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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第八章

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第三百七十話 次に向かうのは……

「じゃぁ、お兄ちゃん……最悪の場合はノジャと争うこともあるってことだね?」

「ああ。だけど、これは俺の問題でもあるし、エスピとスレイヤには――」

「無関係じゃないから! そもそもノジャに話したのは私だから、責任重大だから! だからもし、ノジャが力づくで来たら、意地でも私とスレイヤ君はお兄ちゃんと一緒に戦うから!」

「い、いや、そうは言っても……」


 俺の問題だから俺が決着を……と思ったら、エスピはムッとしたように立ち上がって、身を乗り出して俺に怒った。


「そもそも、お兄ちゃんの大魔螺旋をノジャのアレに後押ししちゃったの……実際私だし……」

「あ、そういや……」


 言われて思い出した。確かに、俺は直前で本当は寸止めしてたんだよな。ノジャの尻の手前で。

 だけどその時、船で空飛んでやってきたエスピが俺の大魔螺旋を後押しするような形で……


――んごっぉ、ほぉ……ん、んほぉぉぉぉおああああああああああああああああああああああああああ!!!!????


 あんな悲鳴……俺は一生忘れないだろう。

 そういう意味では、エスピが「自分にも責任がある」と言ってくるのも分かる。

 ただ、それだけじゃなく……

 


「それに……もう……やだもん」


「え?」


「ノジャだけじゃない……アオニーの時……ハクキが現れた時……ゴウダの時……私もスレイヤくんも重要な所ではいつも、ただ見ているだけしかできなかった……もう、あんなの嫌だ。私もスレイヤ君も大きくなって、そして強くなった。お兄ちゃんと一緒に戦えるように。お兄ちゃんを守れるように」


「エスピ……」


「それこそ、お兄ちゃんのためなら、私とスレイヤ君だって世界を敵に回したって構わないんだから!」


「ッ!?」


 

 ここぞという場面で、俺は一人で戦ってた。

 俺自身がタイマンを望んでいたというのもあるけど、どうやらその戦いをいつも見ているだけだったことは、二人にとっては耐えがたいものだったんだろうな。

 だからこそ、もう今は何があっても見ているだけなんてことはしないと、エスピの決意が滲み出ていた。

 それはスレイヤも同じなんだろうな。

 まったく、頼もしい限りだ。


「ということは……お兄さんとエスピとスレイヤは……現在、人間と魔族が合同調査しているシソノータミ方面へ近々向かう……ってことになるかな?」


 すると、事の成り行きを黙って見守っていた族長が尋ねてきた。

 


「そうなんのかな? でも、今はノジャだけじゃなくて、遺跡の調査に同行する形でフーの親父さんもいるみたいだし……それはそれで会ったらメンドクサイことになりそうだしな……親父たちに話しが行っちゃうだろうし……」


「ベンリナーフかぁ……ノジャはベンリナーフの目を盗んでお兄ちゃんを~、みたいなこと言ってたけど……それはそれでできるのかなぁ? ってのはあるなぁ……ベンリナーフってちょっと掴みづらいところあるし……」


「そうかぁ? ニコニコ優しい童顔な親父さんって印象だけどな~……」


「いつもニコニコニコニコしてるから私は逆に苦手~……何考えてるか分からないもん」


 

 エスピにとってベンおじさんは、同じ七勇者同士の戦友。

 俺にとっては幼馴染の親父さん。

 向こうにとって俺は息子であるフーの友達であり、戦友の息子っていう感じで接してくれたし、あんま怒られた記憶とかはない。

 だから、エスピのように戦友という立ち位置だと俺の抱く印象とは少し違うみたいだな。



「そういや、遺跡の調査ってどれくらいやるんだろうな?」


「それが、あんまり期限は設けてないみたい。流石にノジャがいつまでも地上滞在ってわけにはいかないけど、魔界と人間の合同調査団はしばらく拠点を張ってって感じらしいし……」


「そうなのか? となると、ノジャに関することを抜きにしても、シソノータミの遺跡内部の探検にはなかなか行きづらいな……力づくでってのは嫌だし……」


「ま、遺跡でバトルするわけにもいかないしね。ゴウダとは戦ったけど」


「確かにな。ベンおじさんまでいるから、ごちゃごちゃになって訳わかんなくなるし……でも、遺跡は遺跡で探索したいんだけどなぁ……」


 

 正直、過去の時代で遺跡はそこまでジックリ探索できなかったから、今度は色々と見て回りたいっていう気持ちはある。

 トレイナも喜ぶだろうし、俺も興味ある。

 でも、この様子だと……



「大丈夫だよ。十数年前に主要な通路は通れないようにエスピが破壊したから連中は通れない。だけど、さっきエスピも言ったように別の場所から転送装置やらエレベーターなんか使えば脇道から行けるよ。お兄さんはマスターキーを持ってるんだしね」


「族長……」


「そして、あの中にあるものをどう使うか、何をするかももうお兄さん次第だし……俺は止めないよ」



 と、この中で唯一遺跡の中の全容を知っているであろう族長がそう言ってきた。

 そういえば、そもそも……


「なぁ、族長……過去でも聞いたけど……そんときははぐらかされて……でも、今なら教えてくれるか?」

「ん?」

「そもそも……族長って何者なんだ?」

「あ~……そのこと……」


 そう、それは謎のままだったこと。

 あの遺跡のことを詳しくて、中の設備も手慣れた様子で扱っていた族長。

 明らかに「関係者」だったんだろう。

 そのことを聞いても、過去では誤魔化されたけど、今なら……



「あなた~! スレイヤが来たわよー!」


「お邪魔します」



 と、そのとき、部屋の外から奥さんの呼ぶ声と共に、スレイヤがドアを開けて中に入ってきた。


「おう、いらっしゃい」

「スレイヤ、お疲れ!」

「おつかれ~」

「お疲れだったな、スレイヤ」


 麓の街までさっきのハンターたちを連れて行ったスレイヤ。

 その後ろには奥さんも……


「話の途中に悪いね。ただ、エスピ……お兄さん……さっきのハンターたちについて、少し分かったことがあるんだけど――――」


 と、入ってきたスレイヤがいきなり真面目な顔をして何かを言い始めた。

 さっきのハンター? あの連中が何かあったのか?

 何事かと思って俺たちは話を中断して体を向けた。

 だけど……



「それより、もういい加減に教えてよ! あなた、エスピ、スレイヤ、ラル、……それにあんたも!」


「……え?」

 


 と、スレイヤが何かを言う前に、奥さんが入ってきてテーブルをバンと叩いてきた。

 そして、よく見ると家の外には、集落のエルフたちもたくさん集まっているようで……



「あんたは人間なのに、全然見た目が変わってないってのは信じられないけど……でも、エスピもスレイヤもあんたを『お兄ちゃん』、『お兄さん』って呼んでるし……わ、私のアレも知ってたし……だから、これだけは教えなさい! あんた……十数年前に私たちの集落にエスピとスレイヤと一緒にやってきて……襲撃してきたオーガたちから私たちを守ってくれて……そして、この土地を買うためのお金まで渡してくれた……あのときのあんたなの? タピル・バエル本人ってことでいいの!?」


「あ……」



 どうやら、奥さんも他のエルフたちもそれがずっと気になって待機していたようだ。

 ただ、俺らがいつまでも話をしていることで、色々と我慢できなくなったようで、スレイヤが来たタイミングで奥さんも乗り込んできて、そして皆に聞こえるように大きな声を俺に尋ねてきた。



「えええッッ!!!???」


――ドカ、バキ、ドゴ、バゴ!!!!


「いた!? あた、いっつ……」



 床下の猫も今の奥さんの言葉に改めて驚いたようで、色々と頭や体を打ち付けてしまっている様子。


「あ~……もう……トドメだなこりゃ……」

「で、あろうな……」

「いや、族長さん、ラルさん……もう最初っから手遅れだった……ごめんなさい……」


 そして、族長とラルウァイフは溜息を吐き、エスピとスレイヤは苦笑している。

 俺は一瞬誤魔化そうかどうしようかとも考えたが、それでも……



「ああ、そうだ。俺本人だよ。まぁ、タピル・バエルもラガーンマンも当時は正体を隠すために使ってた偽名みたいなもんで、本当の名前はアース・ラガンって言うんだけど……間違いなく俺本人だよ」


「「「「「ッッ!!??」」」」」


「シソノータミのアイテム使って……時を越えたんだ」



 他の人に知られると面倒なことだけど、この人たちならいいかと思い、俺は本当のことを教えた。

皆様が無事でありますように

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