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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第七章

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第三百三十八話 落とし物

「お兄ちゃん?」

「お兄さん、どうしたんだい?」


 今日、俺は未来へ帰らなければならない。帰ることに決めた。

 族長はエルフとはいえ、地上世界で小説書いてたりと、色々と世間のことにも詳しそうだから、エスピとスレイヤと話し合いをすれば土地云々の件はどうにかしてくれるとは思う。

 だけど、そのエスピとスレイヤと話し合いをしてもらう……それが……


「……エスピ……スレイヤ……」

「なーに、お兄ちゃん」

「?」


 俺はこの二人を置いて帰らなくちゃいけない。十数年という年月を超えて。

 それをどう伝えるか?

 どう納得してもらうか?

 今から俺たちは十数年以上会えないんだと……


「で、お兄さん。土地を買うってどこの土地を買おうと?」

「ん? あ、ああ……」


 言葉が思いつかない。だけど時間もない。

 シソノータミを目指すには早く動く必要がある。

 っていうか……


「えっと……シソノータミ……ここを越えた先にある山岳地帯はジャポーネ王国の領土らしくて、中には個人が所有している山もあるらしくて売りにも出していたりとか……そこを買い取ったり……」

「……ジャポーネ……シソノータミを越えるぅ? いやいや、お兄さん。いくらなんでもこの人数でそこまで目立たず辿り着くのは難しいよ」

「……え?」


 そもそもだけど、族長たちはそこまでたどり着けないという問題もある。

 そりゃそうか。一度森を抜けて平原を突き進んでいかないとそこまで辿り着けない。

 集落のエルフ全員で百人足らずはいるわけだし、流石にその人数が移動したら見つかる可能性が高い。

 

「ら、ラルウァイフ、あんたのワープでそこまで行けないか?」

「いや……小生もそこまでの距離は……」


 俺、エスピ、スレイヤの三人だけなら何も問題ない。しかし、そうなると「じゃあ、エルフたちはやっぱ見捨てる」っていうことになるわけで、それはあまりにも寝覚めが悪い。

 たとえ今日俺が未来へ帰り、大切な妹分と弟分を裏切ることになろうとも、最低限それだけは解決しないと……



「は~……まいったねぇ……シソノータミまでの『転送装置』でも使えれば一気だからなぁ……そこからはまた地上に出なきゃだけど、シソノータミまで行けたら、そこから先はラルウァイフさんのワープ距離だろうし……」


『……なに?』 


「……は?」


「いや、何でもないよお兄さん。独り言」



 そのとき、族長が口にしたよく分かんない言葉に、トレイナが反応した。

 

『転送……装置? 装置……だと?』

「……? なぁ、族長……転送ソーチ? ってなんだ? 魔法の一種か?」

「え? ああ、もういいんだよ。装置だよ装置。実はね……世界各地にシソノータミの技術が込められた転送装置が散らばっていて、その装置を使えばシソノータミまで一気に移動することができるものがあるんだよ」

『「ッ!?」』

「まぁ、実を言うとさっき地図作って気付いたんだけど、その装置はこの近くにもあるんだよね。使えないけど」


 トレイナが気にしているようだったので俺が代わりに聞いてみたら、サラリと族長がとんでもないことを口にしやがった。

 魔法じゃなくて技術? 何でそんなものが?


「ばかな。小生ら……魔王軍が魔導都市・シソノータミを滅ぼし、その後調査したりしたが、あの地にそんなものがあるとは聞いたことないぞ?」

「あ~、ま~そうだよね……それこそもっと下の下……魔王軍が滅ぼしたのは、シソノータミの都市と一部の地下施設ぐらいだからね……それよりもさらに下のエリアは厳重に閉ざされてたし……」

「な、なんだと?」


 それは俺も聞いたことがある。

 しかし、トレイナはそこまでは人間も辿り着けないし、魔王軍も一部の者しか知らなかったという話だ。

 その一人がヤミディレ。その奥底に眠る技術やら何やらでクロンを……

 そして、もう一人は……


「ごめんごめん。この話は忘れて。それにどっちにしろ、この話は何の意味もないから」

「どういうことだ?」

「実はその奥底に眠る技術……しかもその転送装置を使うには、鍵が必要なんだよね。その鍵でこの近くにある転送装置から一気にシソノータミの最深部へ……でも、それも鍵がないとダメなんだよね」

「ならば、その鍵とやらはどこにあるのだ?」

「ん~……持ってたんだけど実はどこかに落としちゃって……いや、ほんとに……まぁ、もう自分には必要ないと思って探さなかったんだけどね……は~、今にして思うと、もうちょい探せばよかったなぁ……」


 鍵? 


『童……』

「あ、ああ……」


 族長が言う鍵って……


「ねぇ、あなた。さっきからよく分からないけど……それって、あなたが私たちと出会うより前の話? あなたが故郷も無く宛もなくこの森を彷徨って、行き倒れていたところを私たちに発見された……」

「ん? いや、鍵を無くしたのは実は最近。足滑らせて川に落ちたときに流されて……」

「え!? 川に落ちた? 私聞いてないわよ!」

「いや、あのとき無理やり結婚させられるのが嫌で、逃げてる最中に……」


 なんだか、急に色々なことが……つーか、族長って元々あの集落の生まれじゃなかったのか?

 それに、どうして族長がシソノータミのことをそこまで知っている?

 いや、それ以前にその鍵って……


「なぁ、族長。それって……これのことか?」


 俺は懐からアレを取り出した。

 シソノータミのことをトレイナ、ヤミディレ以外に知っているもう一人の人物。

 パリピからもらった……


「ああ、そうそう。それがマスターキーで遺跡最深部の出入り口だけじゃなく最深部に設置されている装置の起動に……………ゑ?」


 その瞬間、族長の時がまるで止まったかのように硬直。

 しかしその数秒後……



「え……えええええええええええええええええええ!!?? ま、マスターキー!? な、なんで!? し、しかもそれ……お、俺が川に落として流されたやつじゃん!? え!? なんでお兄さんが持ってるの!? お兄さんが拾ったの!?」


「い、いや……し、知り合いからもらって……」


 

 顎が外れたんじゃないかと思えるぐらい、族長が口を大きく開けて叫びながら駆け寄ってきた。

 まさか……



――拾ったの。いや、これマジ。本当にウソ無し百パー。マジで落ちてたのを偶然拾ったんだよ



 パリピの奴、本当に拾っただけだったのかよ!? しかもこれ、族長のモノ?

 

「は、ははは……こりゃなんて偶然というか運命というか……」


 族長が落としたマスターキーを拾ったのは、生き残った六覇のパリピで、そいつが十数年後の未来で俺に渡し、その落し物が時を越えてこうして……でも、それはさておき、一つ気になるのは……


『今さらながら……こやつ……そもそも一体何者だ? 力や能力云々を差し引いても……普通のエルフではないな』


 そう。族長って何者なんだ?


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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