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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第一章

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第三十三話 始まりの朝

 その日の夜、俺はヴイアールを覚えてから初めて、ソレを使わないで寝た。

 これまで毎晩朝までひたすら夢の中でスパーリングと禁呪のトレーニングを繰り返していたが、前日は何も考えずに休む。

 ここから先は精神を休めるのもトレーニングの一つというトレイナの言葉に従った。

 とはいえ、身に着いた習慣というものはそう簡単に変わらない。

 魔法を使わなくても、頭の中で繰り返しイメージトレーニングを行っていたら、そのままグッスリ寝てしまい、そして朝になっていた。


『……気分はどうだ?』


 体を起こした俺だが、不思議と夜更かしをした気分は無かった。

 むしろ、ほどよく頭の中がスーッとして体も軽い。


「……よっと」


 起き上がった俺は、まだ寝癖が付いた状態で鏡の前に立ち、顔を洗うよりも前に軽くシャドーをしてみた。

 そして、それだけで自分の体調がよく分かるというものだ。


「……キレがある……五感も冴えている……そして……」


 次は体を落ち着けさせ、目を瞑り。あの感覚を蘇らせる。

 数日間ほぼ毎日激痛に耐えながらこじ開けた魔穴。

 全身の魔穴から魔力を放出し、肉体の表面に留める。

 淀みなく、滑らかに。


「……六感もだ」

『そのようだな。とりあえず、第一関門は余裕で突破というところだな』


 俺の返答に頷くトレイナはほくそ笑んだ。


『戦うべき時に最高のコンディションを持ってくること……それもある意味試練の一つだが、問題ないようだな』

「ああ」

『次は、心の方はどうだ?』


 五感、六感は冴え。なら次は精神面。

 今日はこれまでの成果全てを披露する日。

 これまで、父親に比べられて物足りなく思われていた自分が変わる日。

 今日は帝都中、更には両親も皇帝も観戦する催し。

 そんな催しに、優勝という目標を持ってモチベーションを維持し続けて迎えた日。

 俺自身にかかるプレッシャーは……


「今は……試してみたくて仕方ねえ。親父でも母さんでもない……俺自身を見せつけ……全員にぶつけ、ぶっ飛ばしてやる!」

『ふふん。そうだ、それで良い。ほどよい緊張感を持ち、それを楽しみながら挑戦する心を持つ……精神状態も最高のようだ』


 トレイナの太鼓判ほど、安心できるものはないと、今になっては思ってしまう。

 俺はできる。

 より一層、そう思わせてくれるからだ。


『よし、あとは会場にさっさと行って、適度に体をほぐしておく。あと、包帯もだ』

「押忍」

『ちゃんと巻くのだぞ? 『マジカルバンテージ』を』


 用意するのはこの身と、あとは包帯だけ。

 この包帯も拳に覆って保護するような役割を果たすようだが、確かにこれを付けると殴りやすい。

 トレイナはこれを『マジカルバンテージ』と呼んでいた。

 そして、これを巻く度に俺は「拳で戦うんだ」と思わせる。


「坊ちゃま……おはようございます。しかし、随分と早いお目覚めで……」

「よう、サディス。ちょっと、準備運動がてら、もう出ようかと思ってな」


 着替えて包帯をポケットにしまってそのまま部屋を出たら、丁度廊下でサディスと遭遇。

 いつも俺を起こしているサディスからすれば珍しいことで、少し驚いている様子だ。


「……ああ、ひょっとして緊張して眠れない状況でしたか? うふふふ、それもそうですねぇ、優勝できなければオッパイまでたどり着けないでしょうし、姫様、リヴァル様、フー様あたりが非常に強敵でしょうしね」


 だが、すぐにサディスはニタリと笑みを浮かべて俺を茶化す。

 そう、これだけ朝早く目を覚ましたのは俺が緊張しているからだと思っているんだろう。

 確かに、以前までの俺だったら、そういう風に思ったり、「皆にガッカリされるの、うぜ~」とかやる気を出さなかったかもしれねえ。

 だが、もう今の俺は違う。


「へへ、そうだな」


 早く目が覚めたのは、深くグッスリ寝ることが出来たからだ。

 だから、俺もサディスに笑みを返した。


「……坊ちゃま?」

「そんな激戦を勝ち抜いて本当に優勝しちまったら、もうオッパイだけじゃ割に合わねえかもな」

「……はっ?」

「オッパイ含めたセクシャルハラスメントを1日許してもらう……にランクアップしてもらおうかな~」

「ッ、ぼ、坊ちゃま!?」


 俺の反応がよっぽど意外だったのか、サディスは戸惑ったように目を見開く。

 だが、すぐにハッとして、俺に狼狽えるところを見せたのを誤魔化す様に、自分を優位に立たせようと……


「ッ……ほほう、そうですねぇ。既に15でありながら、未だに童貞彼女ナシの寂しい坊ちゃまはそうでもしないと女と一線を越えられませんしねぇ」


 あえて俺を挑発するような物言いで悪魔の笑みを浮かべるサディス。

 だが、どうしてだろうな?

 今の俺はだいぶ心にゆとりができたようだ。


「そうだなァ、そんなんでサディスと一線越えられるなら、何べんだって優勝してやるさ」

「ぼ、っちゅあ!?」

「そして、サディスが……俺を認めてくれるならな」

「ッ!?」


 あのサディスにもこうやって堂々とできる。


『ふふん。オスとしても随分とたくましくなったようだな』


 今日の俺はそれぐらい自分に自信を持っていいかもしれない。

 だから、ちょっと顔を赤くして再び狼狽えだしたサディスに俺は告げる。


「まっ、見ていてくれよ。俺、少しはサディスにも誇れるような所を見せつけてやるからよ」

「ッ!?」


 サディスにだけではないけどな。今日、俺を見る奴らに全てを見せつけてやる。


「……ハッ、ぼ、坊ちゃま! ちょ、お待ちください! 競技用に刃を潰した剣をお忘れですよ?」

「……剣?」

「うふふふ、どうやら坊ちゃまも相当な強がりを言いながらも緊張されている様子。これでは、今日は見に行くのが怖いですねぇ。残念会になりましたら、オッパイは差し上げませんが、慰めて差し上げますよ」


 あっ、そういや忘れてた。俺はまだ魔法剣士ってことになってんだった。

 そして、俺が素で忘れたのに対し、サディスは「それ見たことか」と再びニンマリとする。

 ま、仕方ねえからここは言い訳しないで素直に剣を受け取っておくか。


「へへ、そうかもな。でも、サディスと話していて緊張が少しほぐれた」

「そ、そうですか……」

「ああ。サディス……ありがとな……いつもいつも」

「ッ!?」


 そう言って誤魔化す様にしながら、俺は剣を受け取って出発する。

 そして、俺をポカーンとした様子で見送ったサディスが、その後に部屋に戻って……


「坊ちゃま……」


 俺のベッドに体をダイブさせて



「ふおおおお、坊ちゃまが、ぐうイケえぇぇぇぇぇ!!!!」



 ということを俺は知る由もなく、俺は御前試合が行われる会場でもある、帝都に存在する闘技場へと向かった。


 そして、この日が俺にとっての本当の始まりとなった。


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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