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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第七章

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第三百四十話 パスコード

「な、か、隠し通路!?」

「あなた、こ、これ、大丈夫なの? 何か出てきたりしない?」

「こんなものがこの森に!? ずっと住んでて知らなかった……」

「こわい、なんかこわいよぉ!」


 真っ暗な階段を前に怯えるエルフたち。

 そして俺たちは俺たちで驚いていた。


「まじか……すげえ……」

『……こんなものが隠れていたとはな……』

「お兄ちゃん、まっくら……ぎゅっ」

「ふ、ふん。こんなことぐらいで怯えてお兄さんにしがみつくなんて、エスピは臆病だね……ね、ね? お、お兄さん」

「……小生ら魔王軍もあまりこの地には詳しくなかったが……エルフが住んでいただけでなく、こんな隠し通路まで……」


 一体何が飛び出す? いや、この奥に何があるんだ?

 そう思ったんだが……


「大丈夫。この奥には何もないよ。階段もそこまで深くないよ。一番下まで行けば、ちょっと大きめの広場に出るだけだから。あっ、階段転ばないように気を付けてね。下まで全員降りたら人数確認ね」


 族長は何の警戒もせずにスタスタと先頭で階段を降りて行ってしまった。


「お、おい、族長!」

「ちょ、あなた、待ってよ!」


 とりあえず、族長の様子から危険はないのだろう。

 もう何がどうなっているかは分からないけど、とりあえず俺らも意を決して次々と階段を降りることにした。


『……この壁……』

『トレイナ?』

『……よほどの力を加えても破壊できぬ作り……なるほどな……まさかこんなものが本当に……』


 階段を降りる途中、天井や壁の作りなどに難しい表情を浮かべるトレイナ。

 それだけ、これは普通じゃないってこと。


「お兄さんも、もし今後も使うようなことがあれば覚えておくことだね。悪用するかどうかは……もう、お兄さん次第だけど」


 先頭を行く族長の声が聞こえてくる。

 悪用……確かにこんな隠し通路……そしてその奥に眠る技術とやらが本物ならば、悪用すれば間違いなく脅威だ。

 何が脅威かって、ここにある存在を当時の魔王軍も連合軍も知らない……当時のトレイナも、親父も知らないってことだ。

 それはつまり、世界のほとんどの者が知らない秘密の存在。


「はい、着いた」

「ッ! あっ……おお、広い……」


 階段が終わり、そこには広々とした殺風景な空間。

 四角い形をして、俺ら百人足らずを収容できるぐらいの広さをし、その部屋の中央には何やら見たことのない紋様が刻まれている。


「わぁ、なにかな? ここ……」

「あなた……何もないじゃない!」

「……魔力も何も感じぬ……族長殿……本当にこの場に転移を可能とする力が?」


 皆で部屋を見渡すが、薄暗いだけで見事に何もない。

 こんな所に本当にそんな力が……


「お兄ちゃん、何か光ってるよ?」

「え? あ……マスターキーが……」

「な、なに!? お兄さん、大丈夫!?」


 エスピに言われて俺も気づいた。

 マスターキーが発光していることに。

 入り口と同様にここにある何かと共鳴している?


「あ~、心配しなくていいよ、お兄さん。入り口と同様、装置がちゃんと反応したってだけだから」


 しかし、族長は何でもないと特に問題にはしていないようで……



「あ~、『ゲート起動。転送先は【研究所本部】で』」


【指令及ビマスターキー確認】


「「「「「わっ、またっ!!??」」」」」



 そして、またあの声が聞こえてきた。


「つーか、族長! 何かやるにしてもせめて何が起こるか説明してからやってくれ! ビックリすんだろうが!」

「そうよ、あなた!」

「あっ、あやうく魔法で身を守ってしまうところだった……」


 族長は淡々としているが、俺らにとっては一つ一つが驚きの連続で心臓に悪い。



【尚、本部ヘノ転送ハセキュリティ上、パスコードガ必要ニナリマス。パスコードヲオ願イシマス】


「あ~……本部へのパスコード……そういえば必要だったな~……でも、入り口のパスワードも昔と変わってないし……『パスコード:4545072』!」


【パスコードヲ認証シマシタ。システム起動シマス】


「……やっぱ変わってなかったよ……ほんとテキトーな……」



 だが、それでも族長は淡々とまるで作業するかのように目の前にいない誰かの声に対して返答し、そして……


「うお、なんだ!?」

「へ、部屋が……壁がグルグル回ってる!?」

「ど、どうなっている!?」


 部屋に異変が起こった。

 いや、部屋ではなく俺たちの目?

 突如として目の前の壁が高速でグルグル回転しているように見え、更に薄暗い空間に様々な光が照らされて、もう何が起こっているのか分からない。


『トレイナ、これ、大丈夫なのか!?』

『……転移魔法と原理は違うが……しかし、時空間を捻じ曲げて……これを魔力も使わずに……』

『なあってば!』


 大丈夫なのかとトレイナに聞いてみるが、トレイナは真剣な顔をしたまま、興味津々で頷いている。

 この様子だと、一応今の状況も大丈夫ってことなんだろうけど……


「ん? あっ、回転が……」


 すると、徐々に部屋の風景がグルグルと回る現象は収まり、光も消えて、俺たちは……ん?


「あれ? ねぇ、お兄ちゃん……ここ……」

「な、え? 部屋の風景が少し変わっている!?」

「本当だ……それに、部屋の隅に扉があるぞ!? あんなものはなかったはずだ!」

「ど、どうなっているんですか、族長!?」


 妙な現象が収まったと思ったら、部屋が変わっている?

 すると族長は苦笑しながら……



「言ったでしょ? ワープするって。ここはもう、俺たちの住んでいた森じゃない。シソノータミの地下だよ」


「「「「「ッッッ!!!???」」」」」



 え!? ここが!?


「な……え? 族長、ちょっと待て! まさか、い、今ので俺たちは……移動したってのか?」

「うん。ここから先は地上に一旦出てから、陸地を移動するけど、まぁだいぶ道のりを短縮できたから何とかなりそうだよね」

「うそ……だろ……」


 確かに、俺たちは転送装置とやらでワープできるという話だった。

 だけど、今の間に俺たちはもう?

 ダメだ、魔法と言われれば納得できるワープも、魔力を何も感じていないこの状況下では、ワープし終わったと言われてもまるで納得できない。


「とりあえず、嘘かどうかは地上を見てみる? そこに地上直通のエレベ……地上へ上がれるカラクリみたいなのがあるし……あっ、でも魔王軍がいると怖いし……とりあえず、最初は俺とお兄さんたちだけで様子見に行こうか?」


 そう言われて、頭の混乱が収まらない中で族長に誘導されて、俺、エスピ、スレイヤ、そして一応ラルウァイフも入れて五人で地上の様子を伺いに。

 

 なんか、急に浮かび上がるような床に乗せられて足元から上へと強制的に……ダメだ。もう何もかもがよく分かんねえ。


 それに、地上まで相当な距離があるようで、俺のレーダーでも地上の様子は分からない。

 ここが本当にシソノータミなのか?


 分からない。そうやって混乱した状態のまま地上に出たら――――

総合評価18万ドリル突破です。感謝です。目標まであと……82万! また、気合という名のレビューもありがとうございます!

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