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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第六章

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第二百五十六話 品揃え

『鞄は……うむ、少し弱いが……予算を考えるとこれだな。衣類をこれに詰め込め』

「押忍」

『あと、コップ、ボウル、食器……衛生面でのケア用品……あとは、マントだな……これを体に巻いて夜は寝る。一番安いので良かろう。テントは値が張るのでな。うむ、こんなところだろう!』

「へぇ……マントってそういう風に使うんだ……カッコいいから使うと思ってた……」

『あとは、紐やちょっとした布切れも。服の破れなどを補修するためにな』

「俺、裁縫できないんだけどな……あっ、それと薬草類とかって、そんなにいらないのか? ポーションとか……」

『腹痛や解熱作用のある最低限の薬草でよい。ダメージ回復用のポーションを買うぐらいなら、森で素材を集めて作った方が安上がりだ。魔力回復用のポーションも、貴様は魔呼吸ができるので必要ない』

「え? ポーションを作るって……確か、資格がいるんじゃ……それに調合の手順は俺も……って、ああ……」

『余を誰だと思っている? 必要に応じて、あらゆるポーションの調合手順を完璧に教えてやる』

「くはは、だな。んで……携帯用の食料もこれだけか?」

『うむ、必要なのは軽量であり、コンパクトであり、たんぱく質が豊富なモノだ。ソーセージやチーズ、調理用の調味料を少々……そして、栄養食品として魔王軍も愛用していた……『カロリーフレンド』という携帯食だ』


 トレイナに指示されるまま、所持金の中で納まるように購入する道具を色々と手に取った。

 正直、俺はこれまで冒険ということになると、「武器」と「回復アイテム」を道具屋で購入さえすればいいと思っていた。

 だからトレイナに教えてもらわなければ、最初から間違うところだった。


「しっかし、色々と……金……足りるよな?」

『問題ない。全て一番安いものだ。しかし、数日は野宿が前提であるため、レストランでメシを食ったり、宿屋に宿泊はできんぞ?』

「あ~……とうとう俺もサバイバルか……」


 抱えた道具を持って会計所へ。

 荷物は大量ではあるものの、一つ一つの値段自体はそれほど高くはない。

 値が張る武器や、ポーション類などに手を出さなかったのも大きい。

 まっ、おかげで今日から野宿というか、サバイバルに身を投じることになるので、温かいベッドとはおさらばになるので少し憂鬱だけどな。

 

『にしても、ここは意外と良い道具屋だったな』

「ん?」


 すると、会計所へ向かいながらも俺の傍らで改めて店内を見渡しながらトレイナが感心したように呟いた。


『マジカルサバイバルナイフもそうだったが、カロリーフレンドまで売っているとは思わなかった。しかも激安でな』

「あ~、たしかに」

『それに……』


 そう、予算がオーバーにならなかった他の理由として、購入品の一部が激安だったことだ。


「それに?」

『うむ、このカロリーフレンドも……マジカルサバイバルナイフも……魔王軍が使用していたのを模倣したわけではなさそうだ……材質、原料、それらを見る限り……魔界で製造されていると思われる』

「え? 魔界?」

『うむ、つまりこの道具屋は……魔界の生産品を仕入れているということになるな……』

「そ、そうなのか?」


 俺には分からねえけど、トレイナが言うならそうなんだろう。

 いや、別に地上と魔界は既に戦争を終えているし、そういう取引も徐々にだけど出てきてはいる。

 実際、親父たちはもっとその友好を推し進めるための仕事をしているわけだしな。

 だから、別にこの店がそんな商品を仕入れていてもおかしくない……



『魔界の製品を仕入れるということは、それだけで本来は値が張る。輸送費や関税もあるだろうしな……それをよくもまぁ……これだけ激安で売っているものだな』


「へぇ……この店の人って……変わりもんなんだな」


『うむ。本来ならこのナイフも携帯食も、それほど安いものではないのだ。それをワザワザ魔界から仕入れてこの値段……商売する気が……どこか……個人的に何か思い入れがあって、あえて売っているようにも感じるな』



 俺はてっきり、「イメージが悪いから誰も買わなくて、安売りしている」と思っていた。

 しかし、トレイナの言うことが本当だとしたら、確かに少し気になる所ではある。

 売れない高いものをワザワザ仕入れて激安で売る? そんなことに何の意味があるのかと……



『ん?』


「どうした?」



 そのとき、トレイナがふとあるコーナーに視線を移した。そこは食料品のコーナーだ。

 すでに買うべきものは買ったはずだが、他に何か? しかも、そこは俺たちが見てない棚だ。

 その棚には何種類もの瓶が並べられている。何かの調味料? 

 するとトレイナは……



『ぬお、おおおおお、す、スパイスではないかぁ!』


「……?」


『こ、これは、ぬぬ、しかもこれほど種類が豊富……道具屋でなぜこれほど香辛料が置いてあるのだ? 基本的なターメリック、クミン、コリアンダー……それに……』



 香辛料のコーナーみたいだな。にしても、確かに種類が豊富だな。

 流石にどれが何なのとか、瓶の中に入っている香辛料の色を見ても全く分からないが、トレイナは目を輝かせている。

 そして、同時に歯噛みもしている。


『ぬぅ……見事な種類だ……これだけあれば……余が試行錯誤のうえに編み出した、『大魔王カリー』すらも……ぐぅ……しかし……予算が……いや、少し削っ……いやいや無理だ……ぬぅ……』

「なぁ……そんなにいいのか?」

『たわけえ! 貴様はスパイスがいかに健康への効果があるか分からんのか! 消化器官、肝機能、脳機能活性、食欲増進、滋養強壮、疲労回復、新陳代謝、……あ~、とにかくこれは……欲しいところだが……ぬぅ……カリーを……』


 珍しくトレイナが本気で悩んでるよ。

 つか、かりーってなんだよ?

 いやいやいやいや、俺がこれから買おうとしているものは全部が最低限必要な道具だ。

 それを削って香辛料までは流石に無理だろ? 

 でも、トレイナもそれが分かっている様子。

 だからこそ、悔しそうな様子だ……


『ええい、仕方ない。童、とりあえず今日はそれだけを購入し、その上で金をもう少し稼ぐぞ! もういっそのこと……うむ、やはりハンター登録をする必要があるな……』

「おいおいおい……」


 おい、どれだけ欲しがってるんだよ! っていうか、流石にハンター登録は……



「そこのお兄さん……買わないの?」


『「ッ?!」』



 そのとき、香辛料コーナーに背を向けて振り返った俺たちの目の前に、一人の男が立っていた。



「……え?」


「買わないの?」



 エプロンを身に付けた、整った顔立ちの若い男。

 そして、感情の起伏を感じない無表情で人形のような眼で俺をジッと見下ろしてくる。

 それにしても……こいつ……


「あ、えっと……あんた……ここの店員さん?」

「ん? ああ……ボクのことを知らないのかい?」


 いやいや、知らねーよ。何なんだ? こいつ……



「でも、君はこれを買うんじゃないの? このスパイス……必要なんじゃないの?」


「あっ、いや、ちょっと手に取っただけで……」


「うそだよ。必要でしょ? なのに何で買わないの? ボクは分からない。君はどうして買わないの?」



 そして、急に距離を詰めて俺に問い詰めてきた。いやいや近い近い怖い。なんだこいつ?



「いや、ただ、か、金が足りないな~と思って……」


「お金? お金がどうしたの? 足りないなら交渉でもすればいいじゃないか」


「は、はぁ?」


「なんで、何かをする前に諦めるのか……分からないな……ボクには君が分からない……どうしてなんだい?」



 ……俺が分からん。つーか、こいつ本当に何なんだ?


『随分とおかしな男だ……』

 

 あっ、トレイナもそう思った様子。

 いきなり現れて、詰め寄って、ブツブツブツブツと意味の分からんことを言われて……シノブも最初に惚れられたときはこんな感じでいきなり距離を詰めて色んなことを話しかけてきたが、まぁ、あれは俺に惚れてくれたということで、しかもあいつ美人だから許せたことだが……それを年上の男にやられると……正直、気持ち悪い。 

 すると……


「おーい、店長! 今度のモンスター退治のアドバイスくれよー!」

「あっ、店長いるじゃん! なぁ、店長~、そろそろ俺らのパーティーに助っ人で入ってくれよぉ!」

「キャーーー、店長だーーー!」


 いつの間に俺の後ろに立っていたこの男の存在に周囲が気付いた瞬間、店内が一気に騒ぎ出した。

 女たちなんてキャーキャー言ってる。いや、そりゃ~、イケメンだけども……

 しかし、男はクールに……


「うるさいな……ボクは今、このお兄さんと話をしているんだよ?」


 一蹴。だけど、そんな冷たい態度でも周りの笑顔は絶えない。

 何なんだ……? それに……


『なぁ、トレイナ……』

『うむ……』

『こいつ変な奴で、頭がおかしいのか分からないけど……ただ……』


 トレイナも鋭い目をしてこの男を見てる。

 話の様子からこの店の店長のようだな。

 年齢は恐らくサディスや王子とかと同じぐらいか。

 ただ……


『つえーな……こいつ……』

『うむ……何者だ? ただの道具屋の若店長には見えないが……』


 ただそこに立っているだけなのに、分かる。こいつ、かなり強いぞ?

 少なくとも、この店内にいる冒険者とかハンターたちの誰よりも、この店長の方がずっと強いってのが分かる。


「ったく、相変わらず冷て~な~、『スレイヤ店長』は~」

「でも、カッコよくて強いから、そんな態度も素敵……」


 そのとき、周りの連中が笑いながら口にした言葉に、トレイナが反応した。


『……スレイヤ? その名……たしか……』

 

 とりあえず、只者どころでは無さそうだな……

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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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