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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第六章

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第二百九十七話 褒める

「さぁ、ボクの奏でるレクイエムをその身に刻みたまえ」

 

 船から飛び降りたスレイヤが、やけにキザッたらしいことを言ってるが、正直困る。

 本当なら、このまま街の人たちを避難させて街から離れようとしてたのに、ワザワザ戦いに行かなくてもいいのに。


「ちっ、やってくれるじゃないかい、クソガキぃ……」

「あたいらの恐ろしさを知らねーのかい?」

「まだ生えてもなさそうなガキが……お姉さんたちがメチャクチャにしてあげるよぉ!!」


 スレイヤの先制攻撃でふっとばされ、体を打ち付けたり埃にまみれたアマゾネスたち。

 全滅とまではいかず、まだ元気そうな奴らがポツポツと起きはじめ、スレイヤに怒りの殺意を向けている。

 しかし、スレイヤは動じない。


「やってみたらいいよ。品性下劣なおばさんたち」

「「「あんっ!!?? 殺すッッ!!」」」


 それどころか挑発。そして、次の瞬間には「ブチィ」と何かが切れたアマゾネスたちが怒り狂って一斉に飛び掛かる。

 

「噛み殺してやるよぉぉ!」

「刻んで殺すッ!」

「裸にひん剥いてやらぁ!」


 速い。獣の身体能力を持った獣人たち。

 まさに野生の……つっても……


「ふん……魔法を使うまでも無い……」


 スレイヤはスレイヤで、野生の獣どころか大物のモンスターを仕留めてその名を轟かせる有名ハンターだ。


「スレイヤウルトラビーフストロガノフエナジーパンチ!」

「ふばっ!?」


 獣人で軍人とはいえ、並のレベルで相手になる奴じゃない。


「こ、このガキい!」

「おい、このガキもできるよ! フォーメーションでやるんだよ!」

「ああ、見せてやるよぉ! 坊や、人生経験豊富なお姉さんたちが、すごいの魅せてやるよ」

 

 たとえ、多人数で一斉にかかっても……


「マジカル――――」

「ジェットストリーム―――」

「アタッ―――――」


 冷静に、その上で正面から……


「グランドスラムバスターラッシュ!!」


 まるでその力を見せつけるかのように、あの小さな手足からは想像もできないスピードとパワーで、獣の肉食女たちを蹴散らしていった。


「ぐはっ、だ、だめだ、こいつ……強い……格が違う!」

「つぅ……撤退だ! 今すぐ本軍まで戻るぞ!」

「くそ、こんなガキに……」


 つうか、女の顔を容赦なく……いや、そんな甘いこと言える相手じゃないけどさ……

 それに、おかげで連中が力の差を感じてドンドン撤退してくれている。


「ふっ、人生経験積んでこの程度かい? 無駄な人生だったね」


 とにかく、その圧倒的な力でドヤ顔しながら瓦礫の上からスレイヤは容赦なくアマゾネスたちをこき下ろした。


「す、すげーっ!」

「ああ、あんなに強かったなんて……魔王軍を倒しちまった!」

「連合軍の守備隊が全滅してるってのに、一人で……流石天才スレイヤ!」

「俺たちはついてるぞ、七勇者のエスピ様だけじゃなく、天才スレイヤまでこの船に乗ってたんだ!」

「俺たちは助かったんだー!」


 そして、その活躍ぶりに船から大歓声が沸き上がった。


「むぅ……こんなことなら、メンドーなことしないで最初から私が……うぅ……」

「ま、まぁ、そう言うなよ、エスピ。お前の能力で皆を避難させたから、人質取られることなく、スレイヤも何も気にせずできたわけだし、お前のおかげだよ」

「むぅ……でも、もっと活躍して褒められたかった……」

「大丈夫だって。お前がスゲーってことは、ちゃんと分かってるからさ」

「あぅ……ん~♪」


 一方でスレイヤにいいとこどりをされたとむくれているエスピだけど、とりあえず窘めてご機嫌は取らないとな。


「むっ…………な、ま、またベタベタしてる……活躍したのはボクなのに……むぅ……」


 ん? 好きに暴れたスレイヤがなんかこっち見て睨んでる? 

 なんだよ、スッキリしたんじゃないのか? 何を怒って……


『……下に降りて……あやつの頭でも撫でて褒めてやったらどうだ?』

『は?』


 すると、トレイナが俺の隣でスレイヤをジッと見ながら意外なことを呟いた。


『いやいや、何言ってんだ? あいつ、そういうのは嫌いそうじゃん。ウザったいとか、馴れ馴れしいとか……』

『……たしかに……大して関わりのない大人たちに都合のいい賞賛をされてもウザったいだろう……だが……』

『?』

『もう貴様は……奴にとってはそういう大人ではないと……余は思うがな』


 まるで俺を試すかのように笑みを浮かべながら提案してくるトレイナ。

 本当にそうだろうか?

 なんか普通に「うるさいな。ボクに話しかけないでよ」とか言われねーか?

 まぁ、でも確かに結果的にあいつの活躍で、この場は何とかなったし……


「ったく……エスピ、ちょっと待ってろ」

「お兄ちゃん? あっ……」


 エスピを撫でる手を止め、一旦俺も下へ飛び降りる。


「ん?」


 降りてきた俺に仏頂面を向けてくるスレイヤ。

 そんなスレイヤに対して言う言葉。

 それは……


「すごいじゃねーか、スレイヤ」

「ッ!?」

「強かったぜ」

「な、なにを、き、昨日はあんなにボクを散々小ばかにしたくせに……」

「んなことねーよ。まっ、たしかに最初飛び降りたときはどうしようかと思ったが……結果的にお前が居てくれて良かったよ」

「あぅ……あ……」


 とりあえず、思ったことをそのまま素直に伝えた。

 俺が戦いたくなかった魔王軍……まぁ、結果的にこいつがその問題を解決してくれたし、エスピの負担も減ったし、何よりも住民や船に乗ってる連中にも危害が無かったしな。

 さて、そんな俺の言葉にこいつは……


「う、うるさいな……」


 ほら、案の定これだよ! トレイナのやつ、何が俺なら――――


「べ、別にボクは天才であってこの程度は当たり前なわけで全然すごくもないし当たり前のことだから凡人なんかに褒められてもうれしくないし頭撫でられるのとかうっとおしいから何も思わないし、さっきだってあの子はボクより弱いはずなのにあんなに褒められてイライラしたとかで羨ましいわけじゃないし勘違いしないでくれたまえ!」


 なんか、予想以上に色々とまくし立てられて返ってきた。

 ほんと色々と拗らせちゃってるな、この坊主は。

 でも、何だか拗らせながらも、初めての出会いから比べればだいぶ心を開いてくれているのが分かる。


「むむむむむぅぅぅうう~~~~~」


 そして、上空では物凄くむくれたエスピがこっちを睨んできてる。

 ったく、こいつらは……


「おのれ……薄汚い人間どもが……まさか、こんな子供までもが小生らを……」

「ん?」


 そのとき、瓦礫をかき分けて一人の女が……さっきのダークエルフ。あいつも無事だったか。

 ちょっと怪我しているみたいだが起き上がってきた。


「なんだ、まだ懲りてないのかい?」

「おい、あんた……もうあんたの仲間も逃げたし……どうだ? いっそのこと、ここは引いてはくれねーか?」


 戦いをやめるよう提案するが、目の前のダークエルフの全身から溢れる憎しみや殺気は、思わず寒気がした。


「ふっ……甘くみられたものだな……人間……だが……だが……たしかに、この状況下でエスピも相手にするのは厳しいであろう……」


 命を捨ててでもまだやるのか? と思ったが、意外にも冷静な判断をしてくるか?

 そりゃぁ、この状況下で六覇と対となる七勇者の一人であるエスピとも戦うってのは無謀だろう。

 なら、ここはもう引いてくれるのか?

 

「ふふふ、しかし……見たぞ!」

「ん?」

「貴様……何者かは知らないが、エスピに相当気に入られているようだな? つまり、貴様こそがエスピの弱点……」

「は?」

 

 殺気を込めて睨んだ表情から、急に歪んだ笑みを俺に向けるダークエルフ。

 こいつ一体何を……


「そしてそこの小僧も……確かに強い……が……大将軍には敵うまい」

「……なに?」

「ふふふふ……そうでしょう? 大将軍?」


 こいつ何を? ん? 何かブツブツ……


『テレパシーだ! こやつどこかに念話を……まさかっ!?』

「了解しました! 今、帰還します! こ奴らと共に! ふふふふ、ははははは! 後悔しても遅いぞ、人間!」


 トレイナが慌てたように声を上げる。

 次の瞬間、ダークエルフの全身を禍々しい魔力が包み込んだ。

 これは、ヤミディレに似た……


「ハツノーリカーラノゴセンイェンチョーカ……」


 詠唱? 魔法? 攻撃? 一体何が?

 何が来てもいいように身構え―――



『ぬっ!? ワープだ、童! 構えるな! その場からすぐに―――』


「ッ!?」


「中距離移動魔法タクスィー」

 


 次の瞬間、俺とスレイヤは突如目の前に現れた黒い渦に飲み込まれてしまった。


念のためネタバレします。別にこれでエスピとさよならじゃないからね?

ただ、ほんの数話だけ別行動。

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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