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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第六章

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第二百九十九話 今こそ全て

「にはははは、さぁ、立ち上がるのじゃ! そして勃ちあがるのじゃ♡」


 大気が震えるほどの大声で吼える化け狐。

 バサラみたいに絵本に出てくるレベルの怪物。

 あんなものどうすれば……


「大将軍、いきなりで小生も危なかったです」

「ん?」


 その時だった。


「ん? お~~~、ラルよ、無事でよかったのじゃ~! あ~、そういえば念話で……え~と」


「……はぁ……エスピの……」


「ああ、思い出したのじゃ。すまぬすまぬ。んで? わらわの可愛い部下たちや、友のショジョヴィーチたちをブチのめしてくれた馬鹿者や、七勇者のクソガキはどこなのじゃ?」



 この地獄絵図の中で、ラルウァイフが苦笑しながら前へ出て、それに気づいたノジャが豪快に笑った。

 そして……


「そこに」

「ん? おお……」


 そこには、平原に転がる鉄の球体が一つ。

 次の瞬間にはその球体が割れ……


「ちっ……バケモノめ……」


 中からスレイヤが頬に汗を流しながら立ち上がった。

 って、やべえ俺も……


『ッ、待て童!』

『なんだよ?』

『未来のノジャは魔界新政府の役職についているとのことだが……』

『ん? ああ、そうだよ。親父や母さんともチョクチョク会って……』

『貴様の顔を知っているのではないのか? そうなるとこの場で貴様が顔を出すのは……』

『あっ……』


 そうだった。

 目が見えないコジロウだったり、どこの誰かも分からねえ魔王軍の連中には仕方なく顔を出してたけど、ノジャぐらいになると流石に……


「な~んじゃ? エスピのクソガキではないのじゃ」

「ええ。こやつは、エスピの仲間の一人のようで……ただ、子供でありながらその力は……」

「ん? あ~、どこかで……おお、そうなのじゃ! ゴウダたちがボヤいておった、確かハンターの天才少年……」

「えっ!? あっ……」


 ノジャが笑みを浮かべ、そしてラルウァイフも気付いたようだ。

 あいつの正体を……


「確か……スレイヤ? とか言うたかの?」

「……ふっ……伝説の六覇に名前を知ってもらえているとは光栄だね」

「には、にははははは……ほうほう、なるほど……良い目をしておるし、雰囲気もある。今ふっとばしたペット候補たちよりもずっと見どころありそうなのじゃ。とはいえ……」

「……っ……」

「毛も生えとらんガキは嫌いなのじゃ。剃る楽しみがないからの♪」


 次の瞬間、ゆったりとノジャの尾が一本上がり……


「ッ!?」


 尾が高速でスレイヤに向かって振り下ろされた。


「甘くみるな、バケモノめ!」

「おほ♪」

 

 スレイヤが反応。回避。流石にあいつは簡単にやられないか。

 しかも回避しながらも……


「造鉄・ウルトラハイパーダークネースバルムンク!」

「にはは、それが噂の便利な魔法か。ハンターではなく鍛冶屋に転職したらよいのじゃ」

「黙れ、その首もらっ――――」


 反撃に飛び掛かる……って、待て! 

 そんなデカい武器、確かに当てられれば有効だけど、相手は六覇だ。

 真正面からやったって……


「もら? なんなのじゃ~?」

「ッ!?」


 そもそも、一本の尾を回避したところで、ノジャの巨大な尾は九本ある。

 二本目がスレイヤの死角から伸びて、その小さな体を縛って捕えやがった。


「し、しま……」

「にはははは、なんじゃ~、よっぽどこれまで相手に恵まれておったのじゃな……才能あっても、運悪ければすぐ死ぬレベルなのじゃ……これだからガキは嫌い……ん?」

「くっ、離せ! ぐっううううう!」

「ほうほう、この状況でも良い目なのじゃ。あと二十年遅ければ……ん?」


 やばい、スレイヤが。

 迷っている場合じゃねえ。

 やるしかねえ。

 たとえ、歴史がどうなったとしても、ここで見捨てるわけには……


「ん~……」

「な、なんだ! 人をジッと見て……」

「ふむふむ……」


 ん、どうした? ノジャのやつ、スレイヤをジッと見て何かを考えているようだけど。


「昔……シャイニングゲンジという男が幼女を娶って自分の理想に育てようとした昔ばなし……ふむふむほむほむ……」

「……え?」

「将来を見据えて飼いならすのも……ぐふ♡」

「なっ……!?」

「どーせ、わらわの生涯に比べれば、人間の成長速度は早い……髭もアソコもボーボーになるまでの観察日記を作るのも面白そうなのじゃ♡」

「ッ……ふ、ふざけるな……誰があなたなんかに!」

「おほ♡ いいのじゃいいのじゃ! その目、嗚呼、気概、メチャクチャに泣かしてやりたいのじゃぁ♡」


 あ、これは……流石にヤバいな……殺されなさそうだけど、別の意味でも危ねぇ。

 スレイヤもゾッとして青くなっている。


「やべえ、助けねえと……でも、いいのか? 俺が顔を出して……」

『仕方ない……か……だが、確か報告ではこの場面では……エスピが……しかし今は……』

「ん? あっ……そうか……」


 たしか、トレイナが言っていた『正しい歴史』では、『エスピがノジャと交戦して捕虜に逃げられた』っていうことになっている。

 そして、現代でのスレイヤはちゃんと生きている。

 つまり、何もしなくても助かるし、エスピが助けに……っていうことになるんだが……だけど……


「……っ、ど、どうすりゃいい? このまま……このまま見ているだけで……」

『……むぅ……』


 今回ばかりは森の中で出会ったような名前も知らない魔王軍の兵士とは違う。

 コジロウの時とも違う。

 ここで俺が六覇のノジャと戦う……それがどれだけの……


『ふぅ……』


 すると、トレイナは一度溜息を吐き、しかしすぐに俺に向かって笑みを向けた。



『童よ……今いるこの世界が過去だとしても……今、貴様と余が居る今こそ全てだ。ならば今この瞬間は、時の流れも何もかも忘れよ。ただ目の前の……貴様がどうしても戦わねばならぬ理由とだけ向き合え』


「トレイナ……」


『この時代のエスピと出会った森の中でも言っただろう? もうそういう歴史だったのだと思って……貴様がやるしかあるまい!』


「でも……」


『それに伴い、この時代の魔王軍が貴様によってどのような影響を与えられたとしても……余に対して後ろめたいなどと思うな。貴様にそんなことを思われるほど、余は女々しくはない』



 そう、俺がこの世界で魔王軍と頑なに戦いたくなかったのは、歴史への影響が総てじゃない。

 俺が余計なことをすることで、魔王軍がこの時代で何か不利になることが起こった場合、それは俺が間接的にトレイナを……っていう、ことを考えるのはやめろと、トレイナは俺を押し出す。

 

『大魔王に後ろめたく思うな。貴様は師匠の言葉に耳を傾けよ』

「……ああ……くははは……そうだな……ああ……分かったよ……」


 トレイナの言うとおりだ。つか、余所事を考えてどうにかなるような相手じゃねぇんだ。

 ゴチャゴチャ考えず……ただ……スレイヤを助けるんだ。

 どうやって助ける?



「あいつを、倒すッ!!」


『ああ、そうだ! ブランクがあったり、貴様を殺そうとしなかったヤミディレとも、怠惰に過ごしてきたパリピとも違う……現役バリバリにして、余の六本の腕の一つ……貴様の父たちの宿敵、六覇を……ぶっ倒すぞ!!』



 そうだ。まさに戦乱の世を戦う、現役バリバリの六覇だ。

 やってやる。

 むしろ、それを超えるぐらいじゃなきゃな。


「よし、行って―――――」

『……ん? あっ、童! ちょっと待て! それを……』

「ん? ……あっ! そうか、これなら」


 そして、もう諦めて顔を晒してノジャの前に出ようとする前に、トレイナはあることに気づいて指さした。

 俺もそれを見て、思わず声を上げちまった。

 このときばかりは、連合軍の連中が全裸にされていて幸いだった。

 おかげで、脱がされた兵士たちが元々装備していたと思われるヘルムが俺の足元に転がっているからだ。


「黒のヘルム……あっ、マントもある! かっけーっ! よし、これをこうして……」

『待て、顔さえ隠せば……』


 やべえ、不謹慎だけど少しワクワクしてきた。

 これで正体隠して、思う存分できる。


「にはははは、ではまずは……本当に一本も生えていないかを確認するのじゃ♡」

「ッ!? や、やめろ、なにを、何をする! 許さないぞ、ボクを辱めるようなことは、や、やめ、やめ―――――」

「あと、被っているかも――――」


 よし、できた! 



「わーはっはっはっはっは、わーはっはっはっは! それまでだ幼女闘将ノジャ! これ以上の非道な行いは決して許さないッッ!」


「……ん? なんなのじゃ? この笑いは……」


「……え? だ……だれなの?」



 そのとき、俺の声が届いたようで、ノジャ、そしてノジャの配下のアマゾネスたち、そしてスレイヤの視線も一斉に俺に向けられる。

 ノジャにぶっとばされて倒れている連合軍の兵士やゲンカーンの男たちは……気を失っていたり、朦朧としているようで、あんま反応無いな……ま、いいか。


「……誰なのじゃ? あの……黒衣の騎士は」


 黒いヘルムと、黒いマントを身に纏い……



「俺は……いや、私はこの世に涙を流す子供が居るのなら、たとえ相手が怪物であろうと容赦しない! 良い子の味方! ラガーンマンだっ!!」



 俺が誰かと問うてくるノジャに対して、俺は答えてやる。



「ラガーンマン? 聞いたことないのじゃ……」


「ならば、その身に刻み込むがよい。貴様を倒す者の名をな!」


「なにぃ?」



 そう、ガキの頃憧れた勇者のように。

 ビシッと、決めポーズも完璧だ。


『いや……顔隠しているのだから、別に口調は変えなくても……え? それ、貴様の理想なのか? そして偽名ならタピル・バエルでも……』


 ん? トレイナには不評みたいだな。

 いや、タピル・バエルなんて嫌だし。

 それに……


「わ、わぁ……………か……カッコイイ……らがーんまん……」


 初めて見たな。スレイヤが目を輝かせているところ。

 なんだか、子供時代の親父を助けたときのように純粋なキラキラした目を俺に向けてくる。


 それにもちゃんと、応えねえとな。


まだ300話じゃないですぞ~。だって299話だし。

さて、コジロウの時のような探り合いでも、スレイヤとの追いかけっことも違う……そう……ガチバトルってパリピの時以来だったりします。


アース・ラガンの偽名はラガーンマンとラガンマンで迷いましたが、ラガーンマンにしました。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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