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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第八章

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第四百五話 選抜メンバー

 かつてのエルフの集落。

 あの地は魔王軍のオーガ部隊に襲撃され、最終的にはハクキが現れたことで俺たちは逃げるしかなかった。

 その結果、エルフ族たちは新たにこの地に移り住んで暮らしている。

 あれから十数年……


「あの地にハクキ大将軍……いや……ハクキが……」


 ラルウァイフが神妙な面持ちで呟く。

 そう、かつてはラルウァイフもあの地に、そしてあの日に遭遇している。

 それは……


「ああ。アオニーに助けられたあの場所だな」

「……アース・ラガン……ああ……そうだ。その通りだ……」


 命がけで俺らの盾になったあの青い鬼を思い出す。

 過去で色々とあったあの地に、ハクキは今もまだ居るってのも、何だか変な巡り合わせを感じるってもんだ。

 思えば、初めてハクキと対峙したときは既にボロボロだったし、アオニーに気絶させられたから実質何もできなかった。

 でも、今なら……


「アオニーのことだけじゃねぇ……まぁ……俺も帝国から家出した身とはいえ、昔世話になった……幼馴染の親父さん……捕まってると分かってるのに、俺には関係ねーなんて言ってられねぇしな……」


 賞金首でもあるハクキに捕まってる幼馴染の親父さんを助けに行く。

 ジャポーネ国内の内政がどうとかゴチャゴチャがこれなら関係なくなった。

 そして、そんな俺の気持ちを察してか、エスピとスレイヤは俺の左右に立って、腕をギュッと掴んでくっついてきた。


「それに、もう十数年前の頃の私じゃないし!」

「ああ。ボクだってあの怪物には借りがある……。殴り込み、当然ボクも行くよ、お兄さん!」


 俺がまだ「行く」と口にする前に「自分たちも行く」とくっついてきた二人。

 その顔は幼かったころの弟妹と違い、武者震いしているかのように好戦的な笑みを浮かべている。

 あのバケモノや鬼たちと正面からぶつかるのは必至だっていうのに、二人はすでにやる気満々のようだ。


「ま、待つでござる! 相手がハクキと魔王軍の残党というのであれば、もはや連合軍や七勇者クラス総出の問題で……いや、エスピ殿は七勇者ではあるが……しかし、何の算段もなく乗り込むのは自殺行為ではござらんか?」


 ただ、そんなノリノリな二人とは別に冷静なツッコみを入れるオウテイさん。

 それに……


『たしかに……ハクキ……十数年前の時点のレベルでも……今の童、エスピ、スレイヤの三人で……ふむ……』


 ハクキの力を誰よりも知っているトレイナですら微妙な反応をしている。

 いくら俺が六覇に慣れてるからって言っても、やはりハクキは一人だけランクが違うってことなんだろう。

 だけど……


「いや、旦那……逆じゃない? むしろ、これはチャンスだとオイラは思うじゃない」


 意外にも俺らがやろうとしていることに賛同したのはコジローだった。


「シテナイたちの裏工作で戦力増強したハクキたちが税務部隊なんてもんを作って民たちから強制徴収をしている……反国王派や民たちの反発がより強くなるものの、相手が屈強なオーガたちだからこそ力ずくで押さえつけられる。しかし……そのオーガたちの頭でもあるハクキを討てば……」


 国王の所業に我慢できなくなった民たちがいたとしても、それをオーガや裏切って洗脳されている戦士たちが力で押さえつけることができる。

 しかし、その大元の黒幕でもあるハクキを討つことができれば……?



「少なくとも、ジャポーネ王国の残存戦士やら税務部隊やら国王派やらと正面から戦うよりも、ハクキ一人さえ討てば……まだこの国は、何とかなるかもしれないじゃない」


「コジロウ……」


「とはいえ、半端な力では犠牲が大きくなるだけ……ならば少数精鋭の選抜部隊でハクキを……」



 そう言って、コジローは刀を手に持って俺たちに向かい……



「お兄さん。エスピ嬢。スレイヤ氏。オイラも連れて行って欲しいじゃない」


「コジローッ!?」



 まさかのコジロー自ら助っ人の申し出。



「旦那、悪いが今回だけオイラは旦那から離れるじゃない。カゲロウの姉御……そして、門下の皆でオイラの代わりに旦那を守って欲しいじゃない」


「コジロウはん……」


「それにまぁ……戦友も囚われているみたいだし、こればかりは行かないといけないじゃない」



 それは頼もしいというか、願ってもないこと。

 さらに……



「族長……今だけはこの集落の守護者であり、さらには教育者としての役割から離れ……しばしの間だけ、漆黒の魔女と呼ばれていた頃の小生に戻らせてほしい」


「え? ラルウァイフ……?」


「アース・ラガン! 後生だ! 小生も連れて行って欲しい!」



 まさかのラルウァイフまで手を挙げてきた。

 いや、でも冷静に考えれば意外なことでもなかった。

 この集落で一人だけ肌の色が違うものの、今では皆に慕われて愛されて幸せそうなラルウァイフではあるが、それでもこればかりは関わらずにはいられなかったんだろうな。

 だから俺も……



「ああ。アオニーの墓でも立ててやらないとだしな……行くか、ラルウァイフ」


「うん、行こうよ、ラルさん! この十数年の間に大きな戦闘が無かったとはいえ、いつかアカさん幸せにするために積み重ねた訓練の成果を見せる時だよ!」


「ラルの魔法はボクらにとってもありがたいしね」


「おお……確かに、身から溢れる魔力の雰囲気は半端を超えてハンパないじゃない! なら、よろしくじゃない♪」



 俺も、そしてエスピとスレイヤとコジロウも頷いた。

 なら、先発メンバーはこの五人……いや……


「ハニー」


 そのとき、すでにあらゆる覚悟をしているかのようなまっすぐな目でシノブは俺を見つめ……



「たとえウザいと思われても……待っているだけの女にならないわ……私が望むのは君の帰りを待つのではなく、君の傍らで共に駆けること……戦場も……人生も……」


「シノブ……」


「唯一の懸念は足手まといにならないか……でもね……そうならないために、私もまた天空世界の一件から、新たな師の下で自分を磨いてきたわ……今度こそ……君の力になるために。まぁ、そもそも自分の故郷のためでもあるわけだけど……とにかく!」



 そして、シノブの想いは俺も分かってるし、エスピやスレイヤやコジローも、そして両親であるオウテイさんやカゲロウさんも止めようとしない。



「私は勝手についていくから♪」


「は、ははは……」



 あまりにもまっすぐ、そしてニッコリと言われてしまい、それを拒むことなんてできなかった。



「んふふふふ~、いいじゃんいいじゃん、シノブちゃん!」


「危険だから……なんて無粋なことは言わない。その心意気をボクも尊重するよ。お兄さんに何が何でもついていきたい気持ち……ボクとエスピは泣きたくなるぐらい心の底から理解できるよ」


「やれやれ……オイラは止めるべき立場なんだが……まっすぐ過ぎて何も言えないじゃない……」


「シノブ……こういうところ……カゲロウに本当に似たでござる……」


「ふふ、シノブも膜がまだある以外成長しとるようで何よりやなぁ」


「……すごい……かっこいい……いいなぁ、シノブちゃん。私なんかじゃ怖くてできない……強くて、かわいくて、まっすぐで……アース様もきっとシノブちゃんみたいな女の子の方が……」



 そんなシノブをエスピとスレイヤは嬉しそうに歓迎し、コジローやオウテイさんたちも呆れたように苦笑しているが、反対ではなさそうだ。

 最初は少数精鋭のつもりが気づけば……


「じゃぁ、メンバーは……このメンツだな」


 俺。

 エスピ。

 スレイヤ。

 コジロー。

 ラルウァイフ。

 シノブ。

 そして……


「こんこん♥」

「……………」


 地味にさっきからずっと俺にしがみついて絶対に離れようとしない狐一人に……


『ふぅ……色々と複雑な気分ではあるし、気は進まぬが……これもまた運命か……ハクキ……数百年? いつ以来ぶりか……こんな形で貴様とまた戦うことになるとはな……』


 傍らの師匠。

 このメンツで俺たちは大きな戦いに挑むことになった。



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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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