と友達になるのは嫌とか……」
「ち、違うわ! 違う違う! 全然違うわ! ただ……」
一瞬だけシノブちゃんがどこか切なそうな表情だった。
私は「もしや」と思ったけど、勘違いみたい。
なら、なんで……
「ただね……私の……私の生まれて初めてできた友達のことをね……ちょっと思い出したの……もう疎遠になってしまったけど……大切な……」
すると、シノブちゃんは友達になったばかりの私に、悲しい過去を教えてくれた。
「『アースくんの気持ちとか何も考えないで勝手に自分の気持ちを優先するような最低なこと』はしないよ!」
同時刻。
遠い空の向こう……
フェスタジョーヌ姫「へっくしょん!」
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さて、皆さまいつもお世話になっております。中途半端な時間ですが、単純にミスで明日の7時に予約してたので、今朝更新されなかっただけの話です。
明日にしても良かったのですが、今日は月に一度のコミカライズ更新日ですからね。11時にニコニコで「ちょろーん」なヒロインにコメントやってください。
https://seiga.nicovideo.jp/comic/47196
そして、18時には公式で……




