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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
chapter 1
2/35

01話 経緯

「お化け屋敷のアルバイト?」


 高1の終業式を終えて待望の春休みスタートとなった日の夜、帰宅した親父から何の前置きもなく宣告される。


「お前どうせ暇だろ。彼女もいないし、家でゴロゴロするだけなら働け。バイト代も出るぞ」


「大きなお世話だ! それに学生は学業優先って前に言ってただろ?」


「だが勉強しかできない世間知らずな人材に価値がないのも事実だ。だったら今のうちに社会勉強しろ」


 まったく、これだから大人は。

 それっぽい正論を並べて、今までと真逆な意見を平然と言ってくるんだよなぁ。


「大体、何でお化け屋敷?」


「人事部にそこが人手不足とボヤかれてな。春先は人の入れ替わりが激しくて困る」


 我が父は近場にあるテーマパーク〝山桜グリーンキャッスル〟に勤めており、地元野菜の直売場・スーパー銭湯・庭園・観覧車等があるのは知ってるけど、お化け屋敷なんてあったかな?


「お父さ~ん、夕食できたよ~。ビールいる~?」


 妹の比奈(ひな)()が部屋に入って来ると、俺には一切見せなかった笑顔に変貌する。


「比奈菜~、用意ありがとな。ビールは風呂上りにして、一緒に枝豆食べような~」

「イェ~イ! えっだまめ、えっだまめ~」


 そうして妹とハイタッチを交わすシスコン親父に溜息を吐いていたら。



「比奈菜、(ゆう)()は明日からバイトで忙しくなる。父さんの職場のお化け屋敷で」



「マジで! お兄ちゃんお化けになっちゃうの⁉」

「ちょっ! 勝手に決めるな!」


 このままじゃ俺の貴重な春休みが消滅する!

 だが親父に焚き付けられた比奈菜が目をキラッキラさせながら迫ってくる。


「お兄ちゃん何に化けるの? 死神? ゾンビ? まさかのジェイソン?」


 この質問攻めに、親父が失笑しなから指を差して、


「夕護は将来ハゲそうだから、河童だな」

「ハゲねーよ! つーか俺まだ了承してないだろ!」


「じゃあお兄ちゃん。バイトやらずに明日から家でず~っとゴロゴロ?」

「うぐっ、それは……」


 確かにバイトから学べる事はあるだろうし、お金が入るのも悪くない。だが親父の思惑通りに動かされるのが釈然とせず、それに働くという事はそれなりの責任が圧し掛かってくる訳で……


 そんな葛藤をしていたら、それを見透かした様に親父がこちらを見据えてくる。



「夕護、無意味な意地は格好悪いだけだぞ」



「うぐぐっ、………………バイトが原因で成績落ちたらどうすんだよ。それに事情ができて辞めたくなっても辞めれずでトラブル続出って聞くけど」


 この絞り出した言い分に、親父が鼻で笑ってから、


「安心しろ。もしそうなったら社員である父さんが直々に出向いてクビにしてやる」


「ひでぇ!」


 もしそうなったら泣くぞ!

 心折れちゃうから!


「とにかく春休みだけでもいいからやってみろ。きっといい経験になる」


 強引に履歴書を渡され、ついそれを受け取ってしまった後、親父は満足そうに食卓に行っちゃいました。


 ……………負けた。


「あははははは。お兄ちゃん格好悪~い」

「うるせーよ! 自分でも上手く丸め込まれたって思ってるから」


 これって善意の押し売りだよね?


 お前の為だからって口実で相手を屈服させるのは間違っていると叫びたい。

 だがこの決定を覆す術が思い付かず、唸り声しか出てこない。


「でもいいな~、私もバイトしてみたいな~」

「比奈菜はまだ中3だろ。来年まで我慢しとけ」

「は~い。じゃあお兄ちゃん、バイトどうだったか教えてね~」

「分かった分かった。じゃあ面倒臭いけど履歴書を作りますか」

「おおっ、何か大人っぽい! 私も手伝っていい?」

「別にいいけど」


「よし! じゃあお礼としてバイト代が入ったら何か買ってね、お兄ちゃ~ん」


 ワザと姿勢を低くして胸元がちょっとだけ見えるくらいの上目遣いに、我が妹なのに不覚にもドキッとしてしまった。


「お前はほんとあざといなぁ」

「えっへへ~、あざと可愛いのが比奈菜だからね~」


 悪びれずに笑顔ですり寄ってくる辺り、本当に要領がいい妹だ。俺が高校でクラス女子とそれなりに話せるのも、比奈菜が適度に振り回してるからだろう。


「てゆーか比奈菜は来月誕生日だろ。じゃあ無事にバイト代が入ったら、今年は英世じゃなく諭吉に奮発してやろう」


「マジでっ‼ わ~い、お兄ちゃん愛してる!!」


 例えこれが計算だとしても、可愛い妹がガッチリ抱き付いてくれば嬉しくなってしまうのが男という生き物だ。


 実際明日から暇だったし、頑張ってみるか。

導入パートなのでサクサク進行、次からお化け屋敷です。

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